パッセンジャー |
<TOHOシネマズ西宮OS>
2017年3月26日鑑賞
2017年3月28日記
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監督:モルテン・ティルドゥム
脚本:ジョン・スペイツ
オーロラ・レーン(作家)/ジェニファー・ローレンス
ジム・プレストン(エンジニア)/クリス・プラット
アーサー(バーで働くアンドロイド)/マイケル・シーン
ガス・マンキューゾ(クルーの一人、甲板長)/ローレンス・フィッシュバーン
ノリス船長/アンディ・ガルシア
2016年・アメリカ映画・116分
配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
◆昨今は中東(シリア、イラク)、アフリカ(ナイジェリア、ソマリア、スーダン等)等からヨーロッパへの移民問題が世界的な大問題になっているが、近未来では、超大型の移民宇宙船に乗って大量に地球から他の惑星に移住!その時代では宇宙船の運行はすべて自動運転になっているようだが、移住に要する時間は?本作が設定した20XX年の移民宇宙船アヴァロン号のクルーは258人、乗客(パッセンジャー)は5000名、到着までの時間(年数)は120年だが、その間人間は全員「冬眠」しているからノープロブレムだ。
『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』(14年)(『シネマルーム35』29頁参照)で面白い演出を見せたモルテン・ティルドゥム監督がメガホンを取り、『プロメテウス』(12年)(『シネマルーム29』230頁参照)のジョン・スペイツが脚本を手がけたと言うから、この「SFもの」は面白そう。そう思ったが・・・。
◆東海道新幹線は1964年の開業以来一度も人身事故を起こしていないのが自慢だが、『新幹線大爆破』(75年)のような突発的な事件が起こることも・・・。したがって、オール自動運転のアヴァロン号は、ホントに120年間何の事故もなく、地球から目的地の惑星まで移動できるの?もし途中で隕石にでもぶつかって壊れてしまったり、そうでなくとも、例えば誰かが冬眠から目覚めてしまったらえらいことになるのでは・・・?
そんな事故が、現実にパッセンジャーの1人であるジム・プレストン(クリス・プラット)の身に起きたから大変だ。本作導入部は、広々としたアヴァロン号の中で一人目覚めてしまった自分の立場に戸惑い、焦り、『オデッセイ』(15年)で見たマット・デイモン扮する宇宙飛行士と同じように(『シネマルーム37』34頁参照)、事態を打開するためのあらゆる手段を試みるジムの姿が映し出される。しかし、残念ながらそのすべては空振りに・・・。
◆その結果、今やジムはアンドロイドのバーテンダーであるアーサー(マイケル・シーン)との会話を楽しみながら、一人アヴァロン号内で日々の生活を送る「現実」を受け入れていた。しかし、つい魔が差した(?)のか、冬眠中のカプセルの中の女性オーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)のプロフィールに興味を持ったジムは、そのカプセルからオーロラを目覚めさせてしまうことに・・・。
これにてジムの孤独は解消したが、新たにジムと同じ苦しみを味わうことになったのがオーロラだ。しかし、そこは若い男と女のこと。本作中盤では、過酷な運命を受け入れ、広い広いアヴァロン号の中で、アーサーも仲間に入れながら、ジムとオーロラの恋模様が全開していくことになる。
このまま何の不自由もなく「共に白髪になるまで」2人で仲良く暮らし、2人ともほぼ同時に朽ち果ててしまえば、宇宙船の中での2人だけの豪華な生活も悪くはないのだが・・・?
◆高級ホテルが高級ホテルであるための何よりも重要な条件は、顧客の秘密(プライバシー)を守ること。したがって、ジムのようなパッセンジャーはアヴァロン号に対して高級ホテルをはるかに越える莫大な料金を支払っているにもかかわらず、アヴァロン号のサービス員たるアーサーが、ジムがオーロラに対して結婚指輪を渡そうかという状況下でオーロラに対して「ある秘密」を暴露してしまうのは、もっての外だ。以降オーロラは気が狂ったようになり、ジムとも口を聞かなくなったのは仕方ない。
他方、そんな事態の中でクルーの一人で甲板長であるガス・マンキューゾ(ローレンス・フィッシュバーン)が目覚めたり、アヴァロン号に次々と異変(故障)が起きたり、それまで退屈な恋愛劇だった本作のストーリーは大きく転換していくことになるので、それに注目!
◆120年間絶対に故障なし。そして、パッセンジャーは惑星到着の4カ月前に冬眠から目覚めるから、実質4カ月のフライトになるわけだ。ところが、ジムが目覚めたのは出発から30年後だ。すると、ジムもオーロラもあと90年間アヴァロン号の中で生き続けることになるが、その2人が恋愛状態からケンカ状態に移行する中で、アヴァロン号はあちこちに重大な故障が出てきたから大変。これでは、冬眠している258人のクルーと5000人のパッセンジャーたちはどうなるの?このままアヴァロン号が爆発してしまえば、クルーやパッセンジャー(の遺族)への損害賠償責任は?
バーテンダーのアーサーも壊れてしまい、ガスも病気で死んでしまう状況下でアヴァロン号に次々と故障が発生する中、ジムとオーロラは一体どんな対応を?
◆『地球でたったふたり』(07年)は15歳と13歳の姉妹が大都会東京の中で、「逃げて、逃げて、どこまでも逃げろ」という中年ヤクザが残した最後のセリフどおり、絶望的な状況下での逃避行を描いた「掘り出し物」の映画だったが、そのタイトルはあくまで抽象的なものだった(『シネマルーム22』264頁参照)。それに対して、本作に見る「アヴァロン号でたった2人」は、文字通りアヴァロン号の中で目覚めた後の90年間を2人で過ごさなければならないものだったが、こんなに事故が続いたのではアヴァロン号の爆発も近いのでは・・・?
そんな後半からの展開の中で仲直りした(?)2人が生き延びるための「死闘」をくり広げるのが本作のハイライトになるが、その出来はイマイチ・・・。更に、何とかアヴァロン号の爆発を回避し再び船内に平和が戻ってきた中で訪れるエンディングの安易さは・・・?映画『タイタニック』(97年)は悲劇的結末の中に見る、貧乏な若い絵描きと貴族の令嬢との純粋な愛が感動を呼んだが、「タイタニックの宇宙船版」とも言われている本作の、若い男女の愛の姿とアヴァロン号内での90年間の生きザマ(?)をあなたはどう見る?
2017(平成29)年3月28日記