ひぐらしのなく頃に(日本映画・2008年) |
<GAGA試写室>
2008年3月28日鑑賞
2008年4月2日記
PCノベルから生まれた実写映画にも意外な面白さが・・・。田舎村に代々伝わる都市伝説は多いが、東京から人里離れた鹿骨市雛見沢のオヤシロさまに伝わるそれは・・・?また、決して入ってはならないとされる祭具殿には一体何が・・・?中央と地方の格差の拡大が叫ばれる昨今、こんなおどろおどろしい田舎の実態が明らかになれば、その格差は一層広がるばかり・・・?
本文はネタバレを含みます!!
それでも読む方は下の「More」をクリック!!
↓↓↓
ここからはネタバレを含みます!!
読まれる方はご注意ください!!
↓↓↓
監督・脚本:及川中
前原圭一(転校生)/前田公輝
園崎魅音(みおん)(雛見沢分校のクラス委員長)/飛鳥凛
竜宮レナ(圭一の同級生)/松山愛里
古手梨花(沙都子の同級生、古手神社の巫女)/あいか
北条沙都子(圭一のクラスメイト)/小野恵令奈(AKB48)
大石蔵人(くらうど)(興宮署のベテラン刑事)/杉本哲太
鷹野三四(みよ)(診療所の看護師)/川原亜矢子
富竹ジロウ(フリーのカメラマン)/谷口賢志
入江京介(入江診療所の医師)/田中幸太朗
知恵留美子(担任の女教師)/三輪ひとみ
前原伊知郎(圭一の父親)/米山善吉
2008年・日本映画・106分
配給/ファントム・フィルム
<今、新たな都市伝説が!>
日本の田舎村には代々伝わるさまざまな言い伝えがあるが、これはそれぞれ一種の「都市伝説」と呼ばれるもの・・・?
例えば、「臓器の無い子供の死体が流れ着いた」というニュースで始まる「あまんじゃく」伝説を描いたのが『雨の町』(06年)(『シネマルーム11』364頁参照)なら、「初めて明かされる琉球奇譚!」として、沖縄にいる赤い髪のキジムナーを描いたのが『アコークロー』(07年)(『シネマルーム14』373頁参照)。また、「マスクを取ると、その口は耳まで大きく裂けている」という、1979年1月26日の岐阜日日新聞から始まった口裂け女の都市伝説を描いたのが『口裂け女』(06年)(『シネマルーム14』382頁参照)。さらに、古都金沢を舞台として、若く美しいファム・ファタール=吉祥天女を描いたのが『吉祥天女』(07年)。「吉祥天女」とは、インドの女神マハーシュリーを起源としており、富と豊穣、そして家庭平和の神と言われ、容姿の美しいことでも知られる女神だが、そんな吉祥天女をめぐる政略結婚の悲劇的な結末とは・・・?(『シネマルーム15』362頁参照)
『ひぐらしのなく頃に』が描くのは、田舎村に古くから伝わる、「オヤシロさま」にまつわるおどろおどろしい物語。今ここに、新たな都市伝説が!
<原作者は?PCノベルとは?>
この映画の原作は、竜騎士07/07th Expansionのノベルゲーム『ひぐらしのなく頃に<鬼隠し編>』だが、ノベルゲームとはナニ・・・?またPCノベルとはナニ・・・?そして、サウンドノベルゲームとはナニ・・・?
プレスシートによれば、サウンドノベルゲームとは「PCゲームは種類が多数。この場合、ストーリーが静止画と文章にBGMや効果音が付いて表示され、ページをめくるように読み進んでいく、PC版小説とも言えるゲーム」とのこと。これらについて私はそれ以上勉強するつもりはないが、及川中監督もPCノベルゲームというものに今まで触れたことはなく、原作も全く知らなかったとのこと。
この映画は、『ひぐらしのなく頃に』シリーズ1作目の『鬼隠し編』を実写映画化したものだが、映画だけでそれなりに楽しむことができる恐い都市伝説となっているから、原作者やPCノベルを知らなくてもオーケー・・・?
<舞台は?時代は?>
この映画の舞台は、東京から人里離れた鹿骨市雛見沢。また、時代は昭和58(1983)年。この時代設定は、原作者の竜騎士07/07th Expansionが1973年生まれであることに密接に関係していると思うのだが、プレスシートやこの映画からはなぜそうなったのかの詳細は不明・・・。
ただ都市法をライフワークとしている弁護士の私の感覚では、1983年前後は中曽根アーバン・ルネサンスの絶頂期で、都市再開発が脚光を浴びていた時代。そんな都心における華やかな再開発や都市づくりとは裏腹に、雛見沢の田舎ではなおこんな言い伝えが脈々と・・・?
