エラゴン 遺志を継ぐ者(アメリカ映画・2006年) |
<試写会・大阪厚生年金会館大ホール>
2006年12月12日鑑賞
2006年12月13日記
『ロード・オブ・ザ・リング』『ナルニア国物語』に続くファンタジー大作は、17歳のガキ(失礼、新進作家)の原作らしく、雌ドラゴンと17歳の少年ライダーの物語。アラゲイジア帝国とヴァーデン軍反乱軍、エルフ族とドワーフ族、そして闇の勢力シェイドなど、ややこしいのは『ロード・オブ・ザ・リング』と同じ・・・。『第1話』にもハイライトとなる攻防戦を設けたのはグッドだが、『ナルニア国物語』のライオンと同じように、火を噴くドラゴンやその顔になじめるかどうかがポイント・・・?
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監督:シュテフェン・ファンマイアー
原作:クリストファー・パオリーニ『ドラゴンライダー1 エラゴン 遺志を継ぐ者』(ソニーマガジンズ刊)
エラゴン(ドラゴンライダー)/エド・スペリーアス
サフィラ(ドラゴン)/レイチェル・ワイズ(声の出演)
ブロム(村の語り部)/ジェレミー・アイアンズ
アーリア(エルフ族の王女)/シエンナ・ギロリー
ダーザ(シェイドのリーダー)/ロバート・カーライル
ガルバトリックス(アラゲイジアの王)/ジョン・マルコヴィッチ
アジハド(反乱軍の指揮官)/ジャイモン・フンスー
マータグ(流浪の剣士)/ギャレット・ヘドランド
フロスガー(ドワーフ族の王)/ゲイリー・ルイス
ギャロウ(エラゴンの叔父、育ての親)/アラン・アームストロング
ローラン(ギャロウの息子)/クリス・イーガン
アンジェラ(占い師)/ジョス・ストーン
20世紀フォックス映画配給・2006年・アメリカ映画・104分
<指輪、ナルニアそしてエラゴンだが・・・>
『ハリー・ポッター』に始まったファンタジー映画は、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作そして『ナルニア国物語』と続き、今やハリウッド映画の稼ぎ頭がファンタジー大作に固まってしまった感があるが、その延長線上でつくられたのがこの『エラゴン 遺志を継ぐ者』。もっとも、『ハリー・ポッター』シリーズを書いたJ.K.ローリングをはじめとして、『ロード・オブ・ザ・リング』の原作『指輪物語』を書いたJ.R.R.トールキンや『ナルニア国物語』シリーズを書いたC.S.ルイスはいずれも巨匠と言われる人たち。しかし、『エラゴン 遺志を継ぐ者』を書いたのは、何と17歳のガキ(いや失礼、新進作家)のクリストファー・パオリーニで、2003年にクノッフ社から出版されて以来、世界各国の出版界で一大現象を巻き起こした傑作ファンタジー小説とのこと。
<かつてのマーク・レスターを彷彿・・・?>
この映画で若きドラゴンライダー、エラゴン役を射止めたのは、18万人のオーディションの結果選ばれた新人のエド・スペリーアス。彼は1988年生まれの18歳だから、原作者のクリストファー・パオリーニや17歳と設定されているエラゴンと同世代のハンサムボーイ。プレスシートには、「オーディションでは人を惹きつけてやまない抜群の存在感と魅力を発揮」と書かれているが、ずっと観ていた私が思ったのは、かつて『オリバー!』(68年)での主演で注目を集め、13歳の時の主演作『小さな恋のメロディ』(71年)で大フィーバーしたマーク・レスターとイメージ的にそっくりだということ。もっとも、そんな印象を持ったのは私だけ・・・?
<最大のスターはサフィラだが・・・>
この映画を好きになれるかどうかの分岐点は、最大のスター(?)サフィラを好きになれるかどうかにある・・・?サフィラとは、映画の序盤では得体の知れない鉄の固まりのような形をした卵、それが孵化した後は赤ん坊、そして数カ月後(?)には巨大な姿を見せるドラゴンの名前だが、その性別は女性いや雌・・・。
ドラゴンとドラゴンライダーは心を通い合わせることで会話ができるらしいが、そんなテレパシーが通じ合うドラゴンライダーとしてサフィラが選んだのがエラゴン。ライダーが勇気は人一倍だが知恵は未熟な17歳なら、サフィラもまだ十分に口から火を噴くことができない未熟者。しかし、そんなドラゴンライダーとドラゴン「チーム」の成長ぶりがこの映画の楽しみの1つ・・・?
ちなみに、このサフィラの顔は雌らしいやさしさを持っているが、いざ闘いとなるとやはり荒々しいもの。さて、あなたはそんな最大のスター、サフィラが好き、それとも・・・?
