ジャージの二人(日本映画・2008年) |
<東映試写室>
2008年5月19日鑑賞
2008年5月20日記
08年の夏休みに向けて、『ダメジン』(06年)、『図鑑に載ってない虫』(07年)に続く「脱力系」が登場!「ワケあり父子」がボーっと過ごす北軽井沢の別荘ではジャージ姿が1番だが、それだけで映画になるの・・・?そんな心配はご無用!『ここに幸あり』(06年)を代表とするフランス流「ノンシャラン」と、日本流「脱力系」の面白さ比較にも、是非チャレンジを・・・。
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監督・脚本:中村義洋
原作:長嶋有『ジャージの二人』(集英社刊)
功/堺雅人
敏郎(功の父親)/鮎川誠
功の妻/水野美紀
花子(敏郎の娘)/田中あさみ
岡田さん(敏郎の友人)/ダンカン
遠山さん(お隣り)/大楠道代
2008年・日本映画・93分
配給/ザナドゥー
<「ノンシャラン」VS「脱力系」>
フランス映画で言えば「ノンシャラン」が、邦画で言えば「脱力系」・・・?前者の代表が『ここに幸あり』(06年)(『シネマルーム16』291頁参照)なら、後者の代表は、06年の夏休みに向けて登場した『ダメジン』(06年)(『シネマルーム11』247頁参照)や07年の夏休みに向けて登場した『図鑑に載ってない虫』(07年)(『シネマルーム15』425頁参照)。そして今、08年の夏休みに向けて、『ジャージの二人』が登場!
<将軍家定と功は、どちらが利口・・・?>
2008年のNHK大河ドラマは、やっと宮﨑あおい扮する篤姫が13代将軍家定の御台所として大奥に入ったところだが、堺雅人演ずる将軍家定はうつけ?それとも・・・?
『ジャージの二人』とは、蒸し暑い東京の夏を離れて北軽井沢の別荘で過ごす、54歳の父親敏郎(鮎川誠)と会社を辞めたばかりの32歳の息子功(堺雅人)のこと。功の妻(水野美紀)からかかってきた電話での会話を聞いていると、どうも妻は浮気中らしい・・・?功は小説を書こうと思って原稿用紙持参で来たらしいが、それは真っ白なまま。そんな様子から推察すると、功は落ちこぼれと言わないまでも、どちらかというと「負け組」らしい。するとさて、同じ堺雅人が演ずる将軍家定と功はどちらが利口・・・?
<息子がワケありなら、父親も・・・>
布団を並べた父子間の会話は、「俺は・・・またしてもうまくいってないんだ」「また、離婚?」。3回も結婚したカメラマンの敏郎は、今また3度目の危機にあるらしい。したがって、息子もワケありなら、父親もかなりワケあり・・・?そりゃ、スローライフを楽しむといえばカッコいいが、ジャージを着て、毎日ゴロゴロと別荘で過ごしているだけの、あのしゃべり方の、あの顔の長いオヤジでは、嫁さんが敬遠するのは当然・・・?
しかし、別荘にやってきた功とは母親違いの妹花子(田中あさみ)を見ると、彼女はえらくベッピン。こんなベッピンを産んだ母親はきっとベッピンだったはずだから、敏郎にはそんな嫁さんと暮らしたいい時期も・・・?敏郎の話では魔女ではないかという隣りに住む、遠山さん(大楠道代)が撮ってくれた「ジャージの三人」を見て、これが親子だとわかる人は少ないのでは・・・?
<別荘とはいっても・・・>
北軽井沢に別荘を持っていると聞くと、その所有者はかなり贅沢な暮らしをしていると誰もが想像してしまうが、敏郎の場合はそうでもなさそう・・・?そもそも敏郎の本宅がどこにあるのかもわからないし、物語の途中までは彼が大自然専門の写真家だったこともわからない。したがって、なぜ今彼が別荘でのんびりと過ごしているのかもよくわからない・・・。
ちなみに、この別荘の良いところは、第1に涼しいこと、第2、第3がなくて、第4に涼しいことだけ・・・?他方、悪いところは、じめじめしていること、虫が出ること、便所がくみ取り式であること、風呂が五右衛門風呂であること、そしてケータイの電波が入らないこと、などたくさんある。
まあこの程度の別荘生活なら、都会での仕事はほどほどにと割り切れば、誰にでもできるのかもしれないが、その割り切りができるかどうかが難しいところ。ところが、その割り切りだけは、敏郎はもちろん、息子の功もしっかりと・・・?
<「和小」の読み方は・・・?>
東京は35度という蒸し暑さでも、23度という北軽井沢は少し肌寒いくらい。そんな場合はジャージが最高!しかして、祖母が集めたというジャージは色もエンジ、緑、紺などさまざまなら、2本線が入っている「ダサい」ものや「和小」とプリントされたものまで、柄もさまざま。しかして、「和小」の読み方は・・・?
これは多分、どこかの小学校で使っていたジャージだろうが、「わしょう」ではないし、「なごみしょう」でもない・・・?その正解は「かのうしょう」。功もずっと誤解していたようだが、和小をそんな風に読むのは、一体なぜ・・・?
<「なんかこう・・・」のしゃべり方は・・・?>
最近の日本語の乱れ、とりわけ若者言葉の乱れはひどいものだが、仲の良い父子関係が続いていると、しゃべり方も似てくることがよくあるもの・・・。
別荘にやってきた功の妻が、敏郎の「なんかこう・・・」と言いながら、次に具体性のある言葉をもってくるしゃべり方の特徴を指摘したのはさすが。「なんかこう・・・」という枕ことば(?)自体はいわゆる「あいまい語」だが、その次に具体性のある言葉がくるのは面白いしゃべり方・・・?そしてまた、そんなことが話題になるというのは、つまり別荘の生活がメチャ暇だということの証拠・・・?
<「ジャージの一人」になっても・・・>
いくら「脱力系」父子でも、それぞれが「ワケあり」。また、いくら北軽井沢が涼しいといっても日本国の活動は続いているわけだから、完全に浮世から逃れることができないのは当然。花ちゃんがやってきたことによって、せっかく「ジャージの三人」になったのに、深夜東京からかかってきた電話によると、ピアノの先生が亡くなったとのこと。そのため、せっかく遠山さんからビデオデッキを借り、レンタル屋にも行って今年の夏は映画を40本観ようと楽しみにしていた花ちゃんだが、東京に戻らなければならないことに。すると珍しいことに(?)、敏郎も花ちゃんを東京に送っていくついでに、大自然専門のカメラマンとしての仕事をするらしい。そんなわけで、2人を見送った功は、今や「ジャージの一人」に・・・。
台風が荒れ狂う北軽井沢の別荘で、1人机に向かった功の筆からは、さてどんな名作小説が・・・?そして、台風一過の翌朝、妻から送信されてきたメールにはどんな文章が・・・?
2008(平成20)年5月20日記