ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝(龍門飛甲)(中国映画・2011年) |
<TOHOシネマズ梅田>
2013年1月12日鑑賞
2013年1月17日記
徐克(ツイ・ハーク)監督が、武侠映画を中国初の3Dで!李連杰(ジェット・リー)演ずる孤高の義士は宮廷の権力をバックにした秘密警察、西廠の督主ユーといかなる死闘を?4人の美女に注目しつつ、権力と義、愛と欲が入り乱れる、「これぞ武侠!これぞワイヤーアクション!」の展開をタップリと堪能したい。しかして、彼らが集ったのは龍門の財宝都市だが、そこを60年に一度の砂嵐が襲う中、最後の勝者は?
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監督・脚本・製作:徐克(ツイ・ハーク)
趙懐安(ジャオ・ホワイアン)(孤高の義士)/李連杰(ジェット・リー)
凌雁秋(リン・イエンチウ)(女侠客)/周迅(ジョウ・シュン)
雨化田(ユー・ホアティエン)(西廠の督主、宦官)/陳坤(チェン・クン)
風裡刀(フォン)(情報屋)/陳坤(チェン・クン)
顧少棠(グー・シャオタン)(盗賊の首領、女侠客)/李宇春(リー・ユーチュン)
常小文(チャン・シャオウェン)(韃靼人の王女)/桂綸鎂(グイ・ルンメイ)
素慧容(スー・フイロン)(皇帝の子を身ごもった官女)/范曉萱(メイヴィス・ファン)
ワン・ユーロウ(東廠の督主)/劉家輝(リュー・チャーフィー)
2011年・中国映画・121分
配給/ショウゲート
<武侠映画がはじめて3Dに!>
私は中国の武侠映画が大好き。しかし、ワイヤーアクションを多用したつくりもののアクションはあまり好きではないから、『HERO(英雄)』(02年)(『シネマルーム5』134頁参照)や『LOVERS』(04年)(『シネマルーム5』353頁参照)より『SEVEN SWORDS セブンソード(七剣)』(05年)(『シネマルーム17』114頁参照)の方が好きだ。
しかし、本作を監督、脚本、製作したのは『ワンス・アポン・ア・タイム』シリーズで有名な「香港のスピルバーグ」こと徐克(ツイ・ハーク)だし、主演したのも同シリーズで主演した李連杰(ジェット・リー)。その2人が本格的「武侠映画」で14年ぶりにコンビを組んだうえ、本作は武侠映画初の3D作品だ。さらに、本作の原題『龍門飛甲』だけではわからなくても、『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』という邦題を見れば、本作がワイヤーアクションを駆使したド派手なアクション映画であることは明らかだ。
時代は明の時代。明の時代には東廠、西廠という2つの秘密警察(スパイ組織)があったそうだ。そして、本作は冒頭東廠の督主ワン(劉家輝/リュー・チャーフィー)の前に登場した孤高の義士・趙懐安(ジャオ・ホワイアン)(李連杰/ジェット・リー)が数人の仲間と共にワンをやっつける痛快でド派手なアクションからスタートする。意外に東廠のトップも大したことなし。そう思っていると、次に西廠のトップとして登場してきたのは、『画皮 あやかしの恋』(08年)、『画皮2』(12年)、『さらば復讐の狼たちよ(譲子弾飛/LET THE BULLETS FRY)』(10年)(『シネマルーム29』152頁参照)等で人気急上昇の若手イケメン俳優・陳坤(チェン・クン)扮する雨化田(ユー・ホアティエン)で、こちらは強そうだ。
最後には、きっとジャオとユーの対決になるはず。容易にそんな予測はつくが、武侠映画では細かいストーリーはどうでもいい・・・?とにかく、登場人物の突出したキャラとド派手なアクションを心ゆくまで楽しまなくちゃ。
<まずは周迅に注目!>
多くの日本人は知らないだろうが、「エクスカリバーの剣」というテーマをパクった(?)映画『花都大戦 ツインズ・エフェクトⅡ』(04年)は楽しさいっぱいのアクション歴史絵巻だった。そのうえ、同作にはブルー役とスプリング役を演ずる「TWINS」のアイドル美女2人の他、女人帝国の女帝役を演ずる瞿穎(チュー・イン)やブルーのライバルとなるレッド役を演ずる范冰冰(ファン・ビンビン)という美女が登場していたから、楽しさ倍増だった(『シネマルーム17』108頁参照)(なお、同書の見出しにおいて「『TWINS』のアイドル美女2人が扮するブルーとフラワー」と表記していたが、「ブルーとスプリング」の誤りなので、ここで訂正しておく。)。
しかして、本作にも『ふたりの人魚』(00年)(『シネマルーム5』253頁参照)、『ハリウッド★ホンコン』(01年)(『シネマルーム5』286頁参照)、『小さな中国のお針子』(02年)(『シネマルーム5』294頁参照)、『ウィンターソング』(05年)(『シネマルーム17』469頁参照)、『女帝 エンペラー』(06年)(『シネマルーム17』298頁参照)、『画皮 あやかしの恋』、『孔子の教え』(09年)(『シネマルーム27』99頁参照)等々に出演し、今なお「中国四大女優」の一人として大きな存在感を示している周迅(ジョウ・シュン)が、ジャオを慕う女侠客・凌雁秋(リン・イエンチウ)役で登場するから、まずはこの美女とそのアクションに注目!
