ルネッサンス(フランス、イギリス、ルクセンブルグ合作映画・2006年) |
<角川映画試写室>
2007年6月1日鑑賞
2007年6月6日記
いつまでも若く美しく。そのための新薬開発は、秦の始皇帝の時代からの夢・・・。時代は近未来の2054年。舞台は花の都パリ。若き天才女性研究者の誘拐から始まる波瀾万丈の物語が、モーションキャプチャーという手法によって大展開!妙に刺激的なモノクロ画面、そして実写とアニメの融合という新たな映像技術を、さてあなたはどう評価・・・?
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監督・デザイン原案:クリスチャン・ヴォルクマン
声の出演
バーテレミー・カラス(誘拐捜査専門の警官)/ダニエル・クレイグ
イローナ・タスエヴ(若き天才科学者)/ロモーラ・ガライ
ビスレーン・タスエヴ(イローナの姉)/キャサリン・マコーマック
ジョナス・ムラー(イローナの上司)/イアン・ホルム
ポール・ダレンバック(アヴァロン社のトップ)/ジョナサン・プライス
ヌスラット・ファーフェラ(マフィアのボス)/ケヴォルク・マリキャン
ハピネット、トルネード・フィルム配給・2006年・フランス、イギリス、ルクセンブルグ合作映画・106分
<2054年・・・パリの都市像は・・・?>
この映画の邦題となっている『ルネッサンス』は、もちろん16世紀にイタリアを中心としてヨーロッパに巻き起こった「ルネッサンス」のことだが、それは、この映画が、それと肩を並べる作品になればいいなという願いがこめられているらしい・・・。
それはともかく、原題は同じ『ルネッサンス』ながら、そこには『PARIS 2054』というサブタイトルがついている。イギリスVSフランスの百年戦争の時代もあり、パリがナチスドイツに占領された時代もあったが、やはりパリが最も激動したのは1789年のフランス革命の時代。
2007年のパリは、右派のサルコジ氏と左派のロワイヤル氏による大統領選挙で燃え、また『パリ、ジュテーム』(06年)というパリをテーマとした映画まで作られたが、それはフランス革命によって地球上はじめて市民による近代国家が生まれてから200年以上後のこと。
近代民主主義国家が成立した後の産業革命や近時のIT革命の中、人間社会の進歩は加速度的に早くなったから、今から約50年後、すなわち2054年のパリのまちはいったいどんなになっているの・・・?
リュック・ベッソン監督が『TAXi』(97年)、『TAXi2』(00年)、『TAXi3』(03年)で描いた近未来都市の姿も興味深かったが、この『ルネッサンス』でクリスチャン・ヴォルクマン監督が描く、2054年という近未来のパリの都市像は・・・?この映画を鑑賞するについては、そんな都市観や都市計画的観点がまず必要・・・?
<不老不死の薬は可能・・・?>
秦の始皇帝が「不老不死の薬」を追い求めたことは有名な話だが、それは今から2000年以上前の紀元前200年頃のおはなし。
しかし、それを求める人間の気持ちは今日までずっと続いており、とくに20世紀末から21世紀にかけての遺伝子工学の進歩は、それを夢ではなく現実的な可能性にしてしまった感がある。
2054年のパリ。この映画の冒頭、大きな広告板の中で印象的に語られるのは、永遠の若さを賛美するアヴァロン社のコマーシャル。
2007年の今でも、化粧品、シャンプー、石鹸等のコマーシャルは女性に永遠の若さと美しさを約束するものばかりだが、そこに大きな虚構性が入っていることは女性の皆さんも了解済み・・・?
しかし、2054年のパリでは・・・?そして、世界的規模で成長を続ける医療関連の複合企業体アヴァロン社であれば、そのコマーシャルはひょっとしてホンモノ・・・?
