クロエ(カナダ、フランス、アメリカ合作映画・2009年) |
<GAGA試写室>
2011年4月18日鑑賞
2011年4月19日記
クロエとは、若く美しい娼婦の名。夫の浮気疑惑に悩む妻は、いったい何をそんな女に依頼?情報操作は世の中に多いが、クロエのそれはかなり悪質だ。やはり何事も信頼できるプロに頼まなくっちゃ。後半のサスペンスは『氷の微笑』(92年)バリだが、この結末にはいささか不満が・・・。
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監督:アトム・エゴヤン
キャサリン・スチュアート/ジュリアン・ムーア
クロエ/アマンダ・セイフライド
デビッド・スチュアート(キャサリンの夫)/リーアム・ニーソン
マイケル・スチュアート(キャサリンの息子)/マックス・シエリオット
2009年・カナダ、フランス、アメリカ合作映画・96分
配給/ブロードメディア・スタジオ
<あの美女が魔性の女に変身!>
『マンマ・ミーア!』(08年)(『シネマルーム21』361頁参照)や『ジュリエットからの手紙』(10年)で見た、若く健康的かつ清楚な女優アマンダ・セイフライドが、『氷の微笑』(92年)のシャロン・ストーンのような美しくも危険な魔性の女クロエに変身!
大学教授デビッド・スチュアート(リーアム・ニーソン)の妻キャサリン・スチュアート(ジュリアン・ムーア)がクロエに依頼したのは、夫を誘惑しそれに対して夫がどんな態度をとるかを報告してもらうこと。自分のクリニックを開き産婦人科医としての成功を収め、かつ郊外の大邸宅で音楽大学の卒業を間近に控えた一人息子マイケル・スチュアート(マックス・シエリオット)や夫と共に幸せに暮らしていたはずのキャサリンが、なぜそんな依頼を?それは、ある日デビッドの携帯に届いたメールを偶然見てしまったため。そこには、「ゆうべはありがとう。ミランダより」と書かれ、若い教え子のミランダとデビッドがツーショットで写った画像が添付されていたから夫の浮気は明らか?
<精神状態は次第に極限に・・・>
クロエの最初の報告は可もなく不可もない常識的なもの。しかし2回目、3回目の報告となると次第に生々しく・・・。キャサリンは産婦人科医として十分な成功を収めていたが、いつの頃からか夫との夜の生活はなし。また一人息子のマイケルも今や母親の世話をうっとうしいと思う年頃になっていた。したがって彼女を自分の部屋に泊めたことが母親にバレると、母と息子の関係はさらに険悪に。
こんな風に精神的に極限状態に追い込まれていくキャサリンを、ジュリアン・ムーアが熱演!男の私にはそこまで最悪の状態に陥ったキャサリンがなぜクロエと女同士の性愛を交わすまでに至るのかが十分理解できないが、ここまで女同士の性愛が頂点に達すればそれは最善?それとも最悪?
<なるほど、こんな情報操作も>
男でも女でも一定の情報操作をするのは当然。しかし、それがインチキであれば、ある時、ひょんなきっかけでバレる可能性があるのも当然。そんな理屈どおりに、本作にみるクロエの行動と報告のインチキさは、ある日ある席で明白に!これによってキャサリンはデビッドに対するこの上ない信頼を取り戻すとともに、クロエとは金輪際縁を切らなければヤバイ、そういう心境に至ったのだが、さてクロエの方は?
本作は実によくできた脚本だが、キャサリンから奇妙な「依頼」を受けたクロエの心理の描き方がイマイチわかりにくいところが私には不満。『氷の微笑』ではシャロン・ストーン扮する美人小説家がマイケル・ダグラス扮する刑事に対して執拗なストーカー攻勢を仕掛けたが、さてクロエは?
<女ストーカーの恐さとは?>
本作の主人公はあくまでキャサリン。夫の浮気疑惑に悩んでケッタイな行動をとった挙句クロエによって振り回されていくキャサリンの心理の動きがイキイキと描かれていく。それが大きく転換するのは、クロエの言葉がすべて嘘だったことが判明する映画後半からだ。クロエからの報告がすべて嘘だったとわかった時、キャサリンは「そんなバカな!」と思ったはずだが、他方それ以上に、「ああこれでよかった!」「何て自分は幸せなんだ!」と思ったはず。だって、こんな事件の勃発とこんな奇妙な展開によって何年(何十年?)かぶりにキャサリンとデビッドの夫婦関係の信頼が高まったのだから。
他方、自分の嘘がバレてしまったことによって自分の存在位置を失ったクロエは、キャサリンとデビッドの息子マイケルに対して『氷の微笑』のシャロン・ストーンばりの(?)新たな誘惑の手を・・・。若くて性欲のかたまりのようなマイケルを落とすのは簡単。クロエの思惑どおりコトは進んだが、そんな事態をしっかり自分の目で確認したキャサリンの行動は?
<この結末にはいささか不満が・・・>
やはり『マンマ・ミーア!』や『ジュリエットからの手紙』のアマンダ・セイフライド扮するクロエは甘い。本作のラストをみるとそう思わざるをえない。映画冒頭は、デビッドの誕生日を祝うべく自宅に多くの友人を集めたホームパーティーのシークエンス。ところが、デビッドが浮気のため(?)このパーティーの席に登場しなかったことから本作のストーリーが展開していくわけだが、本作ラストもこの自宅でのパーティー。それは、あの日「あんな大事件」が発生したにもかかわらず、マイケルの大学卒業を祝うものだ。
ところで、あの日の「あの事件」は、警察の捜査の結果いかに処理され、いかなる結末を迎えたの?夫の浮気をきっかけにした本作におけるキャサリンとクロエの女同士のさまざまな確執は面白いテーマだが、弁護士の私には本作の結末にはいささか不満がある。こんなハッピーエンドにしない脚本のつくり方が、いろいろとあったのでは・・・?
2011(平成23)年4月19日記