雪女(日本映画・2016年) |
<シネ・リーブル梅田>
2017年4月2日鑑賞
2017年4月10日記
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監督:杉野希妃
雪女、緒方ユキ/杉野希妃
緒方巳之吉/青木崇高
緒方ウメ/山口まゆ
雨宮茂作、雨宮栄作/佐野史郎
ばあば/水野久美
緒方ハル/宮崎美子
雨宮源太/山本剛史
雨宮幹生/松岡広大
川島サトコ/梅野渚
矢野昌平/森脇和成
小林/川本三吉
永田/大窪シゲキ
2016年・日本映画・96分
配給/和エンタテインメント
◆私が注目する女優・監督・プロデューサーの杉野希妃が監督兼主演した本作は、オリジナル脚本を中心に監督、プロデュースしてきた彼女には珍しい「原作もの」(但し、監督第2作の『欲動』(『シネマルーム35』193頁参照)はオリジナル脚本だったが、監督第1作の『マンガ肉と僕』(14年)(『シネマルーム37』140頁参照)は「原作もの」だった)。また、「原作もの」といっても、昨今巷に氾濫する若者向けの恋愛がテーマの「原作もの」ではなく、本作の原作はいうまでもなく小泉八雲の「怪談」の中の一編として有名な「雪女」だ。
本作のパンフレットには、小泉八雲の曾孫である、民族学者の小泉凡氏のコラムがある。そこでは、「時空を超える、異類婚姻譚の魅力―映画『雪女』によせて―」と題されているとおり、「人間以外の動物や、神々、妖怪等の異類と、人間が結婚し愛し合って子供をもうける。しかし、人間側が自分の結婚相手が異類であると知った途端、結婚生活は破綻する。そんな異類婚姻の物語」についていろいろと解説されている。杉野希妃がそんな物語に惹かれ、映画化しようと考えたのは一体なぜ?
◆近時のハリウッド映画には「バンパイアもの」が多いが、「雪女」でも「バンパイア」でも、それが美人なら、男がそれに魅かれていくのは仕方ない。パンフレットにある、映画評論家・映画監督の樋口尚文氏の「雪女は美しき女優たちのレジェンド」と題するコラムは、これまで映画やテレビに登場してきた歴代の「雪女」をすべて美人女優が演じていることを詳しく解説している、その上で本作における杉野希妃について、「杉野希妃のクラシックな美しさは、トリビアルなインディーズ映画よりも裕福な令嬢や爽やかな女教師のような虚構的な役柄がよく似合う」と称賛し、「杉野希妃は、かくして美貌という天分なくしては加われない雪女の系譜に見えざる確かな足跡をのこしてみせたのだった。」と結んでいる。
本作では、女優・杉野希妃が冒頭に登場する雪女役と、ある時代のある村で猟師をしている若者、緒方巳之吉(青木崇高)の前に突然現れた美しい女、ユキ役の二役を演じているが、さてその美しさは・・・?その評価は人によって、また男の好みによって大きく分かれるところだ。そしてまた、それによって本作の評価は分かれるだろう。
◆私は深田晃司監督の『歓待』(10年)(『シネマルーム27』160頁参照)以来、女優・監督・プロデューサーとしての杉野希妃に注目しているが、その後の活動が充実する中、今や彼女には「杉野組」ともいうべき、撮影・美術・照明・音楽等のスタッフが揃ってきた。また、脚本やプロデューサーそして俳優の関係でも、「杉野組」ともいうべき充実度が目立っている。
『3泊4日、5時の鐘』(14年)(『シネマルーム37』144頁参照)で杉野希妃は、日本映画大学の学生であった三澤拓哉を監督に起用したり、新人女優の福島珠理や夏都愛未等を女優やアシスタントプロデューサーとしてデビューさせたが、本作では福島珠理はコプロデューサーとなり、夏都愛未はスクリプター兼女子高生A役で、「杉野組」の一員として活躍している。杉野希妃が、出演・監督・プロデュースする作品でいつも特徴ある音楽を提供しているのがsow jowだが日本の古典ともいうべき「雪女」を映画化するについて、sow jowが作り使用している本作の音楽は極めて印象的なものだから、それにも注目!そんな状況下、私は今や杉野希妃個人のみならず、「杉野組」というチームとして、本作や今後も続くであろう各作品の完成度を計り、更なる展開に注目したい。
2017(平成29)年4月10日記