ラジニカーント★チャンドラムキ 踊る!アメリカ帰りのゴーストバスター(インド映画・2005年) |
<東映試写室>
2006年8月9日鑑賞
2006年8月10日記
「インド映画が元気!」とは聞いていたが、ここまでとは・・・。「兄貴」ことインドのスーパースター、ラジニカーントが、歌うわ!踊るわ!立ち回るわ!と大活躍!その反面、「呪われた館」を舞台としたミステリー風、ホラー風の幽霊退治の物語もしっかりと・・・。そして、150年の時空を超えた館の中での物語には、女の情念もタップリと・・・。こんな充実度いっぱい、何でもブチ込みあり(?)のインド映画だが、やはり2時間46分は長い・・・?
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監督・脚本:P・ヴァース
サラヴァナン(アメリカ帰りの精神科医)/ラジニカーント
センディル(サラヴァナンの親友)/プラブ
ガンガー(センディルの妻)/ジョーティカー
ドゥルガ(庭師の孫娘)/ナヤンターラー
カンダスワーミ/ナーザル
ムルゲーサン/ヴァディヴェール
ヴィシュワナーダン(舞踏の師匠)/ヴィニート
日本スカイウェイ配給・2005年・インド映画・166分
<はじめてのインド映画!>
インド映画が元気なことは以前から情報としては知っていたが、私が知っているインド映画は『ムトゥ 踊るマハラジャ』(95年)だけ。本作でアメリカ帰りの精神科医サラヴァナンを演ずるラジニカーントはインドのスーパースターで、既に『ムトゥ 踊るマハラジャ』によって日本も征服した俳優。そんなラジニカーントの愛称は、阪神タイガースの金本知憲選手と同じ「兄貴」・・・。そして、ラジニカーントの日本上陸は、150本記念の『パダヤッパ』(99年)以来5年ぶりとのことだが、私がインド映画を観るのは今回がはじめて。さて、その元気さはうわさどおりだろうか・・・?
<歌と踊りの迫力は圧倒的!>
インド映画最大の魅力は歌と踊りだといわれている。ちなみに、ニコール・キッドマン主演の『ムーラン・ルージュ』(01年)は、1900年のパリを舞台とした踊り子と若き劇作家(ボヘミアン)との恋物語だが、インド風の創作芝居がモチーフとなっているため、歌も踊りもインド風で、「マハラジャ」がキーワード(『シネマルーム1』17頁参照)。こりゃ何のこっちゃと思いつつ、なるほどこれが「踊るマハラジャ」の雰囲気か、と感心したもの・・・。
ミュージカル映画なら歌と踊りがふんだんに盛り込まれるのが当然だが、インド映画ではミュージカル映画でなくても、歌と踊りは当然のサービス・・・?これはあたかも、韓国でちょっとしたレストランへ入ると、当然のように各種のキムチや野菜がテーブルいっぱいに並べられるのと同じ・・・?
そのうえサービス精神が旺盛だから、1つの歌と踊りはすべてフルヴァージョンで展開されるため、1曲の時間だけでも5分を超えるものがザラ・・・。そんなインド映画特有の歌と踊りの迫力は、音響効果の良さもあってやはり圧巻!
<アクションもタップリだが・・・?>
ラジニカーントはスーパースターだから、ラジニカーント演ずる精神科医のサラヴァナンは、読心術を含む精神科治療においてきわめて優秀な能力を有するだけではなく、なぜかアクションも大得意。したがって、物語の構成上は別に必要なくとも、観客へのサービスのため(?)、あえて悪役退治のためのカッコいいアクションシーンもタップリと用意。そしてそれは、ハリウッドばりのワイヤーアクションに、タイ映画や中国映画ばり(?)の誇大アクションシーンも入れ込んだド派手なもの。1発のキックで50mも吹っ飛ばされる相手は、次々と車のフロントガラスをその体でたたき割ることに・・・。
もっとも、いくらスーパースターといっても、ラジニカーントは1950年生まれ。したがって、腹もでていないスマートな体形だと弁解しても、やはり『マトリックス』(99年)のキアヌ・リーブスのようにいかないのは当然。1発のパンチにいちいち効果音がついている面白さも含めて、これがインド風ワイヤーアクション・・・?
