ウォンタクの天使(韓国映画・2006年) |
<ホクテンザ1>
2008年3月20日鑑賞
2008年3月21日記
死亡した詐欺師の父親が「天使」の好意により地上に舞い降りたが、その姿は息子と同じ高校生!その目的は不良息子を立ち直らせることだが、その奮闘ぶりはいかに・・・?アイドルを起用すれば即いい映画ができるわけではない、と心得るべし!とはいっても、最後にはつい涙がホロリ・・・?
本文はネタバレを含みます!!
それでも読む方は下の「More」をクリック!!
↓↓↓
ここからはネタバレを含みます!!
読まれる方はご注意ください!!
↓↓↓
監督:クォン・ソングク
カン・ウォンタク(カン・ヨンギュの息子)/イ・ミヌ(SHINHWA)
カン・ヨンギュ(ウォンタクの父)/イム・ハリョン
ハ・ドンフン(カン・ヨンギュの変身した姿、ウォンタクの同級生)/ハ・ドンフン
チョン・ミンジェ(天使)/アン・ギルガン
チャン・ソクジョ(ソクジョ組親分、天使の変身した姿)/キム・サンジュン
ウォンタクの母(カン・ヨンギュの妻)/キム・ボヨン
チョン・アギョン(看護師)/ソン・ジョンミン
2006年・韓国映画・108分
配給/エスピーオー
<韓国のアイドルグループ《神話》のイ・ミヌが主演!>
「韓流セレクション」の《神話》特集としてラインナップされた『ウォンタクの天使』と『まわし蹴り』の2本を連続鑑賞。もっとも、《神話》が韓国のアイドルグループの名前だと知ったのは、事前にネット情報を集めたことによるもの。
《神話》のメンバーの1人イ・ミヌが詐欺師の父親カン・ヨンギュ(イム・ハリョン)に反発する高校生ウォンタクを演ずるのだが、セリフが少なく、いつもふてくされてケンカに明け暮れ、タバコばかり吸っている不良の演技は、『理由なき反抗』(55年)や『エデンの東』(55年)におけるジェームズ・ディーンのような「深み」を要求しなければ、比較的容易・・・?
<『ベルリン・天使の詩』のパクリ・・・?>
韓国はキリスト教徒が多いから、日本より「天使」に対する違和感が少ないかもしれない。しかして、出所前日に刑務所内で運悪く頭を打って死んでしまった、詐欺で服役していたヨンギュを天使が地上に送り返すという設定は、ひょっとして『ベルリン・天使の詩』(87年)のパクリ・・・?
ここで面白いのは、第1にその天使チョン・ミンジェ(アン・ギルガン)が全然天使らしくなく無骨な男であること。第2に面白いのは、天使ミンジェもヨンギュの地上へのご帰還につき合って、ソクジョ組の親分チャン・ソクジョ(キム・サンジュン)の姿となって地上に舞い降りること。
そのため、ウォンタクの同級生として転校してくるハ・ドンフン(ハ・ドンフン)に姿を変えた父親が、息子を更生させるため奮闘する涙と笑いの奇妙な物語をメインとしながら、ソクジョと看護師チョン・アギョン(ソン・ジョンミン)との恋物語(?)がサブ的に展開されることに・・・。
<父親の願いはただ1つ、だが・・・>
詐欺で服役中の父親が思っていたことはただ1つ。それは、出所したら今度こそ堅気になり、妻(キム・ボヨン)とともにまっとうに家族3人が暮らしていくこと。そして、父親が詐欺師だということで世間から冷たい目でみられているためにグレている息子を立ち直らせることだ。
ところが現実は正反対で、葬式の場にやってきたウォンタクは「徹底的にグレてやる!」と宣言する始末。父親が詐欺師として死んでしまい、自分は前科者の息子になったから、それにふさわしくグレてやるという思考方法はイマイチだが、あの年頃では仕方ない面も・・・?
