カンフーダンク!(大灌籃/Kung Fu Dunk)(台湾、香港、中国合作映画・2008年) |
<試写会・梅田ブルク7>
2008年6月17日鑑賞
2008年6月23日記
カンフーとバスケの融合。そこから重力を無視した驚異的なダンクシュートが可能に!中華風エンタテインメントの世界は何でもあり。こんな映画は、『ミラクル7号』(08年)の周星馳(チャウ・シンチー)とのダブル・チョウ対決にこだわらず、また「そんなバカな!」と考えず、頭をカラッポにして楽しまなくちゃ。もっとも、映画のラストは北京オリンピックに臨む「星野ジャパン」への貴重な教訓を含んでいるから、選抜された選手は必見!
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監督:朱延平(チュウ・イェンピン)
方世杰(ファン・シージエ)(みなしご)/周杰倫(ジェイ・チョウ)
莉莉(リリー)(第一大学バスケチームのマネージャー)/蔡卓妍(シャーリーン・チョイ)
丁偉(ディン・ウェイ)(第一大学バスケチームのキャプテン、莉莉の兄)
/陳柏霖(チェン・ボーリン)
蕭嵐(シャオ・ラン)(第一大学バスケチームのスター選手)/陳楚河(チェン・チューハー)
立叔(リー)(世杰のマネージャー)/曾志偉(エリック・ツァン)
李天(丁偉のかつての戦友)/劉田井宏
2008年・台湾、香港、中国合作映画・100分
配給/角川映画
<ダンクとは?>
最近は、2月18日に観た『燃えよ!ピンポン』(07年)、2月19日に観た『カンフーくん』(07年)、3月27日に観た『少林少女』(08年)などのカンフー映画が大はやり。そんな中、6月17日は昼間の『カンフーパンダ』(08年)に続いて、夜は『カンフーダンク!』を観ることに。
ところで、ダンク(dunk)ってどういう意味・・・?私は寡聞にしてそれを知らなかったが、今でも地域でバスケットをやっている事務局次長に聞くと、「それはダンクシュートのことでしょう」と軽く一蹴。つまりボールを手から離さずに直接ゴールに入れるシュートをダンクシュートというらしい。
もともと、カンフーの達人だった主人公方世杰(ファン・シージエ)(周杰倫/ジェイ・チョウ)と、シージエをバスケットのスーパーヒーローに仕立てあげてひと儲けを企む立叔(リー)(曾志偉/エリック・ツァン)とのケッタイな友情を描いたこの映画のタイトルを『カンフーダンク!』としたのは、ダンクという言葉は誰でも知っているというのが大前提・・・?もしそうだとすると、私の知識不足を反省しなければ・・・。
<「双周PK」(ダブル・チョウ対決)の行方は?>
4月14日に観た『ミラクル7号(長江七号)』(08年)は、香港スターの周星馳(チャウ・シンチー)が監督・主演した映画。それに対して、『カンフーダンク!』は『王妃の紋章』(06年)にも第二王子役で出演した台湾生まれの大スター、ジェイ・チョウが主演した映画。ほぼ同時期に公開されたこの2つの周作品を、中国メディアでは「双周PK」(ダブル・チョウ対決)として注目していたそうだが、さてその行方は・・・?
両作品ともバカバカしいといえばバカバカしいが、そのバカバカしさの中にホロリとした人間の情が感じられるところがミソ。そしてまた、バカバカしさを通り越したバカ面白さがその特徴。「ダブル・チョウ対決」といっても、1962年生まれのチャウ・シンチーと1979年生まれのジェイ・チョウの年はかなり離れている。したがって、ムリヤリ対決を煽らず、似たようなテイストの中華風エンタテインメント作品として、頭をカラッポにして楽しんだ方がいいのでは・・・?
<「そんなバカな!」と考えてはダメ・・・>
『少林サッカー』(01年)や『カンフーハッスル』(04年)(『シネマルーム17』484頁参照)に始まった、『ミラクル7号(長江七号)』や『カンフーダンク!』のような中華風エンタテインメント映画は、「ありえねー」を旗印としている(?)から、そんな映画を楽しむにはまず私たちが持っている常識を捨てることが大切。
この映画は冒頭、捨て子から少年に成長したシージエが、カンフー学校の師父(シーフー)から「瞬間移動の術」を教わるところから始まる。それが映画のラストにおいて大きな役割を果たすのだが、そもそもこんな術が科学的に成り立つはずがないのは当然。また、重力に逆らう人間のジャンプ力は限界があるから、キャプテンの丁偉(ディン・ウェイ)(陳柏霖/チェン・ボーリン)やすぐにそれをマスターしたシージエのように、ゴールまでジャンプしてダンクシュートを決めるのは人間には不可能。
他方、ビールの空き缶をゴミ箱の小さな穴の中にコントロールよく投げ入れるシージエを見て、その才能を見破ったのがリー。マネージメントの才覚豊かなリーが、「親を探し続けるバスケ少年」という感動物語とともに、シージエを第一大学のバスケットチームに売り込むことによってシージエの新たな人生が始まるのだが、いくらコントロール力があるといっても、シージエのようにロングシュートを百発百中ゴールさせるコントロール力というのは、あまりにもバカげた話。こんなシーンを真面目に観れば、現役のバスケの選手たちは激怒するはず・・・。
したがって、こんな映画を楽しむためには、いちいち「そんなバカな!」と反応せず、率直にスクリーン上の「ありえねー」シーンを楽しむことが大切。
<「使い回し」もしゃれたもの・・・>
現在読売新聞朝刊は「食ショック」第3部「飽食のコスト」を連載している。そのテーマは「飽食と大量廃棄」。産地偽装や偽ブランド食品販売はもちろんダメだが、賞味期限問題はそれほど単純でないことが、このシリーズを読めばよくかわる。また、船場吉兆の料理の使い回しも言語道断だが、『カンフーダンク!』における、リーがシージエを高級フランス料理店に招待しての食事風景を見ていると、使い回しもしゃれたものと思えてくるから不思議・・・?
