五月の恋(台湾、中国映画・2004年) |
<宣伝用ビデオ鑑賞>
(6月3日から梅田ガーデンシネマで上映)
2006年7月30日鑑賞
2006年7月31日記
「五月の雪」をキーワードとして、台湾の若者とハルピンに住み京劇の練習に励む女子学生との遠距離恋愛(?)を瑞々しく描いた秀作。そのきっかけは、僕は「メイデイ」のアシンだというメールでのウソ。島国ニッポン人は、この2人の恋愛模様を楽しむだけではなく、これを観て中台問題のポイントも勉強しなければ・・・。そしてこういう形で、中台の融和がうまく進めばいいのだが・・・。
本文はネタバレを含みます!!
それでも読む方は下の「More」をクリック!!
↓↓↓
ここからはネタバレを含みます!!ご注意ください!!
↓↓↓
監督:シュー・シャオミン(徐小明)
エグゼクティブ・プロデューサー:ペギー・チャオ(焦雄屏)
プロデューサー:ティエン・チュアン・チュアン(田壮壮)
アレイ(阿磊)(台湾の大学生)/チェン・ボーリン(陳柏霖)
シュアン(趙渲)(京劇団員の女子学生)/リウ・イーフェイ(劉亦菲)
チュン(趙新中)(シュアンの父)/リュイ・トーミン(呂徳明)
クイ(小葵)(シュアンの母)/チアチア・リー(李佳佳)
シュアンの祖父(趙更生)/ティエン・フォン(田豊)
ファン(芳姨)(祖父の台湾の妻)/タン・チーリン(唐志玲)
メイデイ(五月天)MAY DAY
アシン(阿信)(ヴォーカル)/チェン・シンホン(陳信宏)
シートウ(石頭)(ギター、アレイの兄)/シー・チンハン(石錦航)
モンスター(怪獣)(ギター)/ウェン・シャンイー(温尚翊)
ミン(諺明)(ドラム)/リウ・クアンヨウ(劉冠佑)
マサ(馬莎)(ベース)/ツァイ・ションイエン(蔡昇晏)
トルネード・フィルム配給・2004年・台湾、中国映画・110分
<五月の雪とは・・・?>
『四月の雪』(05年)はペ・ヨンジュン主演の韓国を舞台とした映画だったが、さすがに「五月の雪」は日・中・韓いずれにも存在しないはず・・・。しかし、台湾にはなぜか「五月の雪」が・・・。もっとも、これはホントの雪ではなく、その正体は桐の花。4月から5月にかけて、台湾の北部、中部の山々は桐の花が満開になるとまるで山が雪に包まれたようになり、花が散る様子もまた雪そのものであることからそう呼ばれることになったとのこと。この映画は、そんな「五月の雪」を見たいという思いから始まった中国本土と台湾を結ぶ遠距離恋愛、「五月の恋」を切なく描くもの。
<君はメイデイを知っているか・・・?>
この映画を理解するためには、まずその前提としてメイデイ(五月天/MAY DAY)を理解する必要がある。これは、日本のSMAPやV6、嵐そしてKAT-TUN等と同じような台湾の超人気ロックグループで、アシン(阿信/ヴォーカル)、シートウ(石頭/ギター)、モンスター(怪獣/ギター)、ミン(諺明/ドラム)、マサ(馬莎/ベース)の5人で構成されており、1997年にデビュー。もちろん、私も今回この映画ではじめて知ったことだが、パンフレットによれば、このグループの特徴は多言語(北京語、台湾語)を使っていることらしい。
そして中国(本土)の東方部にある黒龍江省のハルピンに住み、京劇団員の女子学生であるシュアン(趙渲)(リウ・イーフェイ/劉亦菲)はこのメイデイの大ファン。そこでシュアンは、メイデイのリーダーであるヴォーカルのアシンに「五月の雪が見たいの・・・」とメールをしたのだが・・・。
<メール交換にはウソがつきもの・・・?>
19歳の大学生アレイ(阿磊)(チェン・ボーリン/陳柏霖)は、メイデイのギタリストであるシートウの弟だが、兄と違ってこの弟は何をやらせても中途半端・・・。メイデイ宛てにきたシュアンの「五月の雪を見たい」というメールに対して、「僕はメイデイのアシン。台湾の三義にある五月の雪を見に連れて行ってあげる」と約束してしまったから、さあ大変・・・。
メールは便利な通信手段だが、相手の顔が見えないだけにウソやインチキがつきもの。もちろん、シュアンだってそれくらいのことはわかっていたはずだが、ウブな女子学生であるシュアンは、メイデイのアシンから返事がきたことに有頂天になったうえ、メールの交換を始めて60日も経つと、すっかりそれを信じ込んでしまった。もっとも、シュアンも自分が台湾の人間ではなく、中国本土のハルピンに住んでいることを説明していなかったのだから、ウソはお互いさま・・・?
