ビフォア・ミッドナイト(アメリカ映画・2013年) |
<シネ・リーブル梅田>
2014年1月25日鑑賞
2014年1月27日記
愛し合う男女も、18年も経てばさまざまな変化が。そりゃ当然だが、そんな2人の愛が第3部の本作で完結。
インテリジェンスの高い2人がウィットに富んだ会話を交わすのは当然だが、夫婦ゲンカを聞き続けるのはつらい。さらに恋愛、セックス、夫婦、人生、文学について、友人たちを交えた会話を聞き続けるのも、ちょっとしんどい。さらに、愛のムードも台無しにしてしまう、おしゃべりの連続にはいい加減うんざり。
ここまでくれば、2人の仲がどうなろうと、俺には無関係・・・。
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監督・脚本・キャラクター原案・プロデューサー:リチャード・リンクレイター
ジェシー(作家)役・脚本/イーサン・ホーク
セリーヌ(環境問題専門家、ジェシーのパートナー)役・脚本/ジュリー・デルピー
ハンク(ジェシーの息子)/シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック
エラ(ジェシーとセリーヌの双子の娘)/ジェニファー・プライアー
ニナ(ジェシーとセリーヌの双子の娘)/シャーロット・プライアー
ナタリア(パトリックの女友達)/ゼニア・カロゲロプーロ
パトリック(別荘の主、作家)/ウォルター・ラサリー
アナ(アキレアスの恋人)/アリアネ・ラベド
アキレアス(パトリックの孫)/ヤニス・パパドプーロス
アリアドニ(ステファノスの妻)/アティーナ・レイチェル・トサンガリ
ステファノス(パトリックの友人)/パノス・コロニス
アルバトロス・フィルム配給・2013年・アメリカ映画・108分
<この2人の関係は?車中の会話からどう読み解く?>
本作は、息子のハンク(シーマス・デイヴィー=フィッツパトリック)と、それを空港で見送る父親ジェシー(イーサン・ホーク)との会話から始まるが、その90%以上はジェシーのしゃべり。ハンクは時々それに返事をする程度だ。それでも、父親と共に過ごしたこの夏休みは「人生で最高の夏だった」と言ってくれたことに、ジェシーは大感激。その後ジェシーは空港の外で待っていたセリーヌ(ジュリー・デルピー)の車に乗って、どこかに向かって走り出したが、ここからの2人の会話がやたら長い。
カメラの長回しの中で2人がしゃべっていることは、本作が第1作『恋人までの距離』(95年)、第2作『ビフォア・サンセット』(04年)に続く「第3部」として制作されたことを知っている人にはすぐに理解できるだろうが、それを知らない私には容易にわからない。さて、この2人の関係は?その会話を聞いていると、後部座席で眠り込んでいる双子の姉妹であるエラ(ジェニファー・プライアー)と、ニナ(シャーロット・プライアー)はジェシーとセリーヌの子供らしいが、さてハンクは誰の子供?
