KOTOKO(日本映画・2011年) |
<シネ・リーブル梅田>
2012年4月9日鑑賞
2012年4月11日記
塚本ワールドは特異(?)だから、その好き嫌いは意外にハッキリと・・・。しかして、沖縄出身の歌手Coccoを主役に迎え、壊れていく母性とその再生を描いた本作は?Coccoの歌はすばらしくその熱演も見モノだが、共演者塚本晋也の演技は?また、色彩の美しさは抜群だが、Cocco演ずる琴子の頭の中はこの色彩とは裏腹にあまりにも難解!しかして、ベネチアでの「オリゾンティ」部門の最高賞「グランプリ」等にもかかわらず、私には本作はイマイチ・・・。
本文はネタバレを含みます!!
それでも読む方は下の「More」をクリック!!
↓↓↓
ここからはネタバレを含みます!!
読まれる方はご注意ください!!
↓↓↓
監督・脚本・製作・企画・撮影・編集:塚本晋也
企画・原案・美術・音楽:Cocco
琴子/Cocco
田中(小説家)/塚本晋也
2011年・日本映画・91分
配給/マコトヤ
<塚本晋也作品アレコレ>
塚本ワールドは特異(?)だから、塚本晋也監督作品の鑑賞方法(読み解き方?)は難しい。また、好き嫌いも分かれるはず。私は、主演の黒沢あすかがすばらしく画面がキレイだった『六月の蛇 ASNAKE OF JUNE』(02年)(『シネマルーム3』359頁参照)は超お気に入りで星5つだし、『鉄男 THE BULLET MAN』(09年)(『シネマルーム25』179頁参照)も非常に興味深く星5つをつけた。
他方、『悪夢探偵』(06年)(『シネマルーム13』392頁参照)も『悪夢探偵2』(08年)もその夢の中の世界に全然入っていけなかったからノーサンキューで、星3つと2つ。しかして、沖縄出身の歌手Coccoを主役に迎え、塚本晋也監督自らも俳優として出演した本作の読み解き方は?
<このテーマは難解>
Cocco演ずる、幼い息子大二郎の母親琴子は世界が2つに見えるらしい。映画冒頭、そのことによってパニック状態に陥る琴子の姿と、大二郎を守るため孤独の中で必死に生きていこうとする琴子の姿が描かれる。そんな日々の格闘の中「今、この子を抱いている手を離してしまったら?」という脅迫観念が琴子を追いつめた挙げ句、幼児虐待を疑われ、大二郎は沖縄にいる琴子の姉のもとに預けられることに。映画初出演のCoccoがそんな異常な世界の中で格闘する琴子を、塚本演出の下で熱演するが、どうもこの「母性」とやらは私にはわかりにくい。
また映画中盤、琴子に(琴子の歌声に?)惚れた人気作家・田中(塚本晋也)がストーカーのように琴子に迫っていくシーンが描かれるが、この奇妙な男と女の関係も私にはわかりにくい。既に精神に異常を来たしている(?)琴子から暴力を受け、傷だらけ血まみれになりながら結婚指輪を差し出す田中は少しヘン?また、人気作家の仕事を放棄して「あなたを好きで居続けることが仕事だったらいいのにな」とアピールする田中も少しヘン?
<3つの賞はピッタリだが・・・>
本作は2011年9月、第68回ベネチア国際映画祭で、斬新さと先鋭性のある作品が集めて競われる「オリゾンティ」部門において、日本映画としては初となる最高賞「グランプリ」を獲得!同時にイタリア、57の映画WEBサイトの評論家がNo.1を選ぶ「シルバーマウス大賞」をW受賞!さらに、11月にエストニアで開催された第15回タリン・ブラックナイト映画祭では、既存の枠に収まらない本作に対し、急遽、「最高映画表現者賞」が創設され、Coccoと塚本に対し贈られた。それを受けて(?)、当初のチラシの他関係者の声を掲載したチラシが追加されたが、当然その中は絶賛また絶賛!
上記3つの賞のキーワードは、「斬新さ」「先鋭性」「既存の枠に収まらない」だからたしかに本作にピッタリだが、好き嫌いは別で、人それぞれ。Coccoが血まみれになった田中の前で歌うシーンやラストにみる精神病院の前で雨に打たれながら踊り歌うCoccoの姿には感動するし、美しい色彩感覚は相変わらず塚本ワールドの神髄だが、いかんせん私には本作のテーマそのものの理解がなかなか・・・。また、絶叫を伴ったCoccoの熱演には敬服だが、学芸会の延長のような塚本監督の演技はいかがなもの・・・。
2012(平成24)年4月11日記