東京フレンズ The Movie(日本映画・2006年) |
<梅田ピカデリー>
2006年8月13日鑑賞
2006年8月15日記
「一番最初に描いた夢を、あなたは今も、覚えてる?」という問いかけをテーマに、大塚愛たち4人の女の子が、それぞれの夢を追うおしゃれな物語。もっとも、その実態を見れば、『東京フレンズ』というよりは『居酒屋フレンズ』の方が合っていると思うのだが・・・。彼女がメジャーデビューを果たし、武道館で力いっぱい歌うクライマックスシーンは感動的だが、それができたのは努力と才能そして幸運のおかげ・・・。したがって司法試験の受験生たちも、「夢は誰にでも叶うもの」などと、ゆめゆめ勘違いしないことが大切。もっとも、俺のささやかな夢は、主題歌の『ユメクイ』は完全にマスターすること・・・。
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監督:永山耕三
岩槻玲/大塚愛
羽山ひろの/松本莉緒
藤木涼子/真木よう子
我孫子真希/小林麻央
新谷隆司(ギタリスト)/瑛太
田中秀俊/平岡祐太
奥田孝之/伊藤高史
永瀬充男/中村俊太
里見健一/佐藤隆太
小橋亨/佐々木蔵之介
和田岳志/古田新太
笹川敬太郎/北村一輝
笹川和夫/勝村政信
松竹配給・2006年・日本映画・116分
<4人それぞれの夢は・・・?>
この映画は、今風の4人の女の子、岩槻玲(大塚愛)、羽山ひろの(松本莉緒)、藤木涼子(真木よう子)、我孫子真希(小林麻央)の等身大の青春を描くもの。そして、そのモチーフとなるのは「一番最初に描いた夢を、あなたは今も、覚えてる?」だが、これは実にいい言葉。もっとも、青春群像劇のテーマとして、愛・恋・性そして友情・嫉妬・裏切りなどがつきものだが、夢になると、その描き方は少し難しい・・・。したがって、実は上記のモチーフも、玲が新谷隆司(瑛太)に宛てた手紙の書き出しの文章だから玲にはピッタリだが、他の3人には少し・・・?
仲良し4人組についても、夢という言葉がピッタリなのは、音楽でメジャーデビューの夢を持つ玲と、画家としての成功を夢見る真希の2人だけで、先輩を慕って芝居の道に入り込んでいったひろのや、結局居酒屋の女将に収まってしまう涼子は、あまり主体性のない、単なる結婚願望という夢・・・?
<『東京フレンズ』より『居酒屋フレンズ』の方が・・・?>
この映画は2005年に発売されるや否やオリジナルDVDドラマとしては異例の大ヒットを記録した『東京フレンズ』の完全映画化版らしいから、タイトルを『東京フレンズ The Movie』とするのは当然。しかし、ストーリー上、はっきりと地方(高知)から夢を追って上京してきた女の子というパターンに当てはまるのは玲だけで、あとの3人の出身地は???・・・。
しかも、「東京フレンズ」とカッコいいことを言っても、その内実はバイト先の居酒屋で知り合ったというもの。居酒屋「夢の蔵」は、「貧乏だがきれいな女の子」をターゲットにしてバイトの女の子を募集しているようだが、そんなちょっと怪しげな謳い文句につられて(?)この店でバイトをしていたのが、玲、ひろの、真希の3人で、この3人は23歳、21歳、21歳と年齢も似たようなもの。これに対して、涼子は一流企業のOLで「夢の蔵」でいつも飲んだくれていた常連客らしい。そして年も26歳だから、他の3人とはちょっと毛色の違う女性。また、涼子だけは店長の笹川和夫(勝村政信)に代わって新店長に就任した笹川敬太郎(北村一輝)と結婚して、「夢の蔵」の女将になることが運命づけられているよう・・・?したがって、この映画は、きれいごとを言わず本質だけを見れば、『東京フレンズ』より『居酒屋フレンズ』の方が適切・・・?
<玲だからできたこと・・・>
今日8月15日、遂に小泉総理が靖国神社を参拝したが、小泉改革の中で進んだ「格差問題」をめぐる議論が最近盛んになっている、また、私たち弁護士業界をめぐっても、法曹人口の大量増員時代を迎え、司法修習生は就職先探しに躍起となっている状況が顕著で、その変容ぶりはものすごいもの。そして、2年前の2004年4月に発足した法科大学院の第1期卒業生による新司法試験が5月に実施された今、その合格率は50%だが、来年からは30%程度になると予想されている。したがって、「法科大学院を卒業したけれど・・・」という局面になることは必至。さらに、世の中にはフリーター、ニートと呼ばれる若者がウジャウジャと・・・。
そんな時代状況の中、たしかに名文句だが、「一番最初に描いた夢を、私は今も、覚えてる。」と言って、司法試験に合格して弁護士になるという夢を、いつまでも目指していたら大変なことに・・・。玲がメジャーデビューできたのは、何よりも玲に大塚愛みたいな(?)才能があったからこそ。そのことをしっかりと理解する必要がある。今ドキの若者は安易だから(?)、「一番最初に描いた夢を、私は今も、覚えてる。」と言えば、誰でも玲のようにその夢を実現できると思うのかもしれないが、それは大まちがい!
