モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由(フランス映画・2015年) |
<シネ・リーブル梅田>
2017年4月2日鑑賞
2017年4月6日記
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監督:マイウェン
ジョルジオ(レストラン経営者)/ヴァンサン・カッセル
トニー(弁護士、ジョルジオの恋人)/エマニュエル・ベルコ
ソラル(トニーの弟)/ルイ・ガレル
ハベット(ソラルの恋人)/イジルド・ル・ベスコ
アニエス(ジョルジオの昔の彼女)/クリステル・サン=ルイ・オーギュスタン
2015年・フランス映画・126分
配給/アルバトロス・フィルム、セテラ・インターナショナル
◆イントロダクションに「甘いだけの物語はもう十分、もっとリアルで官能的な大人が満足できる恋愛映画が観たい-そんな女性たちの声に応えて、期待の新鋭監督マイウェンが華やかに登場した」と書かれているように、とりわけ本作の恋愛描写は過激。導入部から前半にかけては、本作でトニー役の第68回カンヌ国際映画祭の主演女優賞を受賞したエマニュエル・ベルコと、プレイボーイの中年男ジョルジオ役を演じるヴァンサン・カッセルのかなりハジけた、そしてかなり過激な恋愛、結婚、出産に至る風景が描かれる。
トニーは弁護士という設定だが、仕事をしているシーンは全く登場せず、クラブで遊んでいるシーンやジョルジオからの猛烈なアプローチにとまどいながらもそれに応え、遂にはジョルジオの魅力にはまってしまう女の姿を・・・。しかし、レストランを経営しているというリッチでカッコいいが少しヤバそうな男ジョルジオは、ホントにいい夫、いい父親になれるの・・・?
◆本作冒頭は、どことなくイライラし思いつめたようなトニーが、スキー場でこれから滑ろうとしているシーンから始まる。意を決したように滑り始めたトニーのスピードは、常軌を逸したもの。それを見た一人娘は「スピードを出しすぎよ」と心配したが、案の定・・・。
スキー場で足を骨折すれば重態になるケースが多いが、トニーの場合もそれだ。弁護士という仕事に従事していれば、それを考えるべきが当然だが、本作を見ている限りトニーのその点の自覚はゼロ。その結果、トニーは長期の温泉施設でのリハビリを余儀なくされてたが、そのリハビリの中で、トニーの心の中に思い出されてくるのが、今から10年前の、あの辛かったけれども激しく燃え、充実していたジョルジオとの恋の日々だったらしい。
なるほど、女優として活躍する中で、1993年にリュック・ベッソン監督と結婚し、破局したのち、ふたたび女優から監督へと本格復帰してきた、1976年生まれのマイウェン監督は、若いけれどもイキな設定をするものだ。リハビリ生活はかなり厳しいから、その上にかつての恋の苦しさも思い出すと、よけいしんどくなりそうだが、「10年前の思い出」ともなると、ひょっとして苦しいことよりも楽しいことの方がより多くかつ強く思い出されてくるのかも・・・。
◆本作で、成功した金持ちでプレイボーイの実業家、そしてカッコいいけど、どことなくヤクザっぽい男ジョルジオを演じたヴァンサン・カッセルは、モニカ・ベルッチと共演した『アレックス』(02年)(『シネマルーム22』165頁参照)での演技が光っていたし、ハリウッド映画も含め多くの作品で個性的な味をみせるフランス人俳優だ。近時は『ブラック・スワン』(10年)(『シネマルーム26』22頁参照)や『たかが世界の終わり』(16年)(『シネマルーム39』未掲載)の出演でも存在感を見せていた。
世の中には、魅力的であっても結婚には不向きな男がいるもの。多分、ジョルジオはそんな男の典型だから、トニーとの出会い、恋愛、結婚、出産までの一本道を過ぎた後の「各種トラブル」を、本作でしっかり「検証」したい。正妻の他に女のカゲがチラホラするくらいのことは世の常だが、ジョルジオのそれは、かつての恋人アニエス(クリステル・サン=ルイ・オーギュスタン)へのケアぶりを含めて、常軌を逸しているので、それに注目!
◆「恋愛もの」の好きな人、とりわけ「ドロドロもの」が好きな人には、本作は必見!しかし、いくら「いかにも仏映画らしいリアルな恋愛映画」とはいえ、キネマ旬報4月上旬号の「REVIEW日本映画&外国映画」で本作を担当した映画評論家の佐々木敦氏は、「でも個人的にはこういう男女の感情のもつれ合いは苦手です。」と書いている。また、山口剛氏は「監督マイウェンと主演のE・ベルコ、二人の女性が作り出したヒロインは多分に男性依存症的な恋愛依存症的でその自己陶酔的演技と相まって終始なじめなかった。」と書いている。
私も本作で第68回カンヌ国際映画祭の主演女優賞を受賞したエマニュエル・ベルコの演技には感心するものの、本作にみるトニーの行動には賛同できないものが多い。そもそもジョルジオのようなプレイボーイに惚れ込み、「子供が欲しい」というトニーの言葉に従って、せっせとそれに励むのはいいが、そこにはかなりのリスクがあることはしっかり頭に入れておかなければダメなのでは・・・?
2017(平成29)年4月6日記