マーキュリーマン(タイ映画・2006年) |
<ユウラク座>
2008年6月28日鑑賞
2008年6月30日記
ハリウッドに「スパイダーマン」「バットマン」「アイアンマン」がいれば、タイには「マーキュリーマン」が!同じヒーローものでも、「太陽の護符」「月の護符」伝説を基にした仏教的な(?)ストーリーづくりは、テイストが大違い!さらに、この映画の特徴は、3人の美女の登場!美女たちによるムエタイ対決を前座とし、ラストの炎と氷のクライマックス対決をタップリと楽しもう。
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監督・脚本・原作:バンデッド・ソンディ
チャーン(マーキュリーマン)/ワサン・カンタウー
アリーナ(女テロリスト)/メティニー・キンパヨーム
ウサマ・アリ(大物テロリスト)/アノン・サーイセンチャン
プニマ(「月の護符」を守護する尼)/ジンウィパー・ゲーウガンヤー
グレース(チャーンの妹)/パリンヤー・ジャルーンポン
2006年・タイ映画・106分
配給/アートポート
<ハリウッドが『アイアンマン』なら、タイは『マーキュリーマン』!>
ハリウッドではじめて映画化した『アイアンマン』(08年)が今大人気だが、タイでも「『バットマン』(89年)や『スパイダーマン』(02年)などに負けないヒーローものを!」という要請があったらしい。私が最近観たタイ映画は情緒的な秀作『風の前奏曲』(04年)(『シネマルーム9』248頁参照)だったが、強く印象に残っているのは『マッハ!』(03年)。①CGを使いません、②ワイヤーを使いません、③スタントマンを使いません、④早回しを使いません、を謳い文句にしたムエタイ・アクションは迫力があり、見ごたえ十分だった(『シネマルーム6』194頁参照)。
『マーキュリーマン』は、その『マッハ!』を原案・製作・監督したプラッチャヤー・ピンゲーオがプロデューサーとなり、監督に新進気鋭のバンデッド・ソンディを起用したもの。そんな2006年のタイ映画が、今なぜか天六のユウラク座でひっそりと公開。土曜日の7時20分からの上映だが、観客は例によって10名足らず。何の予備知識もなく、何の期待感もなく、8割以上「義務感」で観にいった映画だったが、意外とオーケー。そのため、定価400円のパンフレットを購入したのだが、そこでいささか嫌な思いを・・・。
<こんなアホバカが!>
パンフレットを受け取り代金を支払い、私はいつものように「領収書を下さい」と言ったところ、それを聞いたアルバイトらしき若い男の子(仮にA君)の返事は「領収書はありません」というもの。いつも座っているのは超ベテランのおばさんだから、きっとA君は最近ここに座ってもぎりをするだけの役目で、時給○○円のバイトで雇われたのだろう。しかし、「領収書はありません」とは一体ナニ・・・?400円のことだからどうでもいいのだが、そこでちょっとムカッとくるのが私の大人げないところ。
そこで「ないことはないだろう。俺はいつももらっている」と反論すると、自分が領収書のある場所や渡し方を知らないだけだと気づいたらしいA君は、やっと(内線)電話で問い合わせたうえ、「ちょっと待って下さい」と言い残して席を立って行った。こうなりゃ少し持久戦となるとみた私は、パンフレットを読みながらじっと待っていると、戻ってきたA君の手には、有楽株式会社の判を押した市販の領収書が。「少し時間がかかったが、これで問題解決」「A君も少しは勉強になっただろう」と自己満足していると、次のA君の発言にビックリ。そこで「どう書いたらいいんですか?」ときたわけだ。
君はモノを売って代金を受け取った場合の領収書の書き方も知らないの?小学生や中学生ならまだしも、20歳代半ばの男性が、ホントに領収書の書き方も知らないの・・・?さすがにそれを教えてやる気にならなかった私は、「後で自分で書けばいいワ」と考えて、彼の手から領収書の用紙を1枚切りとって黙って出てきたが、さてその後A君は領収書の書き方を雇い主から学んだのだろうか・・・?あの雰囲気では、きっとA君はそんな前向きの思考力はなく、白髪のオッサンがワケのわからんことを言ってたなあくらいの認識・・・?こんなアホバカから、格差社会がけしからん!『蟹工船』バンザイ!と言われたくないとつくづく実感したが、こんな私の行動やこんな私の感想はどこかヘン・・・?
