ラブソングができるまで(アメリカ映画・2007年) |
<梅田ピカデリー>
2007年4月22日鑑賞
2007年4月24日記
新曲づくりをテーマとしたラブコメは、一見安易な企画。しかし、忘れ去られた80年代のポップスターと、男に騙された元ライターによる新曲づくりは、ラブコメの定番どおりの起承転結を踏んでいく中実に面白い展開を・・・?歌とダンスが苦手というヒュー・グラントだが、ピアノの弾き語りによるバラード曲は見事なもの。音楽好きのあなたには、こりゃ結構お薦めのラブコメ・・・。
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監督・脚本:マーク・ローレンス
アレックス・フレッチャー(80年代の元ポップスター)/ヒュー・グラント
ソフィー・フィッシャー(作家志望だった女性)/ドリュー・バリモア
クリス・ライリー(アレックスのマネージャー・友人)/ブラッド・ギャレット
ローンダ(ソフィーの姉・ダイエット専門店を経営)/クリステン・ジョンストン
スローン・ケイツ(人気作家・ソフィーの元恋人)/キャンベル・スコット
コーラ・コーマン(カリスマ歌姫)/ヘイリー・べネット
ワーナー・ブラザース映画配給・2007年・アメリカ映画・104分
<80年代のポップスターの今は・・・?>
1982年、マイケル・ジャクソンが全世界で5000万枚を売り上げた『スリラー』を発売。1983年、マドンナがアルバム『バーニング・アップ』で鮮烈デビュー。と言われてもあまりピンとこないが、むしろ1978年にジョン・トラボルタ主演の『サタデー・ナイト・フィーバー』が日本で公開され、「ディスコブーム到来!」の方が印象強い。以降10年間、空前のバブル景気の中、日本国は浮かれに浮かれて・・・?
この映画は、1984年に人気絶頂となった5人組バンド「PoP!」で、コリンと共にボーカルを担当していたアレックス(ヒュー・グラント)が主人公。20年も経ってなおトップの座を保っている歌手は、ユーミンや中島みゆきそして松田聖子など一部の例外だけで、既に引退した人も多いし、昔を懐かしむ番組に時々出演する程度の歌手がほとんど。そして、アレックスはまさにそれ・・・。
すっかり落ち目となってしまった過去のポップスター、アレックスの現在の職場は、往年のギャルたちを相手に同窓会や公園でしょぼくれたイベントに出演する程度。『サタデー・ナイト・フィーバー』のジョン・トラボルタは、『フェイス/オフ』(97年)、『ソードフィッシュ』(01年)、『パニッシャー』(04年)など数々の作品で存在感タップリの演技を披露し、ハリウッドの大スターとして見事に君臨していることに比べれば、こんなアレックスはいかにも惨め・・・?
<80年代のお気に入りナンバーは・・・?>
私の中学・高校時代、すなわち1960年代のお気に入りは、ラジオ番組『全国歌謡ベストテン』やテレビ番組『ロッテ 歌のアルバム』などから仕入れる歌謡曲。中でも橋幸夫、舟木一夫、西郷輝彦、三田明等の青春歌謡はお手のもの。そして、1967年に大学に入学してからは、ラジオの深夜番組『ヤンリク』(ヤングリクエスト)でかかるすべての歌とフォークソング。司法試験の勉強をやっていた1971~72年だけは、有名なグループサウンズの曲を含めて完全な空白期間だが、1974年の弁護士登録後は、もっぱら『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』などのテレビの歌番組に登場する女性アイドル路線はすべてバッチリ。そして・・・。
書き出したらきりがないのでここらでやめるが、80年代のあなたのお気に入りナンバーは?と聞かれたら、まちがいなく私が挙げるのは、プリンセス・プリンセスの『M』。プリンセス・プリンセスの『SINGLES 1987ー1992』は私が1番よく聴いているCDで、今やiPodに何十枚と入っているCDの中で、新幹線の中で聴く回数が1番多いのが、『ジュリアン』『世界でいちばん熱い夏』『DIAMONDS』などの名曲がたくさん詰まっているこのアルバム。こんな私だから、お尻ふりふりの振り付けはともかく、PoP!の80年代ナンバーも十分理解可能・・・?