<チャンドラムキとは?>
歌、踊り、そしてアクションは、物語の進行とは別にそのシーンだけで十分楽しめるようになっているが、2時間46分という長丁場の物語のメインとなる人物は、150年前の悲運の踊り子チャンドラムキ。「呪われた館」に住む王様の妾にされたのが踊り子のチャンドラムキだが、彼女はかつての恋人を忘れられず密会を重ねていたため、それを知った王は彼女の目の前で恋人の首をはね、彼女も焼死させてしまった。そんな王の酷い仕打ちに復讐を誓ったチャンドラムキの魂は、150年の時空を超えて、館の2階の南西部屋に宿り続けていたのだった・・・。
幼い頃に聞かされたそんなチャンドラムキの物語を強く心に残していたのが、センディル(プラブ)の妻のガンガー(ジョーティカー)。「呪われた館」に移り住む中、次第にガンガーの心の中にチャンドラムキの人格が育っていったから、「二重人格」となったガンガーはさあ大変・・・。
<導入部はホドホドに・・・?>
主人公のサラヴァナンがアメリカから帰ってきたのは、親友のセンディルの結婚式のため。そして、しばらくはインドに滞在する様子。外国映画はおおむね、登場人物の名前と顔がすぐに一致しないのでわかりにくいが、はじめて見るインド映画はとりわけそれが強い・・・?
センディルが結婚しようとしているのはガンガーだが、彼はなぜか本家の人間とは30年間仲違いしているらしい・・・。そのうえ、ガンガーは、なぜか新婚家庭を「呪われた館」ですごしたいと希望し、センディルもそれに賛同している。そこで、サラヴァナンの任務は、センディルとガンガーの結婚と「呪われた館」に住むことを本家に認めてもらうように交渉すること・・・。この導入部の話は結構ややこしいが、要約すればそれだけのこと。そして、その結論は何ともバカげたこと(?)に、本家の姉や従兄弟の兄弟夫婦などを含めた関係者全員が、「呪われた館」の改修工事をやりつつ、そこに住むということに・・・。
もともとこの館で暮していたのは庭師とその孫娘のドゥルガ(ナヤンターラー)だったが、この2人が館の2階の南西部屋に絶対に近づかなかったのは、前述のとおり、そこにはチャンドラムキの魂が宿り続けていたため・・・。
<ガンガーはなぜ2階の南西部屋に・・・?>
ガンガーがなぜ2階のチャンドラムキの魂が宿る南西部屋に入っていったのか・・・?その部屋には一体何があるのか・・・?そして、その中でガンガーは一体何をしていたのか・・・?その点は、スクリーンを見ているだけでは容易に理解できないが、その理由は後の楽しみとして、じっくりと150年前の館の姿を、美しい音楽とガンガーの美しい踊りを見ながら堪能しよう。
<物語はここからミステリー調に・・・>
この映画の物語は、ここからがぜんミステリー調になっていく。つまり、館の中ではこの後さまざまな怪事件が続出し、その疑惑の目はことごとく庭師の孫娘のドゥルガに向けられていくことに・・・。さらに、ショッキングな出来事が起こった。それは、何とガンガーが舞踏の師匠であるヴィシュワナーダン(ヴィニート)と茂みの中で抱擁している姿が発見されたこと。これを見た夫のセンディルは怒りに震え、ヴィシュワナーダンを叩きのめそうとしたが、何とそこでサラヴァナンは「悪いのはヴィシュワナーダンではなく、ガンガーだ」と宣言したから大変!それまで絶対的に信頼していたサラヴァナンに対して、センディルは怒りを爆発させ、「館から出ていけ!」と絶交宣言を・・・。さあ、ここでミステリー調は最高潮に・・・。この後は、誰がどのように、もつれた糸をほどいていくのだろうか・・・?
<サラヴァナンの語る真実とは?>
館の悪霊を取り除くためにやって来たのが、有名な霊能力者のラーマスワーミ。このラーマスワーミの勧めによって、絶体絶命の危機に追い込まれていたサラヴァナンが、センディルらに対して語る真実は結構興味深いもの。そのポイントは、ガンガーの人格の中に時としてチャンドラムキの人格が入り込み、結果的にガンガーは二重人格になっていること。そのため、チャンドラムキの人格が入り込んだガンガーは、時として王に対する復讐のため、数々の奇怪な行動をしているというわけだ。そして、チャンドラムキの究極の望みは、憎っくき王を焼き殺すこと。すると、予想される次なるガンガーの行動は・・・?
さすがアメリカ帰りの優秀な精神科医。彼の緻密な分析によってガンガーの行動の奇怪さの原因が明らかになったものの、そんなガンガー(=チャンドラムキ)の暴走を食い止める解決策はあるのだろうか・・・?
<アッと驚く仕掛けによって万々歳・・・?>
ここまでは、この映画の理解のため必要最小限のストーリーを紹介してきたが、これ以上のネタバレは避けておこう。「呪われた館」2階の南西にあるチャンドラムキの魂が宿る大きな部屋と、呪われた館全体でくり広げられるその後の時空を超えた美しい攻防戦の映像と、アッと驚く仕掛けは、直接スクリーン上でタップリと楽しんでもらいたい。親友センディルとその愛する妻ガンガーを救うため、命を賭けて挑むサラヴァナンの秘策とは・・・?そして、その成否は・・・?さらに、その後に控える大円団の姿とは・・・?
2006(平成18)年8月10日記