<チベットには「月の護符」が!>
この映画は、『スパイダーマン』や『バットマン』そして『アイアンマン』のように、最初から大ヒットと続編の製作が約束されているものではないから、あくまで一発勝負!したがって、2時間枠の中に、マーキュリーマンの誕生物語とその敵の明示が必要。そして、正義の味方マーキュリーマンが悪と闘うメインテーマを提示し、ヒーローの闘いぶりをカッコよく描く必要がある。
そんな段取りどおり、映画は冒頭にカンボジアに住むある超能力を持った少年を見せた後、舞台はチベットに。チベットのある寺院の聖堂の中で大切に祀られているのが、古代から伝わる秘宝「月の護符」。それを守るのは、プニマ(ジンウィパー・ゲーウガンヤー)というムエタイに長けた美女。そんなプニマを襲い、月の護符を奪っていったのは、武術も美貌もプニマに負けず劣らずの美女アリーナ(メティニー・キンパヨーム)だが、さてアリーナの狙いは・・・?
<「太陽の護符」を合わせると・・・?>
アメリカによる2001年10月7日からのアフガニスタン進攻は、2001年の9・11テロが、国際テロ組織アルカイーダの指導者であるオサマ・ビンラディン一派の手による可能性が高いと判断したため。しかし、莫大な懸賞金にもかかわらず、今なおその逮捕はおろか、その所在すら明らかになっていないのは残念。そんな名前を意識したこと疑いなしなのが、マーキュリーマンの敵役として登場するテロリストのウサマ・アリ(アノン・サーイセンチャン)。
ウサマは今タイの刑務所に服役中だが、アリーナが月の護符を奪ったのは、ウサマが持つ太陽の護符と合わせることによって生まれる強大なパワーをアメリカ打倒のために使おうとしたため。そんなウサマの思惑どおり、彼の部下たちは、今まんまとウサマの脱獄を成功させようとしていた。しかし、そこに登場してきたのが、まだ自分がマーキュリーマンになることを知らない血気盛んな消防士のチャーン(ワサン・カンタウー)。脱獄阻止の小競り合いの中、太陽の護符がチャーンの体内に吸収されてしまったが、その結果起きたチャーンの身体の異常とは・・・?
<仏教思想がいっぱい>
正義感に溢れるチャーンは、時に命令を無視して危険な現場に踏み込んだりするため、組織として活動しなければならない消防隊の活動においては、叱責を受けることも。このように、チャーンはもともと血気盛んな若者だから、そんな彼の体内に太陽の護符が吸収されると、チャーンの体温は燃えるように熱くなっていったが、それはすべて太陽の護符のパワーがなせるワザ。
プニマから、チャーンこそが太陽の護符の驚異のパワーを操る“選ばれし者”となったと教えられたものの、太陽の護符の力を自在に操るためには、熱しやすい気持をコントロールすることが不可欠。つまり、チベット仏教の高僧が教えてくれた「瞑想」が必要なわけだ。そんな訓練には一定の時間が必要だが、映画とは便利なもので、みるみるうちにチャーンは上達。そして、チャーンの妹のグレース(パリンヤー・ジャルーンポン)がデザインした耐火性スーツに身を包めば、太陽の護符の力によって金属を自在に操り、重力に反発し、高熱を発する超人マーキュリーマンに大変身!
さあ、マーキュリーマンとして、チャーンが正義と平和を保つために果たすべき役割とは・・・?
<炎と氷の対決は?>
この映画はタイ映画だから、プニマとアリーナという2人の美女が再三再四見せてくれるムエタイによる闘いのシーンが見モノの1つ。また、チャーンの妹グレースは、もともとムエタイのボクサーだったが、ファイトマネーで性転換をして女になったという変わり者。したがって、服飾デザイナーとしてマーキュリーマンのコスチュームを特殊な耐火性スーツを用いてデザインしたというだけの役割ではなく、ムエタイを武器として兄のチャーンと共にさまざまな役割を果たすからそれにも注目!
そんな中、最後のクライマックス対決となるのが、太陽の護符の力を身につけた炎のマーキュリーマンと、月の護符の力を身につけた氷のアリーナとの対決。格闘技では5分と5分の力を見せつけ合う2人だったが、まず氷の技(?)でマーキュリーマンをプールの中に閉じ込めたのはアリーナ。しかし、最後はやはり、マーキュリーマンの炎の技によってアリーナをやっつけることになるのは当然。
こんな、ハリウッドのヒーロー映画とは一味も、二味も違うタイ製のヒーロー映画を、3人の美女比べをしながらタップリと楽しもう。
2008(平成20)年6月30日記