アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場(イギリス映画・2015年) |
<TOHOシネマズ西宮OS>
2017年1月22日鑑賞
2017年1月26日記
今や写真撮影から宅配まで市民生活に入り込んだ小型のドローンは今後も飛躍的な活用が見込まれているが、大型のドローン・無人攻撃機からのミサイル攻撃による敵要人やテロリストの暗殺の可否は?
対テロ戦争で地上軍を大幅に削減したオバマ前大統領がドローン攻撃を多用したのは周知の事実だが、ライフルによる狙撃と違い、そこに発生するコラテル・ダメージ(周辺被害)の確率は?しかして、「罪なき少女を犠牲にしてまでも、テロリストを攻撃すべきか」。そんな本作の問いに対する、あなたの答えは?
軍人と政治家、命令する人間と命令を実行する人間、さまざまな立場と役割が交錯する中、ドローンからのミサイル発射の命令は下されるの?その結末は?そんな現実を、本作からしっかり勉強したい。
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監督:ギャヴィン・フッド
イギリス
[ロンドン]常設統合司令部
キャサリン・パウエル大佐(常設統合司令部司令官)/ヘレン・ミレン
ムシュタク・サディック伍長(情報部員)/バボー・シーセイ
[ロンドン]コブラ・オフィス(国家緊急事態対策委員会)
フランク・ベンソン中将(国防副参謀長)/アラン・リックマン
ブライアン・ウッデール(閣外大臣)/ジェレミー・ノーサム
アンジェラ(政務次官アフリカ担当)/モニカ・ドラン
ジェームズ・ウィレット(シンガポールへ外遊中の外務相)/イアン・グレン
アメリカ
クリーチ空軍基地
スティーヴ・ワッツ中尉(ドローン操縦士)/アーロン・ポール
キャリー・ガーション(上等航空兵)/フィービー・フォックス
[ハワイ]パールハーバー画像解析班
ルーシー(画像分析官)/キム・エンゲルブレヒト
[ホワイトハウス]
ケン・スタニツク(北京へ外遊中の国務長官)/マイケル・オキーフ
ミズ・ゴールドマン(国家安全保障会議上級法律顧問)/ライラ・ロビンズ
ケニア
[ナイロビ]テロリストの隠れ家付近
ジャマ・ファラ(現地工作員)/バーカッド・アブディ
アリア(標的の巻き添え被害を受ける9歳の少女)/アイシャ・タコウ
隠れ家 ソマリアのイスラム武装勢力アル・シャバブ
アイシャ・アル・ハディ(英名スーザン・ダンフォード)(東アフリカ最重要指名手配のテロリスト)/レックス・キング
2015年・イギリス映画・102分
配給/ファントム・フィルム
<現代戦では、「暗殺」も遠隔操作で!>
章子怡(チャン・ツィイー)、李冰冰(リー・ビンビン)、仲村トオル等が出演した婁燁(ロウ・イエ)監督の中国映画『パープル・バタフライ(紫蝴蝶/PURPLE BUTTERFLY)』(03年)は、時代と舞台を1937年の「日華事変」直前の排日・抗日運動が盛り上がる1931年の上海に設定し、日本軍諜報機関のボス暗殺を巡るスパイたちの暗躍を描いたシリアスな傑作だった(『シネマルーム17』220頁参照)。また、韓国映画『暗殺』(15年)は1933年当時の朝鮮・京城(現在のソウル)を舞台とし、朝鮮総督司令官の「暗殺」を巡って、①メチャカッコいい女スナイパー、②複雑極まりない二重スパイ、③無国籍風の殺し屋、の三者が織りなすエンタメ巨編だった(『シネマルーム38』176頁参照)。さらに、司馬遼太郎が第42回直木賞を受賞したデビュー小説を篠田正浩監督が映画化した『梟の城 owl’s castele』(99年)は、中井貴一演じる伊賀忍者・葛籠重蔵が暗殺のターゲットである太閤秀吉の築いた巨大な大阪城に忍び込むまでの紆余曲折のストーリーと、目の前にいる老人と対話するシーンの対比が圧巻だった(『シネマルーム1』117頁参照)。
暗殺のためにはあらゆる危険を犯してターゲットに近づかなければならないから、そこに至るまでの緻密な計画と地道な活動の積み重ねが三者三様の、映画の醍醐味だった。桜田門外で大老・井伊直弼が水戸藩士の過激派によって暗殺された「桜田門外の変」(1860年)や、ハルビン駅で伊藤博文が安重根によって暗殺された「伊藤博文暗殺事件」(1909年)は今なおずっと語り継がれ映画化もされているが、それは暗殺に至るまでの過程が興味深いからだ。
それに比べて現代戦における暗殺は、近時開発と進歩が著しいドローンを目として使い正確な情報を収集・整理したうえで、ドローンからターゲットに対してミサイルを撃ち込めばそれでOK。暗殺のためにスパイや暗殺団をターゲットに接触させる必要はなく、遠隔操作で可能というわけだ。しかして、本作の邦題『アイ・イン・ザ・スカイ』は原題『Eye in
the sky』をそのまま使ったものだが、『世界一安全な戦場』というサブタイトルは日本独自のもの。さて、あなたは何とも皮肉っぽいこのサブタイトルをどう理解し解釈する?
