牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(台湾映画・1991年) |
<シネ・リーブル梅田>
2017年4月9日鑑賞
2017年4月24日記
「台湾ニューウェーブ」を代表する侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『非情城市』(89年)に並ぶ、楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の本作をはじめて鑑賞。
①国共内戦の敗北、②本省人と外省人、③長く続いた戒厳令と白色テロ、④「反攻大陸」のスローガンとプレスリーを始めとした洋楽へのあこがれ。そんな時代背景の中、屈折した若者たちの抗争は?恋愛は?生きザマは?
タイトルの意味がわかるのはラスト近くになってからだが、日本とは全然違う当時の台湾の若者たちの屈折ぶりをしっかり確認したい。
暗い画面の中、4時間にも及ぶ、『ウエストサイド物語』(61年)にも似た(?)ストーリーを追うのは大変だが、これはすごい!充実感と満足感でいっぱいになることはまちがいない!
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監督:エドワード・ヤン
脚本:エドワード・ヤン/ヤン・ホンヤー/ヤン・シュンチン/ライ・ミンタン
小四(シャオスー)(建国中学部の学生)/張震(チャン・チェン)
小明(シャオミン)/楊靜怡(リサ・ヤン)
王茂(ワンマオ)・小猫王(リトル・プレスリー)(小公園のメンバー、小四のクラスメート)/王啓讃(ワン・チーザン)
飛機(フェイジー)(小公園のメンバー、小四のクラスメート)/柯宇綸(クー・ユールン)
小四の母/金燕玲(エレイン・ジン)
小馬(シャオマー)(小四のクラスへの転入生)/譚志剛(タン・チーガン)
小虎(シャオフー)(小四のクラスメート)/周慧國(ジョウ・ホェイクオ)
ハニー(小公園のリーダー)/林鴻銘(リン・ホンミン)
滑頭(ホアトウ)(小公園のメンバー)/陳宏宇(チャン・ホンユー)
二條(アーティアオ)(小公園のメンバー)/王宗正(ワン・リンチェン)
小翠(シャオツイ)(滑頭の恋人、小公園のメンバー)/唐暁翠(タン・シャオツイ)
山東(シャンドン)(現在の217グループのリーダー)/楊順清(ヤン・シュンチン)
神経(クレージー)(山東の彼女)/倪淑君(ニー・シュウジュン)
卡五(カーウ)(217のメンバー)/王維明(ワン・ウェイミン)
小四の父/張國柱(チャン・クオチュー)
張娟(チャンジュエン)(小四の姉、長女)/王娟(ワン・ジュエン)
老二(ラオアー)(小四の兄、長男)/張翰(チャン・ハン)
張瓊(チャンチョン)(小四の姉、次女)/姜秀瓊(チアン・ショウチョン)
張雲(チャンユエン)(小四の妹、三女)/頼梵転(ライ・ファンユン)
汪國正(ワン・グオチェン)(政府の有力者)/徐明(シュー・ミン)
医者/施明楊(シュー・ミンヤン)
1991年・台湾映画・236分
配給/ビターズ・エンド
<「台湾ニューウェーブ」のもう1つの代表作を鑑賞!>
「中国ニューウェーブ」の代表作が陳凱歌(チェン・カイコー)監督の『黄色い大地』(84年)(『シネマルーム5』63頁参照)と張藝謀(チャン・イーモウ)監督の『紅いコーリャン』(87年)(『シネマルーム5』72頁参照)なら、「台湾ニューウェーブ」の代表作は侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『悲情城市』(89年)(『シネマルーム17』350頁参照)と楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の本作、『牯嶺街少年殺人事件』だ。