逆行(カナダ、ラオス映画・2015年) |
<テアトル梅田>
2017年6月20日鑑賞
2017年6月26日記
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監督・脚本:ジェイミー・M・ダグ
ジョン・レイク(ラオスでNGOの活動をするアメリカ人医師)/ロッシフ・サザーランド
ステファニー・ノヴェラ(ジョンの上司の医師)/サラ・ボッツフォード
ドゥアンマニー/ドゥアンマニー・ソリパン
チャイ(中年のバーテンダー)/ヴィタヤ・パンスリンガム
2015年・カナダ、ラオス映画・88分
配給/エスパース・サロウ
<ショートコメント>
◆タイは観光地として日本人にも親しみがあるが、ラオスはまだまだちょっと。しかし、若きアメリカ人医師ジョン(ロッシフ・サザーランド)は、NGOのボランティア活動として日夜精力的に働いていた。本作冒頭は、そんなシークエンスが次々と流される。あまりの激務のため、「骨休めも大切だ」と説教されたジョンは、ある日、ラオス南部のコーン島というリゾート地に行き、束の間の休息をとることに。
◆去る6月19日には北朝鮮から脳死状態で送還されてきたアメリカ人青年ワームビアさんが死亡した。北朝鮮とラオスでは危険度が根本的に違うとはいえ、言葉も通じないラオスのリゾート地に1人で出かけ、バーテンダーのチャイ(ヴィタヤ・パンスリンガム)と意気投合したとはいえ、明け方まで飲み明かすのはいかがなもの・・・?また、飲んでいる最中に地元の娘2人にちょっかいを出していた2人の白人観光客に対して、「いい加減にしろ」とお説教するのもいかがなもの・・・?しかも、しこたま酔っぱらっての帰り道にある事件を目撃したうえ、それに「介入」したジョンは、ホテルの部屋に戻ってみると、顔には傷を負うし、手や身体には血が。こりゃ一体ナニ?そういえば、俺はあの時・・・?
◆暴行を受けた地元の娘の命は助かったものの、暴行を加えた白人の男は死亡。すると、その犯人は・・・?本作はスリラーものでも刑事ものでもなく脱走ものだが、チラシには、「逃げるな!走れ」と書かれている。それは一体なぜ?また、本作のメインストーリーはラオスからタイを経由してアメリカへの脱出を目指すジョンの孤独な脱出劇だが、そのタイトルは「逆行」とされている。それは一体なぜ?
警察の捜査の様子をみていると、ジョンのように何のあてもなく走って逃げたのでは、そのうち捕まるのがオチ。そう思ってると、案の定・・・。
◆ジョンの指名手配には、国際刑事警察機構(インターポール)も関与していたから、ジョンの逮捕は時間の問題。また、アメリカへの脱出の途中でジョンが逮捕されればラオスに強制送還され殺人事件の裁判を経て、下手すると死刑に・・・?
そんな想定が当然だ。ところが、何とあの死亡した白人青年がオーストラリアの議員の息子だったことから、逮捕された殺人の容疑者ジョンの処遇は思わぬ展開に。つまり、死亡した白人青年の名誉を守るためジョンの事件は表沙汰にしないという合意が成立し、政権上部(?)がそのように仕組んだ結果、ジョンはタイからのラオスへの強制送還ではなく、タイからの国外退去処分になったわけだ。そんな手段方法の是非や合意・違法はともかく、それによってジョンは刑判決のリスクを免れたのだから超ラッキー!
◆臓器移植問題は人間の尊厳をかけた大問題だが、キャメロン・ディアス主演の『私の中のあなた』(09年)(『シネマルーム23』42頁参照)はすごい映画だった。その中国版ともいうべき映画が『我らが愛にゆれる時(左右/IN LOVE WE TRUST)(08年)であり(『シネマルーム34』350頁参照)。また、『再生の朝に ―ある裁判官の選択―(透析/Judge)』(09年)だった(『シネマルーム34』345頁参照)。
そこでのキーワードは、「選択」だ。人間が、そんな最終的かつぎりぎりの選択を下すのは辛いこと。したがって、できればそんな事態は避けたいものだが、否応なくそんな選択を迫られる現実が迫ってくることも・・・。そして、自分がなぜラオスへの強制送還ではなく、タイからの国外退去処分=事実上無罪放免でのアメリカへの帰国OK、になったのかを、車の中で広げた新聞記事でジョンが理解すると・・・。
車は空港に向かって一直線。新しいパスポートも航空券も確保されてるから、あとは飛行機に乗り込むだけ。そうすればジョンにはアメリカでの自由な生活が待っているわけだ。ところが、ある信号待ちで車が停まってる間の「熟考(?)」の中で、ひょっとしてジョンは「逆行」するの・・・??
2017(平成29)年6月26日記