キングコング:髑髏島の巨神(アメリカ映画・2017年) |
<TOHOシネマズ西宮OS>
2017年4月8日鑑賞
2017年4月12日記
ハリウッド版『GODZILLA』(14年)のハイライトはゴジラVSムートーの戦いだったが、キングコングの対決相手は?そもそも髑髏島とは?また「巨神」とは?
日本版『シン・ゴジラ』(16年)はシリアスさが魅力だったが、本作にみる「モナーク」という組織や「地球空洞化説」もそれなりにシリアスな設定。しかし、「原住民」や太平洋戦争の生き残りが登場してくると、ストーリーは俄然エンタメ調に・・・。
それも悪くはないと割り切ってメインイベントたる巨大生物同士の対決を楽しみ、かつ2020年に予定されている『ゴジラVSキングコング』の頂上決戦にも期待したい。
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監督:ジョーダン・ボート=ロバーツ
ジェームス・コンラッド(元SAS大尉、フリーランスの傭兵)/トム・ヒドルストン
メイソン・ウィーバー(女性反戦カメラマン)/ブリー・ラーソン
プレストン・パッカード大佐(ベトナム戦争の現場の士官)/サミュエル・L・ジャクソン
ビル・ランダ(政府特殊研究機関「モナーク」のメンバー)/ジョン・グッドマン
サン(「モナーク」の生物学者、ビル・ランダの部下)/ジン・ティエン
ハンク・マーロウ(第2次世界大戦中に島に不時着した米軍戦闘機のパイロット)/ジョン・C・ライリー
ジャック・チャップマン(パッカードの部下)/トビー・ケベル
ビクター・ニーブス(ランドサッドの科学者)/ジョン・オーティス
ヒューストン・ブルックス(「モナーク」の地質学者、地球空洞説の提唱者、ビル・ランダの部下)/コリー・ホーキンズ
ミルズ(パッカードの部下)/ジェイソン・ミッチェル
コール(パッカードの部下)/シェー・ウィガム
スリフコ(兵士)/トーマス・マン
レルス(パッカードの部下)/ユージン・コルデロ
グンペイ・イカリ(第2次世界大戦中に島に墜落した日本人の戦闘機パイロット)/MIYAVI
2017年、アメリカ映画、118分
配給/ワーナー・ブラザース映画
<ハリウッド版は社会問題提起より怪獣対決がメイン!>
1954年の日本版『ゴジラ(1954)』(54年)は社会派問題提起作だった(『シネマルーム33』258頁参照)が、それから60年後の2014年のハリウッド版『GODZILLA』(14年)は「怪獣対決」をメインにした娯楽作だった(『シネマルーム33』254頁参照)。また、それらに続いて公開された『シン・ゴジラ』(16年)は『ゴジラ(1954)』当時の「水爆実験」という社会問題提起とは異なるものの、「安保法制」「災害法制」「危機管理」等を強く問題提起した社会派問題作だった。しかして、今般新たにハリウッド版『キングコング:髑髏島の巨神』が登場したが、さてそのテイストは?
ハリウッド版『GODZILLA』には、「ムートー」という昆虫型の巨大生物が登場し、クライマックスではゴジラとオス、メス2匹(2羽?)のムートーとの死闘が展開され、本作のキングコングが住む髑髏島には、①バンブー・スパイダー(高足を持つ巨大なクモ型化物)、②スポア・マンティス(朽ちた巨大な倒木に完璧に擬態する巨大な昆虫系化物)、③リバー・デビル(タコとイカの合いの子のような巨大な水棲生物の化物)、④スカル・クローラー(2本の力強い腕と恐ろしい頭蓋骨のような顔をもつ、巨大ヘビに似た巨大生物)等のさまざまな巨大生物が住んでいるらしい。そして、本作のクライマックスはキングコングvsスカル・クローラーとの死闘になるそうだが、その出来は?
