ウォーター・ホース(アメリカ映画・2007年) |
<ソニー・ピクチャーズ試写室>
2007年12月25日鑑賞
2007年12月30日記
韓国の漢江の怪物は「グエムル」だったが、スコットランドのネス湖に眠る未確認動物はネッシー。この映画で確認できるウォーター・ホースの姿・カタチをみると、それはやはりネッシー・・・?前半は孤独な少年とクルーソーと名づけられたウォーター・ホースとのファンタジー色あふれる友情物語だが、後半は兵士たちの介入によってスリリングな展開に・・・。異質なクライマックスシーンを2度味わえるからお得(?)だが、それは子供のような純真な心で鑑賞することが大前提・・・。
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監督:ジェイ・ラッセル
原案:ディック・キング=スミス(『The Water Horse』の著者)
アン・マクマロウ(アンガスの母親)/エミリー・ワトソン
アンガス・マクマロウ(ひとりぼっちの少年)/アレックス・エテル
ルイス・モーブリー(マクマロウ家の下働き)/ベン・チャップリン
ハミルトン大尉/デヴィッド・モリッシー
ナレーター/ブライアン・コックス
2007年・アメリカ映画・112分
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
宣伝/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
<信じる・・・?それとも信じない・・・?>
師走を迎えた日本では、未確認飛行物体(UFO)が日本を襲来した場合、石破茂防衛大臣が「防衛省として取り組むことはないが、わたし自身としてどうなるのかは考えたい」と発言したことについて、いろいろと議論がかまびすしいが、UFOについてのあなたの見解は・・・?
UFOの存否とおなじくらいの話題性のある(?)議論が、スコットランドのネス湖で目撃されたとされる、未確認動物「ネス湖の怪獣」ことネッシーの存否。この映画のタイトル『ウォーター・ホース』とはつまり、ネッシーのことだ。
映画の冒頭、観光客のアベックに対して静かにウォーター・ホースの物語を語りはじめる1人の老人が登場する。彼こそは少年の時ウォーター・ホースとただ1人の親友となったアンガス少年(アレックス・エテル)の年老いた姿だ。彼の話を興味深そうに聴き始めたアベックは、聴き終えた時にはウォーター・ホースすなわちネッシーの存在を信じるようになるのだろうか・・・?そして、この映画を観たあなたは、ネッシーの存在を信じる・・・?それとも信じない・・・?
<テーマは友情>
この映画の主人公は戦場に行ったきり戻ってこない父親を待ちわびる少年アンガス・マクマロウ。母親のアン(エミリー・ワトソン)は既に夫の帰還を諦めているが、アンガスの心はそんな現実を受け入れることができず、空虚なまま。そんなアンガスが唯一の友情を育むことになったのが、アンガスがクルーソーと名づけた謎の生き物。
クルーソーはアンガスがネス湖から持ち帰った青く光る不思議な卵から孵化して生まれてきた奇妙な生き物だが、傷の手当てをしてくれたアンガスによくなつき、2人(?)は無二の親友に・・・?
この映画はそんなアンガスとクルーソーとの友情と絆がテーマだが、やはり生きる世界が違うとその維持は大変。だって、クルーソーは成長の速度がバカ早いから、いくらアンガスのお屋敷が広いといっても、クルーソーを隠し通すことなど到底不可能・・・。
<クリーチャーの出来が勝負!>
この映画の第1のポイントは、アンガス少年とウォーター・ホースとの友情、心の交流だが、第2のポイントはクリーチャーの出来。つまり、スクリーン上に登場するウォーター・ホースがどれくらい観客に認められるかということ。
ちなみに、ポン・ジュノ監督の『グエムル 漢江の怪物』(06年)は、観客動員数が1300万人を超す韓国映画史上No.1の大ヒットとなったが、その原因の1つがポン・ジュノ監督が創造した怪物グエムルを観客が受け入れたこと。そこで、今回のクリーチャーであるウォーター・ホースをどこが製作したのかを調べると、それはウェタ・デジタルとウェタ・ワークショップ。そして、何のことはない、『グエムル』もこのウェタ・ワークショップが製作していたということを知って、ビックリ・・・。さらに、この映画では巨大なウォーター・ホースだけではなく、幼児期のウォーター・ホースと少し成長したウォーター・ホースの他、卵時代のウォーター・ホース(?)もつくりあげなければならないから、その手間は大変。さて、愛嬌のあるウォーター・ホースの出来は・・・?
