肩ごしの恋人(日本、韓国映画・2007年) |
<東映試写室>
2007年10月23日鑑賞
2007年10月24日記
あなたは恋愛派、それとも結婚派・・・?そんな女性の関心の高さが、唯川恵の小説と米倉涼子VS高岡早紀のTVドラマがヒットした原因。女性監督と女性脚本家が描く2人の美女のキュートな生き方はそれぞれ魅力的だが、行きつくところは結局・・・?そこで私の評論では3点にわたって、いじわるな男の視点も・・・。
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監督:イ・オンヒ
脚本:コ・ユンヒ
原作:唯川恵『肩ごしの恋人』(集英社文庫刊)
ソ・ジョンワン(32歳の独身の女性、写真家)/イ・ミヨン
ユン・ヒス(金持ちの男と結婚した女性)/イ・テラン
ヨンフ(ジョンワンの現在の恋人、既婚者)/キム・ジュンソン
キム・ヒョンシク(ヒスの夫)/ユン・ジェムン
マルコ(ジョンワンの写真のモデル、22歳の大学生)/マルコ
キム・エリ(ヒョンシクの愛人)/キム・ファジュ
ショウゲート配給・2007年・日本、韓国合作映画・101分
<日本の原作とテレビドラマが韓国で・・・>
この映画は、2002年に直木賞を受賞した唯川恵の作品『肩ごしの恋人』を韓国のイ・オンヒ監督が映画化したもの。ちなみにこの原作は、米倉涼子と高岡早紀が共演したTBS系のテレビドラマ『肩ごしの恋人』として今年7月からオンエアされたとのことだが、当然私は1度もそれを観たことはない。
この原作のテーマは、恋愛至上主義者の女性と結婚至上主義者の女性をうまく対比させたもので、20歳代後半から30歳代の多くの女性の関心を集めたもの。ちなみに、私の独断と偏見によれば、2人のキャラからみて米倉涼子が結婚至上主義者の女で、高岡早紀が恋愛至上主義者の女だと判断したが、さて、その当否は?実際のドラマはどうだったの・・・?
<ジョンワンとヒスのキャラがすべて・・・>
日本のテレビドラマ『肩ごしの恋人』が、きっと米倉涼子と高岡早紀のキャラで成り立ったであろうと同じように、韓国の劇場版『肩ごしの恋人』も、その成否は、恋愛至上主義者のジョンワンと結婚至上主義者のヒスのキャラがいかに発揮されるかによることになる。つまり、この映画はジョンワンとヒスのキャラがすべて・・・?
そんな目で見ると、恋愛至上主義者のジョンワンは、『純愛中毒』(02年)ではイ・ビョンホンと共演してすばらしい演技を見せ(『シネマルーム6』326頁参照)、『タイフーン/TYPHOON』(05年)ではチャン・ドンゴンと共演して難しい役を演じ切った(『シネマルーム10』72頁参照)演技派女優のイ・ミヨン。そんなイ・ミヨンが、この映画では全く違う雰囲気で率直に地をさらけ出して(?)、32歳の独身を謳歌する女流カメラマンの役を好演している。
他方、小金持ちの亭主と結婚し、あり余るお金と時間を自分磨きに注いでいるわがまま自認のユン・ヒスを演ずるのは、韓国のテレビドラマで大人気というイ・テラン。
私は今回、はじめてこのイ・テランをスクリーンで観たが、この映画で、「33歳ですね」と職安の女性から確認されると「32歳よ、満で」と反論するとおり、1975年生まれだから今32歳・・・?
彼女は、これが映画初出演とのことだが、その魅力的な美貌とスタイルを今後日本公開の映画でも是非活用してもらいたいもの。
<女性監督と女性脚本家を起用!>
この映画の監督は1976年生まれで、私は観ていないが、『アメノナカノ青空』(05年)で監督デビューした女性監督のイ・オンヒ。そして脚本は、これも私は観ていないが、『恋愛の目的』(05年)の脚本を手がけた女性脚本家のコ・ユンヒとのこと。したがって原作とヒロイン2人を含め、まさにこの映画には女性の視点と本音がいっぱい。ちなみにプレスシートには、①ファッション、②恋愛&結婚観、③敬愛する人、について2人の違いが解説されているので、そういう点に興味のある女性は是非参照してもらいたい。
この3点を比べても、ジョンワンとヒスは両極端で、生き方も正反対。なのに、この2人は大の親友。それは一体なぜ・・・?それは、「男についての趣味があまりに違うため」ということだが、さてホントにそんなことで女の友情が成り立つの・・・?男の私にはサッパリわからないが、そんな微妙なところを女性監督と女性脚本家がいかに表現するか、それがこの映画のポイントだ。
<こんな映画は女だけでなく、男も・・・>
「近くて遠きは男女の仲」と言われている。その言葉(格言?)の本来の意味を私はよく知らないが、この言葉を現在の私は、所詮男と女は違う動物で、互いに理解できない部分が多いものと理解、解釈している。
唯川恵の原作が直木賞を受賞し、多くの日本人女性の共感を得たのは、この作品が、結婚か恋愛かで悩む多くの女性たちの本音にズバリと迫り、うまくその対立軸を示すとともに、幸せになるためのバリエーションの2つの方向性を示したことにある(と私は思っている)。ちなみに、女の目から見て、結婚している男の方がいいと判断するメルクマールは、ジョンワンの言葉によれば、①女を知っている、②マナーがある、③しつこくない、④クールで拘束しない、というもの。
これを聞くと、男からみれば、なるほどそういうものかと思う面があるうえ、これなら妻帯者の男はシメシメと自信を持てるのでは・・・?そんな女の心理を学ぶためにも、こんな映画は女だけでなく、男も必見・・・?
