マダム・フローレンス! 夢見るふたり(イギリス映画・2016年) |
<TOHOシネマズ西宮OS>
2016年12月4日鑑賞
2016年12月7日記
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監督:スティーヴン・フリアーズ
フローレンス・フォスター・ジェンキンス(マダム・フローレンス)/メリル・ストリープ
シンクレア・ベイフィールド(フローレンスの夫)/ヒュー・グラント
コズメ・マクムーン(フローレンスが雇ったピアニスト)/サイモン・ヘルバーグ
キャサリン(シンクレアの愛人)/レベッカ・ファーガソン
アグネス・スターク(ヴェルディ・クラブの会員の妻)/ニナ・アリアンダ
2016年・イギリス映画・111分
配給/ギャガ
◆本作は新聞各紙の批評や『キネマ旬報』の批評ではかなり好評だが、そのポイントの第1は、実在の人物「マダム・フローレンス」を演じた女優メリル・ストリープの「名演技」に注目したもの。つまり、『マンマ・ミーア!』(08年)や『イントゥ・ザ・ウッズ』(14年)などで美声を披露してきたメリル・ストリープが無理矢理音程を外して歌う「音痴」に挑み、微妙なバランスで音のズレを生むテクニックを称賛するものだ。実際にスクリーン上でその姿を見てその声を聴くと、なるほど、それはそれで面白い。
しかし、堺正章が司会する『THEカラオケ★バトル』を毎回楽しみに観ている私としては、やはり上手な歌を聴くのは楽しいが、音痴の歌声を聴くのは苦痛以外の何者でもない。わざわざ時間を使って映画館に来ているのに、こんな下手な歌を聴かされたのでは・・・。
◆本作を高く評価するポイントの第2は、17歳の時から梅毒を患っていた(遊び人の男からうつされた)フローレンス・フォスター・ジェンキンス(メリル・ストリープ)を看護しながらその歌の素晴らしさを称賛し続ける夫シンクレア・ベイフィールド(ヒュー・グラント)の献身的な姿を、一つの理想的な夫婦愛の姿と評価したもの。なるほど、ニューヨークの社交界の顔として華麗なる日々を過ごすフローレンスの音楽活動や音楽支援活動のために、事前に批評家たちを「買収」したり、「理解ある観客」だけを集めて拍手喝采させるやり方は、ある意味で「如何なもの」だが、夫婦愛の1つの形としてはありかも・・・?
まあ、カネさえあればそんなことも可能だろう。シンクレアを演じるヒュー・グラントの名演技もあって本作が見せるそんな夫婦愛の姿は好評だが、私にはちょっと・・・。
◆本作は冒頭にそんな夫婦愛の姿を示した後、フローレンスの歌の伴奏をするための専属ピアニストを募集するシークエンスになる。そこであっさりフローレンスとシンクレアのハートを射止めたのが、少し内気だが実力は折り紙つきのピアニスト、コズメ・マクムーン(サイモン・ヘルバーグ)。この選抜ぶりも公平なオーディションとは言えないインチキ風景だが、それはフローレンスの専属ピアニストを選ぶという私的な行事だから良しとしよう。しかし、コズメはホントに実力のあるピアニストだけに、はじめてフローレンスの歌の伴奏をしてみるとアレレ・・・。
いくら破格の(?)給料をもらえるとはいえ、これからずっとこんな音痴の歌の伴奏をしなければならないの?それも人前で・・・?そんなバカな・・・?本作の面白さを盛り上げているのはこのコズメの存在が大きいが、私にはそんなインチキに付き合わされるコズメへの同情心の方が大きくなることに・・・。
◆小規模な理解ある観客だけ集めたリサイタルならいざ知らず、「音楽の殿堂」たるカーネギーホールの3000人も入る大ホールでフローレンスが単独リサイタルをやるのはいくら何でも無茶。またレコードを出すというのは、それ以上の無茶だ。それは本作導入部でフローレンスの歌をはじめて聴き、その音痴ぶりにゲラゲラ笑いだすのを止められなかったアグネス・スターク夫人(ニナ・アリアンダ)の姿を見れば明らかだ。
ところが、当の本人はシンクレアの「甘やかし」(?)のため自分が音痴であることに全く気付いていないから、事態はどんどん危険な方向に進んでいくが、そこが本作の面白さらしい。
◆近時公開された『偉大なるマルグリット』(15年)も本作と同じマダム・フローレンスを主役にした映画だったが、私はそんな音痴の映画を観ても仕方がないと思ってパスしていた。本作も基本的にパスする予定だったが、『シークレット・オブ・モンスター』(15年)の上映時間との関係で連続して鑑賞することになったが、正直やっぱりパスで良かったなという印象が強い。
メリル・ストリープとヒュー・グラントの共演。新聞批評がそれだけで高い評価をせざるをえないのはわからないでもないが、私には本作はイマイチ。ストーリー展開や演技力はともかく、とにかく私には下手な歌を何度も聴かされ続けることにうんざり・・・。
2016(平成28)年12月7日記