ラブ・インポッシブル~恋の統一戦線~(南男北女)(韓国映画・2003年) |
<ホクテンザ1>
2008年3月2日鑑賞
2008年3月5日記
ちょっとおふざけの邦題だが、原題は朝鮮半島版のロミオとジュリエット!中国吉林省の延辺(ヨンビョン)で展開される、南北合同の高句麗古墳調査の中で生まれた南男北女の恋の行方は・・・?そして、互いの父親を巻き込んだ悲劇の果てに待つものは・・・?アッと驚く結末は、「そんなのありえねー」展開だが・・・?
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監督・脚本:チョン・チョシン
キム・チョルス(韓国人の大学生、国家情報院長の息子)/チョ・インソン
オ・ヨンヒ(北朝鮮の女学生、北朝鮮人民武力部長の娘)/キム・サラン
カン・イルピョン(中国延辺のガイドの男)/コン・ヒョンジン
ソ・ヘヨン(ヨンヒの親友の女学生)/ホ・ヨンナン
キム・ダルス(チョルスの父、国家情報院長)/キム・ヨンゴン
ブルーマリン(ナイトクラブ)/チョ・ヘリョン(特別出演)
2003年・韓国映画・108分
配給/エスピーオー
<南男北女とは・・・?>
この映画の邦題は少しふざけたニュアンスだが、原題は『南男北女』で、南北分断の悲劇を長年引きずっている韓国ではかなり深刻なタイトル・・・?つまり、これは朝鮮半島版『ロミオとジュリエット』・・・?そう思っていたのだが、映画は意外にもコメディ風・・・。
南男ことキム・チョルス(チョ・インソン)は韓国の国家情報院長の息子だが、長身でハンサムなことが災いしたよう(?)で、どうしようもないプレイボーイ。夜な夜なナンパに精を出していたおかげで、学校の単位不足は明らか。これでは卒業もおぼつかない状態だ。
他方、オ・ヨンヒ(キム・サラン)は北朝鮮人民武力部長の娘で、学業優秀、思想堅固な理想的な北女・・・?もっとも、父親からは常々「お前にふさわしい結婚相手を探してやる」と言われ、がんじがらめの生活を強いられていることがホントは苦痛なようで、部屋の中では一人ヒップホップ音楽を聴いたりしているから、意外とススンでいる面も・・・?この映画の主人公は、そんなロミオとジュリエットならぬ、南男と北女。
<舞台は中国の延辺>
この映画は韓国映画だが、舞台のほとんどは中国北東部の吉林省にある延辺(ヨンビョン)で、ここは朝鮮族自治州となっている。なぜ延辺が舞台に?それは、ここで行われている高句麗古墳発掘のため、南北合同の発掘団が結成されたため。その合同調査団にヨンヒが参加することに、父親は娘が妙に南の男の影響を受ける恐れありとして反対したのだが、エライお方からの指示とあれば仕方なし・・・?ヨンヒはしばらくの間、親元を離れることができるため、親友のソ・ヘヨン(ホ・ヨンナン)と共に大喜び。
他方、チョルスはソウルでナンパするのに忙しいから、そんなところに行くのはイヤと断ったものの、教授からこれに参加すれば単位をやると言われれば仕方なし。こんな風に、参加の意欲には相当の隔たりがあるが、もともとベッピンのヨンヒだけに、その姿を一目見ただけでチョルスがホレてしまったから、いろいろな騒動が起きることに。
<変なガイドが登場!>
腐っても(?)チョルスは韓国国家情報院長の息子だから、南の団長はチョルス。そんなチョルスには立派なホテルが当てがわれるとともに現地ガイドのカン・イルピョン(コン・ヒョンジン)がつくことになったが、どうもこれが変なガイド。もともと発掘調査には何の興味もないチョルスは、延辺でイルピョンと落ちあうと、早速オンナ探しの依頼を。
ここでイルピョンが要求したのがガイド料(?)だが、この2人の会話で面白いのが、中国の朝鮮族自治区である延辺では、中国の人民元よりも韓国のウォンの方が価値が高いこと。近時、人民元が次第に強くなってきているから、2008年の今でも同じかどうか興味あるところだが、そんな貨幣価値の違いについてもきちんと考察を・・・。
この映画は南男チョルスと北女ヨンヒの恋のゲームを中心として展開していくが、ヨンヒと常に行動を共にする恋のキューピッド役が親友のヘヨンであるのに対し、チョルスの恋のキューピッド役になるのがこのイルピョン。面白おかしく展開していく恋模様はかなりマンガ的で私にはもう1つだが、さてあなたは・・・?南北分断をあまり深刻に描かず、こんなコメディタッチもたまにはいいかなと思うものの、やはり私には・・・?
