SAW6(アメリカ映画・2009年) |
<敷島シネポップ>
2009年12月12日鑑賞
2009年12月14日記
『SAW4』(07年)に続いて、シリーズ最新作『SAW6』を鑑賞。残忍な生き残りゲームが『SAW』シリーズの特徴だが、さてアンブレラ保険の保険査定員をターゲットとした『SAW6』のそれは?他方、『SAW3』以降出ずっぱりなのがジグソウの元妻ジルだが、死せるジグソウが残したあるモノとは?『SAW』シリーズおたくは本作の分析と「to be continued “SAW7”」の予測に夢中だろうが、所詮そこまでの意欲のない私は、2作で十分?
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監督:ケヴィン・グルタート
ジグソウ、ジョン・クレイマー/トビン・ベル
ホフマン刑事/コスタス・マンディラー
ジル(ジグソウの元妻)/ベッツィ・ラッセル
エリクソン捜査官/マークー・ロルストン
ウィリアム・イーストン(アンブレラ保険の査定責任者)/ピーター・アウターブリッジ
アマンダ/ショウニー・スミス
2009年・アメリカ映画・91分
配給/アスミック・エース
<「アンブレラ保険」って、こんなあくどいことを?>
私は弁護士登録以降35年間交通事故に関する保険会社の事件を扱っているが、その仕事は一言でいえば、適正な損害賠償額の算出。つまり、保険会社サイドで過大な請求だと思われる案件について、示談または訴訟で弁護士対応となるわけだ。もっとも、弁護士依頼となる前には当然保険会社の査定担当者による被害者との示談折衝があり、その段階で合意が成立する案件が圧倒的に多い。しかし、本作にみるアンブレラ保険の査定責任者ウィリアム・イーストン(ピーター・アウターブリッジ)や「犬」と呼ばれる6人の敏腕スタッフたちがやっていることは?
保険契約時に病歴があることを隠して保険契約を締結するとそれは「告知義務違反」だから、いざ保険事故が発生し保険金支払いという段階になって「告知義務違反」だから保険金が支払えないという思いがけない事態になる。6人のスタッフが「犬」と呼ばれているのは、保険金請求がなされた段階で保険契約者の過去を調べ上げて何らかの「不備」を発見し、保険金支払いを拒否するのが仕事だからだ。そんな仕事を嬉々としてやりながら出世競争をしている姿や、その調査結果を受けて言葉は丁寧だが自信満々に「保険金の支払いはできません」と宣言しているウィリアムの姿を観ていると、これがアンブレラ保険の実態?これがアメリカの損害保険会社の実態?と思い、暗澹たる気持になってくる。
もっとも、数多くの正当な保険契約者の利益を守るためにはこれは必要不可欠な業務なのだが・・・。実は『SAW』シリーズの主人公ジグソウ(トビン・ベル)も、そんなアンブレラ保険とウィリアムによる被害者の一人?
<ゲームは「ルール」厳守が不可欠だが・・・>
『SAW』シリーズの面白さの1つはさまざまな「ゲーム」の存在だが、これはきわめて残忍なゲームばかりだから、まともに観るのが恐ろしいものばかり。シェイクスピアの『ヴェニスの商人』では、ユダヤ人の金貸しシャイロックは若い法学者に扮したポーシャから肉1ポンドを切り取る権利は認められるものの、血を一滴も流すことなくそれを実行せよと迫られて困惑することになるが、『SAW6』の冒頭に登場するゲームは「60秒以内に自分の身体を多く切り取った者が助かる」というもので、計りが2人の目の前に置かれている。一方の太った男は出っ張った腹部の肉を切り取るが、他方の若い女性は?
『SAW6』のメインとなるゲームは、ジグソウがウィリアムに仕掛けた4つのゲームだが、それらはいずれも残忍なものばかり。ちなみに、『SAW6』のゲームで目立つのは、AとBのどちらを選ぶか?6人のうち生き残る2人として誰を選ぶか?という選択権がウィリアムに与えられていること。裁判員裁判が始まった今、裁判員には死刑判決を下すかどうかの決断が迫られるが、それは裁判員という職責上やむをえないもの。しかしウィリアムの場合はなぜ、そんな決断をしなければならないの?
ちなみに、ゲームは「ルール」厳守が不可欠だが、ジグソウが仕掛ける『SAW』シリーズの数々のゲームでは、それが徹底しているから面白い。ところでゲームではないが、中国の習近平国家副主席の場合は?彼が天皇陛下に拝謁するについては、それまで厳格に守られてきた「30日ルール」がいとも簡単に破られたようだが、こりゃ大問題?
<全6作の理解はよほどのマニアでないと?>
世の中には『スター・ウォーズ』シリーズおたくや『ハリー・ポッター』シリーズおたくなど、さまざまなおたくがいるが、『SAW』シリーズおたくはきっとマニアックな人ばかり?『SAW6』のパンフレットには『SAW』(04年)から『SAW5』(08年)までの解説がある。『SAW』シリーズおたくにはそんなものは必要ないかもしれないが、『SAW4』(07年)を観た(『シネマルーム18』35頁参照)だけの私には、『SAW6』でも度々出てくる回想シーンになると、それらの解説を読まなければその意味がわからないことが多い。もっとも、過去5作を観てなければ『SAW6』の狙いや面白さがわからないようでは『SAW』をつくった意味がないから、それなりのストーリーは『SAW6』を観ただけで理解できるようにはなっている。
ちなみに、『SAW4』から『SAW6』におけるホントの主人公はジグソウだが、実は彼は『SAW3』(06年)で死んでしまった人物だ。そんな設定の中で『SAW4』から『SAW6』まで毎年1作ずつ製作してきた意欲は大したものだが、そうなると次第に話がややこしくなってくるのは仕方がないところ。『SAW6』には『SAW3』でジグソウの愛妻ジル役で登場した美女ベッツィ・ラッセルが『SAW4』『SAW5』に続いて出演し、ホフマン刑事(コスタス・マンディラー)退治で『SAW6』のストーリーを締めくくるかのようにみえたが、実は・・・。こりゃ「to be continued “SAW7”」の伏線であること確実だが、さて“SAW7”はどんな脚本に?
2009(平成21)年12月14日記