弁護人(韓国映画・2013年) |
<シネ・リーブル梅田>
2016年11月19日鑑賞
2016年11月24日記
日本でも戦前は「治安維持法違反」事件があったが、韓国では1980年代初頭に釜林(プリム)事件と呼ばれる国家保安法違反事件が!監禁・拷問による虚偽の自白、それによる国家保安法違反の罪の捏造。全斗煥(チョン・ドゥファン)の軍事政権下では、そんな恐ろしいことが現実に!
高卒の金儲け弁護士がなぜそんな事件にのめり込み、その後人権派弁護士になり、さらに政治家に転身し、大統領にまでなったの?そんな弁護士とは一体ダレ?
歴史の勉強はもとより、弁護士としての各種選択と生きザマを考える上で、法律を学ぶ人たちに本作は必見!
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監督・脚本:ヤン・ウソク
脚本:ユン・ヒョノ
ソン・ウソク(弁護士)/ソン・ガンホ
パク・ジヌ(クッパ屋の息子)/イム・シワン
チェ・スネ(クッパ屋の女主人)/キム・ヨンエ
チャ・ドンヨン(冷酷非道な警監)/クァク・ドウォン
イ・ユンテク(ウソクの同級生、新聞記者)/イ・ソンミン
パク・ドンホ(ウソクの弁護士事務所の事務長)/オ・ダルス
裁判官/ソン・ヨンチャン
キム弁護士(ウソクの先輩弁護士)/チョン・ウォンジュン
ソン・ウソクの妻/イ・ハンナ
ユン中尉(軍医)/シム・ヒソプ
イ・チャンジュン/リュ・スヨン
カン検事/チョ・ミンギ
パク弁護士/チャ・グァンス
2013年・韓国映画・127分
配給/彩プロ
<米日韓そして中露の法廷モノあれこれ>
アメリカには『十二人の怒れる男』(57年)(『シネマルーム1』121頁参照)をはじめ、『アラバマ物語』(62年)、『アミスタッド』(97年)(『シネマルーム1』43頁参照)、『ニューオーリンズ・トライアル』(03年)(『シネマルーム4』226頁参照)、『コネクション マフィアたちの法廷』(06年)(『シネマルーム29』172頁参照)、『リンカーン弁護士』(11年)(『シネマルーム29』178頁参照)、『ジャッジ 裁かれる判事』(14年)(『シネマルーム35』93頁参照)等々、裁判モノの名作が多い。日本でも『12人の優しい日本人』(91年)(『シネマルーム1』122頁参照)をはじめ、『事件』(78年)(『シネマルーム10』52頁参照)、『疑惑』(82年)(『シネマルーム10』33頁参照)、『ゆれる』(06年)(『シネマルーム14』88頁参照)等々の裁判モノの名作がある。
他方、韓国でも『インディアン・サマー』(01年)(『シネマルーム19』55頁参照)、『ユア・マイ・サンシャイン』(05年)(『シネマルーム11』257頁参照)、『依頼人』(11年)(『シネマルーム29』184頁参照)がある。また、西欧諸国とは全く裁判制度が違う中国でも『ビースト・ストーカー/証人』(08年)(『シネマルーム28』81頁参照)、『再生の朝に -ある裁判官の選択-(透析Judge)』(09年)(『シネマルーム27』196頁参照)ような裁判モノの名作があるし、ロシアにも『12人の怒れる男』(07年)(『シネマルーム21』215頁参照)がある。
これらはいずれも、弁護士はもとより法科大学院生など法律を志す人々必見の映画だが、本作も韓国歴代観客動員数8位、動員総数1100万人突破(2014年2月2日)という記録的大ヒットした本格的法廷モノだ。
<すごい法廷モノが韓国で大ヒット!弁護士の名前は?>
本作について、あまり映画に造詣が深いとは思えない元日弁連会長の宇都宮健児弁護士が「金儲けばかりに関心のあった弁護士が、ある事件をきっかけに徹底した人権派弁護士に変わっていく。多くの弁護士や弁護士を志す大学生・法科大学院生にも是非見てもらいたい映画である。」とコメントし、菊地幸夫弁護士も「拳を握りしめながら、湧き上がる熱き血潮の流れを感じたい者は、この映画を見るべし。」、湯浅卓弁護士も「『裁判』映画として傑作だ!!こんなにもリアリティを持って、弁護士、裁判の腹の底について描かれている作品には出会ったことがない。」とコメントしているが、さて『弁護人』と題された本作の主人公となる弁護士はダレ?
