幸せになるための27のドレス(アメリカ映画・2008年) |
<東宝試写室>
2008年5月14日鑑賞
2008年5月15日記
27回も自前のドレスをあつらえて、花嫁付添い人を務めたヒロインの血液型は・・・?その性格は・・・?お人好しで、「NOと言えない」そんなヒロインが、はじめて本当の自分と向き合った時に見えてきたものとは・・・?ラブコメの方程式どおりコトが運ぶかどうか、しっかり監視しなくては・・・。
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監督:アン・フレッチャー
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ
ジェーン(独身キャリアウーマン、花嫁付添人)/キャサリン・ハイグル
ケビン(地元新聞社のライター)/ジェームズ・マーズデン
テス(ジェーンの妹)/マリン・アッカーマン
ケイシー(ジェーンの友達)/ジュディ・グリア
ジョージ(ジェーンの憧れの上司)/エドワード・バーンズ
2008年・アメリカ映画・111分
配給/20世紀フォックス映画
<花嫁付添い人はオーケー、しかし万年花嫁付添い人は・・・?>
アメリカには花嫁付添い人という風習があることを私がはじめて知ったのは、『いつか眠りにつく前に』(07年)を観た時。これは「結婚式で花嫁の身の回りのお世話や、挙式のお手伝いをしてくれる親しい友人や家族のこと」だから、女性なら1度は経験してみたいもの。だってその経験がないということは、同性の親友が1人もいないことを意味するのだから。
しかし、この映画の主人公ジェーン(キャサリン・ハイグル)のように27回も花嫁付添い人を経験し、今後もさらにそれを更新しそうというのは、いかがなもの。だって、万年花嫁付添い人ということは、いつまでたっても自分が主役の花嫁になれず、友人たちの幸せに役立っているだけということを意味するのだから・・・。
<アメリカにはこんな専門職も・・・?>
ラブコメはハリウッド映画の1つの定番だが、ヒロインの仕事が花嫁付添い人というのがはじめてなら、男性の職業が結婚式の記事専門の新聞記者という設定もはじめて・・・?そんな新聞記者ケビン(ジェームズ・マーズデン)が、今日はタクシーをチャーターしてマンハッタンとブルックリンの2組の花嫁付添い人の仕事をこなしているジェーンの姿を見て、ビックリするとともに興味を示したのは当然。もっとも、ジェーンが降りたタクシーの中に落とした手帳を発見しながら、予定がピッチリ書き込まれたその中身を覗いたり、すぐに返却すべく連絡しなかったのは、いくらジェーンを取材のターゲットに定めたとしても明らかにマナー違反!
そんなケビンのジェーンへのアプローチは見るからに「直球型」。これではジェーンの反発を買うのは当然で、私にはあまり賢いやり方とは思えなかったが・・・。
<しっかり者の姉には、こんな妹が・・・>
ジェーンの血液型はきっとA型。それは、上司のジョージ(エドワード・バーンズ)から頼られているジェーンの仕事の完璧ぶりを見れば明らかだ。そしてまた、27回も花嫁付添い人としての役割をきっちりこなし、自分のことは後回しというタイプはA型以外ありえない(?)。面白いことに、そんな姉にはえてして、わがままで仕事にも男にもだらしのないB型かO型の妹がいるもの・・・?
ジェーンの妹テス(マリン・アッカーマン)がマンハッタンに住むジェーンのマンションにやってきた(転がり込んできた)のは、一体何のため・・・?そんなことも問いたださないまま、妹の来訪を歓迎したジェーンだったが、ある日のパーティーで、テスと憧れの上司ジョージが一目惚れ状態になったのにはビックリ。そのうえ、母親代わりとして小さい頃からテスの世話をしてきたジェーンは、この年になってもテスのジョージに対するあの手この手の恋の戦略のお手伝いをさせられることに・・・。
ジェーンがイライラするのは、巧みにジョージの好みに合わせていくテスのインチキに加担させられるうえ、そんな役割を自分がパーフェクトに演じられること。そんなジェーンの姿を見て、ケビンは「妹に対してNOと言え」「本当の自分とちゃんと向き合え」と盛んにけしかけたが・・・。
<ジェーンの怒り その1ー母親のウェディングドレスが・・・>
私もベジタリアン!私もアウトドア活動が大好き!とウソ八百を並べたてて、ジョージの好みに合わせたテスの戦略が功を奏し、2人のウェディングがめでたく決定した。しかし、こんなウソで固めた結婚でホントに大丈夫・・・?
女ゴコロの微妙さがわからない父親は、単純な喜びだけで、大切にとっていた母親のウェディングドレスをテスに渡したから、ジェーンは表面上は気にしない風を装っているものの内心は大ショック。「あのウェディングドレスは私が先に着るはずだったのに・・・」と内心じくじたる思いで、ウェディングのための段取りを進めていたジェーンだったが、さすがに次の出来事にはプッツン。つまり、テスは無神経にも母親のウェディングドレスに勝手にはさみを入れて、自分用につくり変えてしまったのだ。ここで怒りが爆発したジェーンがとった次の行動は・・・?
