ナイト ミュージアム(アメリカ映画・2006年) |
<東宝試写室>
2007年2月15日鑑賞
2007年2月16日記
シリーズもの偏重(?)のハリウッドに、展示品が夜になれば動き出すという何ともユニークな映画が登場!そんなこと、一体誰が信じるの・・・?しかし、夜警員に採用されれば、否応なく・・・。コメディー俳優のみならず、ローマ皇帝やファラオも参加するドタバタ喜劇は、楽しさ満載!しかし、ネタバレは御法度だから、予告編に登場する巨大な恐竜の活躍ぶり(?)もしゃべってはダメ・・・。しかし、この映画本来のテーマである父と息子の絆が回復できるかどうかには、十分注目を・・・。
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監督・製作:ショーン・レヴィ
脚本:トーマス・レノン、ロバート・ベン・ガラント
ラリー・デリー(自然史博物館の夜警員)/ベン・スティラー
マクフィー博士(博物館のディレクター)/リッキー・ジャーヴェス
レベッカ(ラリーに好意を寄せる女性博物館員)/カーラ・グギーノ
セシル(先輩の老警備員)/ディック・ヴァン・ダイク
ガス(先輩の老警備員)/ミッキー・ルーニー
レジナルド(先輩の警備員)/ビル・コッブス
エリカ・デリー(ラリーの別れた妻)/キム・レイヴァー
ニック・デリー(ラリーの息子)/ジェイク・チェリー
デビー(職業斡旋所の職員)/アン・メアラ
展示品
セオドア(テディ)・ルーズベルト(第26代米国大統領)/ロビン・ウィリアムズ
アッティラ・ザ・フン(フン族の王)/パトリック・ギャラガー
ファラオ・アクメンラー(古代エジプトのファラオ)/ラミ・マレック
サカジャウィア(インディアンの女性)/ミズオ・ペック
オクタヴィウス(ローマ皇帝)/スティーヴ・クーガン
20世紀フォックス映画配給・2006年・アメリカ映画・108分
<奇想天外・荒唐無稽な発想はどこから・・・?>
近時のハリウッド映画にやたらシリーズものが多いのは、一発で決めるアイデアや企画が少ないため・・・。この点、この『ナイト ミュージアム』における、自然史博物館の中の展示物(人間)が夜になると動き出すという奇想天外・荒唐無稽なアイデアはなかなかのもの。プレスシートによると、そのアイデアは、クロアチア人のイラストレーター、ミラン・トレンクによる児童書から始まったとのこと。そしてこの映画の脚本を書いたのは、自分自身が少年時代にアメリカ自然史博物館に入り浸って歩き回っていたというトーマス・レノンとロバート・ベン・ガラントの2人。
<博物館あれこれ・・・>
ところで、博物館は日本にもたくさんあるが、私には科学博物館と自然史博物館との区別がよくわからない。しかして、この映画に登場するような自然史博物館は日本ではどれ・・・?
ちなみに、市街地再開発事業をめぐる裁判で5年以上通った、岡山県津山市には「つやま 自然のふしぎ館」と名づけられた津山市科学教育博物館がある。私は数回ここを訪れたが、これはまさに自然史博物館そのもの。しかし、当然ここには歴史上の人物は展示されていない。仮にこの『ナイト ミュージアム』のリメイク版を日本でつくるとすれば、どこが1番ふさわしいの・・・?
<展示品(ジオラマ)のポイントは・・・?>
この映画の売りは何といっても巨大な骨格だけのティラノサウルス(T-REX)で、予告編では彼(?)が突如動き出すシーンにビックリ・・・。しかし、これは最初のビックリ・ドッキリのための役割だけで、映画としてはやはり人間ドラマが必要となるため、セオドア(テディ)・ルーズベルトをはじめ、洋の東西を問わず、また時代の枠を超えて何人かの著名人が登場し、それぞれの役割を果たすことになるからそれに注目!