それは弁護士から1988年に政界に転身し、第16代大統領となり(2003~2008年)ながら、退任後は親族の不正疑惑で自らが聴取されるという事態に陥り、2009年5月23日に釜山の自宅近くの岩山から飛び降り自殺した盧武鉉(ノ・ムヒョン)弁護士だ。盧武鉉元大統領が若い頃「人権派弁護士」として活躍したことは知っていたが、彼の弁護士人生にこんな大きな転機があったとは・・・。
崔順実(チェ・スンシル)問題の発覚によって、あれほど絶大な人気を誇っていた朴槿恵(パク・クネ)大統領の支持率が大幅に低下し、大統領の弾劾まで射程距離に入っている昨今、ひょっとして朴槿恵大統領も盧武鉉元大統領や過去多くの韓国の大統領がたどったようなあわれな末路を・・・?そんな予想が広がっている今、本作の公開はタイムリーだから、現在の韓国の政情を睨みながら、盧武鉉弁護士の生きザマに注目したい。
<高卒弁護士は差別を?若き弁護士の生きザマは?>
本作は127分だが、ソン・ウソク(ソン・ガンホ)がパク・ジヌ(イム・シワン)の国家保安法違反事件の弁護人として戦い始めるまでの導入部が意外と長い。そして、それが意外に面白い。苦学して司法試験に合格する物語はあちこちにあるが、クッパ屋で一杯のクッパを食い逃げしなければならないほど追いつめられたウソクの姿はかなりみじめだ。しかし、そんな経験をしてまで古本屋に売払った本を買戻し、あらためて司法試験の勉強を始めたウソクは見事に合格!しかし、高卒のウソクには、それが差別の原因になっていたらしい。
そこでウソクは高卒の裁判官が差別されるのであればと裁判官をあっさり辞め、釜山で弁護士を開業することに。そして、当時司法書士の業務だった不動産登記の仕事が弁護士にも解禁されたことを受けて、その業務が増えそうだと見込んだウソクはあちこちに名刺を配りまくり、大量処理で楽に稼げる不動産登記の仕事を事務長のパク・ドンホ(オ・ダルス)と共に開始。弁護士仲間からは「恥知らず」「弁護士の名折れだ」と陰口を叩かれながらも、韓国で不動産ブームが広がる中、持ち前の明るさと根性で釜山一のカネ儲け弁護士となったから立派なものだ。これはいわば、10~15年前に日本でサラ金の負債整理専門の弁護士が大量宣伝で大量の事件を引き受け大儲けしたのと同じようなもので、そんな弁護士を私も大いにバカにしていたが、あの盧武鉉元大統領が弁護士になりたての頃はこんな(くだらない)仕事をしてカネの亡者のような弁護士だったとは・・・。もっとも、不動産登記の仕事で競争相手が増える中、次は税法専門弁護士にと早期に転身をはかったウソクはさすがだが、国選の刑事事件もロクにやっていないウソクが、一方で韓国屈指のトップ企業・ヘドン建設の顧問弁護士の要請を受け、全国区になろうとしている時に、突然国家保安法違反の刑事事件を引き受けたのは一体なぜ?