<たくさんの前提事実とストーリーの整理が大変・・・>
『ロード・オブ・ザ・リング』は、闇の冥王サウロンや自由の地「中つ国」そしてモルドールの火の山(滅びの山)などさまざまな前提事実や、ホビット族のフロドや「白の魔法使い」ガンダルフなど、それまで聞いたこともないさまざまな登場人物が次から次へと出てくるため、それらを整理するのが大変だった。『エラゴン 遺志を継ぐ者』はそれよりは少し単純とはいえ、やはりイギリスのファンタジー小説だから、日本人にとってややこしいのは同じ・・・。
『ロード・オブ・ザ・リング』3部作では、毎回それらを整理して評論した(第1部『シネマルーム1』29頁、第2部『シネマルーム2』54頁、第3部『シネマルーム4』44頁参照)ので、今回もそれと同様に、さまざまな前提事実やストーリーの要点を必要最小限度整理しておこう。
<登場人物(?)とその人間関係の整理は・・・>
主要な登場人物とその人間関係は次のとおり。
①かつてアラゲイジア帝国は、ドラゴンとドラゴンライダーが平和を守る守護者として存在し、隆盛をきわめる平和な国だった。
②ところが、ドラゴンライダーの1人であったガルバトリックス(ジョン・マルコヴィッチ)によってドラゴンとドラゴンライダーは滅ぼされ、アラゲイジア帝国は邪悪な王ガルバトリックスが支配する帝国となった。
③ガルバトリックスに仕えるダーザ(ロバート・カーライル)は悪魔のようなシェイドのリーダー。
④ガルバトリックス王に抵抗して反乱軍になっているのがヴァーデン軍で、そのリーダーがアジハド(ジャイモン・フンスー)。
⑤主人公エラゴンは、叔父のギャロウ(アラン・アームストロング)の手によって、ギャロウの息子ローラン(クリス・イーガン)と共に育てられた17歳の若者。そしてドラゴンの卵を預かったことによってドラゴンライダーになる。
⑥エラゴンにドラゴンの卵を運んだのは、エルフ族の美しき王女にして勇敢な戦士のアーリア(シエンナ・ギロリー)。
⑦帝国の歴史に詳しい、生き残りのドラゴンライダーにして、エラゴンを導くキーパーソンがブロム(ジェイミー・アイアンズ)。
⑧映画後半に登場するマータグ(ギャレット・ヘドランド)はいろいろと曰く因縁のある若者だが、エラゴンを助けてくれるミステリアスな放浪の若者。
<人間関係以外の種族あれこれ・・・>
「種族」については、さらに次の整理が必要。
①エラゴンやブロムそして邪悪な王ながらガルバトリックスは、人間。
②アーリアの種族であるエルフ族は、その昔、銀の船で海を渡り、アラゲイジアにやってきた。エルフ族は気位が高く優美な種族で、魔法を使うらしいが、これは『ロード・オブ・ザ・リング』のパクリ・・・?
③反乱軍のヴァーデン軍を率いるリーダーのアジハドは、アラゲイジアの先住民で、小柄だが誇り高く頑健な種族であるドワーフ族。
④他方、ガルバトリックス王に仕える闇の生物は、『ロード・オブ・ザ・リング』の闇の冥王サウロンに仕える種族と同様にいろいろあり、(a)シェイドは知恵も腕も立つ悪の化身で、霊の力によって魔法を使う魔術師。(b)ラーザックは黒マント姿でくちばしと角を持ち、空を飛ぶ屈強な怪物。魔法は使えない。(c)アーガルは、下等で野蛮な怪物。かつては王の敵だったが、今は保身のため、王の衛兵となっている。
<これは所詮第1部・・・?>
『ロード・オブ・ザ・リング』第1部は、「指輪」の曰く因縁についてのナレーションから始まったが、それは『エラゴン 遺志を継ぐ者』も同じ。そして、エラゴンとサフィラの成長物語がブロムをキーパーソンとして描かれていく。ちなみに、『ロード・オブ・ザ・リング』第1部は、きわめて中途半端なエンディングで、あまりにもあっけないものだった。それに対して、『エラゴン 遺志を継ぐ者』では、最後にアラゲイジア軍とヴァーデン軍との攻防戦が描かれるが、これでアラゲイジア軍を撃退したのは第1ラウンドにすぎず、真の敵はガルバトリックス王の支配するアラゲイジア帝国そのものであることは明らか。
したがって、ラストシーンでは第2部の予告ともいえるガルバトリックス王の怒りの姿が・・・?すなわち、この『エラゴン 遺志を継ぐ者』は、所詮『エラゴン』シリーズの第1部にすぎないことが明らかに・・・。さてそうなると、あなたは引き続いて第2部、第3部を待望する・・・?
<それなりのクライマックスだが・・・?>
『ロード・オブ・ザ・リング』第1部は、人物紹介やストーリー紹介の前哨戦に終始し、大きなクライマックスシーンがなかったため、あまりにもあっけない印象だったが、『エラゴン 遺志を継ぐ者』「第1部」のクライマックスは・・・?
それは、前述のように、やっとの思いでサフィラと共にエラゴンが逃げ込んだヴァーデン軍と、ダーザ率いるアラゲイジア軍との攻防戦。圧倒的多数のアラゲイジア軍そして霊の力によって魔法を駆使する指揮官ダーザとの戦いは当然ヴァーデン軍に不利だが、ヴァーデン軍には火を噴いて戦うドラゴン、サフィラがいる。人間と同じように兜を頭に被り、何とも異様な姿(?)でエラゴンと一体となって懸命にアラゲイジア軍やダーザと戦うが、さてその結末は・・・?
<アーリアの活躍は第2部以降・・・?>
サフィラは別格として(?)『エラゴン 遺志を継ぐ者』の紅一点は、1975年生まれのセクシーな美人女優が演じる、エルフ族の美しき王女にして勇敢な戦士と称されているアーリア。美人女優大好き人間の私は当然大いに彼女に期待したのだが、「第1部」ではその活躍の場はほとんどなく、囚われ状態のシーンが多かったから、大いに失望・・・。マントをひるがえして馬を疾走させ、カッコいい皮の鎧に身を固めて剣を操る勇姿は第2部以降に持ち越し・・・。サフィラは第2部、第3部でもそれなりの活躍はするのだろうが、それは視覚的効果を狙ったものになるはず・・・?したがって、私はそれにあまり興味がないが、せめて美貌の女剣士アーリアにはカッコいい活躍を期待したいもの。というより、楽しみはそれだけ・・・?
2006(平成18)年12月13日記