カーズ(アメリカ映画・2006年) |
<東宝試写室>
2006年6月14日鑑賞
2006年6月16日記
宮崎駿のアニメとは異なり、ディズニーのアニメはただひたすら楽しさを追及・・・?圧倒的に多い「動物モノ」に対して、これはそのタイトルどおり、車がすべての「登場人物」だが、主人公の天才レーサーをはじめとして、それぞれのキャラは楽しさがいっぱい。今ドキの「ませた」子供たちにピッタリの趣向だが、大人たちは、この物語に込められた奥深い「人間論」にも注目を・・・。
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監督・脚本:ジョン・ラセター
声の出演
ライトニング・マックィーン(天才レーサー)/オーウェン・ウィルソン
メーター(ミスタ-・オンボロ、レッカー車)/ラリー・ザ・ケーブル・ガイ
ドック・ハドソン(謎の紳士、町医者)/ポール・ニューマン
サリー(クール・ビューティー、女弁護士)/ボニー・ハント
ルイジ(イタリア命!、タイヤショップ経営)/トニー・シャルーブ
グイド(小さな達人(車?)、フォークリフト、ルイジの親友)/グイド・カローニ
ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)配給・2006年・アメリカ映画・122分
<久しぶりに観たディズニーアニメ・・・>
私は基本的にアニメ映画は苦手。したがって、ディズニーアニメとして大ヒットした『トイ・ストーリー』(95年)、『ファインディング・ニモ』(03年)、『Mr.インクレディブル』(04年)なども全然観ていない。今回の『カーズ』も特に観たいという気はなかったが、夏休みに向けて、子供たちをターゲットとする試写案内に力が入っていることが伝わってきたため、1度観てみようと思って試写室へ。宮崎駿アニメとは全く趣の異なる(?)、ディズニーアニメの大作を観るのは久しぶり・・・。
<登場人物(?)たちは・・・?>
ディズニーアニメの特徴は、何といっても動物。したがって、多くの映画で主人公となるのはキャラ豊かな動物たちだったが、今回はそのタイトルどおり、登場人物(?)たちはすべて車。しかし、そのキャラの豊かさは動物モノと同じで、主人公となる若き天才レーサー、ライトニング・マックィーン(オーウェン・ウィルソン)をはじめとして、オンボロのレッカー車であるメーター(ラリー・ザ・ケーブル・ガイ)、そしてまちの医者で長老のドック・ハドソン(ポール・ニューマン)や、まちの活性化のために尽くしている美しい女弁護士、サリー(ボニー・ハント)など、その個性の豊かさにビックリ・・・。
フロントガラスに映る2つの目とラジエーターグリルの口が、実に見事にコントロールされ、各人(車)の個性を際立たせている。さらに面白いのが、微妙に上下するタイヤ。こんなディズニー的才能の集積のためか、車がイキイキとしゃべりながら物語が進行していくことに、大人でも何の異和感も感じないはず・・・。こりゃ、子供たち、とりわけ車の大好きな男の子たちは大喜びするのでは・・・?
<主人公は若き天才レーサーだが・・・>
マックィーンは若き天才レーサー。しかしそういう人間にありがちな、何でも自分一人でやっていけるという自信過剰気味の生き方が災いし、ピストン・カップのシーズン最終戦「ダイナコ400」では、先頭を走っていたにもかかわらず、タイヤのパンクのために、後続の2台に追いつかれてしまった。そして微妙な判定の結果3台がタイとなり、1週間後にカリフォルニアで決勝レースが行われることに・・・。
<マックィーンが迷い込んだまちの裁判システムは・・・?>
トレーラーに乗って、高速道路を一路カリフォルニアに向かうマックィーンだったが、その途中のアクシデントにより、マックィーンはたった1人、ルート66沿いの見知らぬまちラジエーター・スプリングスに迷い込んでしまった。そして、スピード違反によって保安官のシェリフに追跡されるという大騒動に・・・。
その結果、マックィーンが気づいたのは拘置所の中。レッカー車のメーターに引っ張られて、交通裁判所に出頭したマックィーンは、判事のドック・ハドソンやキャラ豊かなさまざまなまちの住人たちの立ち会いの中、判決の言渡しを受けることに。ここで活躍するのが、女弁護士のサリー。彼女は、まちからの追放を求める住民たちに対して、マックィーンのレーシングカーとしての並外れた馬力を見込んで、荒れ果てたまちの道路の補修をさせようという提案を。その結果、言い渡された判決は、道路補修をせよという罰・・・。
アメリカは陪審制度の国だが、この裁判は陪審制度によるものではない。また、日本で2009年5月以降に実施される裁判員制度とも異なるもの。むしろこれは、アメリカ西部劇によく出てくる、保安官主導の裁判(?)とよく似ているもの・・・。この映画を観る子供たちには、車のキャラだけではなく、こんな裁判のシステムにも興味を持ってもらいたいもの・・・。そんなあなたにとって、マックィーンに対して言い渡された「道路補修の罰」の妥当性は・・・?
