ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた(アメリカ映画・2007年) |
<東宝試写室>
2007年11月1日鑑賞
2007年11月17日記
パイ作りの天才ジェンナの夢は、妊娠によって、そして夫の横暴によって潰れてしまうのだろうか・・・?そしてまた、主治医と妊婦との禁断の恋(?)の行方は・・・?そんなに大げさに考えてはダメ。この映画は、軽くハートフルに楽しむのがコツだし、「主役」であるパイの香りを堪能しなくては・・・。もっとも、アップルパイしか知らない私には、こんな映画はもともと不向き・・・?
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監督・脚本:エイドリアン・シェリー
ジェンナ(ジョーズ・ダイナーのウェイトレス)/ケリー・ラッセル
ポマター先生(ジェンナの担当の産婦人科医)/ネイサン・フィリオン
アール(ジェンナのダメ亭主)/ジェレミー・シスト
ベッキー(ジェンナの同僚のウェイトレス)/シェリル・ハインズ
ドーン(ジェンナの同僚のウェイトレス)/エイドリアン・シェリー
オールド・ジョー(ジョーズ・ダイナーのオーナー)/アンディ・グリフィス
2007年・アメリカ映画・108分
配給/20世紀フォックス映画 宣伝/20世紀フォックス映画
<主役はパイ・・・?>
この映画のプレスシートには主人公の女性ジェンナ(ケリー・ラッセル)の「ヘヴンズ・パイ・レシピ」があり、長尾智子(フードコーディネーター)の「パイ作りの秘密の時間」というエッセイがある。また、映画の中でもジェンナがパイを焼くシーンが再三登場するとともに、○○パイ、△△パイなどやたら多くの種類のパイが登場する。しかし、残念ながら私にはそんなパイ作りには全く興味がないし、パイといえばアップルパイくらいしか思い浮かばない。そのうえ、こんなものを食べれば太るだけだという意識があるから、ここ何年もパイなど口にしていないはず。
したがって、心がときめいたり乱れたりすると、それにちなんだオリジナルパイのレシピが次々と浮かんでくるというジェンナの頭の構造が理解不可能だし、そもそも主役がパイであるこの映画は私には最初から不向き・・・?
<ジェンナの夢は・・・?>
ある田舎町に住んでいるジェンナには夫アール(ジェレミー・シスト)がいるが、アールはカネに細かいうえ嫉妬深く、ジェンナはどうもこの結婚は失敗だったと後悔している様子・・・。またジェンナはオールド・ジョー(アンディ・グリフィス)が経営しているダイナーでウェイトレスをしており、パイ作りの天才であるジェンナには仕事自体は楽しいものの、送り迎えの監視つき(?)は大変そう・・・?
そんなジェンナの夢は、隣町のパイコンテストに出場すること。優勝したら2500ドルがもらえるため、それでヨーロッパにあるようなオシャレなパイ専門店を開くのが夢。すると、それはアールとの離婚が前提・・・?
そこでジェンナは、コンテスト出場の費用捻出のため夫の目を盗んで少しずつお金を貯めていたが・・・?
<妊娠検査の結果は・・・?>
ジェンナの同僚はベッキー(シェリル・ハインズ)とドーンだが、ドーン役にはこの映画を監督・脚本したエイドリアン・シェリーが俳優として登場している。この3人は仲のいい関係だが、それ以上に女同士ということもあり、何でも悩みを打ち明けられる関係らしい。そんな女3人が注目しているのが、ジェンナの妊娠検査結果。
つまりジェンナは、最近の体調にかんがみれば夫アールの子どもができたのではないかと不安にかられ、妊娠検査をしているというわけだ。最近は尿検査だけで簡単に妊娠の有無がわかるから、トイレに入ったジェンナはその検査結果に不安いっぱい。他方、その結果を興味深く見守っているのが2人の同僚という構図。さて、妊娠検査の結果は・・・?それは「妊娠」と出たからジェンナにとっては最悪!しかし、ベッキーとドーンにとっては「おめでとう!」。そこで、ベッキーとドーンはジェンナに対して『素敵なママになるために』という本をプレゼントすることに・・・。
このギャップが、以降この映画におけるトンチンカンな(ハートフルな?)笑いを誘うことに・・・。
<産婦人科医と患者(妊婦)との恋は・・・?>
尿検査で妊娠がわかった以上、まずは産婦人科へ診察にいき確認しなければならないのは当然。そこで、ジェンナがこっそり行ったのが、産婦人科のポマター先生(ネイサン・フィリオン)の医院。そこで「おめでたです」と確認されたジェンナは絶望的な気分に陥ったが、そうかといって「堕ろす」という決意もできず、彼女の精神は混乱気味・・・。
今ドキ、患者が診察を受ける際、手みやげを持参するケースは少ないだろうが、それでも手みやげ持参を拒否する医者は少ないのでは・・・?そこでパイ作りの天才ジェンナがあいさつ代わりに持参したのは、メチャおいしいマシュマロ・パイ。そのパイのおいしさによって、急に患者であるジェンナに心をときめかせたポマター先生も問題なら、夫とは全然違うやさしさをもったポマター先生に胸キュンとなったジェンナも問題・・・。弁護士と女性依頼者が恋に陥ちるというケースは時々ある(?)が、産婦人科医と患者(妊婦)が恋に陥ちるというケースは現実にあるの・・・?だって、産婦人科医は患者(妊婦)のどこをどのように診察しているの、と考えれば、私にはちょっと難しいと思うのだが・・・?