<ジェーンの怒り その2ー万年“花嫁付添い人”がトップ記事に!>
ラブコメの典型的な仕掛けは、そんなショック状態のジェーンをやさしく受け止めたケビンとの間に恋の花が咲いていくというもの。『ステップ・アップ』(06年)(『シネマルーム13』71頁参照)に続く監督2作目となる女性監督アン・フレッチャーは、そんな定番どおり几帳面にストーリーを展開させていく。
取材に訪れたケビンに対してもなかなかNOと言えないジェーンが、部屋の中で27着のドレスを着て見せるシーンは、この映画中盤のハイライト。それは同時に、2人の関係がここまで好転したことを示すもの。すると、2人のベッドインは時間の問題・・・?それはそれでいいのだが、そんな彼女の私生活を暴き、面白おかしく記事にすることにケビンは良心の呵責を感じないの・・・?誰もがそう思うし、自分の恋愛感情にやっと気づいたケビンは上司に対して記事掲載の延期を申し出たのは当然。
ところが、ここでジェーンの怒りを買う事件が発生することに。こともあろうに、2人が初のベッドインを果たした翌朝、「万年“花嫁付添い人”」という記事が日曜版のトップとして掲載されたのだ。これを見たジェーンが激怒したのは当然だが、そこでジェーンがとった次の行動は・・・?
<それはちょっとひどすぎる!>
アメリカでは結婚式の前に婚約パーティーをやるらしい・・・?ジェーンがプランニングした親しい友人を招いてやる今日の婚約パーティーのメインは、日本の披露宴でもよく見られる2人の誕生から結婚までの写真をスライドで見せるもの。日本ではこれが、その後の花嫁が読みあげるお父さん、お母さんへの手紙や花束贈呈で涙する1つの伏線となるわけだ。
しかし、この映画の中で見せるジェーンの写真の編集は、虫の居所が悪そうな姉に対して「自分の注文どおりに進めてね」と念を押したテスの期待を大きく裏切るものだった。すなわち、ベジタリアンのくせに○○の写真が・・・。またアウトドア派のくせに△△の写真が・・・。これにはテスもビックリしたが、途中からジョージの顔が引きつり始めたから大変!席を立ったジョージがその後テスに宣言したのは婚約解消だったから、「本当の自分を見せるべきだ」と考え、実行したジェーンの作戦は見事に裏目に出ることに。もっとも、そんな行動がテスへの善意の思いやりだったのか、それとも嫉妬心から出たものなのかは微妙なところ・・・?というより明らかに後者!友人のケイシー(ジュディ・グリア)からはっきりそう指摘されたジェーンは、取り返しのつかないことをしてしまったと後悔したが・・・。
<ハッピーエンドに向けた展開はあなたの目で!>
この映画に限らず、ラブコメはハッピーエンドと決まっている。したがって、ジェーンとテスの和解成立(?)、ジェーンとジョージの和解成立(?)と順調に話が進んでいくが、私があれれと思ったのは、ジェーンのおかげでテスとの婚約解消ができたことを大正解だったと悟ったジョージが、前にも増してジェーンへの信頼を深めたこと。また、ジェーンが以前からジョージに憧れていたことを知ったジョージが、ジェーンとの間でキスを交わす状況になったこと。
あれれ、こりゃ一体どうなってるの・・・?ラブコメの方程式によれば、ジェーンと結ばれるのはケビンのはずでは・・・?誰しもそう思うはずだから、その後の展開のネタばらしは避けたい。ちょっと意外な展開を経て、最後にはめでたし、めでたしのハッピーエンドに至る展開は、あなた自身の目で。
<21世紀最高のニューヒロイン誕生・・・?>
プレスシートによれば、この映画でヒロインのジェーンを演ずるキャサリン・ハイグルは、マキシムが選ぶ「2007年のホットな100人」で第14位にランクイン。また、「2007年のトップ・スター25人」にも選ばれ、「2007年最高の人気者」として紹介されたとのこと。しかし残念ながら、私は彼女の出演した映画を1本も観ておらず、本作がはじめて。
たしかに、他人のことばかり気にするためNOと言えず、自分の幸せを求めることが後回しになるというジレンマに陥っている万年花嫁付添い人というユニークな役割を彼女は熱演しているから、ラブコメのヒロインとしては立派に合格。しかし、プレスシートにあるように、この1作だけでメグ・ライアン、ジュリア・ロバーツ、レニー・ゼルヴィガー、キャメロン・ディアスと対比するのはいかがなもの・・・?また、「“21世紀最高のニューヒロイン”誕生!」という謳い文句もちょっとオーバー気味・・・?ホントにそう言えるためには、違うパターンのヒロインで、違うパターンの男とのラブコメもピシッと決めてみなければ・・・。
2008(平成20)年5月15日記