マックス・ペイン(アメリカ映画・2008年) |
<角川映画試写室>
2009年4月3日鑑賞
2009年4月4日記
妻子を殺されたマックス・ペインが復讐鬼となって挑む、孤独な闘いの最後のターゲットは一体誰?ここにもニューヨーク市警の腐敗が・・・。コンピューターゲームを映画化するには最新の映像技術が不可欠だが、本作の工夫は?スカンジナヴィア神話にもとづく「ワルキューレ」についてしっかり探究心を持ち、かつ2人の「美女比べ」をしながら、彼の闘いをしっかり見守りたい。
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監督・製作:ジョン・ムーア
脚本:ボー・ソーン
製作:ジュリー・ヨーン、スコット・フェイ
マックス・ペイン(ニューヨーク市警の刑事)/マーク・ウォールバーグ
モナ・サックス(ナターシャの姉、ロシア人ギャング)/ミラ・クニス
B.B.ヘンズリー(エーシル社の役員)/ボー・ブリッジス
ジム・ブラヴーラ(内務調査官)/クリス・‘リュダクリス’・ブリッジス
ジェイソン・コルヴィン(ペインの妻ミシェルの元上司)/クリス・オドネル
ジャック・ルピノ(羽を持つ男)/アマウリー・ノラスコ
ナターシャ(薬漬けの謎の美女)/オルガ・キュリレンコ
2008年・アメリカ映画・100分
配給/20世紀フォックス映画
<コンピューターゲームから映画化へ>
妻子を殺され、復讐鬼と化した、ニューヨーク市警未解決事件班に籍を置く刑事マックス・ペインというキャラクターは、2001年に世界各国でリリースされたコンピューターゲームでつくられたもの。コンピューターゲームを映画化して成功したケースには『バイオハザード』シリーズや『ストリートファイター』シリーズがあるが、さてマックス・ペインは?
私はコンピューターゲームを1度もやったことがないのでその面白味はわからないが、ゲームではやはり戦争や銃撃戦そして格闘戦を楽しむことが多いはず。したがって、その映画化については、『マトリックス』(99年)のようなスローモーション撮影の多用その他撮影技術の粋を競い合うことになる。また、近時CG技術の発展が著しいから、本作の核となるスカンジナヴィア神話にもとづく悪魔ワルキューレ(=羽を持つ男)のイメージを描き出すためには、その技術のフル動員が必要。
腕などに彫られた羽のタトゥーだけでは映像的に面白くないから、大手製薬会社エーシル社の某秘薬を飲んだことによって生まれるという幻覚・幻聴の様子は、最新の撮影技術とCG撮影によって実現することが不可欠だ。したがって、そんな点に興味のある人には本作はお薦めだが、逆に興味のない人は・・・?
<坂和流2人の美女比べ>
本作には2人のウクライナ生まれの美女が登場する。妹役のナターシャを演ずるオルガ・キュリレンコは、『007/慰めの報酬』(08年)で新生ジェームズ・ボンドの重要なボンドガールをつとめた注目株。ところが本作では、ナターシャはマックス・ペインの誘惑に失敗し不貞腐れて(?)帰る途中、ワルキューレ(羽を持つ男)によって惨殺されてしまうから、オルガ・キュリレンコの登場はそれっきり。こんな美女をたったこれだけのシーンしか使わないのは、あまりにももったいない・・・。
他方、短い出番ながらストーリー構成の節目で再三登場するのが、姉のモナ・サックス。このモナを演ずるのがミラ・クニスだが、こちらは私には全然馴染みのない女優。しかも、プレスシートを読んでみるとミラ・クニスよりオルガ・キュリレンコの方が年上。そうすると、出番においても、実年齢においてもこの姉妹は逆にし、オルガ・キュリレンコにもっと活躍の場を与えた方がよかったのでは?
