ハリウッドランド(アメリカ映画・2006年) |
<東宝東和試写室>
2007年4月19日鑑賞
2007年4月20日記
スーパーマン俳優ジョージ・リーブスの「自殺」は、1959年6月16日のこと。それは一体なぜ?そしてホントに自殺・・・?そう疑った人は多いはず。そして、私立探偵が調べれば調べるほどその疑惑は深まるばかり・・・?スーパーマン俳優も人の子だから、役の固定化に悩み、恋にも悩んでいたが、同時にそんな彼に対する嫉妬やねたみのうずもあちこちに・・・。名優たちの共演によるスリリングな展開は見どころ十分だが、さて肝心の結末は・・・?それによって作品の価値が大きく左右されるのだが・・・?
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監督:アレン・コールター
脚本:ポール・バーンバウム
ルイス・シモ(私立探偵)/エイドリアン・ブロディ
ジョージ・リーブス(スーパーマン俳優)/ベン・アフレック
トニー・マニックス(エディの妻)/ダイアン・レイン
エドガー(エディ)・マニックス(映画会社MGMの重役)/ボブ・ホスキンス
ヘレン・ベッソロ(ジョージの母親)/ロイス・スミス
レオノア・レモン(ジョージの婚約者)/ロビン・タニー
ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)配給・2006年・アメリカ映画・126分
<スーパーマンの誕生は・・・?>
来る5月1日に日本が世界最速公開となるハリウッド映画の話題作が『スパイダーマン3』(07年)。そのため今や日本国中をその宣伝が席巻しているが、『スパイダーマン3』では3人の強敵が現れて、スパイダーマンは窮地に追い込まれるらしいから、ひょっとしたら死んでしまうかも・・・?
これまで、アメリカンコミックスから生まれたスーパーヒーローが次々と誕生してきたが、その本家本元は何といってもスーパーマン。プレスシートによれば、スーパーマン役者としてジョージ・リーブスを起用した「TVシリーズ『スーパーマン』は、1951年に初めはパイロット版を兼ねてB級劇場用映画『スーパーマンと地底人間』(未)として撮影が開始され、その年の内に第一シーズン26本分の撮影を終えた」とのこと。
<スーパーマンは死ぬはずがない・・・?>
1951~52年という時代は、戦勝気分で湧いたアメリカながら、実はテレビの急激な普及によって映画産業は厳しい選択を迫られていた時期・・・。そんな時期のテレビ番組として、子供たちの大ヒーローとなったスーパーマンとして、ジョージ・リーブスは7年間で計104本に出演し、有名人の仲間入りをしたとのこと。
スーパーマンは「弾よりも速く、力は機関車よりも強く、高いビルもひとっ飛び」だから、そんなスーパーマンは死ぬはずがない。少なくとも、全米の子供たちはそう信じていたが・・・?
<1959年6月16日・・・>
1959年6月16日。この日がスーパーマンの、いやスーパーマン俳優ジョージ・リーブス(ベン・アフレック)の命日。たとえ俳優ジョージ・リーブスの名前を知らなくても、彼が演じた「その役」の名前を知らないアメリカ人は1人もいない。そこで翌日の新聞紙面を躍ったのは「スーパーマン、死す」というセンセーショナルな見出しだった。
映画の冒頭は、ハリウッドの自宅2階のベッドで死亡したジョージの遺体を警察が調べているシーンから。ジョージの頭部には弾痕が残されていたため、警察は銃による自殺と断定した模様。しかし、それはホント・・・?自殺の動機は・・・?ひょっとして事件性があるのでは・・・?そして、何らかの動機をもつ人物による他殺では・・・?そう考えた人は、全米にたくさんいたのでは・・・?
<如月ミキVSスーパーマン>
だって、私が4月9日に観た面白い密室劇『キサラギ』(07年)では、自殺したグラビアアイドル如月ミキの一周忌追悼会に集まった熱狂的なファンである5人の男たちによって、ミキちゃんの死は自殺ではなく他殺ではなかったのか・・・?するとその犯人は一体ダレ・・・?という推理と議論だけでメチャ盛り上がったのだから・・・。
田舎出のちょっとしたグラビアアイドルの自殺だけでも、こんな熱狂的な5人の男たちによる面白い密室劇が映画として成立するのだから、全米一有名なスーパーマン俳優の死亡ともなれば、自殺説・他殺説を中心として諸説噴出してもおかしくないうえ、映画として成立するのは当然・・・?
<調査は、私立探偵のルイス1人だけ・・・?>
そんな風に理解している私としては、スーパーマン俳優ジョージの「自殺」について、あれこれ調べ回る人がたくさんいて当然と思うのだが、なぜかこの映画では、その調査をするのは、ジョージの母親ヘレン(ロイス・スミス)から調査依頼を受けた私立探偵のルイス・シモ(エイドリアン・ブロディ)1人だけ・・・。なぜそうなのかと考えれば、それはきっと捜査当局からの圧力。そして、そんな圧力をかけたのは、スーパーマン映画で大儲けをしていた映画会社MGMの重役エドガー・マニックス(ボブ・ホスキンス)だとすぐに気づくはず・・・?