『悲情城市』は2007年9月に鑑賞し強烈な印象を受けたが、BBCが1995年に選出した「21世紀に残したい映画100本」に台湾映画として唯一選ばれ、2015年釜山映画祭で発表された「アジア映画ベスト100」において、『東京物語』『七人の侍』『悲情城市』と並んでベスト10入りするなど、映画史上に残る傑作として高い評価を受けた本作をやっと鑑賞!それができたのは、映画史上に残る傑作として評価されながらも、日本では初上映以来25年間DVD化もされず、観る機会がほとんどなかった本作を、マーティン・スコセッシ監督が激賞し、エドワード・ヤン監督の生誕70年、没後10年となる2017年に4Kレストア・デジタルリマスター版で蘇らせたためだ。
本作の主役として登場する小四(シャオスー)は小学校四年生の意味ではなく、1960年当時の台湾の台北にあった建国中学校夜間部に通う学生の名前だが、何とその役を演じているのは『ブエノスアイレス』(97年)(『シネマルーム5』234頁参照)、『グリーン・ディスティニー』(00年)、『呉清源 極みの棋譜』(06年)(『シネマルーム17』249頁参照)、『レッドクリフPart1』(08年)(『シネマルーム21』34頁、『シネマルーム34』73頁参照)、『レッドクリフPart2』(09年)(『シネマルーム22』178頁、『シネマルーム34』79頁参照)、『グランド・マスター』(13年)(『シネマルーム30』246頁、『シネマルーム34』484頁参照)、『黒衣の刺客』(15年)等で「アジアを代表する俳優」に成長している張震(チャン・チェン)。それがわかれば、本作が1991年に製作された古い映画だということが実感できる。しかして、本作のタイトルになっている「牯嶺街」とは一体ナニ?また「少年殺人事件」とは一体ナニ?
<監督自身の体験と、ある現実の殺人事件から本作が!>
本作のパンフレットには、三澤真美恵(日本大学文理学部中国語中国文化学科教授)の「緻密な闇の設計図を玩味する-『牯嶺街少年殺人事件』の歴史的背景」と題する解説がある。そこには、本作を鑑賞するためのバックグラウンドとして不可欠な次の知識が要領よく解説されているので、これは必読。
①台湾の歴史と日本の影(1895年の下関条約によって台湾が日本に割譲されて以降、半世紀に及ぶ日本の植民地支配。)
②外省人と本省人(1945年の日本敗戦によって中国大陸から台湾に移り住んだ台湾省以外の出身者が外省人。台湾省の出身者と接収以前から台湾に住んでいて、日本の植民地統治を経験したのが本省人。)
③国共内戦の敗北と眷村(けんそん)(1949年に国民党政府は共産党軍との国共内戦に敗れ台湾に撤退したため、外省人が急増した。台湾には階級の低い軍関係の外省人が集住する眷村と呼ばれる地区があった。)
④冷戦とアメリカの影(1949年10月の中華人民共和国の成立と1950年6月の朝鮮戦争勃発によって世界が「東西冷戦」の時代に入る中、台湾は「反共の防衛ライン」とされ、中華民国(国民党)政府は生き残った。そのため、本作に登場する小公園パーラーの天井を飾る旗は、中華民国、アメリカ、国連の3種類とされ、「反共復国」「反攻大陸」のスローガンとプレスリーの甘い歌声が同居する中、台湾は戦争と暴力の気配に包まれた。)
⑤戒厳令と白色テロ(反共の防波堤となった台湾では、『悲情城市』で描かれたように、中華民国(国民党)政府は台湾を「共産党」勢力が入り込まない浄土にするため、「白色テロ」と呼ばれる共産主義分子の摘発キャンペーンを繰り広げた。そのため、1949年から1987年まで、何と38年間にもわたって世界に類を見ない長期の戒厳令がしかれ、集会、結社、言論、報道、学問の自由が制限され、郵便や電報が検閲された。)
