デス・プルーフ in グラインドハウス(アメリカ映画・2007年) |
<OS劇場>
2007年9月9日鑑賞
2007年9月12日記
B級映画大好き、若い女の子大好き、そのうえタランティーノ監督と同じような「脚フェチ」という人にはチョーお薦め!他方、芸術映画、感動作品でなければダメという人は絶対アウト!「グラインドハウス」とB級映画のお勉強、そしてタランティーノ監督のお勉強をしながら、映画にはこの手の楽しみ方があることをしっかり認識しよう。映画は、要は好きか嫌いか?それに尽きる・・・。
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監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
スタントマン・マイク/カート・ラッセル
バーテンダー/クエンティン・タランティーノ
アーリーン(ジュリアの大学時代の友人、人気モデル)/ヴァネッサ・フェルリト
ジャングル・ジュリア(テキサス州オースティンの人気DJ)/シドニー・タミーア・ポワチエ
シャナ(ジュリアの親友)/ジョーダン・ラッド
パム/ローズ・マッゴーワン
ゾーイ(スタントウーマン)/ゾーイ・ベル
キム(スタントウーマン)/トレイシー・トムズ
アバナシー(メイク係)/ロザリオ・ドーソン
リー(新進女優)/メアリー・エリザベス・ウィンステッド
ブロードメディア・スタジオ配給・2007年・アメリカ映画・113分
<何はともあれ、クエンティン・タランティーノのお勉強を・・・>
この映画のパンフレットを読んでいると、1963年生まれのクエンティン・タランティーノ監督と1960年生まれの三池崇史監督が盟友となった(?)のは、三池が第61回ベネチア国際映画祭に『IZO』(04年)を出品した頃らしいから、意外にも比較的最近のこと。しかしずっと以前からお互いの作品はよく知っていたため、心は通じ合っていたらしく、タランティーノ監督の『ホステル』(05年)には三池が出演し、2007年9月の第64回ベネチア国際映画祭に青山真治監督の『サッド ヴァケイション』(07年)と共に出品された『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(07年)にはタランティーノが出演するなど、互いの作品を通じた交流は本格的。
私がクエンティン・タランティーノ監督を本格的に意識したのは『キル・ビル』(03年)、『キル・ビルVol.2』(04年)だから、多くの日本人観客と同じようなレベル・・・?自他ともに「映画オタク」と認める彼のアメリカにおける盟友ロバート・ロドリゲス監督が、タランティーノに声をかけて実現したプロジェクトが「グラインドハウス」らしい。これは、かつてアメリカに存在した“B級”インディーズ作品専門の劇場である「グラインドハウス」に対する2人の熱いオマージュが込められたもの。そして、ロバート・ロドリゲス監督の『プラネット・テラー』(07年)とクエンティン・タランティーノ監督の『デス・プルーフ』を2本立てとして上映するという企画だ。
残念ながら、日本では一部地域での特別上映を除いて、それぞれの長尺バージョンがばらばらに公開されることになったため、私は今日『デス・プルーフ in グラインドハウス』のみを観たわけだが、『キネマ旬報』9月上旬号は、「ふたりのそもそものアイディアを尊重し、両作まとめた2本立て企画として紹介」しているので、これも参考にしながら、クエンティン・タランティーノ監督そのもののお勉強を・・・。
<デス・プルーフとは?>
プルーフ(proof)とは、第1に「~という証明」、そして第2に「吟味、試験、品質テスト」という意味。したがってデス(death)・プルーフとは「耐死仕様」、すなわちスタントマン・マイク(カート・ラッセル)が乗る髑髏マークのついたシボレーが誇る、特殊な耐死仕様のこと・・・。
タランティーノ監督が若い頃、グラインドハウスで浴びるように観たというB級映画には、カーチェイスを売り物にしたものも多かったはず。しかし、CG技術のない時代、そんな映画の撮影は一体どんな風にしていたの・・・?
