恋と愛の計り方(アメリカ、フランス合作映画・2010年) |
<角川映画試写室>
2012年3月26日鑑賞
2012年3月27日記
結婚3年目を迎えたおしゃれな若夫婦の前途は洋々。ところが、夫が親しげに話す美しい同僚を見て、妻には浮気疑惑が・・・。そりゃ濡れ衣だ!と言いつつ、夫の内心は・・・?他方、妻だって元カレが突然現れると喜色満面。勝負下着に着替えてのお出かけは一体ナニ?現在「恋と愛の計り方」に悩んでいる若者には格好の教材だが、弁護士生活37年を迎えた私には「人間の本性はこんなもんじゃないよ」との思いも。その意味では、ジョディ・フォスターとケイト・ウィンスレットらが熱演をみせた『おとなのけんか』(11年)の方が、断然面白い・・・?
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監督・脚本:マッシー・タジェディン
ジョアンナ(ファッション誌のライター)/キーラ・ナイトレイ
マイケル(ジョアンナの夫)/サム・ワーシントン
アレックス(ジョアンナの元カレ)/ギョーム・カネ
ローラ(マイケルの同僚の女性)/エヴァ・メンデス
アンディ/ダニエル・エリック・ゴールド
スチュアート/スコット・アドシット
トゥルーマン/グリフィン・ダン
サンドラ/ステファニー・ロマノフ
ニール/アンソン・マウント
2010年・アメリカ、フランス合作映画・92分
配給/アルシネテラン
<この「疑惑」がストーリーの出発点に!>
ニューヨークのマンションに住むマイケル(サム・ワーシントン)とジョアンナ(キーラ・ナイトレイ)の2人は結婚3年目。マイケルは建築関係で、ジョアンナはファッション誌のライターとして充実した仕事に恵まれ、夫婦仲も順調。そりゃ結構なことだ。ところが、ある日、2人そろって出かけたパーティーの席でジョアンナが見たのは、マイケルが親しげに話している同僚の女性ローラ(エヴァ・メンデス)。女の勘では、こりゃ怪しいとすぐにわかるらしい。したがって、帰宅したその晩、ジョアンナはマイケルに対してチクリチクリと・・・。それに対して、何ら身に覚えのないマイケルは「何を勘ぐっているんだ!」と一蹴していたが、つい本音をポロリともらしてしまうと・・・。
その日、1人ソファで眠ることになったジョアンナだが、夜中に起き出してきたマイケルが優しく夜食をつくってやる中、2人はやっと仲直り。一見そう思えたが・・・。
<男の目にはジョアンナの方が・・・>
翌日、ローラらと共にLAへの出張に旅立つマイケルの着替えの中に、ちょっとした仲直りの手紙を書いたらしいジョアンナの心遣いには少し感心。ところが、パリにいるはずのかつての恋人アレックス(ギョーム・カネ)が偶然(?)目の前に現れるとたちまちジョアンナは喜色満面になったから、こりゃどっちもどっち?さらに、アレックスの仕事が終わった後のデートの約束ができると、それに向けてのジョアンナの化粧ぶりや勝負下着の着用ぶりに注目!これを見ると、男の目には明らかにジョアンナの方がヤバイのでは・・・。
かつて別れたり、くっついたりした男と女は今でも心が通じ合っているから、いつ偶然出会ってもすぐにときめきがスタートできるもの。ましてや、今回アレックスがニューヨークにやってきたのは、仕事半分(1割?)、ジョアンナとの「あわよくば・・・」の期待半分(9割?)のはずだから、酒が入り、気のおけない友人が入り、事態がドンドン進展していくと・・・。
<マイケルの真面目さ(優柔不断さ)にイライラ・・・>
ローラを演じるエヴァ・メンデスは『レジェンド・オブ・メキシコ』(03年)(『シネマルーム6』219頁参照)で印象的な演技をみせた色っぽい女優だから、LAでの商談を早めに切り上げて同じホテルのバーで飲んだりしていれば、何となく変な雰囲気になることくらいマイケルだってわかっていたはず。さらに、ローラの提案によって、夜中に2人でホテルのプールに行き、下着姿になって水の中に入って語り合うという状況になれば、ヤバイことはミエミエだ。
1978年にイランのテヘランで生まれたイラン系アメリカ人の女性脚本家であるマッシー・タジェディンが監督した本作は、ニューヨークにおけるジョアンナとアレックス、LAにおけるマイケルとローラの様子を「二元中継」しながら、いつ「最後の一線」を越えるのかに期待を持たせ続けるが、さてその展開は?マイケルを誘惑していること明らかなローラの言動に対して、何やかやと言い訳を考えながらかつ、予防線を張りながら、しかもなお自分の言動から状況を突破する行動をしないマイケルに、私は少しイライラ。
<弁護士を37年もやっていると・・・>
本作品の原題は『LAST NIGHT』だが、私にはなぜ「ラスト」がつくのか不明。これに対して、邦題の『恋と愛の測り方』は本作のテーマを言い得て妙だ。この一夜における2組の男女の絡み合いの結果、マイケルとジョアンナの夫婦関係にどのような変化が生まれるの?
ジョアンナとアレックスとの一夜の過ごし方はかなりイレギュラーだったが、どうせ今日はマイケルは帰って来ないからひと安心だったはず。ところが、そんなジョアンナの前にLAでの出張を1日で切り上げたマイケルが、早朝の飛行機で帰ってきたから大変。マイケルもジョアンナの雰囲気がどことなくおかしいことにすぐ感づいたはずだ。
今年3月で弁護士生活37年となった私の目には、今後この夫婦の亀裂の広がりが予想できるが、マッシー・タジェディン監督はここに至る2組の男女の会話からまさに「恋と愛の測り方」のバリエーションを見せつけてくれる。したがって、現在彼や彼女との「恋と愛の測り方」に悩んでいる男女にとって本作は格好の教材になるかもしれない。しかし、ベテラン弁護士の私の目には、この4人の行動や会話はあまりにキレイゴトにすぎるのではと思わざるをえない。ホントの人間を描けばジョディ・フォスターとケイト・ウィンスレットらが熱演をみせた『おとなのけんか』(11年)のように、もっとえぐい部分が次々と出てくるはずだ。そんな不満があったため、本作の私の採点は星3つ。
2012(平成24)年3月27日記