<なぜこんな田舎に引越しを?変化への対応は可能?>
高校生の前原圭一(前田公輝)が全学年合わせて生徒15人程の雛見沢分校に転校してきたのは、絵描きである父親伊知郎(米山善吉)が都会を離れて自由な創作活動に集中したいとわがままを言ったため。伊知郎は自分のわがままを自覚していたから、母親と共に一人息子の圭一が急激な環境の変化に対応できるかどうか心配していたが、「案ずるより産むが易し」のことわざどおり、圭一の学校生活は順調のよう。
転校時、担任の知恵留美子先生(三輪ひとみ)に連れられて教室に入り自己紹介した時はかなりヤバそうだったが、転校後1カ月も経つと見事に溶け込んでいた。活発でクラス内のリーダーシップを取る園崎魅音(飛鳥凛)や天然キャラで女の子らしい竜宮レナ(松山愛里)と仲良くなり、この2人から村全体を案内してもらっている時の雰囲気を見ていると、まさに水を得た魚のよう。さらに、古手神社の巫女で神秘的な雰囲気を持つ古手梨花(あいか)や、いたずら好きでおませな北条沙都子(小野恵令奈)とも仲良くなり、楽しそうに毎日を過ごしていたから、引越しと転校による影響を心配していた両親はひと安心だったが・・・。
<祭具殿にまつわる怪事件とは?>
田舎の楽しみは年に1度のお祭りだが、雛見沢のお祭りは古手神社で行われるもの。巫女の梨花が舞を踊っている中、手洗いに立った圭一が見たのは、魅音とレナから絶対に立ち入ることを禁止されていた祭具殿に入っていく、カメラマンの富竹ジロウ(谷口賢志)と入江診療所の看護師鷹野三四(川原亜矢子)の姿。
好奇心を抑えられずその後に続いた圭一は、そこで三四から4年前のバラバラ殺人から始まった“怪事件”の真相を聞くことに。それは、毎年6月の決まった日に、1人が死に、1人が消えるという怪奇伝説。何とそれは、毎年この日“綿流しの夜”に起こっていたものだが、さて今年は・・・?
<こんな田舎村でも、刑事は大忙し!>
普通田舎村では村民が仲良く暮らしているから、警察沙汰になる事件など起きるはずがなく、刑事はヒマなもの。ところが、興宮署の大石刑事(杉本哲太)はこの村で毎年起きる「怪事件」の捜査のため大忙し!大石刑事がとくに苦労しているのは、目撃情報を含め村民が一切口をつぐんでいるため、情報が何も集まらないこと。
学校で大石刑事から1人呼び出された圭一は、昨日富竹は喉をかきむしりながら死んでしまい、三四は行方不明になったと聞かされてビックリ。さあ圭一は、大石刑事の要請に応じて自分の体験をベラベラとしゃべっていいのだろうか?子供心に大いに悩むことになった圭一が、祭具殿にまつわるバラバラ事件のことを全然説明してくれなかった魅音やレナに対して怒りをぶつけたのは仕方ないところだ。
ところが、そこでレナの形相がまるで鬼のように一変し、「圭一くんだって私たちに隠してることがあるんじゃないかな?」と切り返されたからビックリ。それまでの明るくかわいかった魅音とレナの様子は以降一変し、物語はおどろおどろしい様相を深めていくことに・・・。
<「オヤシロさま」を核とした都市伝説の行方は・・・?>
雛見沢の村民にとっては「オヤシロさま」がすべてだから、圭一からいろいろ質問されても、魅音やレナは都合の悪いことは一切しゃべらなかったようだ。したがって、レナに続いて鬼のような顔に一変した魅音から「あんたが祭具殿に忍び込んだことなんか、みんな知ってるよ」と宣告されると、圭一の心は恐怖心でいっぱいに。急いで家に帰ると、なぜか母親はメモを残して外出中。そして父親も・・・。一体両親はどこへ・・・?
そんな中、遂にレナが家を「襲撃」してきたから大変。やっとの思いで家から外へ逃げ出した圭一に対して、今度は村民挙げての追跡劇が。そして遂に圭一は・・・?さて、これは恐ろしい夢・・・?それとも現実・・・?
この映画については、これ以上のネタばれは避けた方がいいだろう。さあ、以降雛見沢で展開される、圭一に対する「オヤシロさま」を核とした都市伝説の行きつくところは・・・?
2008(平成20)年4月2日記