<「狙撃」もライフルからミサイルへ!>
私は『Uボート 最後の決断』(03年)(『シネマルーム7』60頁参照)、『U・ボート(ディレクターズ・カット版)』(97年)『シネマルーム16』304頁参照)、『ローレライ』(05年)(『シネマルーム7』51頁参照)等の「潜水艦もの」と並んで、『スターリングラード』(01年)(『シネマルーム1』8頁参照)、『山猫は眠らない2ー狙撃手の掟ー』(02年)(『シネマルーム3』128頁参照)、『山猫は眠らない3ー決別の照準ー』(04年)(『シネマルーム8』381頁参照)等の「狙撃もの」映画が大好き。それは、一瞬の集中力のすごさが映画の緊張感とリアル感を高めるためだ。かつてのハリウッドの大スター、ジョン・ウェインらが登場する拳銃やライフルをガンガンぶっ放す西部劇も面白いが、一発の銃弾にすべてを集中する「狙撃もの」は別の意味で面白い。
ところが、人間の視力と集中力を使わなくても、現在のように、ドローン(の目)を使い、遠隔地にある作戦室からミサイル(ヘルファイア)を発射してターゲットを狙撃することが可能になれば、話は別。目は狙撃兵の肉眼からドローン(の目)に代わり、武器はライフル銃からミサイル(ヘルファイア)に代わってしまうわけだ。その結果、現代戦では狙撃もライフルからミサイルへ!そんなテーマを設定した本作は、現代の戦争を考える上で必見!
<コラテル・ダメージ(周辺被害)とは?>
ライフルによる「狙撃」もミサイルによる「狙撃」も、ターゲットの暗殺という目標への到達可能性ではそれほど違わないが、ライフルによる狙撃はターゲットとなる人間一人だけの被害にとどまるのに対し、ミサイルによる狙撃はいかにピンポイントであっても一人のターゲットだけでなく被害が一定範囲に広がるという違いがある。そのため、ターゲットの近くに無関係な人間がいたり、ミサイルの到達時間(本作では50秒)の間に何らかのハプニングで人間がそこに近づいたりすると、被害がターゲット以外に広がってしまう危険がある。ライフルによる狙撃と違って、ドローンからターゲットに対しミサイルを撃ち込む場合に、ターゲット以外に発生する被害を「コラテル・ダメージ(周辺被害)」と言うそうだが、さて本作に見るドローンからのミサイル発射によるコラテル・ダメージの程度は?
俺はそんなことまで知らないよ。そう言ってしまえばそれまでだが、さてそう言える人間はどれくらいいるの?もし、あなたが遠隔地にある作戦室の責任者だとしたら、どうする?あなたは迷うことなくミサイル発射の命令を下すことができる?またあなたがミサイルの発射ボタンを押す任務を負っているなら、あなたは迷うことなくミサイル発射のボタンを押すことができる?
