チェケラッチョ!!(日本映画・2006年) |
<東宝試写室>
2006年4月17日鑑賞
2006年4月20日記
『スゥイングガールズ』(04年)、『リンダ リンダ リンダ』(05年)、『ビートキッズ(BEAT KIDS)』(05年)に続く、バンド結成をめぐる「3人+1人」の高校生たちの青春を描く楽しい映画。舞台は沖縄。音楽はラップ。そして「チェケラッチョ」とは・・・?個性豊かで面白い登場人物たちと、興味深い恋愛論や親子論が飛び出すうえ、あれほどヘタクソだった演奏とラップも、最後にはノリノリ・・・。気分転換には、『チェケラッチョ!!』が1番・・・?
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監督:宮本理江子
伊坂透/市原隼人
南風原唯/井上真央
玉城哲雄/平岡祐太
本部暁/柄本佑
多良間涼太/玉山鉄二
アンディ・クラレンス/KONISHIKI
中村渚/伊藤歩
東宝配給・2006年・日本映画・117分
<3人+1人の主人公たち>
この映画は『スウィングガールズ』(04年)、『リンダ リンダ リンダ』(05年)、『ビートキッズ(BEAT KIDS)』(05年)、などに続く「青春音楽映画」の系譜に並ぶもの。そしてこの映画の主人公は、「098」という名のバンド(?)を組む、伊坂透(市原隼人)、玉城哲雄(平岡祐太)、本部暁(柄本祐)の3人の高校生。哲雄は大学を目指して受験勉強をしているだけに頭が良さそうだが、透も暁も明るさだけが取り柄(?)のノー天気な高校生・・・?
女ばかりのバンドに男1人が絡んだ『スウィングガールズ』とは逆に、こんな仲良し3人組の男たちに絡む紅一点が南風原唯(井上真央)。しかし、唯も「格闘バカ」と呼ばれるほどのおてんば娘で、いつも透とケンカばかり。もっとも、「ケンカするのは仲がいい証拠」と昔から言うように、唯は透のことが大スキなのだが、鈍感な透にはそれが全く伝わっていない様子。宮本理江子監督が「青春音楽映画」の主人公に選んだのは、こんな3人+1人の高校生たち。ちなみに「098」の意味は、沖縄の市外局番・・・。
<伊藤歩ちゃんの役柄は・・・?>
他方、女性監督の宮本理江子氏らしく(?)、「青春音楽映画」の系譜に恋愛の要素をうまく絡めていくについて、重要な役柄を演じているのが、『カーテンコール』(04年)で重要な役柄を演じた女優の伊藤歩。彼女が演ずる25歳の女性中村渚は、透にとっての年上の憧れの女性であるとともに、人気絶頂のインディーズバンド「ワーカホリック」のメインMCである多良間涼太(玉山鉄二)の元(?)彼女。さて、渚は2人の男性に対してどんなアプローチを・・・?単純ながら、こんな「青春音楽映画」、私は大スキ・・・。
<舞台は沖縄、音楽はラップ>
『スウィングガールズ』は山形、『ビートキッズ(BEAT KIDS)』は大阪の岸和田、そして『リンダ リンダ リンダ』は「とある地方都市」が舞台だったが、この映画の舞台は沖縄。「青春音楽映画」が面白いのは、その映画の舞台によって、焦点が当てられる音楽がそれぞれ異なること。すると、沖縄の音楽は・・・?それはラップ。
目下、人気沸騰中の沖縄出身のバンド「ORANGE RANGE」が「098」の目標らしい(?)が、「098」が歌う『チェケラッチョ!!』は、映画のラストでやっとまともな曲に仕上がってくる。そして、海辺にセットされた舞台はノリノリとなり、大興奮・・・。
<ラップの名人KONISHIKIの存在感は・・・?>
元大相撲の小錦関は、今は「KONISHIKI」として芸能界で活躍している。彼の音楽的センスやリズム感の良さは、かつての某テレビコマーシャルで実証済み・・・。透、哲雄、暁の3人がバンドを始めたきっかけは、「ワーカホリック」のようにカッコよく歌って、女の子にもてたいという、何とも単純かつ不純なもの。そのうえ、楽器の経験もないズブの素人集団だから、その実力はタカが知れている。したがって、そんな3人が、インチキな売り込みで「ワーカホリック」の前座をつとめた舞台は散々の出来で、ブーイングの嵐になったのは当然。そこで、「KONISHIKI」の登場。さて、彼のラップの教え方は・・・?
<「チェケラッチョ」とは?>
この映画は沖縄が舞台だから、「チェケラッチョ」とは沖縄の方言かと思っていた。ところがそうではなく、これはラッパーが愛用する「Check it out,Yo!」というフレーズをもじった合言葉とのこと。さて、その意味は・・・?
<芸達者な共演者たちその1 南風原家御一同様>
この映画には主役の高校生たちの他、多くの共演者たちが脇役として登場し、それぞれにスパイスを効かせたり、無理矢理(?)観客の笑いを誘ったりしている。まずこの映画に一家総出(?)で登場するのは、南風原一家。父親の稔(平田満)は、長女の美奈(山口紗弥加)が、ビーチでカフェを経営しているアンディ・クラレンス(KONISHIKI)と結婚することに猛反対だが、その理由は・・・?妹の唯もその可憐なイメージからは想像もできない「バカ格闘家」とあだ名されているほど狂暴な性格(?)だが、姉の美奈はそれ以上にパワフル。しかもなぜか、涼太の追っかけをしているヘンなオンナ・・・。南風原家でまともなのは、優しい母親の恵子(筒井真理子)くらい・・・?
<芸達者な共演者たちその2 個性派キャラたち>
あえてこの映画の主人公を1人挙げれば、それは伊坂透だが、その透の父親が伊坂平介(陣内孝則)、母親が和子(大島さと子)。芸達者な陣内がどんな父親ぶりを演ずるのか、映画を観る前から私は興味を持っていたが、家の床下に潜ってのシロアリ退治という、誰もその家業を継ぎたがらない仕事をしているこの父親と、息子の透との間の「教育論」は現実論としてもかなり有益なもの・・・?
そして曲者(?)は、唯の祖母の南風原ちさ(樹木希林)。これ(いや彼女)は、なぜか透の夢の中に現れて、「ファーストキスがどうの」とか「ラブがどうの」とかと、透の頭を混乱させる、いかにも彼女好み(?)の役柄を熱演・・・?また、いい年になっても会うたびにケンカばかりしているバカおやじが、本部暁の父親の修一郎(柳沢慎吾)と玉城哲雄の父親の克治(松重豊)。まあ、これも愛嬌の役柄だと割り切って、バカおやじぶりをしっかりと演じているこのご両人にも、一応拍手を・・・。
<1度は行ってみたいもの・・・>
私は沖縄にまだ1度も行ったことがないが、中国へのツアー旅行に馴れた私の目には、沖縄への2泊3日で3万円前後のツアー旅行の宣伝がよく目に入ってくる。『激動の昭和史 沖縄決戦』(71年)(『シネマルーム3』338頁参照)を観たことによって、沖縄の大体の地理は頭に入っているから、まずは沖縄旅行では、①首里城、②ひめゆりの塔などの歴史的観光拠点を見学したいもの。そして次に、この映画に登場する①透と渚が出会った「沖縄美ら海水族館」、②透がずぶ濡れにされる「エメラルドビーチ」なども見学したいもの。そのためには、THE BOOMの『島唄』や夏川りみの『涙そうそう』ばかりではなく、「ORANGE RANGE」の曲もきっちり練習しておくことが必要かも・・・。
2006(平成18)年4月20日記