スプリット(アメリカ映画・2017年) |
<TOHOシネマズ西宮OS>
2017年5月13日鑑賞
2017年5月17日記
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監督・脚本・製作:M・ナイト・シャマラン
ケビン/ジェームズ・マカヴォイ
ケイシー(女子高生)/アニヤ・テイラー=ジョイ
Dr.カレン・フレッチャー(精神科の女医)/ベティ・バックリー
クレア(女子高生、ケイシーの友人)/ヘイリー・ルー・リチャードソン
マルシア(女子高生、ケイシーの友人)/ジェシカ・スーラ
2017年・アメリカ映画・117分
配給/東宝東和
<ショートコメント>
◆誘拐された3人の女子高生VS<23+1>の人格を持つ男。『シックス・センス』(99年)で世界中にセンセーショナルを巻き起こしたM・ナイト・シャマラン監督が完全復活!『羊たちの沈黙』(91年)のハンニバル・レクターや『ダークナイト』(08年)(『シネマルーム21』25頁参照)のジョーカーにも匹敵する「スーパー・ヴィラン」を演じる、<23+1>人の人格を持つ男とは?
そんな派手なコマーシャルで人気を煽っているためか、公開初日の土曜日の劇場の入りはほぼ90%。しかして、肝心の内容は?
◆女子高生や若い女性の「誘拐もの」では、誘拐犯に対する被害者の知恵の出し具合や対策の立て方、そして、脱出への意欲が見ものになるが、本作でその役割を担うのが、クラスの中では完全に浮き上がり、孤独な存在のケイシー(アニヤ・テイラー=ジョイ)。たまたまケイシーと一緒に誘拐されたのが、おしゃべりで人気者のクレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)とマルシア(ジェシカ・スーラ)だが、いざとなるとこの2人は何の役にもたたないことが明らかに・・・。この対比は、今どきの軽薄な教育事情を考えると、たしかに興味深い・・・。
◆もっとも、本作のポイントはそれではなく。ジェームズ・マカヴォイ演ずる誘拐犯ケビンが、ケイシーたちを監禁部屋に収容した後、「私があなたたちを守ってあげるわ、彼は私のいいなりなの」といいながら、明らかに違う「人格」の男(女?)が登場すること。医学上、多重人格障害(DID)という病気があり、本作はそれを最大のネタにした映画で、ジェームズ・マカヴォイは<23+1>の人格を使い分けるそうだから、それに注目!
「ある時は○○、またある時は××、しかしてその実体は・・・!」というセリフで有名な片岡千恵蔵の「多羅尾伴内」シリーズや、明智小五郎探偵との対決を中心にした「怪人二十面相」シリーズでは、主人公が一人で何人もの人物に変身するのが「売り」だったが、これはあくまで外見だけの変装。また、中国映画の『變臉(へんめん) この櫂に手をそえて』(96年)(『シネマルーム17』399頁参照)は、あくまで顔の変化だけの芸術だった。しかし、本作は外見上の変化ではなく人格そのものが変わる物語だから、そのサイコスリラー性に注目!
◆現在、エマ・ワトソンが主演したディズニーの実写版『美女と野獣』(17年)が大ヒット中だが、その英題は『BEAUTY AND BEAST』。劇中で歌われる名曲中の名曲のタイトルも『BEAUTY AND BEAST』だ。この映画によって、野獣=BEASTという英語が定着したが(?)、本作で女性精神科医カレン・フレッチャー(ベティ・バックリー)が、ケビンに対して下している病名が「解離性人格障害」(DID)。つまり、ケビンは一人で23の人格を持っているわけだ。そうすると、いつどの人格が出現するかの競争が大変らしい。
ストーリーの中では、①ケイシーたちを誘拐した最初の男ケビンの他、②神経質で潔癖症の青年、③9歳の無邪気な少年、④優雅な女性等の人格が、くり返し登場し、そのたびにケイシーたちと複雑な会話をくり広げていくから、それに注目!
◆フレッチャー医師はこんなケビンの病状をしっかり把握し、23の人格の登場をバランスよくコントロールする役割を担っていたが、本作後半はこの23の人格を超えて、さらに、「プラス1」の人格(?)が登場してくる。それが、フレッチャー医師が恐れていたBEASTの人格だが、さて『美女と野獣』のBEASTとは全く異質な、本作における「プラス1」の人格たるBEASTとは?しかして、フレッチャー医師はこれも適確にコントロールできるの?もし、それが制御不可能になってしまうと・・・?
◆本作ラストは意外にあっけなくケイシーの逃亡が成功し、ケビンは逮捕されてしまうことになり、女子高生誘拐事件は無事解決。めでたし、めでたしの結末になるが、そこでシャマラン監督の映画らしく(?)突如登場してくるのが、何とブルース・ウィルスだ。
ブルース・ウィルスは、『シックス・センス』に続く『アンブレーカブル』(00年)でデイヴィッド・ダン役を演じたが、どうも本作ラストで、ダイナーのカウンター席に座るブルース・ウィルスはそのダンらしい。
しかして、本作と『アンブレーカブル』との間にはいかなる関係が・・・?さらに、当然のように考えられている(?)本作の続編は・・・?
2017(平成29)年5月17日記