猿の惑星 創世記(ジェネシス)(アメリカ映画・2011年) |
<角川映画試写室>
2011年9月7日鑑賞
2011年9月8日記
『猿の惑星』シリーズは大阪万博景気で湧く日本を席巻したが、それから40年後の今、そりゃありえねー想定?それとも・・・?チンパンジーが人間並みの知能を持てば、ケータイをもったサルが繁殖している日本を支配することなど簡単?他方、アメリカのTVドラマ『スパルタカス』が現在ヒット中だが、チンパンジー版そして現代版『スパルタカス』の反乱とは?第2作への期待を含め、ハラハラドキドキのよくできたストーリーとダイナミズムを堪能しよう。
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監督:ルパート・ワイアット
ウィル・ロッドマン(神経科学者)/ジェームズ・フランコ
キャロライン(獣医、ウィルの恋人)/フリーダ・ピント
チャールズ・ロッドマン(ウィルの父親)/ジョン・リスゴー
ジョン・ランドン(霊長類保護施設の所長)/ブライアン・コックス
ドッジ(チンパンジーの看守)/トム・フェルトン
シーザー(知能の高いチンパンジー)/アンディ・サーキス
2011年・アメリカ映画・106分
配給/20世紀フォックス映画
<あの「名作」が再び!>
『猿の惑星』が1968年に発表された時は世界中が大騒ぎし、1973年の『最後の猿の惑星』まで全5作のシリーズが続く中、遂に人間と地球は、完全に猿によって支配されることに・・・。1960年代後半、アメリカは「ベトナム戦争反対」に揺れ、日本は「70年安保」に向けた学生運動が盛り上がったが、今から考えれば、「大阪万博」が開催された1970年は戦後の日本が最も平和で最も豊かだった時代。そんな時代だったからこそ、逆に人間や地球が猿に支配されるという自虐的発想を楽しむことができた(?)が、それから約40年後の今、台風・津波・原発という未曽有の被害を受け、「ケータイを持ったサル」がうじゃうじゃ繁栄している状況を見ると、あの時の『猿の惑星』の物語はあながち絵空事とは思えない。
本作は『猿の惑星 創世記』と題されているように、人間の知能いや人間以上の知能をもったサル(正確にはチンパンジー)が、なぜこの世に生まれてきたのかを解きあかすものだが、アルツハイマーの薬やクローン人間の薬の開発が現実のものになりつつある今、新薬の投入によって本作冒頭に見るような人間並みの知能をもったチンパンジーを誕生させてホントにいいの?本作の主人公は製薬会社につとめる神経科学者のウィル・ロッドマン(ジェームズ・フランコ)だが、本作を第1作目としてこれからシリーズとして続くこと確実な(?)ニューバージョンの『猿の惑星』シリーズの真の主人公になるのは、そのサルから生まれ、ウィルがシーザー(アンディ・サーキス)と名づけた1匹のかわいいチンパンジー。さあ、生まれたばかりのシーザーの運命やいかに?
<チンパンジーの寿命は?思春期は?親離れは?>
本作前半にみる、3歳になったシーザーとウィル、ウィルによる人体実験的な新薬注入によってアルツハイマー病から劇的に回復したウィルの父親チャールズ・ロッドマン(ジョン・リスゴー)との交流はほほえましい。さらに、シーザーがちょっとしたケガをしたことで連れていかれた病院でウィルが美人獣医のキャロライン(フリーダ・ピント)と知り合い、恋人同士になるのだから、本作前半のストーリーは順風満帆。しかし、それからさらに5年が経つと・・・?
ところで、チンパンジーの寿命は?思春期は?そして親離れは?それを調べてみると、チンパンジーの寿命は40~50年らしい。すると、8歳頃はちょうど思春期?人間は思春期ともなれば誰だって、俺が生きていることの意味は?人生は?などいろいろ難しいことを考え始めるが、知能の高いチンパンジーのシーザーもそれは同じ。したがって、せっかく回復したアルツハイマー病が再び悪化したチャールズが隣人とトラブル起こすのを見て、隣人に襲いかかったシーザーがその事件によって霊長類保護施設に入れられ、強制的に育ての親ウィルと離れ離れにさせられてしまうと・・・?
人間でもうまく親離れのできない奴がいるが、さて最悪の環境下におかれたシーザーの親離れは?
