ヴィクトリア女王 世紀の愛(イギリス、アメリカ映画・2009年) |
<GAGA試写室>
2009年11月17日鑑賞
2009年11月18日記
ヴィクトリア女王の若き日は意外と知られていないが、ドイツの貴公子アルバート公に自ら求婚したのはなぜ?女王の孤独と多くの責任から生まれる苦悩を少しでも理解したい。他方、政権交代が実現した今、民主党はイギリスの議会制度を重宝しているが、本作にみるその実態は?そんな視点も大切だ。さらに、少子高齢化に悩む昨今、3男4女の橋下徹大阪府知事を上回る4男5女を設けたヴィクトリア女王の生き方から、日本女性が学ぶものは?
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監督:ジャン・マルク・ヴァレ
製作:マーティン・スコセッシ
ヴィクトリア女王/エミリー・ブラント
アルバート公/ルパート・フレンド
メルバーン卿/ポール・ベタニー
ケント公爵夫人(ヴィクトリアの母親)/ミランダ・リチャードソン
ウィリアム王/ジム・ブロードベント
ジョン・コンロイ(ケント公爵夫人の個人秘書)/マーク・ストロング
ロバート・ピール/マイケル・マロニー
2009年・イギリス、アメリカ映画・100分
配給/ギャガ・コミュニケーションズ
<どちらかというと原題の方がベター>
ヴィクトリア女王は1837年から1901年まで君臨した歴代最長のイギリス女王で、『Queen Victoria 至上の恋』(97年)などいろんな映画で描かれている存在。ジャン・マルク・ヴァレ監督を起用してマーティン・スコセッシが製作した本作は、若き日のヴィクトリア女王(エミリー・ブラント)のドイツの貴公子アルバート公(ルパート・フレンド)との恋愛を描いたものだから、『ヴィクトリア女王 世紀の愛』という大層な邦題もうなずけるが、原題はもっとシンプルで『The Young Victoria』。
65年間にもわたって女王として君臨したヴィクトリア女王の一生を映画で描けば、数十時間のモノになってしまうはず。したがって、本作が描くのは①母親のケント公爵夫人(ミランダ・リチャードソン)とその個人秘書(愛人?)ジョン・コンロイ(マーク・ストロング)との確執に悩む若き日のヴィクトリア、②イングランドのウィリアム国王(ジム・ブロードベント)亡き後、必然的に王位を継承した若きヴィクトリア女王の苦悩、③具体的には、当初頼りきってきたメルバーン卿(ポール・ベタニー)が正しいのか、それとも政権交代したピール首相(マイケル・マロニー)が正しいのかを軸として悩み続けるヴィクトリア女王の苦悩と政治決断、④ベルギー国王レオポルドが次期女王の夫の座を狙って送り込んだ甥のアルバートとヴィクトリア女王との真の恋愛と結婚など、若き日のヴィクトリア女王の姿だ。そうすると、邦題の『ヴィクトリア女王 世紀の愛』よりは、原題の『The Young Victoria』の方が本作の実態にピッタリで、ベターでは?
<エミリー・ブラントもいいが、やはりもっと華のある女優の方が>
本作で若き日のヴィクトリア女王を演ずるのは、『プラダを着た悪魔』(06年)や『サンシャイン・クリーニング』(08年)のエミリー・ブラント。1983年生まれの彼女は確かに演技派としてそれなりの地位を固めつつあるが、私には現在公開中の『ジェイン・オースティン 秘められた恋』(07年)におけるアン・ハサウェイや、『プライドと偏見』(05年)、『つぐない』(07年)におけるキーラ・ナイトレイほど華のある女優とは思えない。そう考えると、もともとヴィクトリア女王自身がそれほど華のある美女ではなかったのかもしれないが、主役として映画に登場させるにはエミリー・ブラントもいいが、やはりもっと華のある女優の方が良かったのでは?
<子だくさんは、橋下知事も同じだが・・・>
今や衰退期に入ったとしか思えない日本国では、少子高齢化が顕著。かつて日本では「産めよ増やせよ」という時代もあり、1組の夫婦で子供が7、8人というのはザラだった。私の父親も7人兄弟姉妹の長男だから、まさに時代の典型だった。しかし、今時子供が7、8人という家族がいる?そんな家族はほとんど見かけないが、あるある大阪には。それはつい先日、幼い子供が2人新型インフルエンザに感染したためやむをえず公務をしばらく休むことになった橋下大阪府知事。彼は3男4女計7人の子だくさんだから、今ドキ珍しい天然記念物的存在だ。
そんな目でヴィクトリア女王をみると、彼女は夫アルバートとの間に4男5女計9人もの子供をもうけたから橋下知事以上。そのうえ、橋下知事はせいぜい関西州や道州制を唱えて大きな影響を与えているくらいだが、ヴィクトリア女王はその息子や娘そして孫たちが島国イングランドからヨーロッパ全土はおろかロシア等々まで羽ばたき、それぞれの王国を築いたのだから大したもの。そう考えるとヴィクトリア女王は橋下知事もとても追いつかない雲の上の存在だ。
人口増に悩む中国はやむをえず一人っ子政策をとったが、出生率の低下に悩む日本ではこんなヴィクトリア女王の生き方を広く日本女性に知らしめて啓蒙する必要があるのでは・・・。
<菅直人副総理も小沢一郎幹事長も英国型議会に熱心だが・・・>
自民党から民主党への政権交代という歴史的転換点となった2009年の8.30総選挙の前に、民主党の菅直人代表代行(当時)は6月6日から11日までイギリスを訪問して英国の議会制度を研究し、その成果を発表した。また、政権交代後民主党幹事長に就任した小沢一郎も9月20日からイギリスを訪れて英国の議会制度を視察するなど、脱官僚依存と政治主導を実現するためイギリスの議会制度を重視している。しかして、本作を観ればそんなイギリス型議会制度の原型を垣間見ることができるから、それを大いに参考にしたい。また、日本においては天皇は日本国の象徴だが、立憲君主制の国イギリスでは女王は一体いかなる政治的役割を?ヴィクトリア女王は81歳まで生きたが、夫のアルバート公は42歳で死亡したから、アルバート公がヴィクトリア女王の補佐役として公正中立な立場でイギリス議会と向き合い、成果を残した期間は意外と短い。しかし、本作からはそんなイギリス女王の政治的役割も少し学ことができる。
今さらイギリスの議会政治から何を学ぶの?という疑問もないではないが、政権交代が実現した今、民主主義の原点に戻って考えることは意味があるかもしれない。そんな視点からも、立憲君主制の国イギリスの全盛時代を描いた本作から学ぶことは多いかも。
2009(平成21)年11月18日記