ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー(アメリカ映画・2008年) |
<試写会・梅田ブルク7>
2008年12月18日鑑賞
2008年12月24日記
米国発の金融危機が全世界に広がったのと同じ08年10月、米国発の底抜けに明るく楽しいミュージカル映画が大ヒットし、全世界に。青春群像ミュージカルである点は『ウエスト・サイド物語』(61年)と同じだが、その違いは?こんなお気楽でいいの?との心配もあるが、「こんな映画で不況を吹っ飛ばせ!」をスローガンとして、一緒に楽しまなくちゃ!ちなみに、3人の美女についてのあなたの採点比較は・・・?
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監督・振付・製作総指揮:ケニー・オルテガ
トロイ・ボルトン(バスケチーム・ワイルドキャッツのキャプテン、ミュージカルの天才)/ザック・エフロン
ガブリエラ・モンテス(イースト高校始まって以来の天才、トロイの彼女)/ヴァネッサ・ハジェンズ
シャーペイ・エヴァンス(ガブリエラのライバルの女の子)/アシュレイ・ティスデイル
ライアン・エヴァンス(振り付けが得意な男、シャーペイの双子)/ルーカス・グラビール
チャド・ダンフォース(ワイルドキャッツのメンバー、トロイの親友)/コービン・ブルー
テイラー・マッカーシー(秀才、ガブリエラの相談相手の女の子)/モニーク・コールマン
ケルシー・ニールセン(作曲担当の女の子)/オリシア・ルーリン
ダーバス(演劇部の先生)/アリソン・リード
2008年・アメリカ映画・112分
配給/ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
<これは『セックス・アンド・ザ・シティ』のミュージカル版!>
『セックス・アンド・ザ・シティ』(08年)は、『相棒ー劇場版ー』(08年)と同じようにアメリカで大人気のTVドラマを映画化したもの(『シネマルーム20』52頁参照)。
それと同じように『ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー』は、『ハイスクール・ミュージカル』や『ハイスクール・ミュージカル2』がテレビ放送やサウンドトラックCD等で大ヒットしているのを受けて、劇場版として製作されたもの。したがって、本作はいわば『セックス・アンド・ザ・シティ』のミュージカル版!
<アメリカで大ヒットの理由は?>
この映画は2008年10月24日に全米公開され、週末3日間の興行収入4200万ドル(約39億円)を稼ぎ出し、たちまち全米2週連続NO1、『マンマ・ミーア!』(08年)の記録を塗り替えるミュージカル映画史上オープニングNO1の成績を挙げたとのことだ。プレスシートには、『ハイスクール・ミュージカル』や『ハイスクール・ミュージカル2』を含めてサウンドトラックやCDが全米そして全世界でいかに大ヒットし、『ハイスクール・ミュージカル』ブームを引き起したかについて、数字を挙げて誇らしげに語られている。しかし、全世界に向けて米国発の金融危機が広がったこの時期、なぜこの映画が大ヒット?
それはひょっとして、単純なストーリーながら底抜けに明るく楽しい内容に、経済不況にあえぎ始めたアメリカ人たちが一時的に救いを求めたため・・・?テレビの大ヒットを受けて映画化すれば、さらに爆発的大ヒットという構造は必ずしも喜ばしいことばかりではないが、1930年代の世界恐慌の再来かと心配されている昨今、一方ではオバマ新大統領の発する力強いメッセージと、他方ではそんな底抜けに明るい青春群像ミュージカルによって、米国が元気になっていけばラッキー・・・?
