パリ、恋人たちの2日間(フランス、ドイツ映画・2007年) |
<角川映画試写室>
2008年4月3日鑑賞
2008年4月7日記
ヤンキー魂のアメリカ人と、人権尊重が徹底した個人主義のフランス人は、本来水と油・・・?この映画を観ているとつい、そんな感想が。恋人同士のフランス女とアメリカ男に、イラク戦争への対応をめぐって対立した米仏関係と同じ姿が重なるのは、一体なぜ・・・?通り一遍の花の都パリとは違う、ホンモノのパリを描いたフランスの才女ジュリー・デルピーに拍手だが、若干露悪趣味的傾向も・・・?
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監督・脚本・製作・編集・音楽:ジュリー・デルピー
マリオン(フランス人の写真家の女性)/ジュリー・デルピー
ジャック(アメリカ人のインテリアデザイナーの男性)/アダム・ゴールドバーグ
ジャノ(マリオンの父親)/アルベール・デルピー
アンナ(マリオンの母親)/マリー・ピレ
ローズ(マリオンの妹)/アレクシア・ランドー
マニュ(マリオンの元カレ)/アレックス・ナオン
マチュー(マリオンの元カレ)/アダン・ホドロフスキー
ルカ(ジャックに声をかけてくる男)/ダニエル・ブリュール
2007年・フランス、ドイツ映画・101分
配給/アルバトロス・フィルム
<フランスにはこんな才女が!>
この映画で、監督・脚本・製作・編集・音楽・主演したのはジュリー・デルピー。彼女は1969年生まれだから既に40歳近いが、結構チャーミングな女性。フランスにはこんな才女が!
プレスシートによると、彼女は“パリのウディ・アレン”と呼ばれているらしいが、それは至るところに風刺がピリリと効いているため・・・?そんな才女が花の都パリについて効かせたスパイスとは・・・?しかし、そんなきついスパイスは、アメリカ男にスンナリ受け入れられるのだろうか・・・?
<テーマは、カルチャーショックの数々!>
この映画のテーマは、ユダヤ系アメリカ人であるジャック(アダム・ゴールドバーグ)がパリで受けるカルチャーショックの数々。インテリアデザイナーの彼は、恋人であるマリオン(ジュリー・デルピー)とニューヨークで2年間もつき合っていたが、このたびはバカンスでヨーロッパ旅行に出かけることに。最初はベネチア観光だったが、カキにあたるなど最悪。その後、マリオンの故郷であるパリで2日間過ごすことになったわけだが、花の都パリ観光は楽しく充実しているはず。当然ジャックはそう期待していたが・・・。
<ご両親がいい味を!>
フランス人に個性的な人が多いこと(?)は、マリオンの両親を見ればよくわかる・・・?ネコのジャン=リュック(ジャン=リュック・ゴダールを意識したこのふざけた名前にも注目!)に対して、賞味期限ギリギリのフォアグラをたんまりと与えた母親のアンナ(マリー・ピレ)と娘マリオンとの口ゲンカは圧巻!また4人そろった食事の席における、父親ジャノ(アルベール・デルピー)のジャックに対するアメリカ人作家やフランス人作家をめぐる話題(突っ込み?)はいじわるそのもの・・・?その挙げ句、ジャックにはフランス語が全然通じないのをいいことに、「お前がいつも連れてくるマヌケどもよりは頭がいいな」との大胆発言には思わずドッキリ・・・。
マリオンとこの父親、母親との会話の呼吸はピカイチと感心していたら、何とこの2人はジュリー・デルピーのホンモノの両親。さすが、フランスの才能ある女性監督はやることが大胆!
<元カレに対するフランス人女性の距離感は・・・?>
マリオンの故郷パリに戻ったのだから、マリオンが旧友たちと再会すれば元カレの1人や2人いても当然。しかし、フランスではそれが公然だし会話も露骨だから、日本人の私たちと同じように(?)ジャックもビックリ!