<「チックリット」とは・・・?>
この映画のプレスシートを読んではじめて知ったのが、「チックリット(Chick-lit)」という言葉。つまり、「今世界中で、20代後半から30代の女性たちをターゲットとした『チックリット』(Chick-lit)と呼ばれるカルチャーが定着してきている。その中心となるのは、『ブリジット・ジョーンズの日記』や『プラダを着た悪魔』などの小説である」とのことだ。なお「チックリット(Chick-lit)」とは、「若い女性を意味するスラング『Chick(ひよこ)』に、『Literature(文学)』を結合させた言葉」とのこと。やはり何でも勉強しておかなくちゃ・・・。
たしかに私は『ブリジット・ジョーンズの日記』(04年)も『プラダを着た悪魔』(06年)も観たが、そこにみる女性の本音の生きザマは男の目からみても結構面白いもの。特に興味深いのは、彼女たちの仕事に向ける熱意と男に向ける熱意とのバランスのとり方、そしてまた既婚男性とのつき合いとセックスに関する価値観(自由度)・・・?
「TV界では言うまでもなく、NYマンハッタンに生きる四人のキャリアウーマンたちの恋愛とセックスを本音で描いた『セックス・アンド・ザ・シティ』が一大ブームとなり、こちらも映画化に向けて現在撮影中である」とのことだから、是非それも観なければ・・・。
<いじわる男の視点 その1>
この映画を観終わりおしゃべりに花を咲かせる女性たちは、きっと「私はジョンワン派、いや私はヒス派」と自分を2人のヒロインに同化させて語るに違いない。そこで、以下3点にわたっていじわるな男の視点からの分析を・・・。
その1は、それを語るに足りる資格をもつ女性は10人に1人もいないだろうということ。ジョンワンが30歳をすぎて独身を通しながら自分に自信をもっているのは、写真家としてその実力が社会的に認められているから。つまり、女でも立派に男社会の中で一人生きていけるだけの実力を持っているからだ。ところが、果たして今社会で働いている独身女性の中で、ここまで自分の仕事に自信を持っている人がどれくらいいるだろうか・・・?社会的な地位と経済的な実力を伴わなければ、いくら恋愛至上主義といってもそれは空念仏。したがってそんな理想は早々に棄ててショボイ男と結婚し、養ってもらうのが大半の女の現実では・・・?
他方、いくら結婚至上主義者でも、見栄えはあまりよくないが妻にはやさしくて、お金も時間も自由に使わせてくれるヒスの夫ヒョンシク(ユン・ジェムン)のような男と結婚できる女性はせいぜい100人に1人。結婚すればヒスのように金と時間を自由に使って自分を磨けるというのは全くの錯覚で、結婚すれば家計のやりくりと家事仕事で日々おばさんになっていくばかり、というのが大半の現実では・・・?
<いじわる男の視点 その2>
日本ではとうの昔に廃止されたが、韓国では今なお姦通罪があるそうだ。したがって、ヒスの夫ヒョンシクはいくら冴えない男でも浮気はありうるが、ヒスに浮気はまずありえないもの。したがって、私のような男の視点では、ヒスは全然お呼びではなく興味の対象外。それに対して、男たちに混じって毎日働いているジョンワンは、私だっていつ接触できるかわからない・・・?その意味では、私にだってジョンワンとの交際=不倫がありうるわけで、常にそういう楽しみ(?)があるというもの。
したがって、いじわるな男の視点その2は、できるだけヒス派を減らしてジョンワン派を拡大してもらいたいということ。もっとも、多くのヒス派が、ヒョンシクのような①小金持ちで、②女にはやさしく、③金も時間も自由に使わせてくれる男、というように結婚のハードルを高めれば、必然的にヒス派は少なくなるはずだが・・・。
<いじわる男の視点 その3>
いじわるな男の視点その3は、第1の視点の裏返しかもしれないが、結局ジョンワン派はソンで、多少妥協しても、ヒス派の方がラクに決まっているのでは、ということ。
この映画では、ジョンワンは既婚のイケ面男ヨンフ(キム・ジュンソン)とつき合っているが、この男女関係が不倫と呼ぶほどドロドロしたものでないというのがジョンワンの自慢・・・?しかしその展開は・・・?また、ヨンフとの関係が微妙な情勢になった時、突然浮上したのが撮影で知り合ったモデルで22歳の男マルコ(マルコ)。ジョンワンにとって、彼は「つまみ食い」程度らしいが、ラストで見せるジョンワンの割り切りに注目・・・?
他方、夫の浮気自体は大したことではないものの、22歳の愛人エリ(キム・ファジュ)がブスであることが許せないヒスは夫との離婚を決意し、それを実行してしまうが・・・?このヒスの離婚に伴うドタバタ騒動は、多少現実離れしているものの結構面白く、この映画の重要なポイント。しかし結局行きつくところは・・・?
いくらジョンワンとヒスの男の選び方が対照的であっても、こんな2人の姿をみていると、どうみてもジョンワンは損でヒスの方が楽だと私は思うのだが・・・。
2007(平成19)年10月24日記