もっとも、ヘレンはなぜ大手の探偵事務所に依頼せず、なぜルイスのような零細な個人経営の事務所に依頼したのだろうか・・・?『戦場のピアニスト』(02年)によって、史上最年少でアカデミー賞主演男優賞を受賞した、あの長い顔が特徴の俳優エイドリアン・ブロディの熱演は評価するものの、私にはそれが不思議でたまらないが・・・。
<あの夫婦はかなりヘン・・・?>
MGMの重役エディの妻トニー・マニックスを演ずるのはダイアン・レイン。彼女は『運命の女』(02年)でアカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされた美人女優だが、1965年生まれだから、既に42歳。したがって、往年の美しさはちょっと・・・?
もっとも、夫のエディとの年齢差はかなりのものであるうえ、この夫婦関係はかなり変わっている、というよりかなりヘン・・・?そもそも、エディは元ギャングとかフィクサー(始末屋)とかと言われていたらしいから、そんな人物とトニーが結婚したのは一体なぜ・・・?またエディは自分自身も公認の愛人を抱えているが、トニーが幸せならばトニーも何をしてもいいという太っ腹な性格(?)のようで、トニーがかなりおおぴらに若い男と浮気することも公認のよう・・・?
したがってある日、映画関係者が集まったパーティーで出会ったトニーとジョージの2人はたちまち「いい仲」になったが、これはどちらかというとトニーのリードによるもの。そして、どうもこれは、エディも公認の仲のよう・・・。
<2人の思惑の一致点と対立点は・・・?>
したがって、「あなたが欲しいものは、何でも手に入れてあげるわ」というトニーの言葉に端的に表れているように、以降、ジョージはエディ公認のトニーの年下の愛人という位置づけ(?)で、スーパーマン俳優としての第一歩を踏み出すことに・・・。
ジョージはトニーが自分の俳優としての成長をずっと応援してくれるものと単純に考えていたから、2人の思惑が一致している間は2人の仲は順調だった。しかし、トニーはどうも、スーパーマン俳優としてペット的にジョージを傍においておきたかっただけで、ジョージが俳優として大きく成長していくことを望んでいたのではなかったよう・・・?そんな思惑の不一致が明確になるにつれて、2人の間には次第に大きな対立が・・・。
<わかる、わかる、あんたの気持・・・?>
ジョージは子供番組向けのスーパーマン役を最初嫌がったが、結局『スーパーマン』は大ヒット。またたく間にジョージは大ヒーローとなったが、こういう場合困るのは、スーパーマン俳優という形で役柄が固定してしまうこと。日本でいえば、藤岡琢也が『渡る世間は鬼ばかり』の岡倉大吉役で固定するのを嫌がったようなもの・・・?
ところが困ったのは、最大の応援者であるはずのトニーが他の役を全く探してくれないこと。これは、彼女なりにジョージを独占的なペットにしておくための手だったのだが、それはジョージにとってはどうにも我慢ならないこと。そんなジョージの怒りは爆発し、遂に自分でプロダクションをつくると宣言したうえ、新たに若い恋人レオノア・レモン(ロビン・タニー)までつくることに・・・。わかる、わかる、そんなあんたの気持・・・。しかし、これによってトニーとの対立は遂に頂点に。ここからの、恐い顔をした中年女(?)トニーのストーカー的な行動はかなり見モノ・・・?
<調査は順調に・・・?>
私立探偵は、必然的に他人の内面や秘密の世界に無理矢理入り込んでいき、それを暴くのが仕事だから、そもそもあまり他人から喜ばれる仕事とは言えないもの。したがって、そんな仕事に従事している本人も、ギャラ上の満足感はあっても、やりがいや充実感は少ないのでは・・・?
この映画におけるルイスの仕事ぶりを観ていると、つくづくそう感じてしまう。というより、スーパーマン俳優の死因調査に精を出せば出すほど、自分の家族の絆は崩壊していくばかり・・・。さらに、この調査ばかりに没頭したおかげで、もう1件の浮気調査の方は悲惨な結果に・・・。さらに、あろうことか、やっとここまで調査が進んだというのに、1日50ドルのギャラを約束した依頼主のヘレンからは、突然調査の打ち切りを宣告される始末・・・。
そりゃ一体なぜ・・・?俺を襲ったあいつらの影響・・・?調査は次第に暗礁に乗り上げ、ルイス自身も疲労困パイし、焦燥の色を深めていくばかりだったが・・・?
<さて、どんな結末に・・・?>
映画『KT』(02年)は韓国の金大中大統領の拉致事件をテーマとした阪本順治監督の問題提起作だが、これが面白かったのは、さまざまな興味深い人物を配置して、手際よくかつスリリングに監督自身の視点を明確に示したため(『シネマルーム2』211頁参照)。つまり、過去の歴史上の事実を羅列するのではなく、あくまで監督の視点を明確に示していたため・・・。
この手の政治的な事件を映画化する場合、各方面からの圧力が予想されるのは当然だから、この映画についてもきっとそれはあったはず。また、アメリカ映画『ジャッカルの日』(73年)も、ドゴール大統領の暗殺未遂事件を描いたそりゃ面白い映画だったが、これとてかなりの圧力があったはず・・・?ちなみに、1963年に発生したジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件を描く映画も、『ダラスの熱い日』(73年)、『JFK』(91年)などたくさんあるが、これだって監督の視点が明確に示されていなければ全然面白くないのは当然。
しかして、この『ハリウッドランド』では、スーパーマン俳優ジョージの死亡原因はどのように究明され、映画はどんな結末を迎えるのだろうか・・・?それは、あなたの目でしっかりと・・・?
2007(平成19)年4月20日記