<その他、3人の美人女優に注目!>
本作は皇帝の子を身ごもった官女の一人である素慧容(スー・フイロン)(范曉萱/メイヴィス・ファン)が、嫉妬深い貴妃に殺されるのを恐れて密かに逃亡したため、貴妃が西廠に命じてこれを追跡するというストーリーからスタートする。そして、クライマックスでは辺境の砂漠にぽつんと立つ龍門に「関係者全員」が辿り着き、60年に一度の砂嵐によって300年前に砂漠の下に沈んだ財宝都市に眠る財宝をめぐって血生臭い死闘が展開されることになる。この官女スーを演ずるメイヴィス・ファンは皇帝が寵愛するだけあって、台湾生まれのポップアイドルの美女だ。また、伝説の財宝を狙って情報屋の風裡刀(フォン)(陳坤/2役)と共に龍門にやってくる男装の女侠客で盗賊の首領・顧少棠(グー・シャオタン)(李宇春/リー・ユーチュン)も相当な美女。彼女は『孫文の義士団(十月圍城)』(09年)で映画デビューした中国を代表するポップシンガー(『シネマルーム26』143頁参照)だが、さてその太刀さばきは?
さらに特筆すべきは、青春映画『藍色夏恋』(02年)で主演デビューした台湾生まれの桂綸鎂(グイ・ルンメイ)が野性味溢れる韃靼人の王女・常小文(チャン・シャオウェン)役で登場していること。漢民族の「中華思想」からすれば韃靼人はレベルの低い異民族としての存在だが、異国の言葉を話すチャンに扮するこの美女は戦いにおいては円月剣に似たエキゾチックな武器を使って敵の首を切ると共に、フォンにひと目ぼれして急に抱きついたりするかなりエキセントリックな王女役に挑戦しているから、『藍色夏恋』でみせた清純な役割(『シネマルーム5』379頁参照)との落差に注目!本作は周迅の他、この3人の美人女優にも要注目!
<ややこしい人間関係の整理をしっかりと!>
妊娠中の官女スーを救ったリンが、辺境の砂漠にぽつんと建つ龍門の宿屋にたどりついたのはきっと偶然。それに対して、韃靼人の王女チャン率いる盗賊団が早くからこの宿屋に陣取っていたのは、秘宝を奪うチャンスを虎視眈々と狙っていたためだ。したがって、官女スーを追跡してきた西廠の先遣隊がこの龍門にやってきたのは、チャンたちにとっては想定外で迷惑極まりないものだった。他方、そこにやってきた凄腕の女盗賊グーと情報屋のフォンが盗賊団に合流したのは王女チャンにとって心強いうえ、なぜかチャンはグーの元恋人であるフォンにひと目ぼれしたから人の縁とはわからないものだ。
そんな中、西廠の先遣隊からも盗賊団からも素早く身を隠していたリンとスーが盗賊団に発見されたため、リンとグーの間で激しい戦いが展開されたが、そこに登場したのがジャオ。この局面に至って、かつて龍門の宿屋の女主人だったリンが、なぜジャオを捜し求める旅に出ていたのかが明らかにされるとともに、ジャオとリンが3年ぶりの再会を果たすことになる。この後は、先遣隊を追ってユー率いる西廠の本隊が龍門に到着すれば、すべての役者が砂嵐が迫るここ龍門に集結することになるが、その思惑、狙いはみんなバラバラ。さあ、そんなややこしい人間関係をしっかりと整理したうえ、ツイ・ハーク監督が描く砂嵐の中でのクライマックスの戦いに期待!
<複雑なかけひきに注目!最後の勝者は?>
1月17日付産経新聞朝刊は尖閣諸島をめぐって「日本政府が領空侵犯する中国航空機への警告射撃を検討していることについて、中国人民解放軍の彭光謙少将が、中国メディアで『日本が曳光弾を1発でも撃てば、それは開戦の一発を意味する。中国は直ちに反撃し2発目を撃たせない』と発言したこと」を報じた。この人物は退役少将にすぎないから、彼の発言は中国人民解放軍の公式見解ではないが、こんな発言も日中間の外交かけひきの一つかも?他方、同紙は、昨年12月16日の衆議院議員総選挙への立候補を諦めた鳩山由紀夫元首相が「個人の立場」で訪中し、1月16日に「沖縄県・尖閣諸島について、日中間の『係争地』との持論を伝えたこと」を報じた。
こんな総理大臣が1年で交代してくれたことはラッキーだったが、さて安倍晋三新政権は今後尖閣諸島をめぐる中国との「対立」についていかに交渉するの?その外交手腕に注目だが、本作のラストに見る個性豊かな登場人物たちのそれぞれの思惑を秘めた複雑なかけひきは尖閣問題をめぐる外交交渉においても大いに参考になるはずだ。
孤高の義士ジャオが求めるのはあくまで義、そしてリンが求めるのはきっとジャオに対する愛だ。また、西廠の督主ユーが求めるのは貴妃をバックにした朝廷内の権力だが、そのためには何としても官女スーを殺害しなければならないし、それを妨害するジャオやリンたちとの戦いに勝利しなければならない。他方、韃靼人の王女チャンや盗賊団の首領グーは単純に秘宝に対する欲だけで行動しているものと思っていたが、そこに情報屋フォンをめぐる色恋ざたが絡んでくると・・・。
60年に一度の砂嵐というより竜巻が宿屋を襲う中、彼らは、一度は砂漠の下に埋もれていた財宝都市を目の当たりにすることができたが、そこは安全なところなの?また、財宝を持ち出すことができるの?そして、今は目の前にいる敵との戦いよりも、共同して脱出を目指す方が先?しかし、誰が誰を信用できるの?本作のクライマックスに展開される個性豊かな登場人物たちのそれぞれの思惑を秘めた、そんな複雑なかけひきに注目したい。しかして、さあ最後の勝者は一体誰に?
2013(平成25)年1月17日記