<隆司の生き方は・・・?>
この映画は玲が主役となっているが、もともと玲にギターを教え、玲をサバカン(サバイバル・カンパニー)のボーカルに誘ったのが隆司。それだけなら何のコトはないよくある役割だが、面白いのはそんな隆司がサバカンを抜けて、フラチャ(フラワーチャイルズ)に移籍してしまうこと。こりゃ明らかにバンド仲間に対する裏切りであるうえ、恋心を抱いている玲に対しては二重の裏切りであることは明らか。しかも、彼がそう決断したのはサバカンよりもフラチャの方がメジャーデビューが早いと判断したためだから、それだけを見ると隆司は利害・打算のみで動く実にイヤな奴・・・?
そんな悪行(?)のバチが当たったのか、フラチャと隆司は暴行事件に巻き込まれたため、メジャーデビューの話はおじゃんに!そして、隆司は何も言わず玲の前から姿を消してしまったが、玲の頭の中にはずっと隆司のことが・・・。そんな隆司は今、どこで何をしているの・・・?
<ニューヨークへの旅立ちは賛否両論・・・?>
パンフレットの解説によれば、この映画版『東京フレンズ』はDVD版の続編にあたるらしいが、映画版では堂々ニューヨークロケを敢行。玲が単身ニューヨークへ飛ぶのは、涼子が持つ1枚だけの新婚旅行のチケット(なぜ1枚だけなのかは映画の中で・・・)を、「いつか後悔する玲を見たくないの」と言って玲に渡し、「忘れるならそれでもいいよ。でもその前にちゃんとケリをつけてきな」と背中を押してくれたため。やはり持つべきものは友だネ・・・。
しかし視点を変えていえば、そりゃ、玲が隆司に会いたいという気持はわかるものの、サバカンがニューアルバムのプロモーション中で忙しい最中であるにもかかわらず、隆司に会いたいという気持だけで、1人ニューヨークへ旅立つのは、映画の中だから許せるものの、現実問題としては社会人失格・・・?しかも、玲が言うのは「隆司の顔を一目見て、ひっぱたいたら帰ってくる」というものだから、少々短絡的すぎるのでは・・・?
このように玲のニューヨークへの旅立ちについては賛否両論があるはず。もっとも、そんな説教じみたことを言うのは、俺がオッサンになったせい・・・?
<広くて狭いニューヨーク・・・?>
隆司を見かけたという手紙をくれたのは、ニューヨークで絵の勉強をしている真希から。しかし、広いニューヨークでたまたま1度顔を見かけただけの隆司を、数日間のニューヨーク滞在でどうやって探し出すのだろうと思っていると、やはり「運命の導き」ってあるもの・・・?ある日、玲はバッタリと目の前を歩いてくる隆司と出会うことに・・・。ニューヨークって、広いようで意外に狭いのかも・・・?
<ニューヨークでの「攻防戦」は・・・?>
この映画で大塚愛はかなり自然に演技をこなしているが、それは文字どおり等身大の役柄を演じているため。しかしニューヨークロケでは、結構演技力が試されるシーンが多い。キスシーンやベッドシーン(?)はごくソフト(?)なものですませているが、2人の口論のシーンは結構ハード・・・。
玲に出会った隆司の最初の反応は、「俺は記憶を失っちゃった」という何ともふざけたもので、完全に玲を無視するものだったが、それが数日の間に大きく変化していくことに・・・。このニューヨークでの「攻防戦」が、この映画の1つの見どころと位置づけられるのは、良くも悪くもこれによって玲が自分の生き方はこうなんだという確信を得ることになったから。それは、玲自身にはなかなかわからないものだったが、第三者からみれば、東京に戻ってきた玲のボーカルには明らかな変化が・・・。やはり歌は人間が歌うもの、そして心が歌うもの・・・。
<俺も歌うぞ『ユメクイ』を・・・>
大塚愛は、『さくらんぼ』で2004年の第46回レコード大賞新人賞を受賞した時からかわいくていい歌を歌う子だと注目していた歌手。その彼女がこの『東京フレンズ The Movie』の主題歌として作詞・作曲したのが、サバカンが武道館でのクライマックスシーンで歌う『ユメクイ』。オッサンが歌ってもサマにならないことはわかっているが、「最初に描いた夢を 思い出せなくなったのは 大人になったから?」という問いかけに対しては「ノー」と返事をし、「僕は今夢旅の中」にあることを自分自身で確認するためにも、しっかりとこの歌を練習してマスターしなければ・・・。
2006(平成18)年8月15日記