1947年に上海に生まれたエドワード・ヤン監督は1949年2月に、家族と共に台北に移住し、本作の主人公である小四と同様、建国中学校夜間部に入学しているから、本作はまさにエドワード・ヤン監督自身の体験にもとづく外省人たちとその家族の物語。また、『ウエストサイド物語』(61年)と同じような不良グループの抗争事件をテーマとした本作は、1961年に台北で起きた未成年の少年によるガールフレンド殺人事件に想を得たものだ。本作は1992年に日本で最初に公開された時は3時間8分版だったが、4Kレストア・デジタルリマスター版は本作完成時の当初のバージョンである3時間56分版とされている。
<登場人物は?2つの抗争グループは?>
『ウエストサイド物語』はポーランド系アメリカ人の不良グループであるジェット団と、新参のプエルトリコ系アメリカ人の不良グループであるシャーク団に分かれた2つの不良グループの抗争劇だったが、本作は小四が所属する不良グループである「小公園」と、山東(シャンドン)(楊順清(ヤン・シュンチン))をトップとする不良グループである「217」との対立が基本。また、ニューヨークの「ウエスト・サイド」を舞台とした『ウエストサイド物語』では、ポーランド系とプエルトリコ系の人種差別が少年たちのグループ抗争の根底にあったが、本作では本省人VS外省人の対立はもちろん、外省人同士でも父親の職業や地位(軍人の場合はとりわけその地位)によって明確に優劣が分かれ差別があることが少しずつわかってくる。つまり、本作の主な舞台は、小四たちが通う建国中学校夜間部と、本作のタイトルになっている牯嶺街(クーリンチェ)だが、本作に登場する少年少女たちの父親の職業や地位によって、その住んでいる場所や家に大きな「格差」があるわけだ。
本作は3時間56分の長尺だし、登場人物も多いため、日本人には登場人物の相互関係が容易に把握できない。しかし、本作のパンフレットには小四と小明(シャオミン)(楊靜怡(リサ・ヤン))をはじめとする多くの登場人物のグループ分けがされているので、それを参考にしながら、整理しておけば次のとおりだ。
(1)まず、前述したとおり、本作の主人公・小四は建国中学校夜間部の学生で、そのクラスメートが王茂(ワンマオ)(王啓讃(ワン・チーザン))と飛機(フェイジー)(柯宇綸(クー・ユールン))。また、小四のクラスメートには、バスケットボール部のエースの小虎(シャオフー)(周慧國(ジョウ・ホェイクオ))や小四のクラスに転校してきた小馬(シャオマー)(譚志剛(タン・チーガン))もいる。小四の無二の親友になる小馬は、父親が司令官のため裕福な暮らしをしており、不良たちにも顔がきく少年だ。そして、本作中盤以降に登場してくる男が、かつての「小公園」のリーダーだったが、対立するグループ「217」のリーダーと小明のことで揉めて相手を殺害したため、台南に身を隠していたハニー(林鴻銘(リン・ホンミン))。そのハニーが不在の隙に、小明やリーダーの座を狙っている男が滑頭(ホアトウ)(陳宏宇(チャン・ホンユー))で、滑頭の恋人が小翠(シャオツイ)(唐暁翠(タン・シャオツイ))だ。また、ボーイソプラノを武器とする王茂と共に洋楽バンドのリーダーになっているのが二條(アーティアオ)(王宗正(ワン・ゾンチェン))だ。
(2)他方、「小公園」と対立する「217」の現在のリーダーが山東で、その恋人が神経(クレージー)(倪淑君(ニー・シュウジュン))。そして卡五(カーウ)(王維明(ワン・ウェイミン))は「217」のメンバーの1人だ。
(3)また、小四の家族は、小四の父(張國柱(チャン・クオチュー))、母(金燕玲(エレイン・ジン))と、長男・老二(ラオアー)(張翰(チャン・ハン))、長女・張娟(チャンジュエン)(王娟(ワン・ジュエン))、次女・張瓊(チャンチョン)(姜秀瓊(チアン・ショウチョン))、三女・張雲(チャンユエン)(頼梵転(ライ・ファンユン))だ。小四の父親は上海から渡ってきた外省人で公務員。その後ろ盾になっているのが政府の有力者、汪國正(ワン・グオチェン)(徐明(シュー・ミン))だが、本作中盤以降この父親には警備総部から「ある嫌疑」がかかることになるので、そのストーリーに注目!