<対照的な男が2人─その1>
この映画にはクルーソーをめぐっても、またアンガスをめぐっても対照的な男が2人登場する。時代は第2次世界大戦の真っただ中。アンガスたちが住んでいるネス湖に近いスコットランドの村は戦争など無縁だと思っていたが、ある日突然そこにイギリス軍がやってくることに。もちろんマクマロウ家の屋敷を将校たちの宿舎に使用するについては、部隊の指揮官であるハミルトン大尉(デヴィッド・モリッシー)はその許可書を持参していたから、夫の代理人としてアンがそれを承諾したのは当然。
対照的な男の第1はこのハミルトン大尉だが、これが意外といい男。しかも、アンに対して好意的。そこで、ハミルトン大尉が企画した、アンを主役とするパーティの様子をみていると、2人は何となくいい雰囲気になりかけたが・・・。
<対照的な男が2人─その2>
第1のハミルトン大尉と対照的な第2の男が、マクマロウ家の下働きとして雇われた男ルイス・モーブリー(ベン・チャップリン)。アンガスとクルーソーとの仲(?)を最初に発見したのはアンガスのお姉さん。バスタブの中で気持ちよく泳いで遊んでいるクルーソーはいい気持だろうが、それを母親や兵隊たちに内緒にしなければならないアンガスは大変。アンガスのワケのわからない話をバカにしていたものの、クルーソーの姿を現実に見た姉が、その後アンガスに協力する立場になったのは当然。そしてそれは、大人の男モーブリーも同じ。ここにアンガスと姉そしてモーブリーの三者による秘密の連合軍が形成されることに。
もちろんモーブリーは大人だから、クルーソーの扱いをめぐって現実路線すなわちクルーソーをネス湖に返すべきだと主張したが、クルーソーと別れたくないアンガスは・・・?この映画では、アンガスをめぐる男同士の対立(?)を含めて、こんな対照的な男2人が登場するから、それにも注目を。
<ハミルトン大尉の自慢のタネは・・・?>
ハミルトン大尉率いるイギリス軍部隊はここで何をやっていたのかというと、高台での砲台づくりと対潜水艦用のネットづくり。つまり、湾内に潜水艦をひき入れたうえで、ネットを張って封じ込め、その潜水艦目がけて高台から砲弾の雨を降らせようという作戦だ。わからなくはないが、現実にそんな作戦がうまくいくのか大いに疑問だが、大尉は大真面目。
そこで、高台が完成すると、彼はどうしてもそれをアンたちに自慢したかったらしく、アンたちを招いて砲撃披露を。これにはアンガスはビックリ。だって、湖の中はクルーソーが泳ぎ回っているのだから、万一砲弾が当たったら大変。そこで、アンガスは「やめてくれ!」と身体を張って砲撃を阻止しようとしたが・・・。
<大人はやっぱり・・・>
アンガスはクルーソーとのデート(?)を大人たちに見つからないように注意していたが、ある日アンガスが最も嫌っている、ブルドッグ犬を飼っている食事当番の兵士から後をつけられたから、あっさりとクルーソーを発見されてしまうことに。さらに、のんびりと舟を浮かべて釣りを楽しんでいた2人の男のえさにクルーソーがひっかかったため、発見されてしまうことに。そりゃ、時間が経てば発見される確率が高くなるのは当然で、発見されたのはある意味やむをえない。しかし、それからの大人たちの対応が何ともイヤらしい・・・。
まず、釣り人たちは、われこそはウォーター・ホースの目撃者だという名誉とカネを得たいため、捏造写真をつくってまでウォーター・ホースの宣伝を。他方、兵士たちは、無謀にも伝説の生きものを捕獲しようと企み、武装して船の上に。アンガスがクルーソーとの友情を育んでいるのに対し、大人たちがウォーター・ホースを発見すると、その対応はこんなモノ。大人はやっぱり・・・。
<2度のクライマックスは全く異質だが・・・>
この映画のクライマックスは2度ある。1度は、ファンタスティックで楽しいアンガスとクルーソーだけの水中世界。大人たちの隙をみてはネス湖へクルーソーに会いにいっていたアンガスを、ある日クルーソーは背中に乗せて湖中散歩に・・・。といっても、馬に鞍をつけて乗るようなわけにはいかず、アンガスは巨大なクルーソーの裸の背中の上に腕を回してしがみつくだけだから、本当は不安定で、少し揺れたら振り落とされること確実。しかし、そこは映画のこと。水中撮影の高度な技術を駆使した美しい映像は、この映画最大の売りで、大人も十分楽しめる出来。
こんな平和で誰もが楽しめるクライマックスに対して、2度目のクライマックスは非情かつ野蛮なもの。それは、クルーソーを潜水艦と勘違いしたイギリス兵たちが、クルーソーに向かって猛烈な砲撃を始めたこと。いくらクルーソーが巨大でも砲弾の嵐の前には無力だし、巨大であるということは逆に標的にされやすい。したがって、このままではクルーソーが砲弾の餌食になるのは時間の問題・・・。
しかも、潜水艦を封じ込めて通過させないための対潜ネットが今着々と張られていたから、早くこれを越えて外に出なければ、クルーソーは袋のねずみに・・・。そんなスリリングなクライマックスは、クルーソー得意の(?)ジャンプと対潜ネットへの体あたりによって、あっと驚く何とも痛快な結末へ。めでたし、めでたし・・・。
2007(平成19)年12月30日記