<ジェンナとジョーとの心の交流は・・・?>
この映画はパイを主役としたコメディ(?)だから、ジェンナとポマター先生との恋模様も、もちろん当事者は真剣なのだが、観ている私たち観客はつい笑ってしまうもの。もっとも、看護師が診察室を出て行った途端、その中ですぐに熱い抱擁を交わし、ディープキスをブチューというシーンはちょっと・・・、と思ってしまったが・・・?
他方、この映画にも心の交流をしっとりと見せるシーンが登場する。それは、ジェンナの秘密の恋をただ1人知っているジョーズ・ダイナーのオーナー、ジョーとジェンナとの交流。望んでいない結婚、パイコンテストの夢の挫折で落ち込み、混乱しているジェンナにとって、ジョーと率直におしゃべりする時間だけが、唯一の心の安らぎとなっていた。
また、ジェンナにとって2人の親友からプレゼントされた『素敵なママになるために』も心の安らぎに。この本の特徴は、ママになる人からお腹の赤ちゃんへ手紙を書くページがあること。そんなページにジェンナが最初に書いた手紙は、自分が良いママになれないことを率直にお詫びするものだったが、そんな手紙を書くことも、今のジェンナの心にとっては大きなプラスに・・・。
そんなジェンナに対するジョーのアドバイスは、「君はただのウェイトレスじゃない。自分の良さに気づいていない。正しい選択をするんだ」ということ。ところが、そんな心の支えになっていたジョーは、ある日入院したまま・・・?
<ある日、最悪の事件が・・・>
ある日、夫のアールがジェンナの働いているダイナーに血相を変えて飛び込んできた。有無を言わさずジェンナを車の中に押し込むと、そのまま家に一直線。そして家に着いた途端、アールが「これは一体何だ!」と示したのは、ジェンナがへそくりで貯めていたお金。こりゃヤバイ。あんなにお金に細かく、嫉妬深く、そのうえ凶暴なアールだから、そんなことがバレたら何をされるかわからない。そう考えたジェンナは、「生まれてくる赤ちゃんのために貯金していたの」と一瞬ウソをつくと・・・?
凶暴だがその反面単純な夫アールがすぐにそれに納得したのは結果オーライだったが、翌日からは、パイコンテストに出場するために貯めていた資金は、ベビーベッド、オモチャ、ビデオカメラなどに姿を変えてしまうことに・・・。お腹はだんだん大きくなっていくわ、パイコンテストへの夢は断たれていくわで、ジェンナの気持ちは落ち込んでいくばかり・・・。
<「愛の逃避行」はありうるの・・・?>
赤ちゃん用品に囲まれて1人悦に入っているアールを横目に、落ち込んでいるジェンナが遂に決心(?)したのは愛の逃避行。すなわち、ポマター先生と2人でこのまちを抜けだし、新たなまちで再出発しようというもの。しかし、誰が考えてもそんな計画は無茶苦茶で、一瞬そう思うことはあっても、実行することはありえないはず。と思っていると・・・?
他方、ポマター先生がジェンナからそんな相談を持ちかけられても、ポマター先生はこのまちに根を張って生きている個人経営の産婦人科医。その立場を捨ててまで愛の逃避行をするほどバカじゃないはず。そう思っていると・・・?
<結末は少し中途半端・・・?>
ラストに向けての焦点は、愛の逃避行決行の可否だが、もう1つ時間の経過とともに迫っているのが出産。もちろん、それを手助けするのはポマター先生。そして、出産に立ち会うのは夫のアール。いわば、出産を控えた妊婦ジェンナを挟んで、夫と恋人が火花を散らすという構図だが、考えてみればそれはかなり奇妙な姿・・・?
そして、ジェンナは無事出産したが、さてその後の展開は・・・?私にはこの映画の結末のつけ方は少し中途半端で気に入らなかったが、パイを主役としたハートフルコメディでは、この程度で十分・・・?
2007(平成19)年11月17日記