また、誰でも小さい頃に『ガリバー旅行記』を読んだことがあるはずだが、あの物語で印象的だったのは、巨人の国と小人の国。その日本版が『一寸法師』だが、何を基準にするかによって、巨人や小人になってしまうから不思議・・・?そんな数々の展示品(ジオラマ)の役割を、タップリと楽しもう・・・。
<主人公は・・・?>
この映画の主人公は、「格差社会」が叫ばれている今の日本でもあちこちに登場しそうな、仕事を失い、ツキにも見放された男ラリー・デリー。しかしこの映画は、あくまですべての観客に楽しんでもらうというコンセプトでつくられているため、そんな逆境にあっても、常に前向きに明るく生きている夢想家(?)というキャラにふさわしい俳優を起用しなければダメ。そこで、当初からイメージされたのが、コメディー俳優を両親に持ち、見事にその血を引いているベン・スティラー。私が彼を観たのは『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01年)、『おまけつき新婚生活』(03年)だが、まさにこの映画のラリー役は、ベン・スティラーにピッタリ・・・。
<ダメ親父だが息子との絆は・・・?>
いくら明るく前向きでも、現実社会に適応する能力がなければ生活していけないため、妻から離婚を宣言されるケースはよくあるもの。フーテンの寅さんは、常にマドンナを求めて夢見ているから収まるところに収まるのであって、仮に寅さんが歴代マドンナの誰かとホントに結婚したら、楽しい新婚生活は1年と続かないはず。また、2人の間に子供でも生まれたら、奥さんはさらに大変で、離婚は必至・・・?
それと同じで、主人公のラリーも妻エリカ(キム・レイヴァー)から見切りをつけられたうえ、一人息子のニック(ジェイク・チェリー)と会えるのは月に数回・・・。だって、しっかりした離婚妻は、息子がダメ親父の影響をそれ以上受けないことを望むはずだから。ところがこの映画では、妻の見切りは早くかつはっきりしていたが、息子はまだ父親に対して男同士の絆を感じているらしく好意的。したがって、その気持が続いている間に、いい格好を見せないとホントにダメになってしまうのだが、今ラリーは失業中。早く就職して、息子に立派な父親ぶりを示さなければ・・・。
<懐かしい名前にビックリ・・・>
団塊世代の私は現在58歳だが、私が中学・高校時代に観た懐かしい俳優の名前を見ると、「えっ、まだ頑張っているの!」とビックリすることがある。例えば、『キングス&クイーン』(04年)のカトリーヌ・ドヌーブや、『プリティ・プリンセス2~ロイヤル・ウエディング~』のジュリー・アンドリュース、そして『インサイド・マン』(06年)のクリストファー・プラマーなどがそれ。
その意味で私がビックリしたのは、この映画に『メリー・ポピンズ』(64年)で強く印象に残っているディック・ヴァン・ダイクが、ラリーの先輩の老警備員セシル役で出演していること。その他にも、私は名前と顔が一致しないが、「喜劇界の伝説ともいうべき名優」として、ガス役のミッキー・ルーニー、レジナルド役のビル・コッブスらも登場している。ディック・ヴァン・ダイクは1965年生まれのベン・スティラーの倍の年齢というから、80歳を超えていることは明らか。
彼ら3人の先輩警備員は、映画後半、年甲斐もなく(?)タチの悪い行動に出るからそれに注目。これほどエネルギッシュな演技ができる活力源は一体ナニ・・・?それはやはり、映画への情熱以外ないはず・・・?