ちなみに、司法試験の制度は日本も韓国も共に裏口入学のようなコネの通じない実力だけの試験だから、日本ではどこの大学を卒業していようがあまり差別はないし、高卒でも本作でウソクが言うような差別はない。しかし、身分制度に固執する韓国では、高卒では司法試験に受かってもウソクのような生き方をしないと生き残れないらしい。司法試験を目指す今ドキの日本の若者は、韓国のこんな現実と日本の現実をよく対比して自分の進路を決定しなくちゃ・・・。
<韓国の政情は?全斗煥軍事政権とは?釜林事件とは?>
現在の朴槿恵大統領の父親である朴正煕(パク・チョンヒ)は、韓国の第5・6・7・8・9代大統領として1963年~1979年までの長期政権を築いていたが、1979年10月26日大規模な民主化デモの鎮圧を命じた直後、側近である金載圭情報長官によって暗殺された。その後の臨時代行を経て、崔圭夏(チェ・ギュハ)が第10代大統領に就任したが、同政権は全斗煥(チョン・ドゥファン)らが主導した1980年の「5・17クーデター」によって軍部に政権を奪取され、1980年9月1日には全斗煥が第11代大統領に就任した(11代・12代、1980~1988年)。
その間には『光州5・18』(07年)(『シネマルーム19』78頁参照)で描かれた光州事件も発生した(1980年5月18日から10日間)が、1981年9月に発生したのが釜林(プリム)事件だ。パンフレットによれば、これは執権初期の全斗煥政権が統治基盤確保のため釜山地域の民主勢力を抹殺すべく、社会科学書籍勉強会の学生や社会人など19人を令状もなく不法に逮捕。その後20日以上にわたり監禁、拷問を行い、彼らを反国家団体の構成員とし、国家保安法違反などの罪を捏造した事件だ。
<国家保安法違反の罪とは?>
日本では1928年に「3・15事件」(日本共産党弾圧事件)(市川正一著『日本共産党闘争小史』で有名)が起きているが、これは治安維持法違反の罪。他方、1933年の滝川事件と1941年のゾルゲ事件をモデルにした黒澤明監督の映画『わが青春に悔なし』(46年)では、戦争への道を進めていく日本における自由主義弾圧の姿が描かれていた。しかして韓国では、日本が高度経済成長時代を終え、中曽根アーバン・ルネッサンスの時代に入ろうとしていた1980年代初頭に、戦前の日本の治安維持法違反事件と同じような国家保安法違反事件が起きていたわけだ。
もちろん、本作に登場する冷酷非道な警監であるチャ・ドンヨン(クァク・ドウォン)が言うように、朝鮮戦争(1950年~1953年)は一時停止状態だけで終結しておらず、いつ北朝鮮が攻めてきてもおかしくない情勢下、北のスパイと接触する行為や利敵行為は国家保安法違反だが、本作でジヌたちが読書会に使っていた教材は全くそんなものではなかったから、釜林事件は完全でっち上げだ。逮捕されたジヌたちは拷問による嘘の自白調書をでっち上げられて起訴されたが、全斗煥大統領の軍事政権下ではそんな行為が秘密裏に行われ、裁判も有罪と量刑を認定するだけの「儀式」になってしまっていたわけだ。
ウソクの先輩であるキム弁護士(チョン・ウォンジュン)らはそんな韓国の政治情勢と弁護士として果たさなければならない義務に苦渋していたが、税法専門弁護士としてしっかり儲け、今やヨットまで購入して人生を謳歌しているウソク弁護士にはそんな国家保安法違反事件なんて全く関係なし!そんなはずだった。しかし、弁護士になった後、昔の一杯のクッパ食い逃げ事件を告白して許してもらい、以降毎日のように通っていたクッパ屋の女主人チェ・スネ(キム・ヨンエ)が、ある日憔悴しきった状態でウソクの事務所を訪れてくると・・・。
<どこまで突っ込むの?顧問先は?リスクは?>
税法専門の金儲け弁護士から、国家保安法違反の罪で国家と対峙する人権派弁護士に!元日弁連会長の宇都宮健児弁護士のコメントでは、その点に本作のすばらしさが集約されている。たしかに、表面上はそのとおりだが、ジヌの国家保安法違反事件にのめり込んでいくウソクに反対する事務長のドンホの言葉、せっかく獲得しようとしていたヘドン建設という一流企業の顧問先を失う恐れ、さらには妻(イ・ハンナ)への脅迫電話や裁判所に入るウソクの車を取り囲んで「アカは帰れ!」とシュプレヒコールする民衆たち、ジヌが国家保安法違反事件の「弁護人」として国家と対峙するということは、そういう現実のリスクを甘受することだから、それはつらいものだ。しかるに、ウソクはなぜそこまでこの事件にのめり込んでいくの?
