彼女がその名を知らない鳥たち(日本映画・2017年) |
<シネ・リーブル梅田>
2017(平成29)年11月3日鑑賞
2017(平成29)年11月6日記
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監督:白石和彌
原作:沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』(幻冬舎文庫刊)
北原十和子/蒼井優
佐野陣冶/阿部サダヲ
水島真/松坂桃李
黒崎俊一/竹野内豊
国枝カヨ/村川絵梨
酒田(刑事)/赤堀雅秋
野々山美鈴/赤澤ムック
国枝/中嶋しゅう
2017年・日本映画・123分
配給/クロックワークス
■□■ショートコメント■□■
◆公式ホームページによれば、本作のイントロダクションは次の通りだ。
INTRODUCTION
嫌な女・十和子、下劣な男・陣治、ゲスな男・水島、クズすぎる男・黒崎。
“共感度0%”の最低の登場人物しか出てこないのに、ページをめくる手が止まらないと話題を呼び、20万部を超えるベストセラーとなっている人気ミステリー小説が、ついに映画化された。
十和子への過剰な愛ゆえに陣治は黒崎を殺したのか。異常な献身と束縛の先には、水島に手をかけ、十和子を追いつめる不吉な未来が待っているのか、それとも――。
肌にまとわりつくような不穏で不快な空気を漂わせながらも、物語はあまりにも美しい“究極の愛”へとアクロバティックに着地していく。誰も裁くことができない予想を超えたラストを見届けたとき、観る者の胸に驚きと感動が広がる、まぎれもない愛の物語が誕生した。
人間が本質的に持つ闇や愚かさに迫りながらも光を感じさせる読後感で、多くのファンを生んでいる沼田まほかるの同名小説を映画化したのは、『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』など実録路線のクライムムービーで高い評価を得た白石和彌監督。ノンフィクションを原作に骨太な社会派エンターテイメントを生んできた監督が、初めて本格的な大人のラブストーリーに挑む。
地位もお金もない陣治をひどく足蹴にしながらも、恋愛に依存せずには生きられない儚い危なっかしさを感じさせる十和子を演じるのは蒼井優。初共演となる阿部サダヲが、十和子に嫌がられながらも執着心を隠さない不潔で滑稽な男・陣治を演じている。甘くて薄っぺらな言葉を次々と繰り出し、十和子と肉体関係を結ぶ不倫相手・水島に松坂桃李。十和子が思い続けるかつての恋人で野心家の黒崎に竹野内豊。役者の底力を引き出してきた白石監督のもと、それぞれの役者がこれまでに見せたことがないまったく新しい表情を見せ、愛の概念を変えるような物語に命を吹き込んでいる。
◆公式ホームページによれば、本作のストーリーは次の通りだ。
STORY
15歳年上の男・陣治と暮らしながらも、8年前に別れた男・黒崎のことが忘れられずにいる女・十和子。不潔で下品な陣治に嫌悪感を抱きながらも、彼の少ない稼ぎに頼って働きもせずに怠惰な毎日を過ごしていた。ある日、十和子が出会ったのは、どこか黒崎の面影がある妻子持ちの男・水島。彼との情事に溺れる十和子は、刑事から黒崎が行方不明だと告げられる。どれほど罵倒されても「十和子のためだったら何でもできる」と言い続ける陣治が執拗に自分を付け回していることを知った彼女は、黒崎の失踪に陣治が関わっていると疑い、水島にも危険が及ぶのではないかと怯えはじめる――。
◆沼田まほかるの原作を映画化した『ユリゴコロ』(17年)もかなり異色で、かなり気味の悪い映画だった(『シネマルーム40』110頁参照)が、「本格的な大人のラブストーリー」とされた本作も、2人の主人公のキャラが超異色であるため、かなり異色なラブストーリーになっている。さらに、その中でも中盤以降はかなりのミステリー的要素も・・・。つまり、本作後半になると、何と殺傷事件が絡まり、松坂桃李扮する水島真までが北原十和子(蒼井優)に包丁で刺されることに・・・。
◆本作で感心したのは、阿部サダヲと蒼井優の卓越した演技力。阿部サダヲ特有のクセある演技は気に入らない人がいるかもしれないが、やはり大したものだ。
他方、蒼井優は『百万円と苦虫女』(08年)でのやるせない演技に感心し、「『演技派女優』蒼井優の確立を期待!」と書いた(『シネマルーム20』324頁参照)が、本作では、それから約10年後のヌードシーンも厭わない本作における大胆な演技に感心!
「共感度ゼロ」のヒロインを演じるには大きな勇気がいるはずだが、あえてそんな役に挑み、立派にそれをこなした蒼井優の演技力に拍手!
◆ピュアな純愛ドラマが花盛りの昨今、たまには本作のような「共感度ゼロの最低な女と男が辿りつく、『究極の愛』」を鑑賞するのも面白いかも・・・。
2017(平成29)年11月6日記