<コーラ・コーマンか倖田來未か・・・?>
「歌姫」という称号がいつ頃から使われるようになったのかよく知らないが、この映画に登場する歌姫コーラ・コーマン(ヘイリー・ベネット)の売りは、東洋思想とセクシーダンスのコラボレーションパフォーマンス!つまり、『ブッダの悦び』に象徴される、仏様への帰依・・・。
露出度タップリで歌い踊るその姿は、日本の歌姫、倖田來未そっくり!私は倖田來未の『Butterfly』や『夢のうた』などをiPodに入れて覚えようとしたが、やっぱりムリ。歌っても全然サマにならないのでやめてしまった。しかし、この映画のラストに、コーラがアレックスとデュエットで歌うバラードナンバー『愛に戻る道』なら、私でも完璧に歌うことができる。倖田來未も、たまにはおじさんに歌えるバラード曲をヒットさせてほしいものだが・・・。
<ラブコメの導入部は・・・?>
この映画の物語は、最近彼氏と別れたばかりのスーパースター、コーラが、昔ファンだったというアレックスに対して、新曲『愛に戻る道』を作曲してほしいと申し込んできたところからスタートする。もう10年以上も作曲したことがないうえ、もともと作詞は大の苦手のアレックスは尻込みしたが、マネージャーのクリス・ライリー(ブラッド・ギャレット)はそんなアレックスを懸命に説得。しかし、期限はわずか数日。しかも、同じ条件で7人のアーティストにオファーが出されているから、これはいわば指名競争入札・・・?
さあ、有能そうな作詞家とコンビを組んで新曲づくりに取りかかったアレックスだが、2人の関係は何かギクシャクしている様子。そんな中、鉢植えの世話のために、最近アレックスの部屋に出入りしていた女性ソフィー・フィッシャー(ドリュー・バリモア)が何気なく口ずさんだフレーズに2人はビックリ・・・。
<ラブコメの展開部は・・・?>
このソフィーは、ドリュー・バリモア演ずるこれまでのラブコメの役柄と同様(?)、えらく陽気な女性。現在彼女は、ダイエット専門店を経営している姉ローンダ(クリステン・ジョンストン)の店で働いているが、何を隠そう彼女は、元作家志望という才女・・・?アレックスとの共同作業による新曲づくりが少しずつ進むにつれて、そんなソフィーの涙の過去がアレックスに語られていく・・・。
ソフィーの元カレは、現在ベストセラー作家となっているスローン・ケイツ(キャンベル・スコット)。そして、そのベストセラー小説の中に登場する主人公が、ソフィーをモデルとした女性。それはそれでいいのだが、問題はその人物像。何とその主人公は、有名作家を利用してのし上がっていこうとする才能なしの性悪女なのだ。こりゃソフィーにしてみれば、頭にくるのは当然・・・。
この小説によって、一方はベストセラー作家に上りつめ、他方はそのショックで何も書けなくなってしまったというわけだ。したがって、アレックスから「何とか作詞してほしい」と強い要請を受けながら、それを拒否し続けていた彼女だったが・・・?
<ドリュー・バリモアは少しやせたかナ・・・?>
今や、メグ・ライアンに代わってすっかり「ラブコメの女王」になっているのは、『25年目のキス』(99年)、『50回目のファースト・キス』(04年)(『シネマルーム7』104頁参照)、『2番目のキス』(05年)(『シネマルーム12』)などでたて続けに主演をつとめ、時としては自ら設立した映画製作会社「フラワー・フィルムズ」を通して、製作までやってのける才女ドリュー・バリモア。彼女は1975年生まれだから、年齢といい顔つきといいラブコメディーにピッタリだが、昔から気になるのはちょっと太めなこと・・・。したがって、『50回目のファースト・キス』では、「正直言ってあまり私の好きなタイプではない。それはなぜなら、この映画でもそうだが、ちょっと太めだから・・・?」と書いてしまった(『シネマルーム7』107頁参照)。
ところが、この映画のパンフレットにあるインタビューによると、「この映画を観ていても感じたのですが、今、実際に目の前にいるあなたを見ても、以前より痩せたように思えます。何か特別なことをしたのでしょうか?」との質問があり、これに対して彼女は、「できるかぎり正しい食生活をして、運動をするように心がけてはいるけれど、特別のことはしていないわ」と答えているが、実際の体重などはもちろん不明・・・?ある時、ある事情により正装の赤いドレスを着て、かつての恋人で今は人気作家となっているスローンと「対決」した時の、彼女の大きく露出された胸のあたりを見ていると、やっぱり、かなり太め・・・?