<暗い映像!多い登場人物!しかし、こりゃ面白い>
私がはじめて「中国ニューウェーブ」の旗手であるチャン・イーモウ監督の『紅いコーリャン』を観た時は、赤をえらく強調したその「色彩感覚」に驚愕し、その魅力の虜になった。それに対して、「台湾ニューウェーブ」の旗手、エドワード・ヤン監督の本作を今回はじめて観てビックリしたのは、色彩の暗さ。これは、台湾が1949年から1987年まで38年間も戒厳令の下に置かれていたことを象徴するものだが、とにかく本作の映像は暗い。しかし、少しずつそれに馴れていくにしたがって、小四や小明たち世代の若者の鬱屈した気持ちと、小四の父親たち世代の何ともやりきれない気持ちが、その映像にマッチしていることに気づき、違和感がなくなっていく。こりゃ面白い!
他方、本作の登場人物は前述のとおりやたら多い上、「少年殺人事件」が最初に提示されるわけではない。そして、前半では小四と小明の恋模様を軸とした「小公園」グループと「217」グループとの対立模様が少しずつ紹介されていくので、それほどスリリングな展開があるわけではない。したがって、ある意味眠くなってしまっても仕方ないが、本作に限っては全然そんなことはない。そして、中盤以降は、真面目に勉強し成績も悪くない小四が、小明との恋の芽生えを発端として少しずつ不良グループとの「接点」を強め、また学校でのトラブルが増大していく物語が描かれていくのでそれに注目!
他方、小四の父親は厳格さと公平さが「売り」の公務員であるにもかかわらず、下っ端の外省人であるためにさまざまな問題に直面していくため、その面でも小四のイライラは増大していくことになる暗い映像の中で、多くの登場人物が4時間近くにわたって織りなす、そんな暗い物語をしっかり鑑賞したい。
<洋モノへの憧れ、プレスリーの影響にビックリ!>
終戦直後の日本を代表する歌は、『りんごの歌』『青い山脈』『誰か故郷を想わざる』等々だが、「もはや戦後ではない」と宣言された昭和31年(1956年)頃からは、日本にもエルヴィス・プレスリーを代表とする「洋モノ音楽」が入り込み、ザ・ピーナッツや坂本九たちが大人気となった。さらに、1966年のザ・ビートルズの来日によって、若者たちはロック、グループサウンズ、フォーク等を自由に楽しむ時代になっていった。しかして、1960年代の台湾の台北における音楽事情は?
小四たちの世代が『ウエストサイド物語』と同じように不良グループに分かれて対立・抗争していたのは仕方ないが、本作ではそれとは別に洋モノ音楽に夢中になっている王茂や二條にも注目!とりわけ、小四のクラスメートで、背の小さい王茂はあっと驚く美しいボーイソプラノの声を聴かせるので、それに注目!もっとも、その声がプレスリーの歌にマッチしているかどうかは別モノで、ある音楽会社に持ち込んだ王茂のデモテープはロクに聴いてもらえないまま即ゴミ箱へ。さらに、バンドのリーダーとして演奏活動に精を出している二條らの姿を見ていると、あの暗い時代の台湾でも、若者の洋モノ音楽への情熱は日本と同じだと知ってビックリ!そんな彼らにとって、学校での演奏会を超えた中山堂での晴れのコンサートは夢舞台だから、張り切ったのは当然だ。
本作後半は、中山堂での洋楽バンドの演奏会に多くの観客が集まり、王茂や二條の音楽に熱狂するシークエンスが描かれるので、それを楽しみたい。しかし、その一方では不穏な動きも・・・。
<ハニーのご帰還からあれこれの波紋が!>
古き良き昭和の時代、日本では『かえり船』や『かよい船』を歌った田端義夫の「マドロススタイル」が流行したが、本作後半から登場してくるハニーの服装を見ていると、私はついそれを連想してしまった。しかし、ハニーのその姿はカッコ良くマドロススタイルを気取っているのではなく、兵役義務として海軍に入っていたためらしいから、そこにも注目!