<京劇の台湾公演のチャンスに・・・>
私たち日本人は中国(本土)旅行も台湾旅行も気楽なものだが、中国本土の人々にとっては、台湾旅行は簡単ではない。だって、一応「敵対」している国同士だし、いつドンパチが始まるかわからないという物騒な軍事上の緊張関係がずっと継続しているのだから・・・。しかし、京劇の台湾公演という公式な理由があれば、台湾訪問は簡単。そのチャンスにシュアンは、メール上のアシンと待ち合わせの日時・場所を約束して、三義へ五月の雪を見学に行くことを楽しみにしていた。
そして今日、仲間と別れて1人待ち合わせ場所に赴いたシュアンだったが、そこにメール上のアシンは現れなかった。これは、アレイがシュアンと顔を合わせると、それまでついていたウソがバレると恐れたため。待ちくたびれたシュアンは、仕方なく1人で列車に乗り、五月の雪を見学せざるをえなかったが・・・。ちなみに、アレイはそんなシュアンの後をつけて行くだけというだらしなさ。これでは、2人の仲は先が思いやられたが・・・。
<なぜ「五月の雪」を見たかったのか・・・?>
シュアンが「五月の雪」を見たかったのは、単なる興味からだけではなく、実は深いワケがあった。シュアンの祖父、趙更生(ティエン・フォン/田豊)は1949年、蒋介石率いる国民党の兵隊として中国共産党に追われて台湾にやってきた「外省人」であるため、故郷のハルピンに帰ることは到底できない立場。台湾の民主化の高まりの中、戒厳令が解除されたのは38年後の1987年。続いて大陸への親族訪問も解禁されたが、それまではハルピンで生まれた孫であるシュアンと趙更生は容易に会うこともできない境遇だった。したがって、シュアンが「五月の雪」を見たいというのは、実は台湾に住んでいる親族(祖父)に会いたいということとイコール・・・。
<2人の恋愛模様は・・・?>
アレイのウソは、アレイがシュアンの前に姿を現せばたちまちバレてしまうのは当然だったが、そんなアレイであっても2人の関係は徐々にいい方向に。この映画の中盤は、そんな2人の恋愛模様が、若いフレッシュなコンビの瑞々しくかつ伸び伸びとした演技の中で綴られていく。しかし、シュアンが台湾に滞在するのは京劇の公演の間だけ。遂にシュアンがハルピンへ帰る日が近づいてきた。そんな中、素直になれないというアレイの悪いクセ(?)が・・・。何と彼は「もう2度と会わない」と心にもないことをシュアンに言ってしまったのだ。もちろんその結果、後悔したのはアレイ自身。その後、何度もメールを送るもののシュアンからの返答はなく、落ち込むアレイ。
ところが、ラッキーなことに、メイデイの中国ツアーが決まり、アレイはそれに同行することに・・・。これによって、大陸と台湾に引き離されてしまったアレイとシュアンの再会はできるのだろうか?そして、2人の心は再び通じ合うことができるのだろうか・・・?「甘ったるい恋愛映画」と言ってしまえばそうかもしれないが、遠く離れた異国(?)の地でお互いを想う男女の姿を、2人の人気俳優が静かに熱演・・・。
<雪のまちハルピンでは・・・>
ハルピンは、かつて日本が満州国を建国した当時の首都長春(新京)からさらに北にある都市だからその緯度はかなり高く、冬は零下数十度になるところ。シュアンはこんな雪のまちハルピンにある学校で、今も京劇の練習に励んでいた。メイデイの公演にハルピンが入っていたのはラッキーだったが、ハルピンに滞在する2~3日の間にシュアンに会えなければ、アレイは1人ハルピンに留まるしかないが・・・。
そんな予想どおり、アレイがシュアンに会うのは並大抵のことではなかった。その関門の第1は、学校の門にいつも立って不審者をチェックしているガードマンのおっちゃん・・・。ワケのわからないよそ者がやって来て、「シュアンに会いたい」と言っても、なかなか取り次いでくれないため、アレイは連日苦労したが、そんなちょっと脇道にそれたストーリーも面白いもの・・・。さて、雪のまちハルピンで、アレイはシュアンと再会することができるのだろうか・・・?
分厚い羽毛ジャケットとマフラーそして帽子を不可欠の小道具として、吐く息が白くなってしまうような極寒の地ハルピンで展開されるクライマックスに向けた物語は、興味津々。そして、見逃してはならないのは、この雪のまちハルピンそのものが、この映画の見どころの1つだということ・・・。クライマックスのシーンは、こんな雪のまちだからこそ実現した美しいものだからお楽しみに・・・。
2006(平成18)年7月31日記