パーマネント野ばら(日本映画・2010年) |
<東映試写室>
2010年4月14日鑑賞
2010年4月15日記
菅野美穂8年ぶりの主演!それに期待したが、どちらかというと菅野美穂の演技より、主役を食ってしまった(?)小池栄子の怪演に注目!「パーマネント野ばら」に集うのは不幸な女たちばかりだが、それはナゼ?そして、菅野美穂の抑えた演技が目立つのは、一体なぜ?しかして、あっと驚くある「ヒネり」の賛否は?婚カツに精を出す草食系男子も、たまにはこんな刺激的な女の生態を知れば女の見方が変わるかも?
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監督:吉田大八
原作:西原理恵子『パーマネント野ばら』(新潮社刊)
なおこ/菅野美穂
みっちゃん(なおこの友人、フィリピンパブの経営者)/小池栄子
ともちゃん(なおこの友人)/池脇千鶴
まさ子(なおこの母親)/夏木マリ
カズオ(まさ子の夫)/宇崎竜童
カシマ(なおこの高校時代の恩師)/江口洋介
もも(なおこの一人娘)/畠山紬
ヒサシ(みっちゃんの夫)/加藤虎之介
ユウジ(ともちゃんの夫)/山本浩司
2010年・日本映画・100分
配給/ショウゲート
<叙情派作品の最高傑作に期待!菅野美穂に期待!>
私は西原理恵子のマンガを読んだことがないが、『パーマネント野ばら』は彼女の「“叙情派作品”の最高傑作」らしい。そのため、映画化のオファー合戦もあったらしい。本作の舞台は、高知県宿毛市の美しい空と海に囲まれたある田舎町の小さな美容院パーマネント野ばら。なぜ叙情の最高傑作と呼ばれているのか私にはよくわからないが、どうも西原理恵子の出身地である高知を舞台とし、方言(土佐弁?)丸出しの女たちが恋をテーマとしてさまざまな本音を語るところがミソらしい。
監督は私は見逃したものの、傑作の誉れが高い『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07年)の吉田大八だが、私が注目したのは断然主演の菅野美穂。「経理の佐藤さん、好きです」に始まり、「営業の鈴木さん・・・」「開発の高橋さん・・・」と続く沖データのCMでいい味をみせ、NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』では正岡子規の妹律役で存在感を示している菅野美穂は、私の大好きな女優。さあ叙情派作品の最高傑作で、彼女はどんな演技を?
<菅野美穂の抑えた演技はなぜ?>
菅野美穂演ずるなおこは一人娘のもも(畠山紬)を連れてパーマネント野ばらに戻ってきた出戻り娘。離婚して実家に戻ってきたなおこは母親のまさ子(夏木マリ)の仕事を手伝っているが、どことなく寂しそう。この小さな町に美容院は1軒しかないから、ここは女のたまり場になっているようで、本作の名脇役となる(?)3人のおばさん軍団のお店での噂話はそりゃ生々しい。こんな田舎町に戻ってきたのでは再婚相手を探すこともできないだろうから、なおこは今後ももの成長を楽しみにしながらひっそり過ごしていくだけ?そう思っていると意外にも、なおこは江口洋介扮する高校教師のカシマという男と付き合っているらしいからビックリ。なおこもなかなか隅に置けないものだ。もっとも、最初からこのカシマという男の存在感が薄いのが気がかり・・・。
他方、まさ子の夫カズオ(宇崎竜童)は外で女をつくり、好き放題やっているようで、家に全然帰ってきていないから当然まさ子の機嫌は悪い。そこで、なおこがカズオにそろそろ家に帰ってくるよう頼みに行くと、カズオは「男の人生は真夜中のスナックや!」から始まる何とも奇妙な名セリフでなおこの頼みを拒否。「そんな無茶な理屈は通らんワ」と言うものの、なおこはなぜかそれ以上の追及はしない。また、なおこはおばちゃん軍団からいろいろ突っこまれてもあまり反論せず、どことなくなげやりな感じさえある。これは一体なぜ?そしてまた、全体的に抑えた菅野美穂の演技はなぜ?
<小池栄子の怪演は主役超え?>
タレントとしては『カンブリア宮殿』で村上龍のお相手という大役をこなし、女優としては『接吻』(08年)をはじめとする多くの作品で美女兼個性派という珍しい味を出しているのが小池栄子。その小池栄子が本作では、なおこの友人でフィリピンパブを経営しているみっちゃん役で、『龍馬伝』の香川照之ばりの(?)怪演をみせている。そのド派手な服装にも注目だが、度肝を抜かれたのは、店の女の子に平気で手を出す夫ヒサシ(加藤虎之介)の浮気にキレたみっちゃんが、浮気相手の女を車でひき殺そうとするシーン。これが単なる脅しではなく本気だから、恐ろしい。もっとも、結果は最悪で、夫をはね飛ばしたうえ、自分も電柱に激突して、夫婦共に重傷を負うことに。しかも、双方これで反省するのかと思ったら、今度は病室の中でつかみ合いの大ゲンカだ。
もう一人、トコトン男運の悪いなおこの友人ともちゃん(池脇千鶴)も登場する。たしかに、つき合う男、つき合う男がすべてダメ男なうえに、ギャンブル狂いの男ユウジ(山本浩司)には死なれてしまうともちゃんも気の毒だが、みっちゃんの場合は男に対する行動力が伴っているからすごい。男運のない女ばかりが登場する本作において、池脇千鶴の演技もなかなかのものだが、小池栄子の怪演は主役超え?
<ちょっとヒネりすぎ?>
去る4月11日に映画館で観た『半分の月がのぼる空』(09年)は難病モノ、純愛モノだったが、ちょっとしたヒネりが効いており、結構感動的だった。それに対して、「パーマネント野ばら」の店内で展開される、なおこの母親まさ子とおばさん3人組の何とも生々しい会話から始まる本作は、西原理恵子ワールドが描く女の生態を真正面から見せてくるから、意外に単純?なおこの離婚原因は映画の中では明らかにされないから、なおこがどれくらい不幸なのかはよくわからないが、なおこの友人であるみっちゃん、ともちゃんの不幸は真正面からドンと描かれる。したがって、言っちゃ悪いがその不幸のサマは笑いを誘い、割と面白い。しかし、出戻り娘なおこと田舎にある小さな美容院「パーマネント野ばら」に集う女たちの恋をめぐるさまざまな会話とそこで展開される恋模様(?)を描くだけでは、映画としてはイマイチ?
そう思いながらみていると、あったあった。本作にも、あるヒネりが・・・。西原理恵子の原作にもそんなあっと驚く「ヒネり」があるのかどうかは知らないが、吉田大八監督が本作に仕掛けたあるヒネりとは?『半分の月がのぼる空』の場合もそのヒネりには賛否両論あったはずだが、新聞批評などを読んでいると賛成の方が多い。しかし、本作について私が思うには、ちょっとヒネりすぎ?
2010(平成22)年4月15日記