<ドローンあれこれ!ドローン操作あれこれ!>
近時ドローンが実用化されるスピードは著しく、ドローンによる写真撮影やドローンによる高層建築物への宅配は少しずつ一般市民の日常生活に取り入れられている。しかして、本作には①ハチドリ型ドローン(ハミングバード)(体長16cmほどの超小型無人偵察機)、②昆虫型ドローン(虫)(体長6cmほどの超小型無人偵察機)、③MQ-9リーパー(上空6000メートルを飛ぶ無人偵察機で、長い航続距離と高い監視能力および攻撃能力を持つ)という3種類のドローンが登場するのでそれに注目!
①と②のドローンを、テレビゲームのリモコンと同じような小さなリモコン盤で操作するのは、ケニアの現地工作員のジャマ・ファラ(バーカッド・アブディ)。いくら現地住民の中に紛れ込んでいるとはいえ、厳重な警戒の中でテレビゲームの真似事をするのは危険がいっぱいだ。
他方③のMQ-9リーパーはドローンとは思えない巨大な代物だが、ある意味で本作の主人公。本作に見る①、②のドローンのリモコン盤操作がドローンの操縦なら、③の巨大なドローン、MQ-9リーパーの操縦もドローンの操縦だが、そこには月とすっぽんほど大きな違いがある。MQ-9リーパーを操縦して目としての通常の任務を行っているのは、アメリカのクリーチ空軍基地で働くスティーヴ・ワッツ中尉(アーロン・ポール)と上等航空兵のキャリー・ガーション(フィービー・フォックス)の2人だが、彼らは今回はじめてそこからヘルファイアミサイルの発射という攻撃任務を遂行することになる。本作中盤では想定外の「コラテル・ダメージ」が出現する中、MQ-9リーパーのミサイル発射ボタンを握るワッツ中尉とミサイル発射の命令を下す後述のキャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)との間で深刻な「論争」が発生するのでそれに注目!
<基地あれこれ。作戦室あれこれ。政治家の役割は?>
本作は実は「暗殺」がテーマではない。ロンドンにある常設統合司令部の司令官パウエル大佐に与えられた本来の任務は、イスラム教に改宗した英国籍の女で、テロ組織・アルシャパブに属する重要指名手配犯のスーザン・ダンフォード、別名アイシャ・アル・ハディ(レックス・キング)の「捕獲」だ。MQ-9リーパーの「目」によって、スーザンがケニア・ナイロビの隠れ家に入っていくのをつきとめたパウエル大佐は、ハチドリ型ドローンと昆虫型ドローンの目によって、スーザンが新たな自爆テロ実行の計画を練っていることを知り、直ちに捕獲作戦から暗殺作戦に切り替えようとしたが、それには誰の了解(決済)が必要なの?
本作にはパウエル大佐が勤務するロンドンの常設統合司令部の他、前述したワッツ中尉とキャリーが勤務するアメリカのクリーチ空軍基地やハワイの画像分析官ルーシー(キム・エンゲルブレヒト)が勤務するハワイの基地が登場する。そこで働くのは当然全員軍人だし、前述したナイロビで働く現地工作員のジャマも軍人に準じる役割(?)だ。それに対して、ロンドンのコブラ・オフィス(国家緊急事態対策委員会)に結集するのは、軍人は国防副参謀長たるフランク・ベンソン中将(アラン・リックマン)一人だけで、閣外大臣のブライアン・ウッデール(ジェレミー・ノーサム)と政務次官でアフリカを担当している女性アンジェラ(モニカ・ドラン)は政治家だ。
ちなみに、戦前の日本は議会制民主主義国であっても、万世一系の天皇が「日本国の元首」として君臨するとともに、陸海軍の統帥権を一手に握っていたが、戦後は文民統制が徹底された。つまり、軍(自衛隊)のトップの判断だけでは軍隊(自衛隊)を動かすことはできず、文官のトップたる総理大臣の命令が不可欠とされたわけだ。それは西欧諸国に共通する原則で、アメリカでも核のボタンを握るのは軍のトップではなく大統領だ。もっとも、中国は毛沢東による1949年の新国家建国以降、中国共産党主席が国家主席を兼ね、更に軍(人民解放軍)主席も兼ねているから要注意・・・。
