ウェディング・ベルを鳴らせ!(セルビア共和国、フランス映画・2007年) |
<GAGA試写室>
2009年4月9日鑑賞
2009年4月13日記
世界は広い。こんな楽しい寓話をつくり出す、旧ユーゴスラビア生まれの大監督がいたとは!花嫁を探せ!そんな約束を果たすため、少年はどんな冒険旅行を?個性豊かな登場人物たち、何とも面白い発明品の数々、そして波瀾万丈、奇想天外、ハチャメチャなストーリー展開。そのすべてに、きっとあなたは大満足!さあ、どんな結末の中、ウェディング・ベルが鳴るのだろうか?
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監督・共同脚本・製作:エミール・クストリッツァ
ツァーネ(少年)/ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ
ヤスナ(ツァーネの花嫁になる女性)/マリヤ・ペトロニイェヴィッチ
ジヴォイン・マルコヴィッチ(ツァーネの祖父)/アレクサンダル・ベルチェック
バヨ(マフィアのボス)/ミキ・マノイロヴィッチ
ボサ(隣人の女性)/リリャナ・ブラゴイェヴィッチ
役人/イワン・マクシモヴィッチ
ヤスナの母/コサンカ・ジェーキッチ
トプズ(ジヴォインの親友トリフンの孫)/ストリボル・クストリッツァ
ルーニョ(ジヴォインの親友トリフンの孫)/ヴラダン・ミロイェヴィッチ
2007年・セルビア共和国、フランス映画・127分
配給/デスペラード、日活
<ここにもすごい監督が>
私は、ベルギー・フランス・イタリア合作の『ロルナの祈り』(08年)ではベルギー生まれのジャン=ピエールとリュック・ダルデンヌ兄弟というすごい監督を、チェコ・スロヴァキア合作映画の『英国王 給仕人に乾杯!』(07年)ではチェコスロヴァキアのプラハ生まれのイジー・メンツェルというすごい監督をはじめて知った。また、イスラエル・フランス・ドイツ合作映画の『シリアの花嫁』(04年)ではエルサレム生まれのエラン・リクリスというすごい監督を、イラン・フランス合作映画の『子供の情景』(07年)ではアフガニスタン生まれの19歳のハナ・マフマルバフというすごい監督をはじめて知った。
そして、本作ではじめて知ったのが、1954年に旧ユーゴスラビアで生まれたというエミール・クストリッツァというすごい監督。彼は『パパは、出張中!』(85年)、『アンダーグラウンド』(95年)などの作品を世に送り出し、二度のカンヌ国際映画祭パルムドールをはじめとする映画賞を席巻してきた大監督とのことだ。
<波瀾万丈、奇想天外、ハチャメチャなおとぎ話の、はじまり、はじまり・・・>
映画の冒頭に登場するのは、おじいさんのジヴォイン・マルコヴィッチ(アレクサンダル・ベルチェック)が、孫のツァーネ(ウロシュ・ミロヴァノヴィッチ)と牛のツヴェトカと3人(?)で暮らしている不思議な家。ジヴォインは発明マニアらしい。今、家の中からニョキニョキと出てきた潜望鏡(?)で覗いているのは、都会から車でやってきた役人(イワン・マクシモヴィッチ)の様子。何か面白いことが起こりそうだと思いながら観ていると、この車はジヴォインが仕掛けた穴の中にドーンと突っ込んでいったから大変。こりゃ一体ナニ?面白い仕掛けによってたたき起こされたツァーネはこんな有り様を楽しそうに見物していたが、ツァーネも発明家の血を引いているようで、この映画には彼の発明したさまざまな面白い道具が登場してくるからそれに注目!
ジヴォインとツァーネは、ジヴォインに恋焦がれて(?)都会から引っ越してきた隣に住む女教師のボサ(リリャナ・ブラゴイェヴィッチ)らと共にそんな農村で楽しく暮らしていたが、役人の命令によって生徒1人、先生1人の学校は廃校とされることに。そんな状況下、死期を悟り、「ワシが死んだら、あの子は・・・」と心配したジヴォインは、ある日ツァーネに対して「町へ行って牛を売り、次の3つのことを約束しろ」と大胆な提案(命令?)を。3つの約束とは①牛のツヴェトカを売り、その金で聖ニコラスのイコンを買うこと。②余ったお金で、なんでも好きなお土産を買ってくること。そして③花嫁をみつけることの3つだ。
さあ、こんな奇妙なプロローグから始まる波瀾万丈、奇想天外、そしてハチャメチャなおとぎ話(=ツァーネの冒険旅行)は、邦題どおり無事「ウェディング・ベルを鳴らす」ことになるのだろうか?
<一目ボレした美女の危機とは?>
本作は、空飛ぶ怪人などの奇妙な人物たち、催眠うずまき、まんまるパンなどの面白い発明品の数々が登場し、さらに牛、猪、七面鳥などの動物が要所要所に登場しながら展開していく波瀾万丈、奇想天外、ハチャメチャな物語だが、基本ストーリーは、ツァーネがジヴォインとの間に交わした3つの約束を達成していくというシンプルなもの。そして、その最大のテーマは当然、花嫁をみつけることだ。
ツァーネが都会に出た途端に一目ボレする美女ヤスナ(マリヤ・ペトロニイェヴィッチ)と出会えたのは意外だったし、ツァーネの自己紹介やプロポーズがスムーズに進んでいくのも意外。しかしヤスナの母親(コサンカ・ジェーキッチ)がマフィアのボスであるバヨ(ミキ・マノイロヴィッチ)から借金しているうえ、母親はバヨの経営する売春宿で娼婦として働いているらしいから大変。また、そのためヤスナは1時間80ユーロの値段で娼婦とされ、セルビア初の貿易センタービル建設のためバヨが接待してる市の役人への貢ぎ物にされようとしていたから大変。ヤスナに迫ったそんな危機に対して、ツァーネはどんな救出作戦を?それに協力するのが、ジヴォインのかつての親友であるトリフンの孫であるトプズ(ストリボル・クストリッツァ)とルーニョ(ヴラダン・ミロイェヴィッチ)たちだが、彼らは一体どんな能力を発揮するの?
さあ、そんなメチャ楽しい冒険物語をあなたの目でじっくりと。
<ウェディング・ベルを鳴らすのは?>
ヤスナに迫る危機を勇気と知恵で救出するツァーネ。そんな波瀾万丈の大展開の中、ツァーネとヤスナとの間に愛が芽生え始めたのは当然だ。そうなれば、ツァーネのプロポーズをヤスナが受け入れるのは時間の問題・・・?
他方、村でツァーネの帰りを待つジヴォインとボサの暮らしは?ジヴォインの大仕事の1つはウェディング・ベルの製造と塔の建設。発明家のツァーネにとってそれは簡単なように思えたが、意外に苦労したのがベルの吊り上げ作業。それに協力したのが隣人の女教師ボサだが、もともとボサはジヴォインにホレて村に引っ越したのだから、そんな共同作業の中で2人の恋に火がついてもおかしくはないはず。やっとヤスナを連れて村に帰ってきたツァーネは、鐘の音を聞いて「こりゃ、ひょっとしておじいさんの葬式?」と焦ったが、さて真相は?死期を悟ってツァーネを都会に送り出したはずのジヴォインだったが、この調子では100歳まで長生きできるのでは・・・?
2009(平成21)年4月13日記