<人間とチンパンジーの共存は?>
チンパンジーだって、育ての父親ウィルやウィルの父親チャールズとの手話による「対話」ができれば、家族の一員として人間と共存していくことが可能。本作前半の展開をみていると、理想主義者(?)のウィルはそう考えているようだが、今やすっかりウィルの恋人になってしまったキャロラインの方はもう少し現実論者らしく、それに懐疑的。ウィル、チャールズ、キャロラインの3人がそれなりにすばらしい環境になっている屋内空間から、自然の森林の中へシーザーを連れて行き自由に行動させると、さすがにシーザーはうれしそう。しかし、こんな自由を認めていくとシーザーは少しずつ野生本能に目覚めていくのでは?
シーザーがちょっとしたケガをしたのは、たまたま家の外に出たシーザーが近所に住むパイロットの男性から攻撃されたため。つまり、ウィルの家の中では人間とチンパンジーの共存が可能でも、いったん外に出るとそれは到底ムリということだ。頭のいいウィルのことだから、そんなことはとっくにわかっているはずだが、ペット以上の本当の家族としてシーザーと接している現実が続くと、ウィルですらちょっと錯覚を?
<猿だって、スパルタカス並みの反乱が!>
先日旅行先でテレビのリモコンをいじっていると、突然登場したのがローマ帝国時代の剣闘士たちが戦う姿。これって、ひょっとしてカーク・ダグラスが主演した1960年の名作『スパルタカス』のテレビ版?そう思ってネットを調べると、アメリカで2010年1月から放送されたテレビドラマ『スパルカス』がものすごい人気となったため、日本でも2010年7月にスターチャンネルで独占放送され、2011年1月21日からはその前篇にあたるミニシリーズが放送されているらしい。私が1960年の映画を映画館で見たのは中学生の時だが、ローマの大軍団との戦いに敗れたスパルタカス率いる奴隷反乱軍に対して、「スパルタカスを差し出せば他の奴隷の命は助ける」と言われたのに対して、奴隷たちが「I am Spartacus」と叫びながら次々と立ち上がった姿は印象的で、今でもハッキリと覚えている。
スパルタカスはもともと優秀な剣闘士だったが、彼が反乱軍を組織してその優秀なリーダーになれたのはなぜ?それがあの映画の1つのテーマだったが、本作後半にスパルタカスの反乱を彷彿させるすばらしいリーダーシップをシーザーが発揮したのは、まちがいなくシーザーが人間並みの知能をもっていたからだ。もっとも、いくら多数のチンパンジーを反乱軍として組織しても「チンパンジーはしょせんチンパンジー」だから、人間とまともに戦うことはできないはず。しかし、チンパンジーの実験や父親への投与でウィルが開発したアルツハイマーの新薬をシーザーが大量に入手し、これをチンパンジーたちに投与したら・・・。霊長類保護施設の運動場ではチンパンジーたちがバラバラに動いていたが、今そこで働くドッジ(トム・フェルトン)が見たのは、シーザーの訓辞(?)を整列して聴いているチンパンジーたちの姿。こりゃ一体ナニ?さらに驚くべきことに、そこでシーザーが発した言葉とは?さあ、本作後半は現代版の、またチンパンジー版の「スパルタカスの反乱」をタップリと楽しもう。
<2作目への期待は?>
『ロード・オブ・ザ・リング』は全3作でシリーズを終了したが、その第1作では明らかに2作目以降もシリーズが続くことを「あるシーン」で予告していた。しかして、本作もそれは同じ。びっくりするほどアルツハイマー症に効くというウィルが開発した新薬は、一度は失敗したものの現在のチンパンジーたちへの投与はすべて順調。しかし、ちょっとしたハプニングでその新薬を口から吸ったウィルの同僚の身体には、その後ある異変が・・・。こりゃヤバい。そんな彼がフラフラしながらある男とスレ違った際、口から吐き出して男のワイシャツにひっかけたのは誰の目にも明らかな血。もし、ウィルの同僚があの時何らかのウィルスに冒され、それが人間に感染するものだとしたら・・・。
スパルタカスの反乱(?)と同時並行的にそんなシーンがチラチラと不安を誘うかのように流されていたが、エンドロールが中断する中、今機長服姿で空港に入る途中彼が吐いた血を見ると・・・?彼が操縦する飛行機はニューヨーク行きらしいから、乗客も多いはず。そんな状況下で、もし機長のウィルスが乗客に感染したら・・・?また、そんなニューヨークに、ウィルの新薬によって人間並みの知能をもった大量のチンパンジーが現れたら・・・?第2作は、きっとそんなストーリー?ああ、早く観たいなあ第2作を・・・。
2011(平成23)年9月8日記