<重要な都市問題的視点も・・・?>
5年余の小泉改革の展開の中、日本国の姿は大きく様変わりしたが、その中で弊害として目立つのが、中央と地方の格差の増大。小泉改革によって格差社会が拡大したという大合唱に対して私は批判的だが、東京への一極集中とそれに伴う地方の地位の低下は、かなり大きな構造的問題だと私は感じている。そんな視点で、この映画を観てみると・・・?マックィーンが迷い込んだまちラジエーター・スプリングスは、かつては旅の中継地点として人気のまちだったが、40年前に高速道路がつくられたことによって沿道からはずれたため、ラジエーター・スプリングスのまちには車や人が立ち寄ることがなくなり、やがてまちの名前は地図上からも消されてしまったとのこと。
そんなまちをどうやって活性化すればいいの・・・?そんな思いで日々活動するサリーだったが・・・?こんなサリーの悩みは、中心市街地の活性化を目指すべく、今国会で成立したいわゆる「まちづくり三法」の問題意識と全く同じ・・・?
<人間の生き方を描く感動的側面も・・・?>
他方、わがままで自信過剰気味の天才レーサー、マックィーンにとっては、カリフォルニアに向かう途中にあるこんなまちは、本来縁もゆかりもないもので、早く通過してカリフォルニアに到着したいだけの一念。したがって、言い渡された刑の執行を終えれば、さっさとこんなまちをおさらばして、栄光のレースに臨みたいところ・・・。
ところが、そんなマックィーンの思いどおりにコトは進まず、道路の補修をめぐるイザコザやそれをめぐってのドック・ハドソンとの「勝負」、さらにサリーへの恋心の芽ばえ(?)など、いろいろな体験をする羽目に・・・。そして、こんな今まで体験したことのないまちの人々との心の触れ合いは、レース一筋だったマックィーンの心に何らかの変化を引き起こしたよう・・・?スーパースターのマックィーンがラジエーター・スプリングスのまちにいるらしいとの情報によって、突然まちは大混乱となっていくが、そんな中、マックィーンの選択は・・・?そんな感動的な側面も、少年少女たちにはじっくりと味わってもらいたいものだが・・・。
<夏休みの大ヒット確実?『ゲド戦記』との勝敗の行方は・・・?>
これまでのディズニーアニメの実績からみても、また映画自体の楽しさとすばらしさからみても、『カーズ』が今年の夏休みに大ヒットし、映画館を席捲することはまちがいなし・・・。今年の夏の大作で、洋画VS邦画対決となる一番手が、『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』VS『日本沈没』だと私は考えているが、アニメ映画ではこの『カーズ』が、主人公マックィーンのように独走・・・?と思っていたら、そこに強力な対抗馬が・・・。それは7月に公開される『ゲド戦記』。これはアメリカの作家、アーシュラ・K.ル=グウィンによって書かれた『指輪物語』『ナルニア国物語』と並ぶ世界三大ファンタジーの1つと言われている『ゲド戦記』を原作としたもので、宮崎駿の長男、宮崎吾朗の第1回監督作品となるもの。単純な(?)『カーズ』のストーリーと違って、こちらはえらく複雑そうなストーリーだが、とにかく面白そう・・・。さて、その勝敗の行方は・・・?
2006(平成18)年6月16日記