めぐりあう日(フランス・2015年) |
<ビジュアルアーツ大阪試写室>
2016年7月7日鑑賞
2016年7月12日記
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監督・脚本:ウニ―・ルコント
エリザ(理学療法士)/セリーヌ・サレット
アネット(学校の食堂の補助職員の中年女性)/アンヌ・ブノワ
アレックス(エリザの夫)/ルイ=ド・ドゥ・ランクザン
ルネ(アネットの母親)/フランソワーズ・ルブラン
ノエ(エリザの一人息子、8歳)/エリエス・アギス
クビアック夫人/カトリーヌ・ムシュ
ファビオ/ミシャ・レスコー
ロジェ/パスカル・エルソ
2015年・フランス映画・104分
配給/クレストインターナショナル
◆数々の賞を受賞した韓国映画『冬の小鳥』(09年)(『シネマルーム25』未掲載)はウニー・ルコント監督が構想する3部作の第1部で、本作はその第2部。『冬の小鳥』は9歳の時に養子として韓国の養護施設からフランスへと渡ったウニー・ルコント監督自身の体験を基にしているが、それに続く第2部たる本作は、夫のアレックス(ルイ=ド・ドゥ・ランクザン)、8歳の息子ノエ(エリエス・アギス)と共にパリで暮らしている理学療法士の女性エリザ(セリーヌ・サレット)が、産みの母親を探す物語。
産みの親を知らずに育ったエリザは、養父母の了解の下に実母の調査を専門機関に依頼していたが、本作冒頭のシーンを見ていると、匿名で出産した女性を守る法律に阻まれ、容易に実母に辿りつけないことがよくわかる。そこで、エリザはその6カ月後、自ら調査をするため自分の出生地である港町ダンケルクにノエと共に引っ越したが、自分が産まれた産院は数年前に移転し、出産に立ち会った助産婦の行方もわからない。また、産まれてすぐに送られた養護施設をノエに見せたいと思って訪れても、門前払いされてしまう始末だ。そりゃ、まあそうだろう。しかして、その調査の進展は・・・?
◆本作の原題はフランス語だが、それを翻訳すれば「あなたが狂おしいほどに愛されることを、私は願っている」らしい。そして、これはアンドレ・ブルトンの著書『狂気の愛』の終わりにある、娘に宛てた手紙の最後の文章で、ウニー・ルコント監督はこの言葉を「お守り」として生きてきたらしい。養子として韓国の養護施設からフランスへ渡ったウニー・ルコント監督が自分の産みの親に会えたのかどうかは知らないが、そんな体験を基に作られた本作は、「ある偶然」でエリザの患者としてやってきた中年女性アネット(アンヌ・ブノワ)の肌に密着しながら治療を続ける中で、「見えない糸」を手繰り寄せるように母と娘の物語が進んでいく。また、エリザの息子ノエが長い睫と綺麗な目をしていることや、アラブ系の容貌をしていることでアネットとエリザが「母と娘の関係」に気付いていく物語が進んでいく。もちろん、これはウニー・ルコント監督の脚本で体験そのものではないが、そのストーリーを観ていると、少し偶然が重なりすぎて、できすぎの感も・・・。
ある日の治療で「子どもはいるの?」と聞いたエリザに対して、アネットは即座に「いない」と答えたが、その後もエリザが調査を続けていくと・・・。
◆日本でも近時「個人情報保護法」の運用を巡ってさまざまな議論があるが、本作を観れば、ヨーロッパでも(ヨーロッパでは特に?)匿名で出産した女性を守る法律の壁が厚いことがよくわかる。したがって、本作中盤ではアネットが匿名解除の申請書を書くかどうかが一つのポイントになってくる。本作では、調査員の説明によってある日遂にアネットは「私は1981年11月17日にダンケルクの産院で女児を出産。エリザベットと命名・・・」と匿名解除の申請書を書くことになるが、そこからさらにさまざまな波乱が・・・。
産みの母親を探す旅はどうしても不可欠なものだったことはウニー・ルコント監督の体験としては理解できないわけではないが、本作のエリザの行動を見ていると、ホントにここまでやる必要があるの?つい、そう考えてしまったが・・・。
◆本作のラストは、当然想定されるべきハッピーエンドになるが、そこで流れてくるナレーションの意味を本当に理解するのは難しい。それは男性の声による、あなたという存在を賛美するナレーションだが、これは一体ナニ?私は本作鑑賞後にプレスシートを読み、それによって、はじめてこれはアンドレ・ブルトンの『狂気の愛』のラストの一節だということを知ることができた。これは逆に言えば、プレスシートを読まなければその意味は全くわからなかったということだ。しかして、本作は少しウニー・ルコント監督の私的体験の反映が強すぎるのでは・・・?私はそう思わざるをえなかったが・・・。
2016(平成28)年7月12日記