スネと一緒にジヌの面会に行った時、ウソクがジヌの身体に残された拷問の傷を見て驚愕し、怒り狂うシーンは充分納得できる。しかし、そうだからといって拷問の現場を自ら調査し、家宅侵入罪まで犯してその現場を突き止めることなど現実にはありえないし不可能。ところが、そこらあたりはいかにも韓国映画らしく(?)、本作は一方的にウソクの調査活動を描いていく。さらには拷問の現場でドンヨン警監から手ひどいしっぺ返しをくらうシーンまで見せてくれるが、さてここでウソクは諦めてしまうの?普通の弁護士なら、ここまで動きここまで反撃されれば恐くなり、少なくとも大いに悩むはずだが、そこらあたりは生来何でも前向きな(?)ウソクのこと、そんな反撃にめげることなく、法廷で傍聴に来ていたドンヨンをにらみつけるばかりでなく、拷問の張本人として証人申請までするからすごい。
たしかに、本作後半から展開される法廷シーンに見るウソクの奮闘ぶりはすごいが、情状酌量で刑の軽減を目指す他の被告人の弁護人であるパク弁護士(チャ・グァンス)との協調性はゼロだし、ウソクが各証人に対して見せる反対尋問の出来も私の目にはイマイチだ。もっとも、被告人らに手錠をつけたまま、その上起立させたままで開廷しようとした裁判官(ソン・ヨンチャン)に対して、「これは刑事訴訟法違反だ」と食い下がったことによって被告人らの手錠が外され着席できたのは大きな成果だが、それは裁判の成否にはほとんど影響はなさそう・・・。
<偽証は当たり前!しかし証拠がなければ・・・>
日本でも1960年代後半には安田講堂事件を含めた東大紛争で767人が逮捕され、616人が起訴されたことによって「荒れた法廷」が連日報道されたが、本作に見る法廷シーンはウソクの獅子奮迅の奮闘によって荒れっ放し。新聞でもそんな風に報道されたから、あくまで無罪を主張するウソク弁護士の戦略は正しいの?本作ではそこらあたりの戦略性がよくわからないまま、ウソク弁護士の韓国流の奮闘(?)が続いていく。しかし、「ジヌの身体についている傷は自傷行為によるものだ」「私は拷問などしたことなし」とドンヨンから強弁(偽証)され、その他ウソク弁護士なりにいろいろとつついても、ことごとく反撃されると、(反対)証拠がない以上、無罪の主張は厳しいことに・・・。
そんな中でウソクが最後にくり出した切り札は、軍医としてジヌたちのケガを治療したユン中尉(シム・ヒソプ)を弁護側の証人として申請したこと。敵の陣営内にいる人間をこちら側の証人として確保するのは至難のワザだから、なぜこのユン中尉がウソクの要請に応じたのかは大いなる謎。それはユン中尉の良心らしいが、本作ではそこらあたりのつっこみは不十分と言わざるをえない。それはともかく、ユン中尉が明確に「拷問を自分の目で見た」と証言したことによって法廷の雰囲気はガラリと変わったが、その途端に傍聴席から席を外したドンヨンがカン検事(チョ・ミンギ)に対して伝えた情報とは・・・?