<展示品(ジオラマ)を動かすエネルギー源は・・・?>
アメリカ大統領のセオドア(テディ)・ルーズベルト(ロビン・ウィリアムズ)は選挙で選ばれたトップなら、ローマ帝国の初代皇帝オクタヴィウス(スティーヴ・クーガン)は、武力と智略で勝ち取ったトップ。しかし生まれながらのトップは、ファラオと呼ばれた古代エジプトの王(ラミ・マレック)。夜な夜な展示品が動き出すについては、当然何らかのエネルギー源が必要だが、この映画の工夫はそれをファラオの黄金の石盤に求めたこと・・・?もっとも、ファラオは後半こそ黄金のマントに身を包んだカッコいい姿を見せるが、それまでは白い包帯(?)でグルグル巻きにされていたミイラ。彼がなぜ、どんな状況で復活したのか?そして黄金に輝く石盤が、一体どんな能力を持っているのか?そして博物館の中でうごめいている陰謀とは・・・?
2月14日、北朝鮮の核や拉致問題に関する6カ国協議での「最終合意」が成立し、北朝鮮への当面5万トンの重油の支給は韓国が行うようだが、これによって北朝鮮はホントに約束を守り、核施設を凍結するのだろうか・・・?そして、残り95万トンの重油の支給が実現し、平和的・合理的解決へ向かうのだろうか・・・?ファラオの黄金の石盤の行方と共に(?)、それに注目しなければ・・・。
<労働者の解雇のルールは・・・?>
労働法制の再構築の1つとして、物議を醸していた「ホワイトカラーエグゼンプション」は取りやめになったようだが、公務員数削減とセットになっている重大問題が、公務員に団結権を付与する代わりに、解雇の自由の拡大を認めるか否かということ。解雇のルールについて、民間と官公庁があまりにも違いすぎる点は当然是正すべきだが、これはそう簡単に実現できないだろう・・・?
もっとも民間だって、解雇自体には厳しい法的縛りがあるのだが、バブル崩壊後のリストラの連続の中、事実上のクビ切りはあちこちでザラ・・・。そして、労働者側も正規採用を望まず、非正規採用オーケーという形でのフリーターが増大。こりゃ一体どうなっているの、という状況だが、そんな視点で博物館へのラリーの採用、クビ宣言、そしてラストにおける大番狂わせのクビ切り撤回は見モノ・・・。またその決断が、すべて博物館のマクフィー博士(リッキー・ジャーヴェス)1人の判断で即断・即決されているのはいかにもアメリカ的・・・。
法学部の学生や司法試験を目指して勉強している受験生は、そういう観点からもこの映画を見なければ・・・。
<ありえない恋愛ストーリーも少しだけ・・・>
この映画はあくまでラリーが主人公。そして、ラリーを中心としたストーリー構成の骨格は、息子との絆。しかし、博物館にはそんなラリーに好意を寄せる女性博物館員レベッカ(カーラ・グギーノ)もいるから、ラリーとレベッカとの恋模様もサブストーリーの1つ・・・。
もっとも、恋模様という観点からは、ルーズベルト大統領がインディアンの娘サカジャウィア(ミズオ・ペック)にホレているというのも、ありえない話ながら面白いストーリー。インディアンの娘として最も有名なのは、『ニュー・ワールド』(05年)で描かれたポカホンタスだが、サカジャウィアはこのポカホンタスと並んで有名な女性らしい。したがって、興味のある方はそれについてもしっかりお勉強を・・・。
<その他いろいろ・・・>
この映画を観るについては、当然ラリーとT-REXとの対決が見モノ。骨格だけのT-REXは実に精巧につくられているうえ、その動きについての撮影手法も抜群で、きっとあなたも驚き満足するはず。しかして、そのオチは・・・?
その他、ラリーとノドジロオマキザルとの知的格闘(?)や、フン族のアッティラ・ザ・フン(パトリック・ギャラガー)との奇妙な会話、そしてラリーが展示品全員を指揮して悪党どもと闘う姿など、この映画には面白いシーンがいっぱい。もっとも、このネタは1度使ってしまうとたちまち飽きてしまうから、もう1度この映画を観てみようという人はいないはず・・・。したがって、あまりストーリーや見どころを教えない方がいいのだが、ここまで書いた今となっては既に手遅れ・・・?
2007(平成19)年2月16日記