テキサス州オースティンを舞台とした第1部でそういう話を誇らしげに若い女性パム(ローズ・マッゴーワン)に語って聞かせたマイクは、送ってくれと頼まれたパムを車の後部座席(?)に座らせたが・・・。耐死仕様がもし運転席だけのことだったら大変。すなわち、後部座席では・・・?
<なぜ女の子を総入れ替えに・・・?>
この映画は中年のオッサンであるマイクが4人の若い女の子たちと絡まるB級映画(?)だが、なぜか登場する女の子たちは第1部と第2部で総入れ替えされることに・・・。その理由は簡単。「デス・プルーフ」のシボレーの後部座席に乗ったパムは、マイクの荒くれ運転によって拷問のような状態で殺されてしまったうえ、アーリーン(ヴァネッサ・フェルリト)、ジャングル・ジュリア(シドニー・タミーア・ポワチエ)、シャナ(ジョーダン・ラッド)の3人は猛スピードで真正面からぶつかってきた「耐死仕様」のシボレーによって、全員一瞬のうちに死亡してしまったから・・・。
他方、第1部ではテキサス州でシボレーに乗っていたマイクは、14カ月後はテネシー州で再度別のシボレーに乗って登場することになるが、14カ月もの期間が必要だったのは一体ナゼ・・・?それは、第1部での正面衝突(攻撃)によってマイク自身も大ケガを負い、その治療に一定期間を要したから。そんなマイクは第2部では再び何を・・・?
<タランティーノ風その1 女の子たちのおしゃべり・・・>
タランティーノ監督にはたくさんの才能があるようだが、その1つは若い女の子の心理に堪能な名脚本家としての能力・・・?この映画は、第1部でも第2部でも女の子4人のおしゃべりの花が咲くのが大きな特徴・・・?とりわけピーチクとうるさいのが、車の中での女の子たちの会話。そこでは、男たちの下ネタを中心とする話題で若い女の子たちの会話が盛り上がり、彼女たちの本音がズバズバ登場するが、とにかくやかましい。
私はそんな話を延々と聞かされるのはかなわないが、タランティーノ監督はそんな女の子たちの会話が楽しいらしい。そのうえ、そのセリフを全部自分の想像からつくり出したというからすごい。やはり、神サマはけったいな性格の人には、けったいな才能を与えるものだと妙に感心・・・?
<タランティーノ風その2 脚フェチも悪くはないが・・・>
若い女の子の、どこにどのような魅力を感じるのかについては、男によって違いがあるのは当然。私が日曜日ごとに通っている高級フィットネスクラブのサウナ室でも、たまにはおっさんたちによる「巨乳が好きか、それともペチャパイが好きか」などという下ネタで盛りあがることもあるほど・・・?
○○フェチ、△△フェチという言葉が定着したのがいつの頃なのか私はよくわからないが、タランティーノ監督は、自他ともに認める「脚フェチ」らしい・・・?それは『キネマ旬報』9月上旬号のタランティーノ監督のインタビューにおける自白、すなわち「下からナメるカメラワークで大柄な女体群をとらえた構図は、ラス・メイヤーを思わせる」と分析したうえでの、「ラスだったら視線の向かう先は巨乳だろう(笑)。僕の場合は胸ではなく、脚フェチだ」との告白(65頁)によって明らか・・・?
この映画の第1部に登場するジャングル・ジュリアはラジオ局の人気DJだし、アーリーンは雑誌や看板に起用されている人気モデル。したがって、彼女らが美しい肢体を誇っているのは当然。映画の冒頭、下着姿で見せてくれる長い脚の美しさや車の座席から外に向けて突き出している彼女たちの脚の美しさは、まさに脚フェチ監督タランティーノが「合格」のお墨付きを与えたものだから、美しいのは当然。
還暦を間近に控えた白髪のオッチャン弁護士だって、そんな若い女の子の美しい脚をスクリーン上でながめるのが決して悪くはないのは当然。しかし、車の窓から外に突き出していた美しい脚が、マイクの運転するシボレーの真正面からの激突によって空中にふっ飛んでいくサマはまさに壮観・・・。もっとも、一瞬そんな風に思えた自分が少し恐くなってきたほどだったが・・・?
