パリより愛をこめて(フランス映画・2010年) |
<梅田ピカデリー>
2010年5月23日鑑賞
2010年5月25日記
『TAXi④』(07年)や『96時間』(08年)など、リュック・ベッソンとピエール・モレルのコンビ作の売りは、ド派手なカーチェイスとアクション。そこで、『フェイス/オフ』(97年)以降すっかりアクション俳優ぶりが板についたジョン・トラボルタをパリに招き、彼のためのアクション映画を完成!とは言っても、裏ストーリーは相棒の見習い捜査官と恋人との悲恋。「あっと驚く意外性」を軸に95分にまとめた構成力はさすがだが、あの名作『ロシアより愛をこめて』(63年)の完成度にはとても・・・。
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監督:ピエール・モレル
原案:リュック・ベッソン
チャーリー・ワックス(CIAの諜報部員)/ジョン・トラボルタ
ジェームズ・リース(駐仏アメリカ大使館員、CIA見習い捜査官)
/ジョナサン・リース・マイヤーズ
キャロリン(ジェームズの婚約者)/カシア・スムトゥニアク
ベニントン大使(ジェームズの上司)/リチャード・ダーデン
ニコル/アンバー・ローズ・レヴァ
2010年・フランス映画・95分
配給/ワーナー・ブラザース映画
<あまりにも完ペキすぎるのでは?>
『フェイス/オフ』(97年)以降すっかり貫祿のあるアクションスターのイメージが定着したジョン・トラボルタが、リュック・ベッソン原案、ピエール・モレル監督のコンビのフランス映画に主役として登場!
『パリより愛をこめて』とは、どこかで聞いたタイトルとそっくり。そう、『007』シリーズ5作目の『ロシアより愛をこめて』(63年)だ。これは、イギリスの諜報部員ジェームズ・ボンドの人間味がタップリと表現された、シリーズ最高傑作だった。ところが、本作においてアメリカからパリにやってきたジョン・トラボルタ演ずるCIAの諜報部員ワックスは、戦略戦術のたて方はもちろん、銃の腕前から格闘能力さらにコンピューター顔負けの計算能力(?)まで完ペキな、超凄腕。このようにあまりにも人間離れ、現実離れしているから彼は雲の上の人?もっとも、「俺だって並の人間だよ」というところを見せるため、仕事の合間にキッチリ売春婦とコトを致したり、車の中でラジオから流れてくる大好きな歌に一瞬興じたりしているが、私の目にはこれがかえってイヤ味に?さらに、すべて事件が解決した後は、相棒ジェームズ(ジョナサン・リース・マイヤーズ)の唯一最大の才能(?)であるチェスについても、「実は俺も超一流だよ」と主張してチャレンジする、というオマケまで。
ジェームズ・ボンドだって映画の中では敵側に捕まって危機に陥いるシーンが必ずあったし、かつての人気ドラマ『0011ナポレオン・ソロ』ではちょっと間抜けなスパイであるナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンが危機に陥るところが見モノだった。それに比べると、本作におけるワックスはあまりにも完ペキすぎるから、かえって面白くない。いくらジョン・トラボルタをフランスに主役として招いたとはいえ、こりゃ過剰サービスでは?
<一人三役はとてもムリ?>
本作のプロローグにジョン・トラボルタは一切登場しない。プロローグにおける主役は、ジョナサン・リース・マイヤーズ演ずる、パリのアメリカ大使館勤務のジェームズだ。アメリカ大使館に勤務しているのだからジェームズは多分アメリカ人だろうが、彼の持ち味はフランス語はもちろん中国語までペラペラという頭の良さ。ところが、リュック・ベッソンが原案を書いた本作では、ジェームズはCIAの見習い捜査官だという設定がミソ。
去る5月10日、ヤワラちゃんこと谷亮子が民主党小沢一郎幹事長と並んで、来る参議院選挙に立候補すると宣言したことには驚いたが、そもそもジェームズだって大使館勤務とCIAの諜報部員の両立が可能?日本的に考えれば大使館に勤務しているジェームズは、外交官試験に合格していることが大前提。しかし、それと自衛隊の諜報部門を兼ねるなんてことは不可能だ。谷亮子だって、「田村で金、谷でも金、ママでも金」それ自体がそもそも厚かましかったうえ、「参議院選挙でも金」なんてのはあまりにも国民をバカにした話。
本作のプロローグでは、ジェームズは美しい婚約者のキャロリン(カシア・スムトゥニアク)と結婚前にもかかわらず日ごとのセックスに励んでいるようだし、今日重大な任務に就くについてはキャロリンから指輪のプレゼントまで。大使館におけるベニントン大使(リチャード・ダーデン)の指示を受けた大切な仕事と愛する婚約者キャロリンとの幸せな結婚生活。本来それだけでも大変なはずだが、その上に彼はCIAの見習い捜査官から本格的な捜査官に出世するための重大な任務に就くらしい。そんな一人三役は、谷亮子と同じくちょっとムリでは?
<なるほど、こんな意外性が!>
リュック・ベッソンとピエール・モレルのコンビは『トランスポーター』(02年)、『アルティメット』(04年)、『ダニー・ザ・ドッグ』(05年)、『TAXi④』(07年)、『96時間』(08年)と続いているが、そのコンビによる本作の見どころは、いつものカーアクションとジョン・トラボルタを迎えての肉弾アクション。もちろんそれは観ていて楽しいが、それだけではTVドラマの延長だから、魅力的な映画とするにはそれ以上のあっと驚く何かが必要。
本作におけるそれは、ジェームズの婚約者であり、プロローグで少しだけ魅力的な肢体を魅せつけてくれるキャロリンの本性。戦後65年間も平和が続いたことによって平和ボケしてしまい、ノー天気症候群に陥っているニッポン人は、テロの恐怖と全く無縁。しかし、アメリカはもちろん、移民を次々と受け入れてきたヨーロッパでは、テロの恐怖は現実のものだ。本作のハイライトはパリで開催される国際サミットだが、各国首脳が参加するそんな檜舞台で自爆テロが実行されたらえらいこと。本作では、パリにやってきたCIAの凄腕諜報部員のワックスがジェームズとともに麻薬密売組織のアジトとなっている中華料理店に乗り込み、ド派手な銃撃戦をくり広げるが、国際的な自爆テロの危険性に比べれば、それは屁みたいなもの。ドラッグの密売で荒稼ぎしていたテロ組織の真の狙いとは?そして、それを阻止すべく任務に励むワックスとジェームズの行方は?さらに、そこに登場してくる、あっと驚く意外性とは?なるほど、本作はそれがポイント!
2010(平成22)年5月25日記