それはともかく、台南に身を隠していたハニーが突然台北に戻り小明と再会したことによって、小四と小明との間に芽生えていた恋模様に大きな変化が生まれたのは当然。さらに、ハニー不在の間に「小公園」のリーダーの座を狙っていた滑頭とハニーとの間で「小公園」内部の「権力闘争」が勃発するとともに、「小公園」と対立する「217」グループにハニーの帰還が大ニュースとして伝わったのも当然だ。そんな中、ハニーはたった一人で「中山堂」で開催された音楽会に乗り込んでいったから、さあハニーと「217」グループとの対決は?
コンサート会場で、恋人の神経と共に王茂や二條の演奏を聴いていた「217」グループのリーダー山東は、「ハニー現る!」の報告を聞いて、すぐに会場を出てハニーに対して「大人の対応」を見せていたが、その実は・・・?そんな流れの中でスクリーン上で展開される、「あっと驚く事件の発生」はあなた自身の目でしっかりと!
<ハニーの死亡はなぜ?これが少年殺人事件?>
ハニーのケンカの強さは、たった一人で中山堂での演奏会場に乗り込み、「217」グループのメンバーたちと闘う姿を見ればよくわかる。しかし、いくら何でもこれはちょっと無茶では・・・。『ウエストサイド物語』では、ジェット団とシャーク団のケンカを止めに入った、マリアの恋人であるトニーが死んでしまったが、本作では意外にもこのハニーがあっけなく死んでしまうので、そのストーリー展開に注目!すると、本作のタイトルになっている「少年殺人事件」とは、この殺人事件のこと?いやいや、そうではない。ハニーが急に消えてしまったことによって、小四や小明をはじめとする「小公園」グループの仲間たちに衝撃が走ったのは当然。もしハニーが台南に帰ってしまったら、あるいは殺されてしまったら、「小公園」の次期リーダーの座は誰に?
さらに、恋人のハニーが突然消えてしまったことによって少しおかしくなってしまったのが小明。小明も外省人の娘で、貧乏だったが、なんせ美人だからモテモテ。しかも、10歳代では男より女の方が早熟だから、小明が小四に対して語る男性観はかなり自由奔放に思えるものだった。もしそうなら、台南に行ってしまったハニーにさっさと見切りをつけて新しい恋人を見つければいいのに、小明は小虎にも気を持たせ、小四にも好意を示していたから、女ゴコロはわからない。そんな中で、突然ハニーが戻ってくると、やっぱりハニーが一番いいの・・・?そうなると、ひそかに小明のことが好きだったバスケットボール部のエース小虎の心境は?そしてまた、小明のそんな変化に誰よりも心を痛めている小四の心境は?他方、大人の世界では小四の父親に警備総部からかかっていたある嫌疑について、父親の後ろ盾になっていた汪國正の援護があまり当てにならないことがわかり、父親のイライラも頂点に・・・。
<なぜこんな少年殺人事件が?その全貌は?>
そんなこんな状態で小四の周りがすべて大きな不安要素に包まれる中、ついにある日、少年殺人事件が勃発!その加害者は?被害者は?これはある意味、男女の痴情のもつれから発生した殺人事件だが、小四や小明たち世代の純愛劇の中でそんな表現はふさわしくない。しかして、あなたはこの「少年殺人事件」をどう見る?どう解釈する?
本作ではその答えは提示されず、映画はある意味、中途半端な状態で終わってしまう。つまり、「少年殺人事件」とタイトルされている本作の「少年殺人事件」は本作のラスト近くで突然起こり、その結末も描かれない。ただ、字幕で裁判の結果が表示されるだけだ。そんな作り方を見ると、本作は少年殺人事件そのものの内容を描きたかったわけではなく、その時代とその中で生きる若者たちの姿を描きたかったことがわかる。つまり、それを描かなければならないという使命感を持ち、大金を使ってそれを実行したわけだ。そんな4時間もある本作は必見!
2017(平成29)年4月24日記