<軍人と政治家の連携は?責任の所在は?>
本作を観ていると、現代戦におけるグローバリズムがここまで進んでいることに驚かざるをえない。また、あれこれの基地、あれこれの作戦室が同時進行で一つの作戦を進めていくことの大変さに同情せざるをえない。そこで大きく浮上してくるテーマが、軍人と政治家との立場の違い、責任の取り方だ。一般的に戦争をやりたがるのが軍人、それに対して結果責任を負いたくないのが政治家だからその調整は大変。つまり、スーザン捕獲作戦の現場司令官たる常設統合司令部のパウエル大佐は作戦を実行するについて、いちいちベンソン中将の了解(決済)をとる必要があるうえ、さらにベンソン中将はブライアン閣外大臣やアンジェラ政務次官たち政治家の了解(決済)をとりつけなければならないわけだ。
ところがスクリーン上を見ていると、ブライアン閣外大臣が優柔不断なら、さらにその上司たるジェームズ・ウィレット外務相(イアン・グレン)も優柔不断。アメリカのホワイトハウスのケン・スタニツク国務長官(マイケル・オキーフ)と国家安全保障会議上級法律顧問のミズ・ゴールドマン(ライラ・ロビンズ)はイギリスに比べれば明らかに強硬で決断も早いが、シンガポールへ外遊中のイギリスのジェームズ外務相が更に総理の了解(決済)まで必要だと言い始めると、アレレ・・・。
スーザンが潜入している隠れ家の様子は、昆虫型ドローンによってリアルタイムで各基地や作戦室にある大型スクリーン上に映し出されているが、スーザンや自爆用の爆弾を巻き付けたチョッキを着たテロリストが外に出てしまえば、作戦はもはや万事休す。コトは時間との勝負なのだ。作戦を指揮するパウエル大佐は上層部の政治家たちの決断力のなさにイライラ状態だが、さて政治家たちの決断は?その連携は?その責任は?
<想定外の事態は、パンを売る少女の出現!>
本作冒頭には、ナイロビで普通の市民生活を営む家族として、9歳の少女アリア(アイシャ・タコウ)が無邪気にフラフープで遊ぶ姿が登場する。ナイロビでは「西洋かぶれ」は厳禁だから、フラフープも厳格な目で見るとヤバそうだが、アリアの両親はアリアにできるだけ自由に勉強と遊びをさせたがっているようだ。もっとも、ナイロビでは子供も勉強と遊びだけではなく、家計のために街角に立ってパンを売ることも大切な役割らしい。
スーザンの「捕獲」から「暗殺」に方針を切り替えたパウエル大佐が、コブラ・オフィスやホワイトハウスと連携を取って政治家から「ミサイル攻撃」の了解をとりつけたにもかかわらず、突然発生した想定外の事態は、アリアが隠れ家の前の道でパンを売り始めたこと。これはMQ-9リーパーの目に何か動くものが見えたため、ズームアップして確認した結果はじめてわかったものだが、これにはパウエル大佐もビックリ!パウエル大佐は直ちに情報部員のムシュタク・サディック伍長(バボー・シーセイ)に命じてコラテル・ダメージの確率をシュミレーションさせると、少女がコラテル・ダメージを受ける確率は50~65%と出たから、これはヤバイ・・・。ただし、この機会を逃せばスーザン殺害の機会が遠のいてしまうことはまちがいない。
そのため、パウエル大佐は一方で直ちにパンをすべて買い取るようジャマに指示すると共に、他方であらためてミサイル発射の許可をベンソン中将に求め、ベンソン中将はブライアン閣外大臣やアンジェラ政務次官に同様の許可を求めたが、さてスクリーン上に見る政治家たちの決断は?さらに、現実にミサイル発射のスイッチを押すワッツ中尉の決断は?
