ルートヴィヒ(ドイツ映画・2012年) |
<宣伝用DVD観賞>
2013年11月28日鑑賞
2013年11月29日記
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監督/脚本:マリー・ノエル、ピーター・ゼアー
ルートヴィヒ2世(バイエルン王)/ザビン・タンブレア
ルートヴィヒ2世(晩年)/セバスチャン・シッパー
エリザベート(オーストリア皇后)/ハンナー・ヘルツシュプルング
リヒャルト・ワーグナー(作曲家)/エドガー・セルジュ
リヒャルト・ホルヒニ(厩舎係)/フリードリヒ・ミュッケ
ヨハン・ルッツ(王室書記官)/ユストゥス・フォン・ドナーニー
ラカイ・メイヤー/サミュエル・フィンチ
オットー(ルートヴィヒの弟)/トム・シリング
ゾフィ(エリザベートの妹)/ポーラ・ビール
ヨハン・ルッツ(バイエルン国の首相)/ユストゥス・フォン・ドナーニー
グッデン教授(医師)/
ブロードメディア・スタジオ配給・2012年・ドイツ映画・143分
◆リヒャルト・ワーグナーの生誕200周年を記念して作られた本作は、美しい。しかし、日本人はよほどのワーグナー・ファンでない限り、誰よりもワーグナーの音楽を愛すると共に、戦争と権力争いに明け暮れていた時代にワーグナーの音楽によって平和をもたらそうと夢見たルートヴィヒ2世(ザビン・タンブレア)のことは知らないのでは・・・?私は『ローエングリン』『タンホイザー』『トリスタンとイゾルテ』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『ニーベルングの指環』等々のワーグナーの楽劇はそれなりに知っているが、なんせそれを観賞するのは大変だから、昔集めていたレコードでもあまり聴いたことがない。しかし、ドイツがいくつかの王国に分かれて戦争に明け暮れていた19世紀の時代にそんな理想を掲げてワーグナーと城の建設に膨大な国費を注ぎ込み、結局は「狂王」と称せられたルートヴィヒ2世の生きザマは興味深い。ルートヴィヒ2世はバイエルン王国の国王だが、当時力をもっていた王国がプロイセン。そして、オーストリア帝国の皇后がエリザベートで、当時のフランスはナポレオン3世の時代だ。多くの日本人は統一前の当時のドイツの歴史を知らないだろうから、本作を観れば大いに参考になるはずだ。
◆ワーグナー(エドガー・セルジュ)は36歳の時、1848年の「三月革命」に参加したとして逮捕状が出されたが、リストの助けもあり、スイスで10年間の亡命生活を送っていたらしい。したがって、1864年の父王の死後、18歳にして王位に就いたルートヴィヒ2世がワーグナーを探し出すのに苦労したことが本作でも描かれるが、その後のワーグナーと首相のヨハン・ルッツ(ユストゥス・フォン・ドナーニー)との対立の様子を見ると、ワーグナーの政治改革への熱い想いは相当なものだったことがわかる。
他方、本作は、ルートヴィヒ2世の「伝記映画」だから、その分ワーグナーの楽劇の紹介が少ないのが少し残念。ヨーロッパの音楽家を描いた映画はモーツァルトを主人公にした『アマデウス』(84年)や、フランス・リストを主人公にした『わが恋は終りぬ』(60年)等の名作があるが、音楽映画という点では本作はイマイチ・・・。
◆1814年9月にオーストリアの首都ウィーンで開催された「ウィーン会議」は、ナポレオン失脚後のヨーロッパの領土問題を各国が議論する舞台となった。映画『会議は踊る』(31年)は、そこでのロシア皇帝アレクサンドル1世とウィーンの町娘の恋をテーマとして描いた名作だった。このようにアレクサンドル1世を舞踏会漬けにして会議の主導権を握ろうとしたのが、ウィーン会議の議長を務めたオーストリア外相メッテルニヒだ。しかし、メッテルニヒは1848年にオーストリアで起きた三月革命によって宰相を辞任し、1859年には死亡。そのこともあってか、1866年の普墺戦争ではオーストリアは大敗し、以降プロイセンが北ドイツ連邦の盟主となった。そのため、オーストリアと共に戦ったバイエルンも、敗戦国として多額の賠償金を負担させられることに。
国王就任後、王室書記官のヨハン・ルッツ(ユストゥス・フォン・ドナーニー)と厩舎係のリヒャルト・ホルヒニ(フリードリヒ・ミュッケ)の尽力によってワーグナーを宮殿に迎えたルートヴィヒ2世は、理想どおり、音楽による平和と友好を実践しようとしたが、それが絵空事だったことは厳しい現実が証明することに。こんな状況下で国王としての自覚に目覚めたルートヴィヒ2世は国を安定させるため、オーストリアの皇后エリザベートの妹ゾフィ(ポーラ・ビール)との結婚を決意すると共に、フランスのナポレオン3世と「不戦条約」を結んで、プロイセンに対抗する計略を立てた。しかし、そんな任務はやはり音楽好きのにわか仕立ての国王様には荷が重かったらしい。したがって、スクリーン上では以降、苦悩を重ねるルートヴィヒ2世の姿が延々と・・・。
◆18歳でバイエルン国王となったルートヴィヒ2世は、周辺の反対をものともせず、一途に「ワーグナーの音楽による平和」という理想を追い求めたが、結局うまくいかず、失意のうちに40歳で死亡した。そんな彼を、後世のヨーロッパの人達はどのように評価しているのだろうか?
本作はルートヴィヒ2世の生きザマを肯定的にも否定的にも捉えず、客観的に淡々と(?)描ききっている。そのため、史実には沿っているし、ドラマ性もあるのだが、見ている方はあまり面白くない。ちなみに、日本では2009年8月30日の衆議院議員総選挙で自公から民主党への政権交代が実現し、鳩山内閣が誕生した。鳩山由紀夫総理は「友愛」を理想として掲げたが、さてその政治の実践は?ルートヴィヒ2世の先王が近隣諸国との対抗を考えて軍備拡張に走る姿が好ましいものでないことは明かだが、そうかといって理想のみに走るルートヴィヒ2世や鳩山由紀夫総理の姿はいかがなもの・・・?本作を観賞してそんな感想をもったのは、私だけではないのでは・・・。
2013(平成25)年11月29日記