字幕の登場順位では序列7位のオルガ・キュリレンコが、プレスシートのキャスト順位では主役のマックス・ペインを演ずるマーク・ウォールバーグと並ぶ位置と大きさとなっているが、これはきっと『007/慰めの報酬』でオルガ・キュリレンコが大ブレイクしたため。
<ミシェル殺し、ナターシャ殺し、アレックス殺しの犯人は?>
「あと10分早く家に帰っていれば・・・」とマックス・ペインが後悔の念にさいなまれ、以降人が変わったようになったのは、自宅に押し入った3人組に妻ミシェルと幼い娘を殺されたため。2人はその場で射殺したものの、1人を取り逃がした彼は、その後同僚たちにさえ心を開くことなく、単独行動でミシェルたちを殺した犯人を追っているわけだ。手に羽のタトゥーをしていたナターシャが惨殺された現場には、なぜかマックス・ペインの財布が落ちていた。そうなると、ロシアンマフィアであるナターシャの姉モナが、マックス・ペインを妹の仇と狙ったのは当然だが、さてナターシャ殺しの犯人は?
ナターシャに続いて殺されたのが、元マックスの相棒のアレックス。彼の死亡は、ミシェル殺しの犯人とナターシャ殺しの犯人に「ある共通点」があることをマックスに報告しようとした直前だったから、マックスがさらに犯人追及の決意を固めたのは当然だ。
しかし、こんなに次々と人殺しを重ねていく奴は一体ダレ?スクリーンを観ている私たちには、ワルキューレ伝説にもとづく羽が印象的な映像として示されるが、もちろん犯人が誰かは最後までクエスチョン。
<B.B.ヘンズリーは善玉?それとも?>
ストーリー構成において本作の準主役ともいうべき存在が、エーシル社役員のB.B.ヘンズリー(ボー・ブリッジス)。彼は元警察官だというから、大した出世をしたものだ。マックスの数少ない理解者らしい彼は、ナターシャ殺し、アレックス殺しについてすべての捜査官がマックスに疑惑の目を向けていると忠告するが、それは本心からのもの?それとも?映画は中盤から後半にかけて、エーシル社が開発している某秘薬についての解説が登場するから、それに注目。その秘薬とは?そんな秘薬の開発を進めている奴は、本来ヤバイのでは?
他方、アメリカ映画の刑事モノにはよく内務調査官が登場するが、本作ではその役がジム・ブラヴーラ(クリス・‘リュダクリス’・ブリッジス)。内務調査官は本来警察署内の悪を摘発するための役職だが、その人間が悪にまみれていれば、そんな警察は最悪。さらに「政官財一体」とよく言われるが、政(政治)と官(警察)そして財(エーシル社)が変に結託していたらロクなことがないのは、世界中どこでも同じ。そんな風に考えると、さてヘンズリーは善玉?それとも?
<明確になったターゲットとは?>
映画の冒頭、水の中に沈んでいくマックス・ペインの姿が登場する。これは毎日突き刺さる心の痛みに絶えながら日々闘っている彼が、水の底に沈んでいく日が近いことを暗示するもの。他方、本作のクライマックスシーンでは、ホントにマックスが氷の張る冷たい水の中に飛び込んでいくシーンが登場するが、それは銃を持った敵の手から必死に逃亡するため。しかし、水の冷たさに感覚はなくなり、このまま沈み、彼は遂にジ・エンド。一瞬そう思ってしまうが、その時彼の耳に聞こえた声は?
心の痛みが最大になった時、やっと明確になった敵に対して彼が決死の闘いを挑んだのは当然。それに協力するのがモナだが、さて彼の闘いのターゲットとは?それはあなた自身の目でしっかり確認していただきたいが、本作についてもエンドロールが流れている最中に席を立ってはダメ。なぜならそれは、終了後『ロード・オブ・ザ・リング』(01年)や『パイレーツ・オブ・カリビアン』(03年)の時と同じように、明らかにパート2製作を示す1シーンが登場するから。さて、パート2に登場する新たな標的とは?
2009(平成21)年4月4日記