<数字のごまかしは、豊洲市場でもここでも・・・>
東京都の築地市場から豊洲市場への移転問題は、小池百合子新都知事の登場で新たな局面を迎えたが、今年1月14日に豊洲市場の地下水モニタリング調査の最終結果(9回目)が発表され、最大で環境基準の79倍もの有害物質のベンゼンが検出されたことによって更に新たな局面に・・・。本作と同じ日に観たベン・アフレック主演の『ザ・コンサルタント』(16年)では、リビング・ロボ社の15年分の帳簿をたった1日で調べ上げ、巨額の不正会計を発見した後に、あっと驚くストーリーが展開した。また、2020年の東京オリンピックの開催費用を巡ってもさまざまなメスが入り、当初7340億円だったものが1兆円、2兆円と膨れ上がっていく中、「2兆、3兆と豆腐屋じゃあるまいし」という小池百合子新都知事の名ゼリフが記憶に新しい。要するに、数字のごまかしは会社の帳簿から汚染物質のデータ(改ざん?)、果ては東京オリンピックの開催費用(水増し?)に至るまで、どこにでもあるということだ。そんな目でサディック伍長のシュミレーションのやり方を見ていると、いかにも正確な計算でコラテル・ダメージのリスク(数字)をはじき出しているように見えるが、実は・・・。
軍の上層部はともかく、ややもすれば安全側、無責任側に立って決断を下したがらない政治家たちにミサイル攻撃をOKさせるためには、パンを売る少女に及ぶコラテル・ダメージの確率を50%以下に下げなければだめ。そう考えたパウエル大佐はサディック伍長に対して、ミサイルの到達地点を少しずらせばダメージの確率が下がるのでは・・・?と暗示をかけ(指示をし?)、その真意を理解したサディック伍長はパウエル大佐の狙い通り危険率が50%を切る数字をパウエル大佐に示したから、アレレ・・・。そんな姿を見ていると、2011年3月11日の東日本大震災の中で発生した福島第一原発の処理をめぐるさまざまな数字もひょっとしてごまかしばっかり・・・?
<衝撃のラストをどう解釈?それでも決断は不可欠!>
本作のテーマは、「罪なき少女を犠牲にしてまでも、テロリストを攻撃すべきか」だ。そんな本作では「正義とモラルを問う衝撃のラスト」が焦点になるから、その「衝撃のラスト」はあなた自身の目でしっかりと!
2016年夏最大の話題作となった『シン・ゴジラ』(16年)では、陸上生物に特化した第3形態の巨大不明生物の進行を阻止するため、対戦車ヘリコプターによる武力攻撃が認められた。これは、「災害緊急事態の布告の宣言」を受けた、自衛隊初の防衛出動だ。ところがスクリーン上では、間の悪いことに作戦展開区域内に逃げ遅れた住民が確認されたため、大河内総理はやむなく攻撃中止を命ずることになったからアレレ・・・。今の日本の防衛出動ってそんなレベルなのだと大いに失望したものだ(『シネマルーム38』22頁参照)。それに対してサディック伍長に数字のごまかしを命じてまでスーザンへのミサイル攻撃に固執したパウエル大佐の執念は、結果的にどこまで実現できたの?そして、「衝撃のラスト」はいかなる展開に?
トランプ大統領の就任式を去る1月20日に終えた今、マスコミの焦点は新大統領の各種「政策」に移っているが、今のところ、オバマ前大統領が多用した無人攻撃機による敵要人のピンポイント攻撃を継続するのか否かについては全く発表されていない。しかし、パンフレットにある町山智浩氏(映画評論家)の「ドローンというレッサー・イーヴル(最善の悪)。」によれば、「2016年7月、オバマ大統領は、自らが許可したドローン(無人攻撃機)による殺害数を発表した。就任した2009年から2015年までの6年間で、アメリカはドローンで2372人から2581人のテロリストを殺害した。」そうだ。また「それらのテロリストに、アメリカ政府は09年から15年までに473回ものドローン攻撃を行ったという。それに巻き込まれて64~116人の民間人が死亡した。市民団体の調査では被害者数はもっと多い。」そうだ。2009年1月20日の就任演説で「核の廃絶」を訴えたオバマ前大統領だが、現実の政策としてはブッシュ大統領が始めた「対テロ戦争」を引き継ぎながら、地上軍を大幅に削減し、代わりに無人攻撃機による敵要人のピンポイント攻撃を増やしたわけだ。オバマ大統領が現実に行った、ドローンによるミサイル攻撃の実態を本作を鑑賞する中であらためて確認したい。そして、あなたなりの論点を整理するとともに、「それでも決断は不可欠!」という当然の結論だけはしっかりキープしておきたい。
2017(平成29)年1月26日記