メゾン ある娼館の記憶(フランス映画・2011年) |
<テアトル梅田>
2012年6月6日鑑賞
2012年6月9日記
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監督・脚本・製作:ベルトラン・ボネロ
マリー・フランス(高級娼館「アポロニド」の家主)/ノエミ・ルボフスキー
マドレーヌ(娼館一の美人)/アリス・バルノル
クロチルド/セリーヌ・サレット
レア/アデル・エネル
ジュリー/ジャスミン・トリンカ
ポーリーン(16歳の新人)/イリアナ・ザベット
2011年・フランス映画・125分
配給/アット エンタテインメント
◆ 本作は、2011年度第84回アカデミー賞を席巻したフランス映画『アーティスト』(11年)(『シネマルーム28』10頁参照)と並んで、フランス映画の賞争いで注目された作品とのこと。そんな本作が「未体験ゾーンの映画たち」の一作として、テアトル梅田で上映。タイトルからしても妖しげだが、フランスでは本作に出演した3人が新人女優賞を同時に受賞したというから、こりゃ必見!そう思って観に行ったが・・・。
◆ 舞台は19世紀末から20世紀にかけて、フランスのパリに存在した高級娼館「アポロニド」。その経営者がマリー・フランス(ノエミ・ノボフスキー)だが、本作をしばらく観ていると「アポロニド」のシステムがよくわかる。日本ではもちろん世界中どこでも売春は法的には禁止されているが、その実どこにでも裏道がある。現代の高級娼館といえばバブル時代に栄華を誇っていた高級トルコだが、まずはそれと対比する形であの時代のパリの高級娼館のシステムに注目!
◆ 当初の物語は、娼館一の美人というマドレーヌ(アリス・バルノル)を中心に展開する。常連客が突如変態男に変身したことによって、彼女の口が切り裂かれるシーンにビックリ!こりゃ一体ナニ?次に、田舎からわざわざ「アポロニド」への就職(?)を希望してきたのがポーリーン(イリアナ・ザベット)。貧しい農村の娘が身売りされて娼婦になる話はよく聞くが、ポーリーンは一体ナニを考えているの?またジュリー(ジャスミン・トリンカ)はなじみ客がいつか自分を娼館から連れ出してくれると信じているが、それっていつのこと?さらに12年間もここで働いているベテランがレア(アデル・エネル)だが、娼館では「ベテラン」は何の価値もないのでは?
当時の娼婦たちの服装(とくに下着)の華やかさや、さすが高級娼館と思わせるだけのサービスや衛生管理(?)には感心するが、やっぱり所詮売春宿。梅毒にかかって死んでいく娼婦の姿を見ると、そんな思いをつくづくと・・・。
◆ 1960年代後半の日活ロマンポルノでは、ありとあらゆるセックスシーンがスクリーン上で展開された(?)が、さて本作に見るそれは?娼婦たちが客のニーズに応えるべく、あらゆる努力をしていることはわかるが、ロマンポルノのセックスシーンに肥えた私の目(?)には本作に見るセックスシーンはすべてイマイチ?ちなみに、この時代のパリには日本的な「芸者」が好きな客もいることがわかったから、おかしなものだ。
◆ 映画後半も、変態客から口を切り裂かれたことによって「笑う女」になってしまったマドレーヌの物語が大きなウエイトを持って展開される。しかし、「身体の中に入った精液が身体中をめぐり、涙となって目から出てきて、赤い唇に落ちてくる」と語られるセリフは何となく不気味。また、わざわざ「笑う女」を買おうという客が登場してくると、次第に倒錯的な世界に入っていくから、それも不気味。
しかして、ラスト近くなって上記のセリフが現実になる姿をスクリーン上で見せつけられると、何事にもタンパクな私は(?)思わずゾー。高級娼館の極上の官能美を堪能しようと思って来たのに、こりゃ一体ナニ・・・?
◆ ラスト近くになって「アポロニド」の経営問題がクローズアップされるのは家賃値上げ+立退き問題が発生するためだが、マリー・フランスはその経営状態を観客に明示しないからホントに採算がとれているのかどうかはわからない。しかし、映画ラストには高級娼館が廃止された後のおなじみの風景(?)が登場するから、それに注目!やはり、売春は最古にして最新、永遠に続く商売なんだと実感!
2012(平成24)年6月9日記