<ヒュー・グラントには努力賞を!>
『Ray/レイ』(04年)で、ジェイミー・フォックスはアカデミー賞主演男優賞を、『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』(05年)でリーズ・ウィザースプーンがアカデミー賞主演女優賞を受賞したのは、本業は俳優でありながら、ホンモノの歌手そのものになり切った演技と歌唱力がきっちり評価されたため。映像技術の進歩によって、「口パク」だけの演技でも現実にはそれほど違和感はないが、やはりホンモノとニセモノは違うはず・・・。
そんな観点から、80年代のポップスター、アレックスを演ずるヒュー・グラントを見ると、彼は『ノッティングヒルの恋人』(99年)、『ブリジット・ジョーンズの日記』(01年)、『ラブ・アクチュアリー』(03年)、『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』(04年)など、ラブコメの演技はお手のものだが、歌も楽器もダンスもまるでダメだったらしい・・・。
ところが、この映画のクライマックスとなるコーラのライブコンサートで、会場から出ていこうとするソフィーに向けて、アレックスが自分の気持を正直に綴った自作自演の曲をピアノの弾き語りで聴かせるシーンが登場するが、この『ドント・ライト・ミー・オフ』という名曲を彼は大勢の観客の前でホントに実演したとのこと。さすがハリウッドの一流俳優はやれば何でもできることを証明したわけで、ヒュー・グラントには是非努力賞を・・・。
<わが事務所にも作詞家が・・・?>
現在毎日放送ラジオの『ミスタートラ唐渡吉則のOH!艶歌』でパーソナリティーをつとめている女性シンガーソングライター「う~み」は、昔から私の大のお友達。そして、毎年7月25日に当事務所が開催している「天神祭パーティー」の常連ゲストとして、美しい歌声を聴かせてくれている。そんなう~みが2005年2月に発売した9曲入りアルバム『なとわ』の5曲目に収録されている『some~ミマモッテイルヨ~』は、作曲はう~みだが、作詞は嶋津淳子。そして、作詞協力は坂和章平。そして、このアルバムのスペシャルサンクスとして坂和総合法律事務所も入っている。
嶋津淳子は当事務所に約20年間勤めている事務局長で、私が最も信頼している仕事上のパートナー。そんな彼女の音楽上の才能もかなりのものらしく、わが事務所で「東大クン」というあだ名を持っていた東大卒の事務員の男性が、司法試験を目指していながら人との対話能力の面において大きな弱点があることをイメージして、語りかけるようにつくった歌詞がこれ。私は1、2ヶ所いじっただけだが、この歌詞を読んで「これはいける!」と直感したう~みが、ほんの数時間で作曲したのが、この『some~ミマモッテイルヨ~』というわけだ。あちこちのコンサートで歌い、大好評とのことだから、是非あなたにも聴いてもらいたいもの・・・。
<意外な掘り出しモノ・・・?>
「落ちぶれた80年代ポップスター」VS「男に騙された元ライター」というヘンな組み合わせのラブコメについて、私はそれなりの出来の、それなりの映画だろうと予想して観に行ったが、案の定、ラブコメの定番どおりの起承転結をつけたそれなりの出来・・・。しかし、この映画が意外だったのは、音楽の良さ。コーラ・コーマンのセクシーダンスは倖田來未同様、それなりに私たちの目を楽しませてくれるが、それ以上に、この映画のテーマ曲となっている『愛に戻る道』がグッド。2、3回歌詞カードを見ながら聴いたら覚えられる美しいバラード曲なので、機会があれば・・・?
さらに、「ダメ男と決めつけないで・・・」というアレックスの心の叫びを、美しいピアノの弾き語りで聴かせる『ドント・ライト・ミー・オフ』も何ともいえず美しいメロディーで、聴いていてホッとするもの。こんな美しい曲が物語の大きなウエイトを占めているという点で、このラブコメは意外な掘り出しモノ・・・?
2007(平成19)年4月24日記