<こんな違和感が!>
この映画に違和感があるのは、ウォンタクの同級生として地上に舞い降りてきたドンフンを演ずるハ・ドンフンが、多少クサい演技を含めて演技力は十分なのだが、年齢が中途半端なこと。したがって、いかにも父親らしいセリフが時に似合うこともあれば、逆に高校生として一緒に遊んでいるシーンが似合うこともある。
しかし私が大きな違和感を感じるのは、全体を通してどっちつかずになっている傾向が強いため。それならいっそ、ハ・ドンフンを起用せずイム・ハリョンがドンフン役をやった方が、その落差が際立って面白かったのでは・・・?
<停学も退学も悪くない・・・?>
転校してウォンタクのクラスに入ったドンフンは、仲良くなるため積極的にウォンタクに接近したが、ウォンタクとその不良仲間がそれを気味悪く思ったのは当然。しかし、そこは年の功・・・?一緒に遊んだり、ケンカに走るウォンタクを止めたり、答案用紙盗みの罪を1人で着たりと、ドンフンは大奮闘。そしてウォンタクが停学になるや、自分もあえて女先生のスカートめくりをして停学にしてもらおうと大奮闘。ここらあたりが、ドンフンは大人なのか、それとも高校生の知能レベルなのかを微妙に表現したハ・ドンフンの演技力・・・?
そしてついにウォンタクは退学となってしまうのだが、その頃にはドンフンはすっかりウォンタクとその母親にとってなくてはならない大切な存在となっていた。とりわけ、列車に飛び降り自殺をしようとする母親を必死に制止するシーンなどはまさに涙モノ・・・?
<奇妙な家族旅行と家族写真に注目!>
退学になると自由な時間がとれるからかえって好都合・・・?そう考えたわけではないだろうが、退学中にドンフンが提案したのは家族旅行。なぜドンフンがその家族旅行に加わるのかはよくわからないが、今やドンフンはウォンタクと母親をすぐにその気にさせてしまうほどの影響力と説得力を備えていたわけだ。
映画前半の学校内での奇妙な風景から一転し、後半は家族の絆をめぐる奇妙な風景に変わってくる。そして、その出来は後半の方がずっと上。ちなみに、母親はかつてこの船の中でヨンギュから口説かれたようだが、それは彼女だけの思い出・・・?
ポイントになるのは、旅行から帰った後、記念だと言って撮った3人の家族(?)写真。これが、ドンフンがいなくなった後、ラストに向けて観客の涙と大きな感動を呼ぶことに・・・。
<いよいよ天国に戻る時が・・・>
ウォンタクの父親ヨンギュが高校生のドンフンに姿を変えて地上に舞い降りることができたのは、天使ミンジェのイキな取りはからいによるもの。しかし、家族旅行で互いの絆を深めるまでにウォンタクとの仲を修復できた今、ヨンギュはいよいよ天国に戻る時。
他方、ここでは紹介しないが、ソクジョ組の親分に姿を変えた天使ミンジェも、実は天使の娘であったアギョンと十分な触れ合いを体験していたから、天使もそろそろ引き揚げ時・・・?
ドンフンとウォンタクの別れは、バスに乗ったウォンタクをドンフンが見送るというバージョンだが、そこでみせたドンフンのしぐさは、かつて父親のヨンギュが刑務所へひかれていく時の別れのしぐさと同じ。するとひょっとして、このドンフンは父親のヨンギュ・・・?それを決定づける物的証拠になるのがテープレコーダーに残されたある言葉だが、そのからくり(?)はあなた自身の目で。
<私の採点は・・・?>
冒頭の刑務所内で死亡したヨンギュと天使ミンジェとのやりとり、そして2人の地上への舞い降りは、いかにも安っぽいつくりを感じさせる。また、ハ・ドンフン扮する「高校生」のドンフンとウォンタクたちとのコメディタッチのやりとりも、面白いと言えば面白いが不自然さが目立つから、私の採点はせいぜい星2つ。
しかし、後半の家族劇に入ると《神話》メンバーのイ・ミヌも、前半のふてくされてさえいればいいだけの演技から多少まともな感情表現を見せ始めるうえ、少しは演技らしくなってくる。そしてドンフンが父親であったことに気づき、ラストの涙と感動にたどり着くつくり方は上出来で、はるか後方に座っていた3人のおばさん軍団からは大きな嗚咽の声も。そんなラストに向けた盛り返しによって、私の採点は星3つに・・・。
2008(平成20)年3月21日記