怪獣同士の闘いがメインと聞いて私は若干尻込みしたが、やはりハリウッドの「怪獣大作」は観ておかなくちゃ。そう考えて劇場へ。
<背景は、太平洋戦争からベトナム戦争まで>
『海賊とよばれた男』(16年)の冒頭は、米軍のB-29が東京へ爆弾の嵐を降り注ぐシーンから始まり、それを迎え撃つ日本の戦闘機の無力さが浮き彫りにされていた。その悔しさが、出光興産の創業者となった出光佐三のその後の生き方の原動力になるわけだ。それと同じように(?)本作は、南太平洋の「ある島」の上空で戦う日米の戦闘機と、両機が共に島に墜落していくシーンから始まる。戦闘機乗りの服装からして、これは太平洋戦争当時のようだが、そこで字幕に1944年と表示されるので、まずはそれを確認。
ところが、スクリーンはその後ベトナム戦争から米軍の撤退を国民に告げるニクソン大統領の姿が登場するから、時代は1973年に移ったことがわかる。ベトナムの現地で長年戦っていたアメリカ軍兵士たちが帰国できることを喜んだのは当然だが、なぜかプレストン・パッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)だけは浮かぬ顔。戦争にドップリ浸かってしまった彼は、どうやら戦争が終わるという現実をスンナリ受け入れられず、更なる敵、更なる戦いを望んでいるらしい。なるほど、そんな心の病もあるかもしれない。
しかし、「キングコング」の映画の導入部に、なぜ太平洋戦争やベトナム戦争の人間たちが登場してくるの?
<モナークとは?地球空洞化説とは?>
『シン・ゴジラ』のポイントは日本の官僚機構(の優秀さ)だったが、本作のポイントは「モナーク」と呼ばれる秘密機関。これは未確認巨大陸生生命体(MUTO)を調査・捜索するため1946年に、トルーマン大統領が設立した政府の秘密特殊機関だ。モナークの有力メンバーであるビル・ランダ(ジョン・グッドマン)と地質学者のヒューストン・ブルックス(コリー・ホーキンズ)が南太平洋の髑髏島の周辺で何隻もの船や飛行機が消息を絶ったことに着目し、「地球空洞説」を信奉するブルックスが髑髏島には未知の生命体がいると確信したところから本作のストーリーが始まっていくことになる。
まず、ランダとブルックスは、あと3日もすればソ連にこの島の存在を突き止められてしまうため、髑髏島を調査するための資金と、調査団を警備してもらう軍隊の応援が不可欠だと考え、その予算をつけてもらうべく、有力な某国会議員と直談判することに。日本の国会は今「森友問題」一色となり、「森友学園」が小学校用地を入手するについて、安倍総理大臣やその夫人、あるいは国会議員や官邸筋の「口利き」や「忖度」があったのか否かが大問題になっているが、本作でもそれは似たようなもの?しかして、スクリーン上では、上院議員の「今回だけだぞ!」の念押しを受け入れた上で、議会の議決もないままこの有力議員の独断で、ランダとブルックスたちの要請が「満額回答」になっていくからすごい。もっとも、スクリーン上ではともかく、「民主主義の権化」たるアメリカの国内ではホントにはこんな「口利き」や「忖度」は不可能なことだけはしっかり頭に入れておきたい。
それはともかく、モナークの中で唱えている「地球空洞化説」によれば、髑髏島は地球の内部と繋がっているため、その地表の調査が不可欠というわけだ。もちろん、そんな荒唐無稽な説明は誰も信用しないから、髑髏島調査の真の目的はランダとブルックスの腹の中だけに・・・。
<調査に赴く者たちの思惑は?調査の真の目的は?>
『シン・ゴジラ』では、ゴジラの登場という重大な危機に対応して組織された「巨大不明生物統合対策本部」を核として一糸乱れぬ対応がとれるかどうかが最大のポイントだったが、本作でパッカード大佐が率いるヘリ部隊と共に髑髏島の探検に赴く民間人たちの思惑はバラバラだ。まず、軍人のパッカード大佐は帰国する前に新たな任務が与えられたことに大喜びだが、部下たちの多くが不満顔だったのは仕方ない。他方、民間人では、まず英国陸軍特殊部隊に所属していたジェームス・コンラッド(トム・ヒドルストン)は相場の5倍の報酬をもらって現地を案内するのが役目だが、ハラの中ではこの仕事には何か裏があると直感しているようだ。また、女性ながらベトナム戦争の従軍カメラマンとして活躍していたメイソン・ウィーバー(ブリー・ラーソン)も、この調査には何か裏があると嗅ぎ付け不正を暴こうと目論んでいた。