<壁画に描かれている2人は・・・?>
この映画は、冒頭の字幕の背景として、ある壁画が登場する。これはチョルスが発掘した窟の壁一面に描かれていたものだが、ヨンヒの解説によると、百済と新羅の男女が結婚式を挙げている絵らしい。つまり、当時敵対していた国同士の男女が第三国たる高句麗に逃げ出して結婚式を挙げたというわけだ。なるほど、いつの時代にもそんな稀有な勇気ある例が存在するものだが、このチャラチャラした南男チョルスといかにも堅物の北女ヨンヒとの間にはそんなことはとてもとても・・・?
映画前半はそんな展開が続いていくが、ある日2人が古墳の中に入っている時、トンネルの一部が崩れて閉じ込められてしまったところから、話は急転換することに・・・。
<2人の選択は・・・?>
合同発掘調査団で知り合った南男と北女が愛し合うようになるなんてことがホントに可能・・・?ましてや、南の国家情報院長の息子と北の人民武力部長の娘が愛し合い、結婚するなんてことが可能・・・?そんなことがありえないことは明らかだから、ホントに2人が愛を貫くならば、あの百済と新羅の男女のように2人で手に手をとり合って中国か日本に逃げていかなければならないはず。それはチョルスには可能かもしれないが、脱北しなければならないヨンヒは命懸けとなるうえ、仮に成功しても残された家族に過酷な運命が待ち受けていることは明らか。さあ、2人の選択は・・・?
イザとなると女の方が腹が据わるもの・・・?したがってまずヨンヒの選択は、「ホントに私を愛しているなら連れて逃げて!」というものだった。そんなヨンヒの言葉に乗ってチョルスはむやみやたらにヨンヒの手を引いて逃げ出したが、それではすぐに逮捕されてしまったのは当然。そして、それだけでチョルスの父親は国家情報院長を辞任せざるをえなくなったし、ヨンヒの父親は北朝鮮人民武力部長の地位を示す肩章がはぎとられることに。そして結局、チョルスとヨンヒは南と北に引き裂かれ、それぞれの道を歩むことになったのだが・・・。
<それから5年後・・・>
それから5年後の今、北朝鮮のあるすごい建物の中では高句麗古墳調査団の研究発表式が開催されていた。その壇上に立つのは、今やすっかり若手学者としての貫祿が身についたチョルス。彼が会場いっぱいの観客に示しているのは、あの高句麗の壁画だ。もちろん、北朝鮮の最高指導者たる金正日もそれを見学していた。
そこでチョルスが語るのは、この壁画発見の経過とこの壁画の意味。そして、ビックリしたのは、続けて彼が語った今なお愛しているヨンヒへのプロポーズの言葉だ。こんな晴れの舞台で、こんな演出をされれば、北朝鮮の「偉大な指導者金正日」も賛同しないわけにはいかなかったらしい。そこで彼がパチパチと手を打つと、たちまち会場は拍手の嵐に。これによってめでたし、めでたしだが、こんなことありえねー・・・。ちょっとおふざけが過ぎるのでは・・・?
2008(平成20)年3月5日記