また、2人の会話の「テーマ」は、息子や双子の娘のことから、環境問題専門家のセリーヌが考えている転職のことまでさまざまだから、きわめてややこしい。さらにちょっと突っ込んだ話になると、2人は突然険悪なムードに。こりゃ観ていて、最初からかなりうっとうしいが・・・。
<この夕食会での会話を、あなたは楽しめる?>
セリーヌとジェシーが到着したのは、ジェシーの小説のファンでもあるギリシャの老作家パトリック(ウォルター・ラサリー)の家。そこでの夕食会には、パトリックと女友達(ゼニア・カロゲロプーロ)、孫アキレアス(ヤニス・パパドプーロス)とその恋人アナ(アリアネ・ラベド)、中年の友人ステファノスとアリアドニの夫婦(パノス・コロニス、アティーナ・レイチェル・トサンガリ)が集まったが、そこでは恋愛、セックス、夫婦、人生、文学についての会話が次々と。
日本人は概ね大勢の前で気の利いたことをしゃべるのが苦手だが、この夕食会に集まっている人たちは実によくしゃべる。そしてまた、その会話を楽しんでいることがよくわかる。中でもセリーヌのしゃべりは、注目の集め方でも、皮肉の効かせ方でもピカイチ。しかし、これだけ多岐にわたるテーマについて各自から延々と「自説」を展開されると、それをじっと聞かされている私はいい加減うんざり。
<せっかくの「愛のムード」も、おしゃべりで一変!>
友人たちの前でもジェシーとセリーヌの険悪な雰囲気が時々わかる上、セリーヌは友人たちが準備してくれている海辺の高級ホテルも「いらない」と一度は断ったから、変な雰囲気になりかけたが、「是非に」と言われると、それに従うことに。そのホテルへ歩く道すがら、久しぶりに2人だけの自由な時間を持ったこの2人は、その道中もしゃべりっぱなし。よく疲れないものだ・・・。
でも、高級ホテルの落ち着いたムードの部屋の中に入ると、さすがに2人の雰囲気は一変し、セリーヌをベッドに誘ったジェシーはセリーヌのワンピースの肩紐を外し、その豊かな胸に顔をうずめることに。そこでのセリーヌの大胆な脱ぎっぷりは本作のハイライトの一つ(?)だが、それでもセリーヌはおしゃべりをやめないから、せっかくできつつあった愛のムードはアレレ・・・。男にとっては、こんなムードの中でも、いつまでもしゃべり続ける女は最悪・・・?
<この夫婦ゲンカVSあの夫婦ゲンカ>
張元(チャン・ユアン)監督が、中国四大女優の一人、徐静蕾(シュー・ジンレイ)を起用した『我愛你(ウォ・アイ・ニー)(I LOVE YOU)』(03年)は、「夫婦ゲンカ」がテーマで、中国四大女優の一人がヒステリックにわめく姿が印象的だった。わざわざ、カネを払い時間を使って「犬も喰わない」はずの夫婦ゲンカのサマをスクリーンで観ても仕方ないのが常識だが、そこで見た、『我愛你』という言葉にトコトンこだわる女心は面白かった(『シネマルーム17』345頁参照)。
ところが、せっかく高級ホテルの高級ベッドの上で情熱的に愛し合う予定(?)だった2人は、本作ではいつの間にか罵り合いの(夫婦)ケンカに。その挙げ句に、セリーヌはジェシーに対して、「私はもう、あなたを愛していない」のセリフを。フーテンの寅さんが、これを聞いたら、きっと「それを言っちゃ、おしめえよ」とお説教するはずだ。もっとも、私のような亭主関白の男なら、妻が一度家を飛び出してしまえばそう簡単に戻ってくることはないだろうが、捨てゼリフを残してバタンとドアを閉めて出て行ったセリーヌは、また戻ってきて、二度までも議論をふっかけてくる(?)から、そのしつこさに私は唖然!
弁護士は依頼者の話を聞いて法的なアドバイスを与えるのが仕事。ところが、40年間それをやっていても、うっとうしい話を聞くのはイヤで、「要点をまとめろ!」「同じことを何度もくり返すな!」という流儀でやってきた私は、ここまでずっと議論(夫婦ゲンカ?)ばかりしている2人の姿を見ていると、ホントにうんざり。一体この結末は・・・?
<2人は終わり?それとも復活?別にどっちでも・・・>
日本人と違ってヨーロッパ人の会話はウィットに富んでいると感心することが多いが、完全にケンカ別れした後、野外のテーブルに一人座っているセリーヌを見つけ、その側に座っていくジェシーの会話のもっていき方は、「さすが!」と感心させられる。しかし、私はこの時点では、もう2人の関係がどうなろうと、すなわちこのまま切れてしまおうと、逆に再びウィットに富んだ会話の中で「ビフォア・ミッドナイト」の前にまた復活しようと、別にどっちでも・・・。
とにかく、私にとって本作は疲れるだけの映画だったが、2時間もの間ほぼ全編にわたってこれだけ大量のセリフを完璧にしゃべり続けるイーサン・ホークとジュリー・デルピーの2人の俳優に脱帽!
2014(平成26)年1月27日記