<第2部は復讐編・・・?>
第1部は、カッコばかりつけている若い女の子4人(といってもパム1人と、アーリーン、ジャングル・ジュリア、シャナの3人グループ)を中年男のマイクがたたきつぶす(?)というB級映画だったが、第2部は男女の力関係が一変することに・・・。
第2部に登場する4人のバッドガールズのうち、ミニスカートをはいた新進女優のリー(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は車に乗れずに取り残されるものの、スタントウーマンのゾーイ(ゾーイ・ベル)とキム(トレイシー・トムズ)の2人が中心。彼女らは70年型ダッジ・チャレンジャーというすごい車の試乗ができることに興味津々・・・。
面白いのは、キム役を演ずるトレイシー・トムズは『RENT/レント』(05年)や『プラダを着た悪魔』(06年)にも出演している、私もよく知っている女優だが、ゾーイ役を演ずるゾーイ・ベルの方は『キル・ビルVol.2』(04年)でユマ・サーマンのスタントウーマンを務めていた女優だったこと。そんな「日陰の存在」だったゾーイ・ベルがこの映画で一躍主役に近い役を獲得できたのだから、彼女にとってみればタランティーノ監督はまさに神サマ。そんな風に思っている彼女の気持が伝わるようなゾーイ・ベルの熱演によって、いったんマイクからいじめられたキムとゾーイたちの猛反発が第2部の見モノ。
中年のおじさんマイクが、いくら「私が悪うございました」と謝罪しても全然認めてもらえず、白熱のカーチェイスを繰り広げた末、瀕死の重傷を負ったマイクをキムとゾーイそしてアバナシー(ロザリオ・ドーソン)の3人のバッドガールズたちがパンチのノックを浴びせるラストは圧巻。やはり、アメリカの女の子たちのやることはすごい、と実感させられること確実・・・。
<アーリーンのクネクネダンス(?)はそれだけで・・・>
第2部の後半は、とにかくキムとゾーイを中心としたマイクへの復讐劇でハラハラドキドキの連続だが、それを観ていると、第1部におけるアーリーンの腰をクネクネとくねらせるダンスによるお色気シーンの値打ちをあらためて実感・・・?
これは、お気に入りのバーで飲んでいたアーリーンが何を思ったのか、マイクの要請に応じる形で踊り始めたもの。最近、ポールを軸として悩ましく身体をくねらせて踊るストリッパーたちの踊りが一般にも大ヒットしているらしいが、このアーリーンによるクネクネダンス(?)はそれ以上にセクシーだから、そりゃ一見の価値が・・・。
<好きか嫌いか、要はそれだけ・・・?>
フランスのリュミエール一家が1895年2月に完成させたシネマトグラフが映画の始まりだと一般に言われている(『映画検定・公式テキストブック』62頁)が、それから既に112年。映画には芸術映画もあれば娯楽映画もあり、さらにポルノ映画もある。また悲劇もあれば喜劇もある、世界共通の芸術となっている。したがって芸術作品や文芸作品が高級で、娯楽映画やポルノ映画は低級と決めつけてしまうような価値観はどうも・・・?
子供の頃からB級映画を浴びるほど観てきたタランティーノ監督があえて盟友ロバート・ロドリゲスと組んで2本立てのB級映画をつくろうともくろんだのがこの1本。しかしてそれを観たあなたの感想は・・・?去る8月28日に観た三池崇史監督の『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(07年)は予想以上の出来で、私の大好きな映画の1本となった。そして、タランティーノ監督のこの『デス・プルーフ in グラインドハウス』も、延々と続く女の子たちのおしゃべりには大いにうんざりだったが、B級映画らしい(?)激しいストーリー展開と、「これぞ映画!」と見せつける演出は大好き。
しょせん映画についての感想や評論は、好きか嫌いかのひと言でOKだとすれば、私はこんな映画は好き。さて、あなたは・・・?
2007(平成19)年9月12日記