ユン中尉に対するウソクの主尋問が終わった後、裁判長はカン検事に対して反対尋問を促したが、検事としてもここまで明確に拷問の事実を証言されれば反対尋問のしようがない。ところが、そこでドンヨンからの情報を得たカン検事は、自信たっぷりに「あなたは本日休暇届を出して出廷していますか?」と質問。こりゃ一体ナニ?休暇届が出ていなければ、ユン中尉は脱走兵になってしまうの・・・?国家を敵にする裁判では偽証は当たり前。無罪の推定なんてカラ文句。無罪を立証できる証拠を弁護側が提出できなければ有罪は確実。そんなハチャメチャな法理(?)の下で、ウソク弁護士はやっと無罪を立証する証拠としてユン中尉による拷問の目撃証言を得たわけだが、ユン中尉が脱走兵だとなると、その証拠価値は・・・?
<弁護士から政治家に!そして大統領に!>
本作ではハイライトの法廷シーンが終わった後、ジヌたちの裁判は結局有罪となり、懲役3年の刑が言い渡されたことが明らかにされる。さらにその後、弁護側が控訴しないことを条件として刑期を2年に短縮する密約(?)が交わされたことが明らかにされるが、これはいかにも韓国流。日本ではありえない話し(取引き?)だ。こんな結末を見ると、最初から情状酌量を狙って執行猶予を目指した方がよかったのでは?そんな反省もあるかもしれない。しかし当初ウソク弁護士の猪突猛進ぶりを批判していたパク弁護士も、さすがに裁判終了後はウソクの奮闘を評価。さらに、スネも結果は結果として、ウソクの献身的な努力に心から感謝したことはいうまでもない。しかし、それによってウソクの弁護士としての満足度は?
私にはそれが興味深いが、スクリーン上ではその後ウソクが反全斗煥の活動家として民衆の先頭に立って集会を指導する姿が描かれる。まさに、ジヌの国家保安法違反の弁護人を体験したことによって、ウソクは金儲け弁護士から人権派弁護士に転身したうえ、反軍事政権の闘士となり、その後は政治家に転身、そして大統領にまで上っていったわけだ。そんなウソク弁護士の姿を見ていると、同じく弁護士から「200%ない」と宣言していた大阪府知事選挙に立候補し、政治家に転身した橋下徹弁護士を思い出す。橋下氏は大阪市長として大阪都構想の住民投票に敗れた後あっさり政治家を引退し、弁護士に復帰して講演料等で大いに稼いでいるようだが、再度の政治家への転身はあるの?安倍政権の一強多弱体制が続く間は気楽な維新の顧問稼業でいいかもしれないが、全く想定外のトランプ大統領の誕生をはじめとして世界が大きく揺れ動いている今、近い将来彼の政界復帰がありうるかも・・・?
<盧武鉉大統領の人気の謎は?>
本作鑑賞後の2016年11月22日付産経新聞の「メディア今昔」「46 映画『弁護人』が謎解く!?」は、「韓国大統領の光と影」と題して、盧武鉉大統領の人気の謎を本作から読み解いた。その担当者は私もよく知っている産経新聞の映画担当の記者で、今は編集委員をしている戸津井康之氏だ。その記事の中で、朝鮮半島問題専門誌『コリア・レポート』の辺真一編集長は、2年前に出版した『大統領を殺す国 韓国』(KADOKAWA刊)の中で「盧武鉉大統領の評価、採点は決して高くなかったこと」を反省し、「盧武鉉への評価を再考しなければならない」「韓国は実に惜しい人を失った」と語っているから、本作が辺真一編集長に与えたインパクトは相当なものだったのだろう。
盧武鉉氏の人気のもう1つの大きな理由は「高卒は実力で勝負」と語っていた点が、日本の元首相・田中角栄に似ていること。雄弁家で憎めない大衆政治家という点でも2人はそっくりだったらしい。日本では今「田中角栄ブーム」が起きているが、韓国でも今では盧武鉉は歴代大統領では一番人気らしい。まさに朴槿恵大統領が歴代大統領の退任後の末路と重なって見えてくる今、「韓国大統領の光と影」という視点からも、本作は必見だ。
2016(平成28)年11月24日記