<同じ青春群像ミュージカルでも、天と地の開きが・・・>
私が高1の時に観て衝撃を受けたのが、ロバート・ワイズ監督の『ウエスト・サイド物語』(61年)。これはシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』の舞台を現代アメリカのニューヨークのウエスト・サイドに移しかえたものだが、キャピュレット家とモンタギュー家という名門家系同士の対立ではなく、ジョージ・チャキリス扮するベルナルドが率いるシャーク団とラス・タンブリン扮するリフが率いるジェット団という若者のグループの対立に置き換えたところがミソ。そのため、ジェット団のリフの親友であったトニー(リチャード・ベイマー)とベルナルドの妹のマリア(ナタリー・ウッド)の恋は成就せず、悲しい結末に。
『ウエスト・サイド物語』は悲恋モノだが、同時にスラム街に住むヒスパニック系の若者たちの鬱積した気持が満ち溢れ、世間や大人たちに対する抵抗が大きなテーマとなっていた。あの時代の、あんなところに住む、あんな若者たちは、あんな生き方しかできなかったわけだ。
ところが、それから約50年。サブプライムローン問題に端を発した金融危機が一気に広がったとはいえ、イースト高校はバスケの試合に湧き、卒業ミュージカルの製作に夢中になれるお気楽な(?)状況。しかも、彼ら彼女らがどんな階層に属しているのか知らないが、その服装を見ているとファッションショーと見まちがうばかりの豊かさ。今のアメリカの若者はこんなリッチな環境で運動したり、踊ったり青春を謳歌しているの?同じ青春群像ミュージカルでも、『ウエスト・サイド物語』と『ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー』とでは天と地の開きが・・・。
<あなたはガブリエラ派?それともシャーペイ派?>
この映画の主人公は、イースト高校のバスケットチームであるワイルドキャッツのキャプテンにしてミュージカルの天才男トロイ・ボルトン(ザック・エフロン)と、その恋人でありイースト高校始まって以来の才女と言われているガブリエラ・モンテス(ヴァネッサ・ハジェンズ)の2人。他方、ガブリエラのライバルでとにかく自己チューの女がシャーペイ・エヴァンス(アシュレイ・ティスデイル)、そしてその双子の男の子がライアン・エヴァンス(ルーカス・グラビール)。ライアンは振り付けが得意で、ダンスのセンス抜群のようだ。もう1組の目立つカップルが、ガブリエラの親友でありかつ相談相手である超秀才の女の子テイラー・マッカーシー(モニーク・コールマン)とその恋人(?)のチャド・ダンフォース(コービン・ブルー)。チャドはトロイと同じワイルドキャッツのメンバーで、大学でも共にバスケをやるのが夢のようだ。
そんな6人の主要なキャラを見て私はどうしても美女の方に目がいってしまう。そんな私のお好みは、意外にも高慢ちきながら人のいいところもある女の子シャーペイ。だって、ガブリエラもテイラーもあまりに優等生すぎて面白くなさそうだもの・・・。とりわけ、黒人系のテイラーを見ていると、一貫してブッシュ政権を支えていたライス国務長官とダブってしまう・・・?さて、あなたはガブリエラ派?それともシャーペイ派?多分テイラー派ではないと思うのだが・・・。
<2人は別れる運命?それとも・・・?>
『ロミオとジュリエット』は世界の三大悲劇小説の1つだが、この映画の悲劇性(?)は、憧れのスタンフォード大学に合格したガブリエラがそこに行ってしまうと、地元のアルバカーキ大学のバスケチームに入学する予定のトロイとの距離が1600キロも離れてしまうというレベルのもの。住む世界が変われば、愛し合っている2人の心も次第に離れていってしまうの?そんな不安の中で展開される物語がこの映画のテーマだから、いわばストーリーは単純そのもの。しかし、バスケの試合の中で歌い踊るオープニング曲や恋人同士の2人が互いの悩みを打ちあけ合う曲、そしてハッピーエンドを迎える中で全員が歌い踊る『ハイスクール・ミュージカル』の曲など、全編楽しい楽曲がいっぱい。したがって、この映画に関しては、2人が別れる運命なのか、そうではないのかという視点(?)については、あまり真剣に悩まなくてもいいのかも・・・?
<ジュリアード音楽院の奨学生となれるのは?>
「ジュリアード音楽院」はニューヨーク市にある私立の大学で、数々の音楽家を輩出している名門中の名門。また、同校はプレカレッジ制度が充実しており、18歳以下の才能を持つ若者にも門戸を開いているのが大きな特徴。したがって、その奨学生になるのはすごい栄誉だが、演劇部のダーバス先生(アリソン・リード)の発表によると、その候補になっているのはシャーペイとライアンそして今回のミュージカルの作曲をしている女の子ケルシー(オリシア・ルーリン)の3名の他、何とトロイ。「えっ、なぜ僕が・・・?」「僕は申し込んでないのに・・・」と怪訝そうなトロイだが、なぜそんなことに?それがこの映画のもう1つのテーマ。そして、きっとその答えもそれほど難しいものではないはず・・・。
しかして、ラストのハイライトとなる『ハイスクール・ミュージカル』の大合唱の後、正式に発表されるジュリアード音楽院の奨学生は、果たしてダレ・・・?
2008(平成20)年12月24日記