<モーションキャプチャーとは・・・?>
私は映画が大好きだし、カメラも大好きだが、映画の撮影技術について特に勉強しているわけではなく、せいぜい映画検定の受験勉強としてやった程度の知識。
したがって、「『ルネッサンス』は3DCGアニメーションである」とか、「モーションキャプチャーは、3次元キャラクターの動きをリアルに見せるために開発された技術である」と言われても、専門的なことはサッパリわからない。
しかし、妙に迫力ある白黒画面で、かつ実写とアニメをごっちゃにしたようなこの映画の映像をみれば、それがかなり特殊な手法によって作られていることはよくわかる。ちなみに、フランスでは日本のアニメの評価は驚くほど高いらしいが、実はそれも私にはよくわからない分野・・・。
私が強く印象に残った映像は、2005年10月9日に観たアメリカンコミックで劇画タッチの『シン・シティ』(05年)。これは映像のインパクトが非常に強かったうえ、骨太で、ハードボイルドタッチのストーリーも面白いものだった(『シネマルーム9』340頁参照)。
しかし、「アニメと実写の融合」ははじめて。さて、そのモーションキャプチャーとは・・・?
<声の出演も豪華だが・・・?>
アニメでは声の出演を誰がするかが大きなポイントになる。 しかし、声だけでそれが誰だかわかる俳優は少ないし、パンフレットに印字された名前だけでその顔が思い浮かぶ俳優も少ないはず。
したがって、実写なら、約2時間その映画を観る中で俳優の名前と顔と声が少しずつ一致していき、さらに映画鑑賞後パンフレットで勉強を重ねる中、少しずつに記憶に残っていくことができる。
しかし、その点アニメでは、いくら有名な俳優でも声だけしか出演していないから、その顔や演技力は影に隠れているため、その俳優の名前と顔をなかなか覚えられないという不便さが・・・。
この映画でカラス警部の声優を務めるのは、007シリーズ第21作『カジノ・ロワイヤル』(06年)で若き日のジェームス・ボンド役を演じたダニエル・クレイグだが、彼だって『カジノ・ロワイヤル』に出演したことによって、その顔と名前が全世界に一致して広がったもの・・・?
『ルネッサンス』にはその他、たくさんの名優が声の出演をしているが、私レベルの知識では名前だけ言われても、また名前と過去の出演作品名を言われても、なかなかその顔が浮かんでこないのが実情で、それが実写でない『ルネッサンス』の弱点・・・?
せっかくの豪華な声優陣も、これではちょっと浮かばれないかも・・・?
<物語はイローナの誘拐から・・・>
この映画の物語は結構複雑だし、白黒の画面でモーションキャプチャーとして表現される各登場人物のキャラクターを把握するのは最初は大変。
この映画のストーリーのカギを握るのはアヴァロン社の最高経営責任者ダレンバック(ジョナサン・プライス)と元アヴァロン社の研究所の主任研究員であったムラー博士(イアン・ホルム)。そして、映画の冒頭何者かによって誘拐されてしまうアヴァロン社の若き天才女性研究者イローナ(ロモーラ・ガライ)。他方、このイローナを無事に連れ戻すことを厳命されたのが警察組織の中で一匹狼ながら捜査能力抜群のカラス警部(ダニエル・クレイグ)。
要するに、カラス警部がイローナを救出するためムラー博士との接触を中心として捜査を進めていくうち、不老不死の薬を生む源となったプロジェリアと呼ばれる子供を襲う早老治療薬の研究にたどり着き、イローナを救出したときには、その研究にまつわるさまざまな驚くべき事実が明らかになるという構成だ。
こう言ってしまえば身も蓋もないかもしれないが、そこにはイローナの姉ビスレーン(キャサリン・マコーマック)やプロジェリアに苦しむムラー博士の弟のクラウスなども登場し、何ともスリリングな展開が用意されているからご安心を・・・。
実写版ではなく、目に刺激の強いモノクロ画面でモーションキャプチャーの動きを観るのは少し疲れるかもしれないが、刺激的なストーリーと印象に残る映像であることはたしか。そんな新しいチャレンジを、ぜひあなた自身の目で・・・。
2007(平成19)年6月6日記