ダンシング・チャップリン(日本映画・2010年) |
<東宝試写室>
2011年2月28日鑑賞
2011年3月1日記
映画と歌舞伎の融合、映画とオペラの融合があるなら、映画とバレエの融合だって!周防監督のそんな発想が、フランスの巨匠振付師ローラン・プティが1991年に発表した『ダンシング・チャップリン』と見事に融合!劇団☆新感線の『ゲキ×シネ』シリーズはメチャ面白いが、こちらはメチャ美しい。チャップリン映画の名シーンの数々を息を飲みながら満喫し、その感動をじっくりと味わいたい。
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監督・構成・エグゼクティブプロデューサー:周防正行
振付:ローラン・プティ
音楽:チャールズ・チャップリン、フィオレンツォ・カルピ、J.S.バッハ、周防義和
ルイジ・ボニーノ(バレエダンサー)
草刈民代(バレリーナ)
ユージーン・チャップリン(チャーリー・チャップリンの四男)
ローラン・プティ
2010年・日本映画・131分
配給/アルタミラピクチャーズ、東京テアトル
<映画とバレエが融合!>
近時、劇団☆新感線の『ゲキ×シネ』シリーズが大ヒット!さらに映画と歌舞伎が融合したシネマ歌舞伎や映画とオペラが融合したシネマ・オペラなど、映画と他の周辺芸術との融合も近時盛ん。本作もそんな状況下での新たな試みだ。バレリーナ草刈民代の夫として15年間一緒に生活してきた周防正行監督が、愛妻・草刈民代を最大活用して、映画とバレエの融合にチャレンジ。そのネタは、私は全然知らなかったが、フランスの巨匠振付師ローラン・プティがチャップリンを題材として1991年に発表し大成功を収めた『ダンシング・チャップリン』!これはチャップリン映画特有のユーモアと哀しみ、温かさ、そしてプティの斬新な振付けが堪能できるもので、彼がフランスのバレリーナ、ルイジ・ボニーノのために作り上げたもの。しかしルイジは09年の本作撮影時既に還暦を迎えていたから、肉体的に限界を迎えつつあった。そこで彼が元気なうちにその偉大なバレエをフィルムに収めておきたい。周防監督のそんな思いから、映画とバレエの融合という本作の発想が生まれたわけだ。
<チャップリン映画あれこれ>
チャップリン映画はよく特集されていたから私は若い頃にかなりの本数を観ているし、年末年始のテレビでもよく特集されていたから同じ作品を何度も観ている。そもそも「無声映画」を知らない私は、はじめて『黄金狂時代』(25年)、『街の灯』(31年)、『モダン・タイムス』(36年)などを観た時、逆に新鮮味を感じるとともにそのアピール力に驚いたものだ。時代がトーキーに変わってもサイレント映画にこだわり続けていたチャップリンが、はじめて作ったオールトーキー映画が『チャップリンの独裁者』(40年)。
ユダヤ人の床屋と独裁者ヒンケルを演じ分けたのが見事なら、人類愛を訴えたラスト6分の演説は圧巻!「このシーン」は、機械文明を痛烈に皮肉った『モダン・タイムス』の「あのシーン」とともに永久に脳裏に刻まれている。他方、その美しい音楽が耳に焼きついているのが『ライムライト』(52年)。私は今でもその美しいメロディを口ずさむことができるし、あのもの悲しいストーリーを思い浮かべると思わず涙が・・・?もっとも、野外で踊るダイナミックな「二人の警官」や「警官たち」は私が全く知らなかったもの。さあ、あなたの脳裏に刻まれている名シーンは、本作でどんなバレエに?
<第1幕は映画的には異例だが・・・>
本作の「第1幕アプローチ」は第2幕で13演目で構成される「ダンシング・チャップリン」の誕生風景をドキュメント風に編集したもの。これは映画的には異例だが、そこでの周防監督とローラン・プティとのディスカッションが面白いのでそれに注目!また「ダンシング・チャップリン」を7年間で154回も演じたという、老ダンサー(?)ルイジと本作のバレエが「最後のご奉公」と張り切って踊っている草刈民代との練習風景も興味深い。なるほど、映画って、ここまでの表現を!
<息を飲む美しさに感動!>
映画は企画のユニークさ、映像の美しさ、女優の美しさその他さまざまな楽しみ方があるが、私は映画の楽しみ方の本質はストーリーを楽しむことにあると思っている。しかし、音楽やバレエは?そこにはもちろんテーマがあり、ストーリーがあるわけだが、音楽の場合はやはり心地よいメロディが大切。また、バレエの場合はやはり美しさが大切。
本作の第2幕13の演目に登場するバレエは、チャップリン映画の好きな人にはなじみのものばかり。なるほど、あんなテーマあんなシーンがバレエとして表現されると、これほど美しいものになるのかと感動することまちがいなし。したがって、この手の映画については私の評論は全く無意味だろう。あなた自身の目でその美しさを確認し、その感動をじっくり味わってもらいたいものだ。
2011(平成23)年3月1日記