マリオンの元カレの1人マニュ(アレックス・ナオン)をめぐる、下半身ネタ丸出しの会話は特筆モノ。ちなみに、「元カレというほどでもないけど、前にちょっとね。フェラしたことがあったかも・・・まあたいしたことじゃないわ」というマリオンとジャックの会話をあなたはどう思う・・・?さらに、「彼女はまだ19歳。僕が彼女に初めてオーガズムを与えたんだ」「でも、本気の恋愛なんかじゃなかったんだよ。兄妹みたいなものさ」というマニュとジャックの会話をあなたはどう思う・・・?
過去は過去、現在は現在ときっちり割り切るフランス人女性(?)にとって、この会話は日常的かもしれないが、私たちやジャックが唖然としたのは当然・・・?
<フランス人とアメリカ人は、水と油・・・?>
イラク戦争への対応ぶりをみていると、民主主義国の中でアメリカと最も鋭く対立したのはフランス。プライドの高いフランス人は内心では、たかだか建国200年の移民混成国家アメリカを見下しているのでは・・・?その意味では、フランス人とアメリカ人はもともと水と油・・・?この映画を観ていると、ついそんな感想が・・・。
この映画が面白いのは、根っからのフランス人であるジュリー・デルピー監督が、マリオンとジャックとの間で交わされる機関銃のような会話の中で、さまざまな論点についてフランス人とアメリカ人の相違点を際立たせていること。そして、映画の舞台がマリオンの故郷パリだったため、そこではセックスネタと元カレ論争が白熱していくことに。
<他にも元カレが約2名・・・?>
この映画はパリでの2日間を描くだけなのに、マリオンにはマニュの他にも元カレが約2名・・・?その1人はたまたまレストラン内の近くの席で出会ったガエル。どうもマリオンはガエルに振られた恨みが今なお消えないようで、ここで見せるマリオンのキレ方はすごいから是非注目!
もう1人はマチュー(アダン・ホドロフスキー)で、たまたまジャックがマリオンのケータイをみると、マチューからのエッチなメールがいっぱい。こりゃ一体ナニ・・・?ここまでコケにされたらヤンキー魂(?)のアメリカ人が怒るのは当然。ところが、それに対してもマリオンは、その送り先は妹のローズだと弁明したうえ、「メールは何の意味もない。ここはパリなのよ!」ときたから、ジャックが「ここはパリじゃない、地獄だ!」と応じることに・・・。
さて、ケンカ別れとなった2人の行く末は・・・?少なくとも、今夜泊まるところは・・・?
<パリには、おカマがうようよ・・・?>
自由、平等、博愛の発祥国フランスでは、セックス面における個人の自由もトコトン尊重されるから、同性愛が市民権をもっているのは当然・・・?
マリオンとケンカ別れして1人ハンバーガー店に入ったジャックに対して、「同席してもいい?」と声をかけてきた若い男がルカ(ダニエル・ブリュール)。その立居振舞いをみていると、いかにもおカマ風だが、心の中にマリオンに対するうっぷんがたまっていたジャックは、思わずそれをルカにぶちまけることに。すると、ルカはやさしくジャックの手を握ってきたから、さあヤバイ!
ルカは一体何者・・・?そしてその後この2人はどんな展開に・・・?
<ナレーションで始まり、ナレーションで終わるが・・・>
この映画のはじまりはジュリー・デルピー自身のナレーションによる状況説明。そして、終わりも彼女のナレーション。ケンカ別れしたマリオンとジャックはその日それぞれ別行動となったが、その中で互いをどのように見つめ直したのだろうか?この後2人はパリからニューヨークへ戻っていくわけだが、ニューヨークでの新たな2人の共同生活はありうるのだろうか・・・?
そんな興味と期待をもって、ジュリー・デルピーのナレーションに耳を傾けてみよう。しかして、この2人の仲についてのあなたの近未来予測は・・・?
2008(平成20)年4月7日記