1人孤独にベンチで寝ていたリーが、シージエの抜群のコントロール能力を見て興味を示し、彼をご招待したフランス料理店は、屋内ではなく屋外にテーブルとイスをセットしたもの。リーの娘がそこで働いているから、彼女が出してくる料理はその日のおまかせらしい。そして、今日のワインは○○年と△△年をミックスしたものとリーがズバリ言い当てたからビックリ!もっとも、「おいおい、ミックスもののワインなんてあるの・・・?」と思ったとおり、リーの娘が運んでくるワインも料理もすべてその日の余りモノ。しかし、前菜からメインディッシュまで、おいしいものが今日もどっさり・・・。こう考えると、「使い回しも」しゃれたもの・・・。
<第一大学のバスケチームも、徐々に形に>
08年6月20日、北京オリンピックに向けた星野ジャパンの最終候補選手39名を決定した。ここから最終的に24名に絞り込まれるわけだが、さまざまな能力をもった一流選手たちをどのようにしてチームとして一丸にまとめるかが監督の手腕。闘将星野仙一がその任に最適と日本中が認めているわけだが、さて・・・?
他方、第一大学のバスケチームの団結力はというと、バラバラ・・・。そもそも、キャプテンのディン・ウェイは抜群のダンクシュート能力を誇るものの、現在は酒浸り状態。これではヤバいこと明らかだが、もちろんそれにはそれなりの理由が・・・。第一大学バスケチームにはスター選手の蕭嵐(シャオ・ラン)(陳楚河/チェン・チューハー)がおり、さらに新戦力のシージエもいるから、チーム一丸となれば、最強の極悪チームである火球隊と渡り合える総合力は十分。ちなみに、第一大学のバスケチームを1つにまとめていくについては、ディン・ウェイの妹、莉莉(リリー)(蔡卓妍/シャーリーン・チョイ)も一役買っていたが、彼女が惚れているのは一体ダレ・・・?
リーの計画したシージエ売込みによる「富豪化計画」の展開を含め、さまざまなドタバタ劇を見せながら、第一大学バスケチームが一枚岩にまとまっていくところが、この映画の1つの見どころだが、それは星野ジャパンのチーム構成についても大いに参考になるのでは・・・?
<ロングシュートで逆転!と思えたが・・・>
第一大学チームの売りは、ディン・ウェイとそれを学んだシージエのダンクシュートそしてシージエのロングシュート。それに対して火球隊の売りは、反則ギリギリのラフプレイ。ヨン様主演の『太王四神記』の第5話では、キョック(撃毬)の試合で黄軍がスティック(打球棒)に鉄の芯を入れるというラフプレイによって勝利するのがストーリーの核だったが、ホントはこれは反則負けにならなければおかしいもの。ディン・ウェイが酒に入り浸っているのは、ある試合で受けたラフプレイのトラウマによるものだが、今日の決勝戦でも、火球隊のラフプレイは健在。そもそもユニフォームからして火球隊のそれはどう見ても球技用ではなく、格闘技用(?)だから大変。
こんな場合、審判がしっかりプレーを確認していれば大丈夫だが、決勝戦での審判が、97対96で第一大学チームが劣勢の中、最後のロングシュートを放ったシージエのボールに対してとった行動とは・・・?こんな審判がいたのでは、どのチームも永遠に火球隊に勝つことは不可能、と観客全員が思ったが・・・。
<8分間、2億4000万円を、どう評価・・・?>
そんな絶望感が支配する中で登場するのが、ラストの8分間で2億4000万円を投入したというシークエンス。捨て子だったシージエが師父に拾われてカンフーの修業をする中、師父は死んでしまったが、シージエはその師父からしっかり瞬間移動の術を受け継いでいたようだ。その全貌については、いろいろな講釈をたれながら解説してくれているので是非映画を観ていただきたいが、私流の理解でひと言で言えば、これは一種のタイムスリップ術。つまり、瞬間移動の術でタイムスリップすることによって、あの時とったあの行動とは別の行動をとることを可能にするわけだ。
あの時とったシージエの行動は、勝負を決めるためのロングシュート。しかし、それが明らかに火球隊側についていた審判によって妨害されるという体験を経た今、シージエがとった別の行動とは・・・?それがこの映画最大のテーマ。最強のバスケチームは最強のスターによって成り立つのではない。それは、チーム全員のチームワークによって成り立つもの。それをしっかり私たちに教えてくれる感動のフィナーレをここに迎えるのだが、この8分間の瞬間移動のシークエンスのためにかけた費用が2億4000万円というからビックリ。
ここで星野ジャパンを率いる星野監督へのアドバイスをひと言。スター選手ぞろいの星野ジャパンでも最も大切なのはチームワーク。きっと星野ジャパンのキャプテンを務めることになるであろう、ヤクルトスワローズの宮本慎也選手はチームプレイの鬼だが、あのスター選手、このスター選手に対してチームワークのなんたるかを身にしみこませて教えるためには、この映画を鑑賞させるのが1番。星野さん、是非星野ジャパンの選手たちに、この映画の鑑賞を!
2008(平成20)年6月23日記