ヘリ部隊が嵐の中を髑髏島へ強行突入し、地質調査のため爆弾をぶち込んだ後に登場する本作最初のハイライトは、『地獄の黙示録』(79年)さながらの「ヘリ部隊vsキングコングの戦い」となる。ヘリ部隊の本来の任務は髑髏島の地質を調査するモナークのランダやブルックスたちの護衛だが、爆弾を投下した後ヘリ部隊の前には全長30メートルを超える巨大な猿のような生物(=キングコング)が登場したから、兵士たちはビックリ。パッカード大佐はさすがに歴戦の勇士らしく、それに怯えることなく攻撃命令を下したが、その結果は散々なことに・・・。
地上に落とされたコンラッドが怒りに震えながらモナークの地質学者のブルックスに対して銃を向け、「この調査の真の目的は何だ!」と迫ったのは当然。そこではじめて、ブルックスの口から前述した髑髏島調査の真の目的が語られたから大変だ。すると「地球空洞化説」によれば、キングコングはやその天敵となるスカル・クローラー等の前述したさまざまな巨大生物が地球の内部に通じている髑髏島の地下から地表に這い出してきたということ・・・?
<原住民(?)とマーロウの登場にビックリ!!>
『シン・ゴジラ』が第40回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞したのはその問題提起がシリアスかつ現実的だったため、と私は理解している。それに比べると、本作はキングコングの造形のリアルさについては『シン・ゴジラ』と大差ないが、ストーリー展開はリアルさに欠けている。さらに、本作中盤からは顔や身体にド派手なペインティングを施した多くの原住民が登場するとともに、あの太平洋戦争で髑髏島に不時着したアメリカの戦闘機乗りのハンク・マーロウ(ジョン・C・ライリー)が登場してくるから、リアルさの欠如が一層際立ってくる。
マーロウの話によれば、マーロウは上空で死闘を繰り広げた日本人パイロットのグンペイ・イカリ(MIYAVI)と共に長年この髑髏島で生きてきたが、グンペイ・イカリは先年亡くなったらしい。さらに、マーロウがキングコングについて語る話しは、モナークの中で唱えられている「地球空洞化説」を明確に裏付けるものだった。つまり、キングコングは髑髏島の「守り神」でスカル・クローラーの地上への進出を阻止する役目を担っているらしい。なるほど、なるほど。それはそれで興味深い話だが、そこまで調査が進めば、それで調査団の任務は終了したのでは・・・?
<パッカード大佐の執念は?巨大生物との戦いは?>
すると、調査団はその後帰国するだけだが、ヘリがすべてやられてしまったうえ、パッカード大佐の部隊とコンラッド率いる民間人の部隊は離れ離れになっている今、どうやって合流し、どうやって帰国するの?さらに、コンラッドたち民間人はキングコングの役割をしっかり理解したが、パッカード大佐は殺された部下たちのため、キングコングへの報復を誓っていたから、キングコングVSスカル・クローラーの戦いの前に、パッカード大佐VSキングコングの戦いが必至なのでは・・・?そんな予想どおり、本作後半からはこの2つの戦いが展開していくことになる。
第1ラウンドのパッカード大佐VSキングコングの戦いでは、火炎に包まれたキングコングに一瞬不安を感じたが、そこはきっちり克服し、キングコングの勝ち!それに続く第2ラウンドたるキングコングVSスカル・クローラーの戦いが、『GODZILLA』で観たゴジラVSムートの戦いと同じように、本作のクライマックスになるが、さてその結末は?この戦いはどう見ても荒唐無稽なものだが、スクリーン上で観る巨大生物同士の対決はそれなりに面白くかつ迫力があるので、それに注目!ちなみに、2020年にはハリウッド版の「キングコングVSゴジラ」の対決も企画されているそうだから、それにも期待したい。
2017(平成29)年4月12日記